食・暮らし

台風も地震も日本は昔から災害大国~磯田道史氏『天災から日本史を読み直す』

2020年9月2日――。

伊勢湾台風や室戸台風と並び、過去最大級と目される台風10号が日本列島に近づき、全国に緊張感が走っております。

場合によっては鉄道各社も飛行機も全面的にストップとなるでしょう。

凄まじい雨量は、各地の水処理能力を凌駕することが懸念され、特に台風9号で多くの雨に見舞われたエリアでは、多くの方が頭を抱えているに違いありません。

こうした自然災害は、今に限ったことではなく、昔から日本では頻発。

歴史も大きく動かしていた――。

というのを意識させてくれるのが、

『天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災 (中公新書)』(→amazon

です。

著者は『武士の家計簿』で有名な磯田道史氏。

現代文を読むがごとく古文書をスラスラ読解するその道の第一人者であり、私たちにわかりやすい言葉で伝えてくれます

 

実際、他国と比べて災害は多いの?

地震、火山に台風、高潮――。

日本は他国と比べ、体感的に自然災害の多い国だと感じますが、実際はどうなのか?

国土技術研究センターのホームページから引用させていただきますと……。

日本の国土の面積は全世界のたった0.28%しかありません。

しかし、全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の20.5%が日本で起こり、全世界の活火山の7.0%が日本にあります。

また、全世界で災害で死亡する人の0.3%が日本、全世界の災害で受けた被害金額の11.9%が日本の被害金額となっています。

このように、日本は世界でも災害の割合が高い国です。(一般社団法人 国土技術研究センター

感覚でなく、自然災害に遭いやすい国ということが分かりますね。

こうした気候や地理条件は昔から大きく変わるものではなく、歴史的に見ても同様のことが繰り返されてきたのは我々にも想像できますね。

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豊臣政権に影響与えた二つの地震

第1章は豊臣秀吉の時代です。

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日本史好き、特に戦国好きには有名な2つの地震から始まります。

1つめは天正13年(1586年)に日本列島の中央部でおこった大地震「天正地震」。

秀吉による九州征伐の前年ですので、豊臣家の支配体制が完全には確立していない時期の出来事ですね。

この地震では飛騨の帰雲城(かえりぐもじょう)が山崩れによって完全に埋没、城主の内ヶ島一族が全員行方不明となり滅亡した話で知られます。

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しかし、その他にも大垣城が全壊焼失、長島城も倒壊となっており、北陸から中部での大きな被害が確認できます。

山内一豊夫婦の唯一の実子である女子がこの地震で命を奪われたのは大河ドラマ『巧妙が辻』でも描かれておりましたね。

本書では、当時の地震の記録を紹介するところからはじまります。

時計の普及していない時期ですので時刻は太陽が頼り。夜中におきた天正地震は亥刻、子刻と記述がまちまちだそうです。

続いて山内一豊の話を書き、徳川家康が地震に救われた話へと続きます。

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著書には【地震がなければこの2ヶ月後に秀吉は家康を攻め滅ぼす予定であった】と書いてあります。

徳川攻めの前線基地となる大垣城に兵糧を入れ、真田昌幸宛の書状では家康攻めを明言していたのです。

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しかし地震で大垣城は焼け落ち、秀吉の勢力圏であった近江・伊勢・美濃・尾張は震度5-6の揺れで大打撃、一方、家康の領地である三河以東は震度4以下で殆ど被害がなかったため、秀吉が戦を諦める形になりました。

この一連の流れが、色々な史料を少しずつ引用して語ら、気がつけばグイッと本の世界の芯へと引き込まれていきます。

2つめの地震は文禄5年(1596年)の伏見地震です。

山城国伏見で起きた直下型地震で、完成間近の伏見城天守も倒壊し秀吉自身も死にかけました。

この時の死者は1000人以上とも言われ、城内だけで600余人が圧死したと言われます。

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なぜこのように圧死者が多かったか?

その理由は「歴史背景+建築様式の推移」にありました。

詳細は本書をお読みになってご確認ください。唸らされますよ。

その他にも上杉景勝の正妻・菊姫(実は武田信玄の娘)が怪力を発揮して、建物出口の梁を支え女中を逃がした――という驚きのエピソードもあります。

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結果的に伏見地震は、豊臣政権を崩壊させる引き金となりますが、その話も引用を交え興味深く書かれております。

ちなみに6月18日に大阪でおこった地震の震源は、伏見地震を起こした【有馬―高槻断層帯】に近い場所だそうです。

 

津波時の川は「三途の川」と心得よ

2章以降も地震、噴火、土砂崩れ、高潮、台風、津波と様々な災害が出てきます。

そして殆どの章で、災害から得た教訓が書かれ、現代に活かす方法も提言されているのが素晴らしいです。

例えば、

【ため池が地震で決壊し、流れ出た水で下部にあるため池が連鎖的に決壊し家屋に被害が出た話】

から、現代のため池にも耐震診断が必要という意見はもっともだと膝を打ちました。

“津波時の川は「三途の川」と心得よ”

これなんて見た瞬間にハッ!とさせられる教訓ですよね。

河川を伝わる津波の速度は陸上の2~3倍。

何も準備がなければ逃げ切れないことは、東日本大震災で我々は映像を通じて体験しておりながら、おそらく今では警戒心も薄まっているのではないでしょうか。

普段から川を渡らずに高台へ逃げる経路の確認が大事だと感じました。

歴史パートでは第4章、災害が変えた幕末史も興味深いものでした。

佐賀藩が軍備を固めるきっかけになったのは台風だった……と、これ以上のネタバレは読書の楽しみを奪いますね。

最終章は東日本大震災からの教訓で結ばれております。

 

食料&水以外にお薬の備えも

さて、紹介した本とは全く関係ありませんが、医師である私が【災害時の薬】について院内広報誌に著した記事を紹介させて下さい。

【災害に備えましょう】

日本は地震や台風が多い国です。

近い将来、東海地震が起こる可能性も言われております。

大規模な災害があった場合、本格的な救助が開始されるまでに3日ほどみておく必要があります。その間をしのげる水、食料の備蓄は必須ですが、普段飲んでいる薬についても災害時への備えが必要です。

1週間分程度の薬を非常用袋に入れておくとともに、お薬手帳のコピーや薬剤情報の紙があると便利です。

スマートフォンで撮影をしておくのも良いでしょう。薬には使用期限がありますので数ヶ月で入れ替えて下さい。

特にインスリンは成分がタンパク質であり高温で変性してしまいますので『次に使うインスリン』を冷蔵庫から非常用袋やかばんに1本入れておきましょう。注射針も忘れずに用意して下さい。

糖尿病薬は災害時に食料が少ない場合、いつもと同じ量を使うと低血糖を起こす場合があります。災害時の薬について主治医に確認しておくことをお薦めいたします。

文:馬渕まり

文/馬渕まり(忍者とメガネをこよなく愛する歴女医)
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【参考】
磯田道史『天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災 (中公新書)』(→amazon
JICE
zakzak

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