明治・大正・昭和

開始当初はライスカレー代の3倍だった公衆電話、その歴史 今もわずかに残されている理由は?

 

「一昔前まではお馴染みの存在だったのに、今ではすっかり懐かしいものになってしまった」
そんな例は多々ありますよね。一番わかりやすいのは、芸能人やファッションの流行り廃りでしょうか。
本日は、世代によって「お馴染み」かどうかが変わりそうな、とあるモノのお話です。

明治三十三年(1900年)9月11日は、日本初の公衆電話が設置された日です。

最近は見かけることも減ってしまいましたが、実は世相が如実に表れるものでもありました。
一体どういう流れをたどってきたのか?

公衆電話の歴史を振り返ってみましょう。

【TOP画像】温泉にあった公衆電話/photo by Suzumiya Haruka @flicker

 


開始当初の料金はカレーライスの3倍だった

日本で電話が使われるようになって間もない頃は、電話局内に一般人向けの公衆電話が設置されていました。
電話加入者が少なかったですし、電話に対する理解が進んでいなかったので、そもそも使おうとする人が少数派だったのです。
それでも五年のうちに一ヶ所平均8通話ほど使われるようになったとのことなので、少しずつ理解が進んでいったのでしょうね。わざわざ電話のために電話局へ行くと考えると、この回数は多いほうかもしれません。

そして明治三十三年の9月11日、上野駅の駅長室前と新橋駅の中等待合室前に公衆電話が設置され、誰でもすぐに電話が使えるようになりました。

同じ年に、京橋へ初めての電話ボックスが設置されています。これは六角錐型だったそうなのですが、なぜそんな造りにくそうな形をチョイスしたんでしょうね。目立つことは間違いないですが。
当時は電話交換手がいた時代だったので、料金投入も交換手が音で確認していたそうです。戦後までこの方法は続きました。

一回5分で15銭となかなかの高額だったため、利用者が増えず、まもなく5銭まで値下がりしたそうです。なら最初から5銭でいいじゃないかという気がしますが、商売ってそんなもんですよね。
当時の物価だとカレーライス(あるいはライスカレー)が5~7銭、ビールの大瓶が19銭。つまり、電話一回で昼食3回分、もしくは実質的にビール一本飲めなくなる……というわけで利用者が増えないのも仕方ないっすね。

公衆電話のレプリカ/Wikipediaより引用

新横浜ラーメン博物館のレプリカ/Wikipediaより引用

 


全国5,222台あった公衆電話は戦後623台へ減少

大正九年(1920年)、一般加入電話(固定電話)が1通話2銭になると、自宅に電話回線を引くよりも、公衆電話を使う人が増加。

こうして公衆電話が広まっていきましたが、戦時中の空襲で公衆電話も多大な被害を受けてしまいます。広まった結果、被害を受けた――と言い換えることもできるでしょうか。

戦前は全国で5222台あったのに、終戦後には623台まで減ったそうです。

残っていたのはおそらく、空襲を受けていない場所のものがほとんどでしょうから、都市部ではほぼ公衆電話が使えなくなっていたとみてもよさそうです。

また、戦後は硬貨不足等により、しばらくは公衆電話が使えなくなってしまいました。硬貨に比べれば残っていた紙幣での料金徴収も試みられています。しばらくの間はほぼ100%徴収できたらしいのですが、次第に「お金を払わなくても電話が使えるらしい」ということがウワサで広まり、徐々に徴収率が落ちていったとか。
東京では昭和二十四年(1949年)に15%まで落ちたそうです。これじゃ商売として成り立ちませんよね。

そこで、商店などに公衆電話を委託する方式が始まりました。こうすることで確実に料金を徴収できるようにしようというわけです。
商店の客数が増えたこと、手数料収入が見込めること、商店自身の電話としても使えるなどのメリットが多いことから、赤電話の設置希望が増え、公衆電話が再び普及。
デメリットは、お店の定休日や営業時間外には使えないことですかね。当たり前ではありますが。

アラサー、アラフォー以上は懐かしの(?)赤電話/Wikipediaより引用

アラサー、アラフォー以上は懐かしの(?)赤電話/Wikipediaより引用

 

災害時に必要なため今も残されている

しかし、そのうちやはり料金に関する問題が発生するようになり、「電話機そのものに直接料金を投入できるようにしよう」ということで、新たな機種が開発されることになります。
こうして、現在も設置されているような公衆電話になっていったのです。

とはいえ、皆さんご存じのように、携帯電話の普及によって、最近では公衆電話の撤去が進んでいますね。
平成十四年(2002年)には、新機種の開発もやめてしまっているそうです。

それでも完全になくならないのは、災害時などでも使える通信手段を保つためです。災害時は無料で通話できるようになることがありますね。

個人レベルでも、携帯電話が使えなくなった場合などはお世話になることがあるので、行動範囲内のどこにあるか把握しておくといいかもしれません。
経験者は語ります(´・ω・`)

NTTの公式サイトで最寄りの公衆電話の場所を確認できるので、ついでにリンク貼っておきますね。

◆NTT東日本:公衆電話 設置場所検索
◆NTT西日本:公衆電話 設置場所検索

防災対策というと非常食や水、貴重品などの持ち出しが話題になることが多いですけれども、公衆電話のことも頭の片隅に入れておきたいですね。
特にお若い方の場合、”非常時に初めて見て、使い方がわからない”……ということもありえますし。

長月 七紀・記

参考:日本の公衆電話/Wikipedia 委託公衆電話/Wikipedia 公衆電話/Wikipedia man@bow


 



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