「白黒つける」という表現があります。
が、現実にはそう簡単にいきません。
例えば法律と裁判の関係なんか典型的でしょう。
「◯◯したら✕✕の刑」という決まりはありますが、現実には情状酌量やら被告の年齢やらで減刑されることも多いですし、経緯を考慮した結果、刑法の条文そのものがなくなったケースもあります。
その辺をうまくコントロールするのが政治や司法の役目でしょうか。
ただ、中には目に見える結果を急ぎすぎて、後世に様々な影響を及ぼしているのでは? と思しきものもあったりなかったり……。
昭和二十一年(1946年)10月8日は、文部省が【教育勅語奉読の廃止】を通告した日です。
「そもそも教育勅語って何なの?」
という方に向け、その骨子から確認して参りましょう。
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語りかけるような文体で記されていた
教育勅語の正式名称は「教育に関する勅語」です。
まぁほとんど意味が変わらないというか、途中を略したら都合よく四字熟語の【教育勅語】になり、結果、そっちが有名になったという感じですね。
「勅語」というのは「天皇が直に語ってくださったこと」という意味があり、語りかけるような文体になっています。
そしてその勅語の内容が「教育に関する」ことだというわけですね。
当時の言葉だと一見わかりにくい(というかカタカナが多すぎて読みにくい)ですけども、話しかけられていると考えると、少し親しみがわくのではないでしょうか。
肝心の内容については、いつも通り原文を書き下してから意訳をしようと思ったのですけれども……ちょっとややこしいので、意訳だけ書かせていただきますね。
【教育勅語:意訳】
我が皇室の祖先が国を治めるようになったのははるか昔のこと。
私が思うに、そこから築き上げてきた徳は深く厚きものだ。
我が国民も忠と孝によって心を一つにし、その徳を受け継いでいくことが肝要であり、教育もそれを基本として行うべきである。
父母に孝行し、兄弟仲良くし、夫婦はお互い協力しあうこと。
友人同士互いに信じ合うこと。
慎みを持ち、皆博愛の心を持って行動すること。
学を身に、手に職をつけ、知を磨き、世のため人のために自ら尽くすこと。
憲法をはじめとした法律に従うこと。
もしいざというときが来たら、公のために尽くすこと。
こうすることによって、先祖代々の国とこれからの国を守ることになる。
これらは昔も今も、わが国でも外国でも間違いのない道である。
私もこれらを心がけ国を守る。
だから皆もこの道を一緒に歩んでほしい。
原文だと今のメディアでNGワード扱いになってる単語がいくつかあるので、そこに引っかからない&意味がさほど離れないように訳したつもりなんですが、いかがでしょうか……?
ネットで検索すればいくつかサイトがあり、意訳されてる方も結構たくさんいらっしゃるいます。
ご自身の感覚に合う訳を見つけるもよし、自分で書いてみるもよしと思います。
学生さんなら、国語の勉強になるかもしれませんね。
戦時中には都合よく解釈を曲げられたことも
小学校などではこれを箇条書きにして「12の徳目」として書いていることも多かったようです。
意味がほとんど同じなので省略しますが、どちらにせよ現代にも通じるというか、現代こそ大切にしないといけないんじゃないかと思う点が多いですよね。
いや、文中にある通り、古今東西まず間違いのないことといったほうが正しいでしょうか。
この勅語は明治二十三年(1890年)に公表され、内容の通り、教育の基本として各地の学校で掲示・奉読されました。
戦時中には朝鮮半島や台湾などでも用いられています。
同時に軍国主義にとって都合の良い解釈がつき、悪用もされてしまいました。
そのため、例によって第二次世界大戦の敗北に伴い、さまざまなものが廃止されたとき、教育勅語も排除されてしまっています。
まぁ、天皇からの言葉であるというだけで、GHQからすれば「こんなモン残してるってことは、まだ天皇を中心に軍事行動を起こすつもりかもしれん」と思えたのかもしれませんね。
現代人からすると「アンタら、さんざん日本列島を焼き尽くしておいて、まだ疑うんか」という感じですが。
日本側も日本側で、マズイ部分だけうまく削って書き直せば良かったものを、全て撤廃してしまったがために、本来の目的である「良い人を育てる」ということまでが、どこかへ行ってしまったような気がします。
教育勅語のように、戦前・戦中のものだからというだけで排除されてしまったものの中には、本当は時代やイデオロギーなどとは関係なく役立つものもあるのかもしれませんね。
せっかく温故知新という四字熟語もあることですし。
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長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
教育ニ関スル勅語/wikipedia