『鬼滅の刃』伊之助マスク/amazonより引用

この歴史漫画が熱い! 明治・大正・昭和

『鬼滅の刃』ハラスメントがうぜぇ!と言う前に……対処法を考えよう

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キメハラ(鬼滅ハラスメント)
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花魁や遊女の描かれ方

このことを個人的に痛感させられたのは、朝ドラ関連のニュースを見ている際でした。

あまりに無茶苦茶で暴力的な家庭環境、貧困、劣悪な教育。

そうした境遇を味わっていた主人公モデルが、露骨に上方修正をされることがある。

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なぜ、そんな事態になってしまうのか? というと、修正せずそのまま描くと、マイナス意見がつくリスクがあるからです。

「暗い!」
「汚い!」
「こんなもの見たくない!」
「説教くさい!」
「またか、ワンパターンだ、古臭い!」

こうした意見には、古典的名作『おしん』を想定していると思われるものもあります。

しかし、考えてみると『おしん』は1983年の作品です。

作品放映当時のことを記憶している年代を推定しますと、1975年生まれ以前であり、2020年現在、40代半ば以上になります。

もしも20年前の2000年前後に放映されていたら「『おしん』かよw 今時これかよwww」という意見がネット大手掲示板に書かれ、リアルな若者の意見として通用したことは想像できます。

けれども、繰り返しますが2020年ともなれば、本物の若年層にとって『おしん』は未知の世界です。

彼らにとってはむしろ斬新かつ新鮮で、

「炭治郎みたいに働いているかわいそうな子どもがいたんだね」

と思えると想像できませんか?

大事なことは……『おしん』以前のような作品を「古臭くてダサいw」と笑い飛ばし、クリーンアップされた作品を「おもしろければいいじゃんw」と受け止めてきた世代が、社会をより良くできたかどうか、でしょう。

先祖の苦労話を笑い話にして、なかったことにした結果、想像力不足が極まった可能性を感じてしまいます。

ヒロインが苦労する朝ドラを「見てたまるか!」と拒否する姿勢には【臭いものに蓋】をする、進歩のない歴史修正を感じるのです。

日本の歴史教育には【近現代史の教育軽視傾向】があり、他国と比較すると顕著です。

授業でもやらない。フィクションでもクリーンアップされている。このことは深刻な知識の欠如をもたらし、その弊害が大変大きくなっているのではないかと危惧してしまうのです。

一方で『鬼滅の刃』は、少年漫画でありながら吉原を舞台に戦いが繰り広げられます。

妓夫太郎と堕姫には、遊女をめぐる日本史の暗部が詰まっている。

これより以前、花魁を描いた作品を思い出してみますと……2000年代にヒットした『さくらん』があります。

花魁を描いた作品とはいえ、稀有な成功例を扱い、オシャレでカッコいい遊女の姿が描かれました。1987年の映画『吉原炎上』のような、悲惨な遊女像とは違います。

やがて花魁風メイクやドレスという言葉も生まれます。

悲惨さよりも、ほぼありえないわずかな成功例を取り上げ、歴史を修正する流れがあったのです。

まとめますと……。

1980年代には『おしん』や『吉原炎上』がヒットしたが、それが古臭いとなり変わっていく。

1990年代には『るろうに剣心』が人気に。

2000年代には『さくらん』で花魁が描かれた。

そんな歴史修正に対して逆走しているのが2010年~2020年代『鬼滅の刃』になります。

 

【ポチョムキン村】の弊害を知ろう

【ポチョムキン村】という言葉があります。

エカチェリーナ2世が行幸する際、ポチョムキンという軍人がある工作をしました。

行幸ルートに偽物の村を作り、豊かな暮らしを送る演技をする村人たちを配置し、女帝の目を欺いたのです。

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綺麗な格好をして優しい家族に囲まれている朝ドラヒロイン。

政治的文脈がない歴史漫画。

そういう作品は、いわばこうした【ポチョムキン村】です。

いくらおもしろかろうが、有害で偽りになりえます。

2010年代に猛威を振るった「日本スゴイ!」礼賛は、こうした【ポチョムキン村】に慣れ切った人々を癒し、惹きつける鉄板コンテンツなのかもしれません。

そうした【ポチョムキン村】に慣れ切った世代からすれば、我が子や本物の若者が鑑賞している『鬼滅の刃』はとんでもなく有害な作品に思えるでしょう。

しかし、時代は大きく変わったのです。

長男であることで己を鼓舞する炭治郎を見て、するべきことはセリフの変更ではありません。

「それはね、炭治郎が生きていた時代に関係があるんだよ……」

と、こうした切り口から歴史談義をすればよいだけではないでしょうか。

漫画なんてただの娯楽にすぎないwww

そう言われたら眉をひそめる方は多いと思います。なぜなら文化としての誇りを誰もが感じているから。共に生きてきたから。

それだけ身近であれば、教育のキッカケとして有用にもなりえるはず。

そういう切り口を提供し、議論のテーブルを用意する『鬼滅の刃』は、極めて知的な作品だと思うのです。

 

キメハラ、逆キメハラをから身を守る術は作中にあり

こうして考えてみると、『鬼滅の刃』論争にはなかなか深いものもあります。

ただのヒット作をめぐる動きのみならず、時代の流れとも重なる部分がある。

面倒なキメハラを回避するには?

冒頭で挙げたように、冨岡義勇的な作戦もあります。

ただし、リアルに実行すると人間関係がこじれかねないので、別の手を『鬼滅の刃』から学んでみますと……。

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◆自分を知る! 相手の状況も知る!

『鬼滅の刃』では、炭治郎が自分の受けたダメージや痛みを、心の声としてずっと実況するような点が特徴とされます。

ただのギャグというわけでもありません。

どんなに鍛えようが、100の力を発揮できなければ危険。80や40しか発揮できなければ、負けてしまうかもしれません。

それを防ぐためには、自分を分析し、ダメージや精神状態を把握することが大切です。

どれだけ自分が『鬼滅の刃』を読み込んでいるか?

大正時代のことを調べたか?

吸血鬼ジャンルのお約束をふまえているか?

そこをまず分析すると見えてくることも多いものです。

次に、相手を知ること。

今話している相手はどの程度『鬼滅の刃』を知っているのか?

原作もアニメも知らないけれど、話題作だからと映画だけ見ているとか。

子どもが見ているから、スマホを眺めながらアニメをチラ見しているだけとか。

そういう【インプット不足】の相手は、言うまでもなく誤解したうえで話している可能性が極めて高くなります。

相手の肩書きではなくそこを的確に捉え、もしも誤読や誤解をしているとわかったら?

何か別の楽しいことでも考えて、気を逸らしてストレスを回避しましょう。

◆観察する! 注意深く、思慮深く!

冨岡義勇のように、インプットを重視する。

相手の見解が何か考えすぎでこじつけのように思えたら、相手の見解を観察してみるのもひとつの手です。

自分の知識範囲や観察眼に問題がないかも再確認しましょう。

◆想像する!

「どうして炭治郎は長男だと言うのだろう?」

「どうして鬼は太陽に弱いのだろう?」

そういう疑問を感じたら、おかしいと言う前に、どうしてそうなったのかという理由を想像してみましょう。

炭治郎は鬼を倒したあと、その鬼がどんな人間であったか想像します。そのことが物語に深みをもたらしています。

こうした炭治郎の姿を見習ってみてはいかがでしょうか。

議論をふっかけてくるような相手には、何か理由があるのかもしれない。そこを想像するのです。

◆推理し、仮説を形成する!

想像するだけではなく、一歩進んで仮説を形成してみましょう。

慎重に、知識を駆使してそうするのです。

どうして相手は『鬼滅の刃』を語りたい、その話をこちらに振ってくるのか?

そこには何かがあるのかもしれません。

◆学ぶ! 成功からも、失敗からも!

漫画にせよ、アニメにせよ、ゲームにせよ。こんな風に言われてきたものです。

「そんなものをしている暇があるなら、勉強しなさい!」

こういう言葉には、作品から興味を持って勉強するのだからよいという返し方があります。

とはいえ、言い訳だけ達者で、勉強をしなければ説得力が失われるばかり。

くどいようですが、炭治郎の長男という言葉を、ただの天然ボケギャグだと思っていれば、何も得られるものはありません。

どうして炭治郎は長男であることを発奮材料にするのかな? ちょっと調べてみよう!

そうやってアニメを楽しむ子どもや周囲に促してこそ、得られることもあるのではないでしょうか。

人気作品だけに、面倒なことも増えてきた『鬼滅の刃』。

楽しみ方は人それぞれ。

論争もよし、考察もよし。

誰かに不快感を与えないことを踏まえつつ、せっかくですから和やかに楽しみたいものです。

そのためにも、全集中の呼吸をして、観察し、想像し、推理し……学んでゆきましょう。

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文:小檜山青note

【参考】
『鬼滅の刃』(→amazon
『鬼滅の刃』アニメ(→amazonプライム・ビデオ

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