武者震之助の歴史映画レビュー

『里見八犬伝』は時代劇系エンタメの祖となる作品 若干チグハグそれがいい

現代の自衛隊がタイムスリップするトンデモ映画ながら、その真髄は「人間の本質をエグるような」名作だった『戦国自衛隊(昭和版)』。

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更には同じくトンデモ設定(転生モノ)ながら、数多の歴史人物が登場して熱い世界観を醸し出している『魔界転生』。

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いずれも映画界に新風を吹き込んだ角川作品であり、歴史ジャンルでもう一つ大きく話題となったのが、今回の『里見八犬伝』でしょう。

お馴染みの薬師丸ひろ子さん、真田広之さん、千葉真一さんらが出演し、しかも原作は日本を代表する長編小説です。

「こりゃ前2作に続いて、絶対に面白いだろう!」
と、考えたくなりますが、どうにも里見八犬伝自体が映像化とは相性が悪いようで……。

角川映画の本作も、残念ながら出来がよいとは言いかねます。

ただしこの時代特有の空気を背負った一本として、見ておくのもありかもしれないと思います。

 

基本DATA info
タイトル 『里見八犬伝』
原題 Legend of the Eight Samurai
制作年 1983年
制作国 日本
舞台 日本各地
時代 室町時代後期
主な出演者 薬師丸ひろ子、真田広之、松坂慶子、千葉真一
史実再現度 史実ベースのファンタジー作品
特徴 この時代ではないと作れないような、不思議なアイドル映画

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あらすじ 八つの玉に導かれし剣士

里見家の居城が落ちた。
攻め落としたのは妖婦・玉梓とその子・素藤。
しかし、城主の一人娘・静姫の姿だけは見当たらない。

その百年前。
蟇田領主・蟇田定包は妖婦・玉梓の色香に迷い、領民を苦しめていた。
里見義実は定包を討ち取るものの、玉梓は里見に呪いをかけてしまう。

呪いのせいもあるのか、里見は別の軍勢に攻撃され、あわや落城にまで追い詰められたのであった。

その時、義実は飼い犬の八房にこう語るのである。

「もし敵将の首を持って参れば、娘の伏をやろう」

果たして八房は敵の首を持ち帰る。
戯れに語ったことが真実となってしまい驚く義実。伏せ姫は約束であるからと、八房とともに山中に向かう。

義実は伏姫捜索隊を出す。
その時、捜索隊がはなった銃弾が、八房ではなく伏姫に当たってしまった。

死に瀕した伏姫の体から、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌と刻まれた、八つの光り輝く玉が飛び散った。

「百年後、この玉に導かれし剣士が、里見の姫を奉じて呪いに打ち克つでしょう」

伏姫は息絶える。

その死から百年後。言葉通り、八つの玉に導かれ、八人の剣士が静姫のもとに集うのであった――。

※八犬伝の導入部とコンセプトは守りつつ、映画の枠におさめるため改変しております。

 

80年代の「角川映画」って凄かったんだな……

前述の通り『戦国自衛隊(昭和版)』や『魔界転生』と比べると少々落ちるというかチグハグな作品です。
主演の二人が若く、アイドル映画の一面もあるのです。

前述の二作は千葉真一さんが主役、真田広之さんが脇役でしたが、今回は逆。
健気な静姫の薬師丸ひろ子さんは本当に可愛らしいです。
お風呂をのぞかれて「キャー!」なんていう古典的な場面も。

ただ、若手がフレッシュで可愛らしい一方で、玉梓を演じる夏木マリさんがオールヌードで血の池風呂に入るようなエログロ描写が出てきます。

極端といえば、ごく普通の日本の光景が広がる場面と、玉梓はじめとする妖怪軍団のアジトの質感の差も極端です。
オーソドックスな時代劇と、ファンタジーが混ざった世界観は、敢えて比較するならば『47 RONIN』あたりに近いものがある気もします。
ただし、完成度はこちらの方が上だとは思いますが。

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BGMが洋楽ロックであったり、壁画がクリムト風であったり、今見ると冒険心も感じます。

現在ではチープな特殊メイクやセットも、制作当時としては最新鋭のもおです。
発泡スチロールがバレバレの柱なんか、今見るとご愛敬で頑張りは感じるんですよね。

 

アクション、殺陣も頑張っています

キャストは、JAC(ジャパン・アクション・クラブ)の誇るスターが登場しております。

千葉真一さんと真田広之さんは言うまでもありませんが、犬塚毛野役の志穂美悦子さんがこれまた素晴らしいです。

志穂美さんは『柳生一族の陰謀』にも女性剣士として出ていたものの、出番は少なめでした。
本作では八犬士の一人として見せ場がしっかりとあります。

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特撮や特殊メイクと殺陣を組みあわせたアクションシーンは『魔界転生』からもさらにパワーアップしています。
最初に見たときはコンセプトが若干迷走しているなあ、と感じたものですが、再鑑賞してみると、やりたいことがちゃんとできていると思えました。

正統派時代劇ではなく、ファンタジー要素も入れて、若い視聴者を意識した作品として作られたのでしょう。
妖怪チームの衣装やロック調のBGMは、今になって見返すと無双系アクションゲームにも影響を与えているようにも思えました。

今の時代劇系エンタメの祖なんですね。

こうして80年代の角川映画の時代ものを紹介してきたわけですが、今みても色褪せない魅力と、のちの作品に与えた影響がそれぞれあります。
この頃の日本映画とは凄かったのだな、とパワーを感じます。

ちなみに深作欣二監督の角川映画で「八犬伝」つながりといえば、世界観を宇宙に移した『宇宙からのメッセージ』(1978)もあります。
和製『スター・ウォーズ』を露骨に狙った作品で、これまた味がありますが流石に趣旨から外れているのでここでは紹介しません。

なかなか面白い作品ですので、本作とあわせて見るのも一興かと思います。

著:武者震之助

【参考】
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