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アラビアのロレンスの刀や衣装の国外流出、英国政府が実力行使で阻止

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何によらず、報道のフォローは重要です。そんな訳で、昨年武将ジャパンで取りあげた「アラビアのロレンスが使ったアラブ刀がオークションに」の記事の「その後」を紹介させて下さい。ちーとばかり、シャレにならない展開になっています。と言うのも、英国政府が「英国の歴史的英雄だし、国外に流出するのは良くない」と実力で阻止行動に出て、物議を醸しているのです。

それでなくても、シリア難民の流入を巡り揉めている英国で、新たな火種になりかねない? イスラエルのエルサレム・ポスト紙が心配しながら報じています(2016年2月7日付け)。

 

「アラブ刀と衣装は、ロレンスの象徴だしさ」と文化相

今更ではありますが、ロレンスと言えば「20世紀で最も傑出した人物の1人」(エルサレム・ポスト紙)というのが歴史的な位置付け。その悲劇的な最後もあって、日本をはじめとして世界各地にファンが多い人でもあります。

そんなロレンスの象徴となるのがアラブ刀と白の絹と木綿で出来た衣装(ローブ)であるのは言うまでもありません。「これらはロレンスの揺るぎないイメージの鍵となる部分であり、絶対的な象徴である」と、英国のエド・バイジェイ文化相は同国のデイリー・テレグラフ紙のインタビューに答えています。

まぁここまでは、映画を観た方などからすれば、妥当と言うか、当然の見識ではあります。ややこしいのは「英国の国としてのアイデンティティの意識に触れる」との話にまでエスカレートして、騒動となっているところでしょう。

イスラエルの外交官(元ヨルダン大使)で、ロレンスに詳しいヤコブ・ローゼン氏は、ポスト紙の取材に対し「ロレンスは英国のシンボルになってしまったからね」と答えています。「多くの英国の男性は、ロレンスと彼に関わるものにロマンチックな思いと親近感を抱いているんだよ」

そんなロレンスのアラブ刀とローブが外国人の手に落札されてしまうと「英国が買い取るかも」に傾いていく流れになるだろうとされています。

 

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落札価格は19万5790ドル ところが英国外に持ち出せず

となると気になるのが、その行方。と言うか、そもそも幾らなのか?
扱っているのはクリスティーズ(前回の記事はサザビーズと書きましたがどうやら変更になったようです)ですが、提示価格は19万5790ドル。昨年、民間の外国人バイヤーが、この価格を受け入れて落札しています。ところが、持ち出しは出来ないまま。英国政府が一時的に持ち出しを禁止する措置を講じたからです。

英国には文化財の輸出政策を監督するアーツ・カウンシルという公的組織があります。議長を務めるサー・ヘイデン・フィリップス氏は、テレグラフ紙の取材に対し「アラブ刀はシェリフ・ナシールからロレンスにプレゼントされた。ロレンスのリーダーシップを称え、敬意を表したからだ。ローブと刀は、ロレンスの肖像や彫像や写真でも必ず登場しており、彼の生涯と英国の歴史に不可欠な部分となっている」と答えています。

こうした発言などに対し、ローゼン氏は「ロレンスを巡っては色んな方々が御飯の種になっているからね」と、やや呆れ気味です。

 

で、 これとは別に気になる話が持ち上がっています。近年の研究で、ロレンスには今までとは違う側面があるとの指摘が出ているのです。

映画「アラビアのロレンス」でも描かれているように、これまでロレンスはオスマン・トルコの圧政に苦しみ、国を持たないアラブ人に同情し、闘ったというイメージがあるのは皆様も御存知でしょうが、2010年に出版された、マイケル・コーダ氏による「アラビアのロレンスの伝説と生涯」という著書によれば、実はロレンスはシオニズム運動も支援していたというのです。

この方は南北戦争の南軍の大将を務めたロバート・リーの生涯や、バトル・オブ・ブリテンに関する著作があるなど、歴史について明るい方です。こうした認識があるからこそ、エルサレム・ポスト紙も取りあげているのですね。

 

ややこしいのは、ロレンスが親アラブな姿勢をポーズとして取っていたのでは無さそうと言う事。今日のようなアラブ世界とイスラエルが対立するようになったの は第二次世界大戦後の話でして、ロレンスが生きていた頃は、親アラブな人が親シオニズムであっても、別段おかしくはなかったのですって。「国が無い気の毒な境遇なのは、お互い様じゃないか」という訳です。ロレンスの活動はシオニストの移民を促すと考える当時のユダヤ人がいたそうです。
実 際、ロレンスは1909年(つまり第一次世界大戦の勃発前)に「早くユダヤ人が入植する方が良い。彼らの入植地は砂漠で明るいスポットとなっているから」 と、現在のイスラエルにユダヤ人が移り住む事に理解を示す発言をしていますし、オスマン・トルコが倒れた後の1918年にはユダヤ人の移民促進を支援していたのだそうです。

となると、これらの衣装や刀にはアラブ系だけでなく、ユダヤ系の人も関心を示していたかもしれませんね。なお、現時点で落札者の名前は公表されていません。そうした憶測に拍車をかけている感じでしょうか。

なお、上記のアーツ・カウンシルですが、国際交流基金のHPによると、今の保守党政権の下で予算が大幅に削減されたままだそうで、無い袖が振れるかどうかって感じで、買い戻しは難しそう。この問題は長丁場になりそうですね。天国のロレンスも苦笑いしているかも?

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