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「頭隠して尻隠さず」に隠された癒やしのライフスタイルとは【中国のビックリ名言】

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小さい頃に、かくれんぼ遊びで「頭隠して、尻隠さず」と言われ、恥をかいた記憶があります。この諺(ことわざ)は「雉の草隠れ」とも言いますが、原典はやはり中国の諺です。

「蔵頭露尾(頭を蔵して尾を露わす)」。出典は『帰潜志』です。
原典の『帰潜志』の撰者は、金という国の学者・医者であった劉祁(りゅうき)という人です。
金は、北宋を滅ぼし中国の北半分を支配した女真族の王朝で、後に元朝(モンゴル帝国)に滅ぼされました。

こんなお話がベースです。
普段、ハレ(公)の場では「純粋な儒道者」であることを志す若い青年官僚がいました。しかし、家庭内など「ケ」の場では、反動で「道教思想」的(仙人風)に振る舞っていました。

ある時、ちょっとしたつまらないキッカケからそのことが職場の同僚にばれてしまい、普段の謹厳実直ぶりと自宅での遁世ぶりとの落差から鳥のキジが頭を隠しているのに尻尾が見えている(蔵頭露尾)と同じだとからかわれてしまいます。
彼の赤くなった顔が思い浮かぶようです。

道教的とはどういう行動でしょうか。現代の中国人で考えてみましょう。

一人では「龍」と称される中国人も、社会の荒波に揉まれ、組織の中では実力を発揮できずに埋没の憂き目に晒される場面も多くなります。
そうすると、本来「龍」であったものも、昼間の仕事に対する疲労感や小さな失態を胸に帰宅し、夜の都会の寂しい一室で、隠遁者のような孤高の時間でも持ち合わせない限り、精神の均衡を保てないことになります。
私は中国各地を歩いてみて、土地の広さや人の多さも実感しますが、それにもかかわらず人々が隠れるような場所は意外に見当たらないようにも感じています。現代の社会では、パソコン画面が遁世の場です。世を儚(はかな)む世捨て人のようなセリフが自然にあふれ出します。

俺のせいにばかりしたがる上司
俺のやりたい仕事でもない不条理な仕事
押し付けられてばかりで俺の立つ瀬はない
この組織や社会はどこか間違っている

かろうじて「蟻族」(大学卒業生の低収入者層)になるのは逃れたものの、薄給には違いなく、どこかやるせない思いを募らせる若い人たち。

中国には、2000年代以降現在まで、大学という最高学府は出たけれど、給料の安定した就職の口のない高学歴の
就職予備軍が毎年20-30万人程度はいるといわれています。

現代の中国人の心も、儒教と道教が二つながらに存在して、精神的安定を上手く保っているのです。

かつて、邱永漢氏は孔子と老子の関係を、同じ米から発した白飯と酒の関係だと述べました。
つまり「この二人の考え方は一見、裏腹に見えるが、実はお互いに関係があって、物にたとえれば、孔子が米の飯で、老子は飯から変じた酒のようなものである。われわれは米の飯なしに生きていけないけれども、米には米の苦さがあるから、酒への誘惑は相当に強い。」(『東洋の思想家』)

こうした儒教的な生真面目な態度と道教的な遁世・厭世的な振る舞いが同居する、つまり「儒道」兼ね備えながら生きている現代の中国人に、私は同感の意を禁じ得ません。

 

 

この諺は、宋代の詩人孔平仲の詩の一節で「人を畏(おそ)れるは自ら蔵頭の雉に比し/世を避けるは今蛹(さなぎ)となる蚕(かいこ)と同じ」と続く、情緒のある詩句を下敷きにしているのだそうです。
こうしたオマージュ的な言い回しを「典故」といいます。実は、なかなかに奥深い諺なのです。

「典故」を辞書で引くと「よりどころとなる故事。典例や故実」となっています。
中国の魏晋(三国志の時代)・南北朝時代には、典故を知り尽くし、自由自在に応用できるのが、当時の教養のある文人や官僚のたしなみでもありました。典故を用いて、二、三文字の字句を配しておくだけで詩歌の幅が広がります。
また、豊穣な古典からの文脈を示唆したり、引用できますから、簡潔な詩句にも含蓄を持たせることができます。
ただし、こりすぎるきらいがあり、詩歌自体が難解なものになっていきます。
こうした風習は、日本の詩歌にも取り入れられて、和歌や短歌に盛んに使用されました。一見、素朴なものが、じつは教養を試すものだったり、ということがあります。




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