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週刊武春 WWⅡ

もう一つの日米戦~アメリカに引けを取らなかった日本の宣伝力

更新日:

 

誤訳だったそうですが、安倍総理が、日中関係は100年前に勃発した第一次世界大戦のドイツとイギリスの状況と似ていると述べたと報じられて、世界では「すわ開戦?」のように驚かれたそうです、こわいですね。かように国際関係での情報というのは凄まじいものであります。まして戦争が実際に始まったら…。

日米の宣伝合戦の実態

戦争は、兵隊が砲弾を撃ち合うだけではありません。
相手国の国民の戦意を喪失させるための様々な手段が講じられます。

宣伝もその重要な手段で、テレビや新聞が外資に買収されることに、その国の政府が神経質になるのも理由のないことではありません。

1941年に始まる日米戦争(太平洋戦争)でも、両国間で、ビラやラジオ放送を使ったすさまじい宣伝戦が繰り広げられたのでした。

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ビラで圧倒したアメリカ

アメリカが、対日宣伝の手段として利用した中で、最も効果を上げたのは、伝単(ビラ)による宣伝だったと言われています。
担当したのは、戦時情報局(OWI:Office of War Information)で、アメリカ在住の日系人新聞記者や漫画家をかなり動員した情報戦を仕掛けたのです。

伝単の目的は、前線の日本軍将兵の戦意を喪失させたり、国民の厭戦気分や恐怖心を煽ったりするためのもので、様々な心理描写を駆使した伝単を多数撒布しました。
例えば、アメリカの物量が日本と比較して如何に巨大なものであるか、また、今次の戦争が将兵にとって如何に無意味なものかを、カラー刷り、写真付きで簡明に訴えるものが多く、将兵も民衆も、共に大本営発表よりも米軍のもたらすビラの内容を信用するようになっていったようです。

政府や軍も、この事態を深刻なものと認識しており、ビラを拾った将兵や民衆に対してこれを提出させ、隠し持った者に対する制裁を加えたりすることも日常的に行われていました。

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日本語の音声は今ひとつだった

一方、ラジオ放送や、戦場での拡声器による宣伝は、OWIが考えていたほどには効果を上げていません。
一つには、日本軍の装備品や一般家庭におけるラジオの普及率の問題があるのかも知れませんが、もう一つは、日本語の持つ微妙な意味あいを指摘する向きもあります。

例えば、サイパン島で、アメリカ軍が日本軍将兵に対して拡声器で降伏を呼びかけたケース。

「あなた方にも、家族がいるでしょう。彼らはあなた方の無事の帰国を待ち望んでいるのです」

と、ここまでは良い。この拡声器での降伏勧告を耳にした日本兵は、誰しも、アメリカ軍への投降を決意したと言います。しかし、これに続く一言が、彼らの決意を雲散霧消させます。

その一言とは、

「死んで花実は咲きません」

確かにその通りなのですが、死んで花実が咲くか咲かないかは、死ぬ側の判断であって、他人に言われる筋合いはない。
結局、この降伏勧告は空振りに終わり、サイパン島の日本軍守備隊の残存勢力は、日本降伏後の1945年12月まで、アメリカ軍を悩ますことになります。この辺りの経過は、竹野内豊主演の映画「太平洋の奇跡~FOXと呼ばれた男」でも描かれました。

ラジオでは、NHKが”圧勝”

一方で、日本側の宣伝は、専らラジオが大活躍します。

立案したのは、謀略担当の日本陸軍参謀本部第2部第8課

カリフォルニア生まれの日系二世、戸栗郁子(Iva Toguri D'Aquino)をパーソナリティーに据え、捕虜になった連合軍将兵のうちマスコミ経験のある者を集めて、ラジオ東京(戦後は、日本放送協会<NHK>)が、短波放送で太平洋のアメリカ軍将兵に向けて発信した「ゼロ・アワー」が大人気。戸栗は「東京ローズ」と呼ばれ、そのハスキーで甘い声は、前線のアメリカ軍将兵の郷愁を呼び起こし呼びかけを繰り返し、彼らの戦意を相当挫いたのでした。

戸栗氏(Wikipediaより)

巣鴨プリズンに収監された際の戸栗氏(Wikipediaより)

日本の敗戦後、戸栗はアメリカに戻り、1949年、国家反逆罪で収監されますが、1977年に名誉回復、2006年に亡くなるまで、アメリカで平穏な生活を続けたのでした。

この宣伝戦に協力した者の中で、有罪判決を受けて実際に刑に服したのは戸栗のみですが、この事実は、戸栗が如何にアメリカ軍にとっての脅威だったかを如実に示していると言えましょう。

この宣伝戦は、日本とアメリカとが戦ったもう一つの戦争でした。

そして、戦闘行為での一方的で悲惨なものとなった現実とは違い、双方が知恵と工夫を凝らして、互角の戦いを繰り広げたのでした。

これに加えて、日本人にはビラに書かれた文章が、一方、アメリカ人には耳から入る音声が、それぞれ宣伝効果を及ぼしたという点に、それぞれの国民性を感じます。

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