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週刊武春 歴史漫画ウソホント

「進撃の巨人」を「古事記」で分析【歴史マンガウソホントVol.10】

更新日:

 

一大ブームを巻き起こし、未だに進撃の止むところを知らない『進撃の巨人』。

先の全く見えないストーリーや、明らかにされていない謎、更に浮かび上がってくる新たなミステリーに引き込まれている人も少なくないだろう。
巷では『進撃の巨人』研究本などが数多く出版されるなど、読者それぞれが作品について様々な考えを巡らし、熱く語り合ってもいる。

そのことを踏まえ、ここでは『進撃の巨人』を『古事記』という観点から考察していきたい。

「なぜ日本神話なのか?」

作品の舞台が日本ではないため、疑問に思う読者もおられるだろうが、『進撃の巨人』は日本神話の観点で見ていくと、意外な共通点と巡り会えるのだ。
現在発売されている第13巻までを対象として話を進めていこう。

 

 

 

母との死別により生まれ変わったスサノヲ

進撃の巨人(1) (講談社コミックス)

『進撃の巨人』の主人公・エレンは、巨人を一匹残らず駆逐するという目標を持って調査兵団に所属し、今では巨人化能力を使いながら戦っている。
しかしエレンは最初からそのような目標や能力を持っていたわけではない。幼い頃は正義感が人よりも強いという程度で、それ以外のことは自分のことを何も知らない少年だった。

そんなエレンの人生を大きく変えたのが、母親「カルラの死」である。まだ幼いエレン達の目の前で生きたまま彼女が巨人に食べられたシーンは、読者にとっても、極めて衝撃的なシーンであっただろう。
この出来事をきっかけにエレンの中には巨人に対する強い怒りが生まれ、その思いが調査兵団へと導く。もしあの時カルラが助かっていれば、ひょっとしたらエレンは普通の少年のままだったかもしれない。

エレンが能力に覚醒したのは巨人の腹の中である。母親の最期の光景を思い出し、巨人を駆逐することを強く願った瞬間、自覚のないまま急変を遂げた。

そんなエレンと同じく、母親の死によって己の未来を大きく変えたのが、日本神話に登場するスサノヲである。
スサノヲはアマテラス・ツクヨミと共に、黄泉の国から葦原の中つ国に帰ってきたイザナキが顔を洗った時に生まれた兄弟神である。
この時にアマテラスは高天原を、ツクヨミは夜の国を、スサノヲは海原の統治をイザナキから任せられる。が、スサノヲは統治もせずに「母親がいる根の堅州国(=黄泉の国)に行きたい」と泣いてばかりいた。

その泣き声は山の緑を枯らし、海や川の水を干からびさせてしまうほど。ために、痺れを切らしたイザナキはスサノヲを葦原の中つ国から追放してしまう。
一度はアマテラスのいる高天原に身を寄せていたものの、その場も追われ、出雲に降り立ったスサノヲはヤマタノオロチを倒し、クシナダヒメと夫婦となる。
そこには母を思って泣いていたかつての姿はなく、立派に覚醒した英雄が立っていた。

イラスト・なだ

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ミカサの赤いマフラーは立ち向かう女性の象徴か

エレンのそばにいるのが、ミカサである。
幼い頃に両親を殺され、自身も人攫いに遭ったところをエレンに助けられ、以来、家族同然に過ごしてきた。
彼女の特徴は、なんといっても男性に引けを取らない優れた格闘センスであろう。教官や上官のお墨付きであり、巨人の討伐数はエレンを超え、いつも恐れることなく敵に立ち向かっていく。

時にはすぐに熱くなりがちなエレンを諌める役を担うこともあるが、ミカサ自身もまたエレンのことになると周囲が見えなくなり、作戦行動中にも関わらず、エレンの元に駆けつけようとして上官に注意される場面もあった。
いったい彼女はエレンのことをドコまで好きなのだろうか。いや、そんな単純な感情ではないのだろうか。この辺の関係はいつも読み手を惑わせるが、ミカサにとってはあくまでも「家族」のようで、恋人と言われた際には照れながらも「家族」だと返していた。
 

そんなミカサの特徴が、常に巻いている赤いマフラーである。幼い頃、エレンに助けられたときにもらったもので、以来、彼女はずっと巻いている。
もはやマフラーはミカサのアイデンティティーの一部となっており、巨人に立ち向かっていく際にも、その首元にはいつも赤いマフラーが。

この「赤」という色は、女性のシンボルカラーとされており、巨人に立ち向かっていく彼女の姿は、「弟が国を奪いに来た」と思いスサノヲを迎え撃つために男装し、その手に弓矢を構えたアマテラスの姿に重なるものがある。

 

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先を読むツクヨミは地味ながらも欠かせない存在


エレンとミカサをサポートし、優れた頭脳をもって、危機的状況を打破するのが幼なじみのアルミンである。アルミンの立てる作戦は周囲のエルヴィン達も認めるほどで、実際に作戦を決行し、成果も挙げている。
先に述べたスサノヲ・アマテラスに対し、ツクヨミ(=アルミン)はあまり派手な立ち位置ではない。神話の中でも、その記述は非常に稀だ。が、決して小さな存在ではない。

ツクヨミは、イザナキから夜の世界を治めるように言われた夜の神である他に、農耕・海・占いの神とも言われている。なぜ農耕などと関係しているのか不思議に思うかもしれないが、これには「ツクヨミ」という名前が深く関係している。ツクヨミの「ヨミ」という言葉には「月の満ち欠けを数える」という意味があり、暦を読むことに深く関係しているのだ。
古代の人々は、太陽と月の動きから四季の巡りを感じ、種を蒔く時期や収穫の時期などを知り、農耕に活かしていた。同時に「月を読むこと」は吉凶を占うことにも通じていた。当時は月を観測して農耕について専門に占う者も存在していたという。このため農耕にとって、月は切っても切れない関係であり、ツクヨミが農耕の・占いの神と言われる所以にもなっている。

また、ツクヨミが海の神とも言われるのは、潮の満ち引きが月の引力と深く関係していることから、海の支配神として海人達から信仰されていた歴史があるため。さらには古くから月の満ち欠けは死と再生と結び付けて考えられることが多く、「月」と「水」も同じく深い結び付きがあったことがうかがえる。
アルミンは、その場の状況を把握し、それに応じた作戦を立てることで状況を打破し、目標を達成させるといった活躍を見せる。先を読み、皆の生死、つまり未来を左右するその姿は、占いも司るツクヨミの姿を彷彿とさせる。

 

英雄は畏怖される そして生まれ変わる

エレンは巨人を一匹残らず駆逐するため、自ら志願して調査兵団に入団。その後、巨人化能力に目覚めた。エレンは、巨人を倒すために結成された調査兵団に所属しながら、自らも手を噛むことで巨人となって戦う、相反する二面性を持ち合わせている。なぜエレンに巨人化能力があるのか。それは同作品最大の謎だが、エレンの父親であるグリシャが深く関わっていることは間違いないなさそうだ。
こうした「二面性」は多くの英雄(ヒーロー)達に見ることが出来る。巨人化するエレンが人々から恐れられ、武器を向けられていたように、英雄が持つ力は時に畏怖の対象となり、その姿は日本神話ではオオクニヌシと重なる部分が多い。

エレンは一度巨人に食べられることにより、自分でも気付かなかった巨人化能力を発動させたが、オオクニヌシもまた、国を治め、長となるまでのプロセスで似たような経験をしている。

オオクニヌシはスサノヲの六世目、または七世目の孫と言われている。『因幡の白うさぎ』伝説では、鮫に皮を剥かれて痛みに苦しむ白うさぎに、わざと傷が酷くなるアドバイスをした兄弟の八十神達とは違い、きちんとした忠告を送る心優しい青年であった。しかし、オオクニヌシは、そんな八十神達の手によって、二度も殺されてしまう。なぜか。動機は単純、嫉妬である。

オオクニヌシに助けられた白うさぎは「ヤガミヒメと結婚するのはオオクニヌシである」と予言し、実際、八十神達に求婚されたヤガミヒメは「結婚するなら、オオクニヌシがいい」と八十神達をふってしまうのだ。痛みに苦しんでいる白うさぎに嘘の治療法を教えた八十神達の意地の悪さを思えば、ヤガミヒメの選択は正しい。

しかし、己のしたことを棚に上げた八十神達の理不尽な怒りの矛先は、ヤガミヒメに選ばれたオオクニヌシに向かい、その結果、二度も殺された。この二度の「死」はエレンがそうであったように、新たな能力の覚醒、そして新たなる自分の誕生でもあった。

(イラスト・なだ)

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「二度も殺されている」とは、つまり殺されただけでなく再び甦っていることも意味する。

では、オオクニヌシは、いかにして八十神達に殺されたか。

一度目は、八十神達が追い落とした赤い猪を捕まえるように言われ、いざ待ち構えていたところに真っ赤な焼け石を落とされて下敷きとなったときで、二度目は大木の割れ目に押し込められたとき。何ともグロテスクな殺害方法だが、逆に言えば、それだけ嫉妬心が酷かったのだろう。

しかし八十神達にとって予想外だったのは、オオクニヌシが復活したことである。
彼の母親であるサシクニワカヒメの頼みが高天原の神達に通じ、復活を果たしたのだ。その際、オオクニヌシは少年から青年へと華麗なる成長を遂げ、「死」を経験したことで新たな自分へ生まれ変わった。

更に、その復活を助けたのは赤貝の神であるキサガヒヒメと、蛤の神であるウムカヒヒメという女神達であり、ここでも「赤」「海」とのつながりを見ることが出来る。先にも述べたように「赤」が女性のシンボルであり、「海」が古くから命のはじまりの場所であると考えられていたことから、この一件は「復活」よりも「誕生」といった意味合いの方が強いのではなかろうか。

同じようにエレンも一度は巨人に食べられるも、直後に巨人化能力を覚醒させ、腹を突き破って再び出てきた。少々強引に言わせてもらえば「腹から(巨人化能力を得た)新たなエレンが生まれてくる」という「誕生」や、一種の「出産」に似たものと考えることが出来る。

 

進撃の巨人(3) (講談社コミックス)

一見すると全く共通点のない2つの作品であり、こじつけと言われればそれまでかもしれない。が、こうしたアプローチもまたマンガの楽しみ方の一つであり、読者冥利に尽きる嗜みではなかろうか。本作についてはまだまだ謎が多く、現時点では内容も限られてしまっている。今後の展開が待ち遠しい。

 

葉月美都・記 
参考文献

『進撃の巨人 ①~⑬』諌山創 講談社
『古事記(上)全訳注』次田真幸 講談社学術文庫
『とんでもなく面白い古事記』斉藤英喜監修 PHP文庫
『面白いほどよくわかる古事記』吉田敦彦監修 島崎晋著 日本文芸社
『眠れないほど面白い『古事記』』由良弥生 王様文庫
『姫神の本 聖なるヒメと巫女の霊力』学研

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武将ジャパンでは2013年7月のサイト誕生から1周年を迎え、新シリーズ「歴史マンガウソホント」を開始しました。歴史も好きだけどマンガも好きという当サイトの執筆陣が総力を結集したこの企画は、同時並行で書籍化が計画されています。

数々の歴史マンガを題材に、歴史的にどうなのかという時代考証を加える本邦初の試みです。テレビや映画などの歴史ドラマでは時代考証学会という動きがありますが、マンガにスポットを当てた動きはありません。大好きな歴史マンガが、史実をベースにすることで、より面白く、さらにマンガ家(原作者含む)の技量がアップすることを読者の立場から期待しています。

書籍は「そうだったのか!人気『歴史・戦国マンガ』100の真相」で2014年8月11日発売しました。

8月11日発売の新刊表紙です!

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