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寒冷化と大飢饉がうんだ女王「卑弥呼」~弥生時代のピークは邪馬台国にあらず

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弥生時代といえば「邪馬台国」「卑弥呼」を思い浮かべるだろう。
倭(日本)の初めての統一的な女王となった卑弥呼の邪馬台国時代は、弥生社会のピークと考えている人も多いのではないか。

しかし、社会の豊かさと、政治的な統一・造られた構造物の大きさは必ずしも一致しない。
衣食住が事足りていれば、政治の役割は小さくなるし、社会は安定しているので、わざわざ苦労して、権威のために象徴的な巨大構造物を作る必要もないからだ。例えば、江戸時代には社会が安定したので権威のために城の「効果」は低くなり、将軍家のお膝元である江戸城天守ですら火災で消失したあと「お金がもったいないから」と再建されなかった。

では、卑弥呼という存在を生んだのはどんな要素だったのか。

卑弥呼の墓とも言われる箸墓古墳

『考古学ジャーナル』2017年4月号で、市原市埋蔵文化財調査センターの小橋健司さんが「気候変動と『倭人大飢』」というレポートを載せている。
近年行われている、世界規模の数々の気候変動を示すデータとともに、考古学で見つかった全国の弥生時代~古墳時代の遺跡数や住居の総面積などから、社会の盛衰を描いている。

そこでは、

弥生時代中期後葉(紀元前2世紀~紀元1世紀)の温暖化で、弥生社会が豊かになり、

一転、中期末から後期初頭(紀元1~紀元2世紀)に寒冷化することが示されている。

文献にある朝鮮半島の新羅本紀の西暦193年にある「倭人大飢 来求食者千余人」との記載を裏付ける可能性のあるデータだと筆者は指摘する。

邪馬台国の卑弥呼は西暦175年頃に生まれ、247年か248年頃に死んだとされている。倭の女王卑弥呼の時期に、寒冷化により日本列島で大飢饉が起きていたことを示唆する。

卑弥呼が(奈良の箸墓かどうかはともかく)巨大な墓を造ったように、弥生時代の後期に各地の「王」たちの墓が大きくなっていく。
その理由は個人に権威が集中したためだが、昔の教科書にのっていたような「稲作で社会が豊かになり、富裕層と貧困層がうまれ、支配者層ばかりに富が集まった結果」というマルクス主義的な史観とは全く逆の現象が起きていたことになる。寒冷化のため、これまでの「平等でみんな豊かな社会」では乗り切れなくなったから、カリスマ的なリーダーに荒波を乗り越えることを委ねたのだ。

実際、九州の北部や吉備(岡山県)といった古墳時代以降も中枢となった地域は、この寒冷化によって遺跡数は減少しながらも竪穴住居の数自体は減らないことがわかったと、筆者は指摘している。
これは、村が分散していてもそれぞれ人口が維持できていたのが、寒冷化によって人手不足(稲作にとって致命的だ)となり、その地域の一か所へ集住して、人口を維持したと考えられる。違う村同士で集まってくれば当然いさかいもある。そのため社会をまとめるリーダーと、その権威が必要となるのは言うまでもない。

邪馬台国が九州にあろうと、奈良にあろうと、ヤマト王権へとつながり、今の「日本」のおおきな枠組みを作った。その背景には、弥生人の暮らしをどん底に落とした地球規模の寒冷化があったのだ。
恵美嘉紀(歴史作家)・文




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