週刊武春 幕末・維新 西郷どん特集

幕末の侠客はエクスペンダブルズ?伊藤春奈著『幕末ハードボイルド』に学ぶ

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歴史と意識の中から消えてゆく存在に

本書の優れた点は、アウトローという影となった部分を描くことで、明治維新というドラマがいかに「漂白化されているかを浮き彫りにした」点だと思います。

利用されるだけ利用されて使い捨てにされたように見える諸隊の隊士たち。
本来は死体を発生させるような状況を作った側がやるはずである「死体埋葬」という汚れ仕事を行うアウトローたち。

彼らを使い捨て、汚れ仕事を押しつけたからこそ、漂白された歴史の勝者。
そういう一面があることを教えてくれるのです。

そしてもうひとつ。
私たちの意識からアウトローが消えつつあるということです。

国定忠治、清水の次郎長、黒駒の勝蔵といった、江戸時代のアウトローを主役とした物語は、時代劇全体の衰退とともに大衆演芸、映画、テレビから姿を消しました。

清水次郎長/wikipediaより引用

幕末は大河ドラマはじめ、様々なコンテンツで扱われる時代であるにも関わらず、彼らは登場しません。
登場したとしても『八重の桜』(2103年)で松方弘樹さんが演じた大垣屋清八のように、「京都商人の顔役」といった役割にされてしまいます。
現代のフィクション作品では、彼らも漂白化されてしまうのです。

かくして維新の歴史の中に埋没したアウトローたちは、記憶の中からも消えていこうとしている――。
それを痛感させてくれる興味深い一冊が本書なのです。

文:小檜山青

【参考文献】

幕末ハードボイルド: 明治維新を支えた志士たちとアウトロー』(→amazon link

 



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