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まり先生の歴史診察室 ゴールデンカムイ特集 明治・大正・昭和時代

文豪・森鴎外 陸軍医のトップになるも「脚気」対策で大失敗!

更新日:

こんにちは、元文学少女の馬ちゃん先生です。

今回取り上げるのは『舞姫』などの文学作品で知られる森鴎外です。小説家として有名ですが、本業は軍医。東京帝国大学を出て、陸軍軍医のトップにまで登りつめたエリートさんだったんですね。

そんな御仁を診察とは恐れ多いですが、彼にも失敗はあり、特に『脚気対策』については致命的なミスをやらかしてしまいました。

まずは『舞姫』あたりからメスを入れていきましょう♪

森鴎外/国立国会図書館蔵

 

妊娠した彼女がメンタルを病んでもバイナラ~

まずは森鴎外の代表作、舞姫のあらすじをざっくりと説明いたします。

秀才官僚の主人公はドイツに国費留学。なんやかんやで現地の踊り子と良い仲になります。ここで出世街道からドロップアウトと思いきや、友人が日本に戻って出世できる話を持ってきます。すると、出世のために彼女を捨てると主人公は友人に語ります。

しかーし、その時に彼女の妊娠が発覚。出世と彼女への情に挟まれて『俺どうしよう』と優柔不断の極みな態度をとり、主人公は雨にうたれて数週間寝込みます。

その間に友人が、主人公が帰国しようとしている旨を暴露し、彼女はメンタルを病んでしまいます。そんな彼女を見た主人公は『子供産まれたらよろしく~』と彼女の母に手切れ金を渡し、日本に帰国。【友人は良いやつだけど彼女のメンタル病んだのはアイツのせいだよ、恨めしい】と人のせいにしてお終い。

舞姫は森鴎外が陸軍省派遣留学生としてドイツに留学した経験を元に書かれた話ですが、この『ドイツ』というのが今回のミソです。

 

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脚気による心不全は時に致命的なり

ここから『脚気』の話にうつります。

脚気はビタミンB1不足により起こる病気です。ビタミンB1は糖や脂肪酸の代謝に関わる物質で、不足すると脚気だけでなく神経炎にもなります。

脚気の症状は神経障害と心不全。膝の下を叩いて足が跳ねるか見る検査(膝蓋腱反射)がありますが、これは末梢神経障害の有無を見ています。

そしてこの病気は、時に致命的な心不全を引き起こします。

 

美味な上に「薪が節約」できるため「江戸患い」爆発

脚気は、欧米には殆どない病気です。ビタミンB1は小麦や大麦、豚肉などに多く含まれており、洋食は不足しにくいからです。日本でも玄米が主流だった時代は皇族や貴族に限られた病気でした。

しかし江戸時代に入り、精米された白米を食べる風習が武士に、そして庶民へ広がると患者は激増します。白米を食べる風習が広がったのは味が良いこともありますが、玄米よりも早く炊けることから蒔が節約でき、都会生活にマッチした形態だったこともあります。

そのため地方よりも食料事情の良い江戸で広まったことから『江戸患い』と呼ばれました。ちなみに13代将軍家定の死因は脚気といわれています。

 

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お腹いっぱい食べたい人は軍隊へ( ´ ▽ ` )ノ

さて時は下って明治時代、欧米の列強に追いつくべく日本も軍隊の整備に力を入れます。

明治6年に交付された徴兵令の目玉は『1日6合のご飯が食べれるよ!!』でした。…もろ食べ物で釣ってますね! しかし、この白米6合大作戦が裏目に出て軍隊では脚気が大流行します。

なぜか? 少々長くなりますが、当時の軍制からお話したいと思います。

そもそも明治時代の軍隊は、『陸軍はフランス、後にドイツ』を範とし、『海軍はイギリス』を模範としました。森鴎外がドイツに留学したのは陸軍所属だったから。その頃のドイツは結核菌やコレラ菌を発見したコッホが活躍しており、医学分野においてはアメリカやフランス、イギリスといった国々を圧倒していたのです。

『ドイツの医学は世界一いいぃぃぃ!』というわけですね。

実際、森鴎外もドイツ留学中コッホに会い、細菌の入門講座を経て彼の衛生学研究所に入りました。

軍装の森鴎外/国立国会図書館蔵

 

英から帰国の軍医が効果的な予防策を考えたが…

さて、鴎外がドイツに留学する少し前にあたる明治13年、イギリスからは1人の男が帰国しておりました。

高木兼寛です。

戊辰戦争にも薩摩藩の軍医として従軍した彼は維新後海軍に入りイギリスに留学。実臨床を主体に学んだ彼は、軍艦によって脚気の発生率に差があるところに目をつけ、『食べ物の違い』で脚気の発生率に差がつくと考えました。

ここから高木は『タンパク質不足が脚気の原因』であり、食事を洋食化すれば脚気が予防できると考えました。実はタンパク質ではなくビタミンB1だったのですが、彼が推奨した『米より高タンパクの麦飯』は『白米よりビタミンB1が豊富な麦飯』だったため、海軍での脚気患者は激減します。

 

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陸軍は日清・日露戦争で多大な犠牲者を出してしまう

海軍が白飯+麦飯の食事改革に取り組む一方で、陸軍は否定的でした。

模範とするドイツが『脚気細菌説』だったことをはじめ様々な要因があったと思いますが、現場のお偉いさん(石黒忠悳)が『白飯最高!ご飯があれば大丈夫!』であったため、白飯6合を基軸とする日本食を採用したのです。

そして麦飯反対派には、森鴎外も含まれておりました。

鴎外はドイツでコッホに師事しており『ドイツ医学が正しい、脚気は細菌が原因』と思っていたでしょうし、留学の後ろ盾となった人物が『日本食は栄養バランスばっちり!』という考えだったのですから、洋食、麦飯が脚気を改善するという事象が受け入れられなかったのだと思います。

その結果、陸軍は日清戦争、日露戦争で脚気による多大な数の犠牲者を出す結果となりました。

東郷平八郎(戦艦三笠の艦上にて)/wikipediaより引用

 

陸軍が公に認めたのは鴎外の死から2年後のことだった

その後の明治43年、鈴木梅太郎が米糠の中に脚気に効く成分(後にオリザニンと命名)があることを発見しました。

これで病気の原因は栄養素(ビタミンB1)の不足ということが解明されますが、陸軍で公的に認められたのは、鴎外の死後から2年の大正13年。

生涯にわたり脚気栄養不足説を否定していた鴎外も、ひょっとしたらどこかで真実に気づき、『舞姫の主人公のようにメンツと情の板挟み』になっていたのかもしれません。

全然関係ないですが、馬ちゃん先生はメガネとスーツと忍者が大好きです。この3つがあればオカズなしで、毎日、ごはん3杯はイケちゃいます。

ビタミンB1不足での脚気上等です!

まり先生の歴史診察室森鴎外

イラスト・文/馬渕まり

参考

森鴎外/wikipedia 脚気/wikipedia

玄米/wikipedia 日本の脚気史/wikipedia

藤田保健衛生大学 宮崎純のホームページ




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