福島正則/wikipediaより引用

豊臣家

酒豪武将・正則のシャレにならん酒乱伝説~ブラックアウトはマジ危険

豊臣恩顧の武将として知られる福島正則

母親が、豊臣秀吉の母・なか(大政所)の妹だったので、秀吉の従兄弟として大出世を遂げていましたが、徳川政権では安芸広島藩50万石となった後、城の修繕を咎められて大幅減封へ。

最終的に大名としての福島家は改易となり、なんだか粗野粗暴なイメージもあったりしません?

それってもしかしたら「お酒」のせいかもしれません。

いよいよ明日から12月で、忘年会のシーズン。今回は福島正則の「お酒」にスポットを当ててみたいと思います!

※以下は福島正則の生涯まとめ記事となります

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酒は呑め呑め 呑むならば 大事な槍を取られますぅ

ある日、福島正則のもとへ黒田長政の家臣・母里友信(母里太兵衛)がやって参りました。

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このとき正則は、友信に酒を勧めます。

が、使者としてやって来ていたた手前、飲むわけにはいかない友信。

意地になった正則は、いかにも酒好きなセリフを発します。

「酒を飲み干せたら何でも褒美をやるよ」

「申し訳ありませんが、お断り申す」

「黒田武士は酒に弱いんじゃない? てか腰抜け?」

しまいにはお家をディスる発言を連発。さすがにここまで言われると友信も引いてはおられません。

というか、友信もかなりの酒豪であり、大杯に注がれた酒を飲み干すとここぞとばかりに強気に出ます。

「はい、何でもくれるって言いましたよね?日本号下さいね~( ^ω^)」

日本号とは、天下に聞こえる名槍です。

正則が秀吉から貰った大切な槍だったのですが、正則も大きく出た手前、引くわけにもいかず、そのまま友信のものとなってしまうのでした。

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このエピソード、民謡黒田節に歌われておりまして、以下がその歌詞となります。

【民謡黒田節】

酒は呑め呑め 呑むならば
日本一のこの槍を
呑み取るほどに呑むならば
これぞまことの黒田武士

取られちゃったの日本号~
母里にとっては名誉な歌も
正則にとっては
黒田節ならぬ黒歴史~

※後半の茶文字部分は私が勝手に付け加えた歌詞です、ごめんなさい。

 


酔ってからんで切腹させた!? さすがに……

福島家では身分の低い者が下船する際、木綿に着替えるキマリがあったそうです。

ある年、港に着いた酔っ払い正則は

「さっき、木綿に着替えさせろと柘植清右衛門に伝えておいたのに、みんな着替えて無いとは何事か」

と怒り始めました。

そもそもそんな命令を出していなかったワケで、家老がなだめても正則は納得せず、「とにかく清右衛門に腹を切らせろ。でないと俺は下船しない!」とゴネまくり。

清右衛門は私のせいで迷惑かけてすみませんと切腹して果てます。おいおい。

首を見て満足した正則はそのまま爆睡すると、目覚めてから何事もなかったかのように清右衛門を呼びつけます。

泥酔で記憶が無いということは、現代の我々でも一度は経験したことでしょうが、このときはさすがに家臣が死んでいて、あまりにタチが悪い。

家老から事の次第を聞いた正則は、そこで大号泣したそうです。

遅いっての!

出典が江戸時代の『武功雑記』であり100%正確とも言えませんが、国史大辞典では「実際に聞いた話を起こしたので信憑性の記述は多い」としています。

この正則の逸話については、ちょっとヤリ過ぎ感もありながら……いずれにせよ酒乱話が当時まで残っていたことがうかがえますね。

まさしく酒は飲んでも飲まれるな。

皆さんもご注意あれ……と終わらせては当連載の意味がありません。

実は、酒に酔って記憶が抜け落ちてしまう現象を【ブラックアウト】といいます。

今回はこのブラックアウトを中心に、アルコールによる神経への作用を説明していきましょう。

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抑制の抑制は興奮なのだ~

まず酒に酔う原因は2つあります。

1つ目:アルコールそのものによる脳への作用

2つ目:アルコールの分解の過程で生じるアルデヒドによる作用

ブラックアウトに関係するのはアルコールダイレクトの作用ですので順を追って説明いたします。

アルコールは血液脳関門を通過して脳の血管にも入っていきます。

酔いの本質は「中枢神経への抑制作用」でありまして、「アレ? でも、酔うとテンション上がって興奮状態になるじゃん? 抑制作用じゃない気がするんですけど」と思ったアナタは鋭い。

実はアルコールの作用は、抑制神経の抑制から始まりまして、少量のアルコールであれば「反対の反対は賛成なのだ~」のように「抑制の抑制は興奮なのだ~」となるわけです。

アルコールの作用は、脳の表層に近い部分から深部へと進んで行きます。

ほろ酔い状態では理性を司る大脳皮質の働きが抑えられ、本能や感情を担当する大脳辺縁系が前に出るため、気分が爽快になり、ちぃとだけタガが外れた状態になります。

この辺りがまでが楽しいお酒だと思われます。

さらに飲み進めるとアルコールの血中濃度は上がり脳の働きが抑えられていきます。

気が大きくなったり、やたら怒りっぽくなったり、立ち上がれば足元が少しふらつき始める【前酩酊期】。

使者に絡んだり、日本号をあげちゃったり、家来に怒ったりしたのはこの辺ですかね。

私も飲むと財布の紐がユルユルになり、諭吉がお出かけしちゃうことがあるので、その理由がよぉくわかります。

更に飲み進めると身体のバランスをとる小脳も麻痺しはじめ千鳥足状態へ。

「何度も同じ話を繰り返す」ウザい状態となります。

この状態を酩酊期と言い、懲りずに更に進むと泥酔期となって、まともに立てないわ、何言ってるかわからないわ、意識もモーローとしてきます。後述しますが、ブラックアウトが起こるのもこの時期です。

これを超えると昏睡期でありまして。生きるために必要な脳幹部分も麻痺します。

延髄の呼吸中枢が麻痺して息が止まっちゃう。まぁ、死ぬってことです。

昏睡期まで飲んだらいけないのは当たり前ですが、記憶がぶっ飛ぶブラックアウトが起こる状態もかなりヤバいことが分かりますよね。

 

「泥酔で記憶ない!」に関係しているのはグルタミン酸

さて、お酒で短期の記憶障害が起こる原因をもう少し詳しく見てみましょう。

根本は「海馬」が麻痺してしまうために何も覚えていない――という状態になるのですが、ここで注目して頂きたいのが「グルタミン酸」です。

いきなり味の素が何の用かと思われるかもしれません。

実はグルタミン酸は、脳内で興奮性の神経伝達物質として広く使われているんです。

グルタミン酸受容体のうちNMDA型受容体というものが海馬に多く分布。

記憶や学習に重要な役割を持つことで知られております(NMDA型受容体にグルタミン酸がくっつき学習記憶に必要な生化学反応が起こる)。

しかし、アルコールはNMDA型受容体の働きを鈍くします。

このため酒に酔った状態では新しい記憶を形成しにくく「酒を飲んでいる時の記憶がない」現象が起こるというワケです。

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