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吉田松陰と松下村塾

【吉田松陰と松下村塾百物語第5話】松陰、父、母ともに吉田家ではない名門吉田家とは

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松陰は杉家から吉田家へ養子に入り「吉田松陰」となったことから、その養父・吉田大助についてのことはよく語られるところです。大助は、松陰実父の杉百合之助の次弟でしたが、長州藩の山鹿流軍学師範・吉田家に養子に入り七代を継ぎます。大助には久満という奥さんがいましたが、松陰にとっては養母になる、この吉田久満についてはほとんど語られる機会がありません。

萩の東に日尾山という300メートル程の山があって、その谷筋に黒川村があります。久満はこの黒川村の庄屋森家の娘でした。庄屋の娘が武家に嫁ぐと いうので、久満は久保五郎左衛門という藩士の養女となって大助に嫁ぎます。

名門吉田家を守るための「人事」

杉家から養子となって吉田家を継いだ大助の元に、久保家へ養女に入った久満が嫁いだところへ六歳の松陰が養子としてとられたというわけです。大助・久満・松陰の繋がりは、言ってみれば長州藩毛利家の兵学師範の吉田家の名跡を守るための人事に従って配された人員としてのものなのです。当時の養子縁組は、個々の暮らしの事情のためではなく、あくまで価値ある家の名跡を伝えるためにおこなわれるものでした。

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伊藤博文も学んだ寺子屋時代

久満が一旦、養女に入った久保五郎左衛門の家は、現在、観光で訪れる萩市内の松下村塾に並んで保存されている松陰の「小新道の家」の南50メートルほどの位置にありました。
松陰で有名になる松下村塾は元々、松陰の叔父・玉木文之進が私邸でやっていました。
文之進が藩の役職に就くなどのことで多忙になり玉木時代の松下村塾は閉鎖されます。これを久保五郎左衛門が自邸で引き継ぎます。この久保松下村塾時代は寺子屋的な運営がおこなわれ、後の伊藤博文や吉田稔麿などが学んでいました。やがて松陰が小新道の家の一室で、少人数の門弟を相手に講義をはじめます。松陰の講義は久保松下村塾との交流もある形でおこなわれていましたが、門人も増え小新道の家に並んで別棟が設けられると、一つになり松陰主宰の松下村塾の門額が掲げられることになるのです。

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一緒に暮らさなかった「養母」一生松陰の菩提を弔う

松陰養父の吉田大助は、松陰が六歳の時に二十九歳の若さで病没します。久満と一緒になって三年後のことです。久満は、この時、二十三歳でした。黒川村の実家・森田家へ戻りますが、その後、再婚することはありませんでした。

松陰は吉田家に養子に入ってからも杉家で暮らしていたことから、久満は一緒に暮らしたことがなかったのですが、大助の死後も養母と子としての関係は生涯つづけられます。

松陰が江戸へ遊学する時に久満は選別を贈っています。野山獄の松陰への差し入れもおこなわれていました。松陰が江戸伝馬町の獄で刑死した時には久満は四十七歳でした。明治五年(1872)十一月に二十八日に六十歳で亡くなりますが、終世、松陰の菩提を弔っていたといいます。

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