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吉田松陰と松下村塾

大河と違って出来過ぎだった吉田松陰と文の母・瀧子【吉田松陰と松下村塾百物語7話】

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明治から昭和時代にかけての言論人、歴史家、評論家として活躍した徳富蘇峰は『吉田松陰』(明治26年、41年改訂増補版)で松陰の母・瀧子について「賢にして婦道あり、姑に事(つか)うる至孝、子を教ゆるに則あり、仁恕謹倹、稼穡の労に任じて馬を牧するに至る」と語っています。

現代語で言えば、賢く婦人としての道を全うし、夫・杉百合之助の母にも孝行し、長男・梅太郎、松陰、千代、濤子、美和子、敏三郎、艶子ら6人の子ども達への教育もしっかりと行った。情け深く思いやりがあり、勤勉だった、と云うところです。

杉瀧子(松陰神社蔵、吉田松陰.comより)

瀧子が二十歳で杉家に嫁いだ時には百合之助の父である舅の七兵衛は既に故人でした。家族は百合之助の母と、大助(後の吉田大助=松陰養父)、文之進(後の玉木文之進)、妹の留がいました。そこへ三男四女の子ども達が次々と生まれてくるのですが、百合之助の祖母の妹にあたる人がご主人に先立たれると、子と舅さんを連れてやって来ます。瀧子はこの夫の大叔母のしもの世話までしてあげて、本人からいうと甥の嫁にあたる百合之助の母、瀧子からみると姑から感激されていたという話です。

当時、杉家は萩城外の団子岩という丘陵地に各部屋を合わせても24、5畳しかない家に住んでいましたが、家族の関係を説明するのにこれほど込み入ってしまうような人たちが一緒に暮らす大所帯だったのです。その上、瀧子の姉が姑さんを連れて同居してくるということもありました。

まさに「賢にして婦道あり、姑に事(つか)うる至孝」の瀧子の姿でした。

「稼穡の労に任じて馬を牧するに至る」とは、瀧子は馬の世話まで見ていたということです。

長州藩士としては最低の身分の下士にあたる「無給通り」で、実質手取り石高が九石(一石、二俵半)だった禄高二十六石の杉家では、田畑を耕すことがなければ暮らしを立てていくことができませんでした。半農半士の生活の杉家では、他人の馬を預かって、手間賃をもらい暮らしの助けにしていたものかもしれません。

そんな瀧子には鎌倉の名刹・瑞泉寺で第二十五世住職を勤める弟・竹院和尚がいました。松陰はこの母方の叔父のことを江戸遊学中に何度か訪れています。

また、杉家は当主・百合之助が不要なことは一切口をきかないという人だったことから、暮らしの指図の一切は瀧子がおこなっていたそうです。杉家は、一見、かか殿下の家に見えていたようです。

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