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【『光る君へ』感想あらすじレビュー第43回「輝きののちに」】
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父として、夫ととしても最低である道長
倫子が孫を抱いています。
公任の娘が藤原教通の妻であり、二人の間に生まれた孫をあやしているのです。
一方、兄・頼通の妻にあたる隆姫にはまだ子ができておらず……道長が子を産むよう圧力をかけてきます。
頼通が十分夫婦幸せだ……と反論しても、「そういうことを聞いているのではない」と冷淡に応える道長。
このあと、道長と倫子の前に頼通だけが座っています。妻である隆姫に「あのようなこと」を仰せになって欲しくはないと訴えるのです。
「あのようなこと」は何か?
そうシラをきる道長に、子がないことだとこたえる頼通。隆姫は気に病んでいるようです。
すると倫子がこう言います。
「覚悟をお決めなさい。父上のようにもう一人妻を持てば隆姫とて楽になるやもしれませんわよ。何もかも一人で背負わなくてよくなるのですもの」
そして、隆姫と対等となる尊い姫君がよいと言い出す倫子。道長も「うん、そうだな」と同意しています。
「幾度も言わせないでください。私の妻は隆姫だけです。ほかの者は要りませぬ」
そう言い捨て、去っていく頼通。
道長は呑気にこう言います。
「ますます頑なになってしまったではないか」
こういうところが嫌なんですよね。自分から口火を切っておきながら、失敗すると周囲のせいにする。
その点、父の藤原兼家は脂ぎった態度で全ての悪事は自分が背負い込むくらいのスタミナを見せていたものです。
倫子が微笑みながら、すっと立ち上がり、夫から距離を空けて座り直すと……。
「私は殿に愛されてはいない……私でもない明子様でもない、殿が心から求めておられる女はどこぞにいるのだと、疑って苦しいこともありましたけれど、今は、そのようなことは、どうでもいいと思っております。彰子が皇子を産み、その子が東宮となり、帝になるやもしれぬのでございますよ。私の悩みなど、吹き飛ぶくらいのことを殿がしてくださった。何もかも殿のおかげでございます」
「そうか……」
弁解すらしない道長。
「私とて、いろいろ考えておりますのよ」
「うん」
「ですからたまには私の方もご覧くださいませ。フフフフフフフフ」
笑う倫子と、目を泳がせる道長がなんともいえません。ここまで糟糠の妻にダメ出しをされて、反論すらできないとはなんと冷たいのでしょう。
実資は心が離れると警告しますが、もう色々と手遅れではありませんか?
妻は軽蔑し、ただの権力をもたらすだけの存在だと言い切った。娘も息子も呆れている。主である帝は宿敵扱い。気骨ある実資は軽蔑と反発。行成すら離れたがっている。
じゃあまひろは?
これも『源氏物語』が彼女の心を反映しているなら、冷え切っています。
第二部からの光源氏はすっかり悪役で、突き放したような書きぶり。
第三部の「宇治十帖」は人間不信がみっちりと詰まった陰惨極まりない展開をします。
作者はどれだけ人間不信に陥っていたのか?と読んでいて気分が暗くなるほどでした。
道長という男は、それほどまでの闇を生み出すようです。
為時は賢子の儚い恋を知る
越後守だった藤原為時が、三年ぶりに京都へ戻ってきました。
賢子が出迎えつつ「ほんとうにおじじ様になったみたい」と、祖父の老いを感じているようなことを言ってしまい、まひろにたしなめられます。
そこへ「よう!」とやってきたのが双寿丸。
為時と初顔合わせですね。いと、まひろから、お互いを紹介されています。
双寿丸は追い剥ぎと人さらいを討伐したらしく、またも負傷していました。
この辺りも道長政治のなってないところで、直秀が惨殺されたにもかかわらず、特に検非違使改革に手をつけているとも思えないのですね。
双寿丸らに追われた犯罪者は、裁判も何もなく、その場で死ぬことも少なくないでしょうから、理非も何もあったものではありません。
為時は、武者と親しげな孫娘に驚いています。
まひろも父の戸惑いに理解を示しつつ、双寿丸が来るようになってから賢子がよく笑うようになったと説明。
為時がこれでいいのかと確認すると、まひろが答えます。
「昔なら考えられなかったことも、あの二人は軽々と乗り越えております。羨ましいくらいに」
そう語る時のまひろも、笑顔が輝いている。
かつて実家に戻り、その粗末さに愕然としたまひろ。今は逆で、まるで内裏周辺が閉塞感ある暗い場所なのかもしれません。
ここで笑うまひろは「自分はもう若くもないし、あそこまで戻れない」と達観しているのですね。人間の成長とはそういうものでしょう。
おかしいのは、まひろと二人きりになったら三郎時代に戻れると勘違いしているような、幼稚な道長です。
隆家は大宰府へ出立し、行成は道長に失望する
藤原隆家が何やら悩ましげな表情で辛そうです。
そこへ実資がやってくるのですが、対応にあたる隆家の所作が、なんとも見事で。
体調が悪いのに、来客を聞いて「うん」と唸りつつ起き上がり、即座に自らのいた上座を譲り、実資を座らせる。そして丁重に出迎えている。
袖の扱いがキビキビとしていて、彼は根が健康だと思わせられます。
しかし陣定に出てこないため見舞いに来たとかで……こういうところだ! 実資はえらい!
彼は何かとお堅い性格で、自分を煙たがる者もいると理解している。だからこそ心を離さぬよう、自ら近づいてゆくのですね。道長とはそこが違います。
隆家はなんでも、昨年の狩りの際に木の枝が目に刺さり、それ以来、回復せず悩んでいるのだとか。
薬師によれば冷やして痛みを和らげて回復するのを待つしかないとのこと。
実資はそう聞き、太宰府に恵清という宋人の眼科医がいると情報を告げます。健康マニアなのでそうした情報は詳しいのでしょう。
大宰大弍に空きがあるから、そこを希望して行ってみるとよいと勧め、道長に頼れば良いと告げています。実資の助言は具体性があっていいですね。
かくして隆家は、中納言を返上してでも大宰府に行くことを希望。
道長は隆家の希望を受け入れ、大宰府で目を治すようにと伝えました。
隆家の声は、腹の底からしっかり出ている。所作も芯が通っていて、彼はイキイキ健康貴族ですね。
この医者が周明なのか?と期待する声もあるようですが、果たして……。
かくして11月、臨時の除目にて、隆家が大宰権帥に任じられました。
愕然としているのが行成。居ても立っても居られず、道長に訴えます。
「道長様は、私をなんだとお思いですか? 私の望みを捨て置いて、隆家殿を大宰権帥になさるとは……」
確かにこのところ、字のうまい高級プリンタ扱いですもんね。行成の眉にはいつも愁があります。
「行成は……俺のそばにいろ、そういうことだ」
そう言われ、怯む行成。私にはやはり高級プリンタをキープのように思えなくもありませんでした。もっと真面目に言えば、愛情による搾取なのでしょうけど。
隆家はききょうに謝っています。
目の病で政から身を引けぬ、諦めきれぬからこその大宰府行きだと弁明。脩子内親王を置いていくことを真剣に詫びています。
しかしききょうは、すっかり牙が抜け落ちたように、目を治して戻るようにと告げます。
彼女の佇まいの変化を感じる隆家。噛みつきそうな勢いがなくなったようです。
「恨みを持つことで己の命を支えてまいりましたが、もうそれはやめようと思います。この先は脩子様のご成長を楽しみに静かに生きてまいりますので、お心おきなく、ご出立くださいませ」
そう告げるききょう。彼女なりに落ち着いたのかもしれませんが、もう道長に対しては牙を立てる価値すらないのか?とも私は思いました。
距離を空けるということは、憎むことすらやめるということでもありますから。
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