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NHK正月時代劇『風雲児たち』感想あらすじ 真田丸キャストが新たな大河の可能性を示す!?

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あけましておめでとうございます。
武者震之助です。
今年一番は『西郷どん』ではなく、この『風雲児たち』のレビューをお送りさせていただきます。

2016年の『真田丸』最終回から約1年。
同大河のキャスティングをそのままスライドさせたような、三谷幸喜氏脚本の正月時代劇であります。

というわけで新年早々、熱いドラマを見ていきましょう!

 

有働アナの声、何もかもが懐かしい……

いきなり有働アナの声と、少しクダけた前置きからスタート。
舞台はおよそ250年前江戸、杉田玄白邸から始まります。

蘭方医たちが集まり、前野良沢を待ち受けています。
しかし、玄白の様子は、ちょっとヘン。

明治維新までまだ時間があるというのに、この家は西洋風味です。
玄白はテーブルに椅子、そしてティーカップから茶をすすっています。さすが蘭方医っすね~!

どうやらこの祝いは、良沢の長寿祝いのようで。
ところが一方の主役である良沢は喜んでいないらしいのです。

杉田玄白と、前野良沢。
『解体新書』を翻訳した二人で日本史の授業でも有名ですよね。

しかし、何故かそのクレジットに前野良沢の名前は記されていない。
一体何があったのでしょうか。

 

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『ターヘル・アナトミア』の衝撃

ここから20年、時を遡ります。
明和6年(1769年)、良沢は百日間の長崎遊学から戻って来ました。
家では、優しい妻・珉子と娘の富士、峰子が彼を待っています。

このとき、良沢は『ターヘル・アナトミア』という書を手にしておりました。

「これはとんでもないものを手に入れてしまった……」
良沢はこっそりと書を見返し、興奮。蘭方医仲間の玄白に見せに行きます。

実はこのとき良沢は、オランダ語の辞書も入手しており……ただし、蘭仏辞書なのでした。それじゃあ意味ないじゃん!

良沢が『ターヘル・アナトミア』を見せると、玄白も既に江戸で同じものを手にしていたと取り出します。あらら。
医者である二人は同書物を見て興味津々。今まで見た解剖図とはまるで異なります。

東洋人と西洋人の違いなのか、それとも別の理由があるのか……。
ここは腑分け(解剖)して確認してみよう、と言い出す二人。『パッと見でわかる解剖図つき』というのがポイントだったんですね。

テンポよし、演出よし。
知識欲と好奇心で、ワクワクしている二人の気持ちが伝わってきます。

とはいえ当時の腑分けとなると、行き先は刑場になります。
けっこう怖いですよね。腑分けには、中川淳庵も加わります。

腑分けを扱うのは虎松という者のみでした。
金を役人に握らせる玄白に、反発する良沢。性格の違いがあらわれます。
このとき立ち会う役人は、何か口に咥えてちょっとやる気がなさそうと言いましょうか。

虎松は休んでおりまして。
代わりに祖父の国松……腑分け経験自称80年のじっちゃんが、ノリノリで腑分けを開始します。

その日の死骸は、50才の女囚です。
国松が腑分けする様を、書を見ながらじっと見る玄白と良沢たち。
死刑囚の解剖なのに、好奇心のおかげで楽しそうに見えます。

内臓の配置は、この本に書いてある通りだったと、ハイテンションの蘭方医たち。
玄白は、いっそ「これを翻訳しよう」と言い出します。
良沢は無理だと否定。

しかし、玄白の熱意におされ、良沢、そして中川淳庵の三人でやってみようと決意を固めるのでした。

 

知識ゼロから翻訳開始!

しかし、です。
いざ始めてみると、これが全くわからない……三人とも、全然わからない。

玄白に至ってはやる気だけでオランダ語知識ゼロ。いやはや、これは前途多難です。
翻訳どころか阿蘭陀いろは(アルファベット)の学習から始めるしかありません。

玄白と淳庵は、絶叫系尊皇家・高山彦九郎を見かけます。出番はこれだけですが、演技と存在感が濃いなぁ!!!

玄白は、平賀源内を訪ねます。
オランダ語を知っていそうでマルチな才能の持ち主。売れっ子作家の源内に、玄白は『ターヘル・アナトミア』を見せます。

スラスラとオランダ語を読み上げる源内ですが、ただ真似をしていただけ。
源内は、俺の脳内はオランダ人以上だとドヤ顔をし、俺は力になれないと言うのでした。
何を言っているかわからない系の天才ですね。この短い出番だけでも、将来人間関係でトラブルを起こしそうな感じがして、スゴイのです。

翻訳チーム彼らの武器は、仏蘭辞書、青木昆陽の初歩的なオランダ語学習参考書、良沢の留学ノートのみ。
わからない単語に「轡十文字」をつけて、とりあえず読み解こうとします。

絵を見ながら、目星をつける三人。
ここで『蘭学事始』の「フルヘンデット=うずたかし」と判明したときの逸話が紹介されます。
ただし、これは現在創作か、思い違いとされているそうです。えーっ、そうだったのか!「フルヘンデット」なんてどこにも出てこないそうです。

三人組に、桂川甫周も参加しました。
甫周はエリート医師なのに、女の挿絵を見て、
「乳房がでけえ! むこうの女はみんなこうなんですか、ウッハー!! オランダ語で乳房って何って言うのかなあ」
とか何とか言い出します。男子中学生か! この人、まったく役に立ちそうもないんですが……。

ところが、この乳房にこだわる甫周が役に立ちまして。
「乳房も鼻もフルヘイヴェヌしている……隆起しているということでは?」
実はこのエピソードは、「フルヘンドット」ではなく、「フルヘイヴェヌ」であったのだ、とここでその勘違いを回収します。

翻訳開始から一年近くたった時、悲劇が襲いかかります。
良沢の長女・富士が熱病で突然亡くなってしまったのです。
それでも良沢は、翻訳を続けようとします。今夜くらいはいてほしいと頼む妻の願いも断り、彼は作業を行うのです。

良沢は、『ターネル・アナトミア』がもっと早く出ていれば、娘は助かったかも知れないと言い出します。
医学を前に進めたい、そんな熱意が彼にはあるのです。

良沢は、笛を吹いて娘を送りだすのでした。

良沢が『ターヘル・アナトミア』を入手してから約3年。
明和9年(1772年)になると、彼らは解剖道具の箇所にまで翻訳を進めていました。
ただ、ここで「スプイト」は「水鉄砲」と解釈していまい、ちょっと困っています。

もうひとつは「スポンジウス」。
黄色く、小さくて、穴があいていて、海で採れるもの……ああー、惜しいですね。

それならば「水吸い=海綿」では、と玄白が言い出します。スポンジの意味が判明するまで、テンポ良く、各人の個性を出しつつ、ユーモラスに描く。本作の真骨頂です。

淳庵と甫周は単語分析。
良沢が文章を書く。
玄白が漢文調に仕上げる。

元号が変わるころ四人は、最終章へと向かってゆきます。

 

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田沼意次への根回しもオッケー

そんなある日、源内は彼らに言います。
「田沼意次に頼まれたことがある、もし頼み事があるなら口を利いてやるぞ」と。そこに仙台藩の医者・工藤平助が声を掛けてきました。

平助は、アルファベットが書かれた『紅毛談』が、発禁になったと言い出します。
ロシアの脅威について本を書く予定で、タイトルは『赤蝦夷風説考』だそうです。この平助の出番も短いわけですが、ただ者ではない感じが出ています。

玄白と甫周は、「出版時は力になって欲しい」と、甫周の父である甫三へ頼みに行きます。
出版するとなれば、多紀元徳ら漢方医たちの反発は必至。玄白たちは焦り出します。

その帰り道、玄白らは暴漢にからまれます。
そこを助けにかかったのが、仙台藩士・林子平。『海国兵談』の作者となります。

このころから四人で集まる機会は減り、良沢単独での作業は増えました。
玄白は出版の根回し、良沢は翻訳のブラッシュアップをしています。

玄白は、版元の須原屋市兵衛に話を持ちかけます。
医者必携の書物なら売れそう、と市兵衛は快諾。
市兵衛は、当時の出版界の異端児なのです。これまた個性的な脇役ですぞ。
こうして、やっと出版の目処がつきました。

良沢は『ターネル・アナトミア』の翻訳こそ天命だと悟ります。
ここで、「鼓膜」、「十二指腸」という単語は良沢が考え出したと言われます。スゴイ。スゴイぞ、スゴイぞ前野良沢! 言語センス抜群だ!!

良沢は、医術よりも言葉の世界に没頭していきました。
だからこそ優れた訳語を生み出せたのですが、医者としての道は少し踏み外しつつあるようです。

良沢は言葉に拘りすぎるあまり、もう出版は辞めるべきだと言い出します。
娘を失った時とは正反対の発言をするのです。

断固として、この完成度のままでは出せないという良沢、とりあえず出すべきだと主張する玄白。

玄白は、出版予告を出して、図案だけ先に公開しようと言い出すのです(『解体約図』)。
いよいよ『解体新書』出版が見えてきました。

しかし、この予告には良沢の名がなく……娘が死んだ晩まで仕事していたのに、これはあんまりだと涙を流す良沢の妻子でした。

玄白としては、良沢を守る為に敢えて予告から外したのでした。
この時点で玄白と淳庵が捕まっても、良沢さえいれば出版できます。

玄白は、源内について田沼意次に会います。
源内は、エレキテルを意次に披露。エレキテルはただ見事なだけで何も役に立たないと知り、苦い顔をする田沼です。
それでも面白がって源内を泳がせているのが、彼の度量の大きさでしょう。

玄白は田沼に『解体約図』を差しだします。
その下には、金色の小判が。田沼の顔色が変わります。

「そんなはした金でわしが動くとでも?」
「申し訳ございません、出直してきます」
「いやいや貰っておく、せっかくだから」

こんな会話、絶対真田昌幸を思い出すに決まっているでしょうがぁ! このトボけた味わい、草刈正雄さんはやっぱり最高だ!

田沼は感心した顔で、図を見ています。
いっそ鎖国をやめちまいましょう、と提案する源内。田沼も内心はそうしたい、と言います。

鎖国は古いということは、黒船が来るまでもなくわかる人にはわかっていたし、その日が来ることもわかっていたのでしょうね。ただ、決定的な事実を突きつけられるまで、先送りにしていたと。

「玄白……気持ち悪い」
解剖図を見てそう漏らす田沼です。
それから田沼は、必ず売れと言いだし、賄賂は売るために使え、と言います。

出版ブームを起こして、金を世の中に回せというわけです。これだけの出番で、滅法面白くて、先見の明があるとわかるのが本作の凄味ですな。

 

いよいよ出版前夜なのに

いよいよ出版前夜。
玄白は、良沢に「大通詞(通訳)の吉雄耕牛様に翻訳チェックしてもらおう!」と提案。しかし、良沢は断ろうとします。
耕牛は彼にとって師匠で、師匠に恥ずかしい訳を見られるなんて恥ずかしい、というわけ。もぉ~、良沢! 自分に自信を持って!

良沢を説得した玄白。
なんとか耕牛のもとまで向かい、原稿を見て貰います。
耕牛は神妙な顔で原稿をめくります。

「至らぬものを、お見せしてしまいました……」
うつむく良沢。
しかし耕牛は、感動のあまり震える声で言うのです。

「すばらしい仕事をされましたな」
感動のあまり、すすり泣く耕牛。
「長年オランダ語に携わっている者でも、ここまで訳せるものはいない!」
大絶賛する耕牛です。
このまま胸を張って出版されるがよろしいと太鼓判を押します。

師匠にそう言われて良沢は喜ぶどころか、これでもう誰にも教えを請うことができない、と嘆くのでした。ああもうっ、困ったもんだ。

源内は、鉱山開発に向かった秋田藩から小田野武助という蘭画の絵師を連れて来ます。彼に挿絵を頼むべきだと推薦してきたのでした。
小田野武助の出番はここだけですが、彼の作品は本当に美しいのです。

最後のチェックは、良沢の弟子筋であり、オランダ医学を得意とする石川玄常が行うことになりました。
彼も『解体新書』の作者としてクレジットされるのですが、最終稿で参加したのに、と甫周は納得いかない様子。

ここまで出来たのに、良沢は出版したくないと言い出します。
素晴らしい挿絵に見合うよう、あと三年は清書したいのだと。

玄白は「見栄のために医術進歩を遅らせる気か! あやまりがあっても出すべきだ!」と迫るのでした。こうして決裂するんですね。

ここまで迫ったため、やっと良沢は原稿を提出します。
ここから先は、一切任せると。ただし、前野良沢の名はクレジットに入れてくれるなと。

ああーっ、それはいかん、それはいかんよ!
ここで良沢、「セイニョ」を「神経」と訳して欲しい、と最後のリクエストをするのでした。

 

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そして良沢の名は消えた

でもこれでいいんですか、良沢先生。これでは玄白だって手柄を独占したみたいになるし。妻子もまったく納得していませんよ。

これでよいのか……これでよいのだ……なんだか苦い幕切れになるのでしょうか。
玄白は自ら「これでいいのだ、これは私の作品だ、紛れもなく」と言い切ります。

そしてついに『解体新書』が上梓されました。

良沢もその書を手に取ります。
感慨深げに本を見る良沢。あの腑分けから、三年半が過ぎていました。

桂川甫三は『解体新書』を将軍にまで上梓しようとしますが、漢方医の多紀元徳が止めようとします。
そこへ田沼意次がやって来て、老中自ら将軍に差しだすと宣言します。
田沼は書をめくり挿絵を見て、「気持ち悪い」と漏らすのでした。お茶目なだけではなく、自分では理解できないものでも評価する、そんな田沼の器を感じます。

良沢は、奥平藩主・奥平昌鹿から、よく『解体新書』を翻訳したと褒められます。
その一方、なぜお前の名がないのかと尋ねられます。
さらに良沢が藩医としての仕事をしていない、とも指摘するのでした。

しかし、昌鹿は叱責するわけではありません。
それでよいと励まし、「オランダの化け物(蘭化)だな」と言うのでした。
このあと良沢は「蘭化」と名乗るようになるのです。

田沼は源内に、良沢が気の毒だと言います。
源内はそれでいい、名は虚しいもの、と語るのです。
それから源内は、田沼の名は歴史に残る、悪名かもしれませんが、と太鼓判を押しました。

天才である自分は、どんな名を残すのかはわからない、とも。
このあとの二人のことを考えると、なかなか奥が深い会話なんですよね。

18年後、玄白の還暦と良沢の古希を祝う会が開催され、冒頭まで戻ります。
黙って笛を吹いている良沢に、娘の峰子は怒り声をあらげます。
母上との約束を破る気か!と。

亡くなる前、珉子は玄白との祝いの席には出て欲しい、と言い残していたのです。
亡妻の願いを叶えるため、良沢は折れます。
そしてやっと、良沢の乗った駕籠が玄白の家の前につきます。

「ご無沙汰……しております」
良沢に深々と頭を下げる玄白。そして手を執ります。
二人の目には涙。抱擁し、声をあげてむせび泣く良沢でした。

蘭学の未来を二人から受け継ぎ、進歩させる弟子たちが、二人を見守っています。

 

MVP:田沼意次

到底一人に絞りきれないのです。
おせち料理で、数の子と黒豆、どれが美味しいの?って質問みたいなもので。ただ自分の好みを選べ、ってなったら、彼なんですよ。
定番じゃなくて、量も少ないけど、存在感が半端ないローストポークみたいでした。

賄賂も受け取るし、解剖図は気持ち悪いとこぼすし、しょうもないおっさんのようで、切れ者。
なるほどこれならば、将来悪名を残すのもありかなあという説得力です。

正月早々ワルお茶目な草刈正雄さん。最高のお年玉でした。

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総評

お正月にぴったり、おせち料理のようなドラマでした。
ほんの一瞬しか出てこない人が大半でありながら、『真田丸』ファンならばニヤリとさせられます。
どんな短い場面でも、役者さんが味わい豊かでして。
短い場面で輝く役者さんの力も、三谷さんや演出スタッフの力も、存分に発揮されています。

脇役がおせちの料理なら、翻訳チームはさしずめお雑煮といったところでしょうか。
短い時間にぐっとつまったドラマや役者の個性のぶつかりあいは、しっかりとダシをとった流石の味わい。

残念な点があるとすれば、重箱がたった一段しかなく、雑煮もおかわりができないことです。
あと三倍くらい長くてもよかったかなぁ、という物足りないボリューム感です。

逆に、その欠点すら、この時間でこれだけ個性が出せるものか、と驚かされてしまいます。
『真田丸』にあった、わちゃわちゃと個性を持った人々が動く楽しみが、本作にはありました。

本作は、歴史ドラマの可能性も広げました。

正月時代劇というと、どうしても豪華で派手な題材を選びがち。しかし、残念なことにそうした派手な題材や、人の一生を詰め込もうとすると、単発ドラマでは無理があるのです。

その点本作は、冒頭とラストシーンをのぞけば、作中で動いた時間は三年間程度。
無理なくこの放映時間におさめるのであれば、これがちょうど良いのだと思わされました。

翻訳という、地味なドラマを面白く魅せるという難しいことも、本作はやってのけました。
個性の立った人物がそこに複数いるだけで楽しいというテクニックを習得していれば、それはどんな出来事でも面白くできるのだとわかりました。

この放映時間内に、時代の流れやワクワクする感じをこめたのも職人芸ですね。
黒船来航前から時代は動いているのだと、田沼と源内の会話は雄弁に物語っておりました。
江戸の歴史の流れが、ちゃんとそこにはあります。

本作を見終えたあとの率直な気持ちは、
「この辺りの話でも大河でイケるんじゃないの?」
ですね。

もしかするとこのドラマは、観測気球かも。
このスタッフとキャストで大河を作ってもいけるんじゃないですかね。

戦国も、幕末も、ほぼ出尽くしてしまったわけです。
それを考えればプレ幕末をやる、というのもありかなぁと。
本作は、作品として秀逸なだけではなく、大河を含めた将来の歴史ドラマへの布石かもしれません。

著:武者震之助




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