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あさが来たレビュー

『あさが来た』ネタバレ感想レビュー第20週「今、話したい事」 今回もまた朝ドラを待ち受けていた“沼”

更新日:

 

おはようございます。今週からは女子教育編です。

2月15日(月)

あさは成澤の女子教育への志に感銘を受けたのですが、あれきり彼は来店しません。朝食の席で、新次郎は彼が若くイケメンと聞いてそわそわ。

あさが女子教育にあこがれ、感動をしている様子は、幼い頃あれだけ勉強したがっていたことを思い出すと自然なのですが、もうちょっと本作には期待していたんですよ。櫛田そえが、津田梅子や大山捨松の海外留学について触れていました。これがてっきり伏線で、あさはこうした女子教育の流れに敏感だと思っていたのですが。千代の女学校探しも新次郎がしていましたし、あまりそのへんの時代の流れには関心がなかったように思えました。

それがここにきてこののめり込みよう。ちょっと唐突感がなあ。姉の遺言でいきなり女たちの学び場を作った昨年大河ヒロインよりはそれでもマシではあるんですが。炭坑も途中から亀助任せ、銀行のいつの間にかできていた本作。女子教育くらいは、あさが転び起き上がり奔走する様子をびしっと見せて欲しいものです。と思っていたら、成澤探しを新次郎に任せているという。

もうひとつ引っかかったのは、藍之助が加野屋経営者家族と朝食に同席していること。よのあたりが言い出したことかもしれませんが、丁稚として甘やかさず修行させるという方針と反している気がします。

一方、千代は、宜との会話で自分が産まれたばかりの頃、あさが炭坑業務より育児を重視していたと知って胸にズキンときます。そのへんの話、新次郎もよのもしていなかったことにびっくりぽんですよ。宜のおかげで母を見直す流れですね。これでもう親子キャンキャン喧嘩は封印ってことでよろしくお願いしますね!

 

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2月16日(火)

新次郎が平十郎と美和のビアホールに行くと、そこに成澤がいました。成澤は音程を外しながら賛美歌「「O Lord! Correct Me」を歌っています。

  • 「O Lord! Correct Me」について

http://www.jwu.ac.jp/unv/about/gaiyou/songs/o_lord_correct_me.html

このように成澤のモデルである成瀬仁蔵の愛唱歌として、日本女子大学の学校案内にも掲載されるほどの曲というわけですが……。

成澤はあっさり新次郎に見つかり、炭坑から帰って来たあさと話し合います。成澤にあさは三十万円(現在の十五億円)ほどかかると言います。それにしても、初対面の相手に「びっくりぽん」だの「ファーストペングィン」だのわけのわからんこと(そりゃ視聴者はわかっているけどさあ)をいい歳こいて言うあさって一体。とはいえ、成澤もあさに負けず劣らずエキセントリックで世の中なめきったキャラにしか見えないので、どうでもよくなってきました。そのあと、成澤が風呂に入り、格好を整え、ラストでは和歌山の眉山一家の元に藍之助から手紙が届きます。

はい、ここから怒りのデス批評です。嫌いな人はすっとばしてください。今日の出来ですが、結論から言うと減点法で0点です。マイナス100点をたたき出したので、惣兵衛やはつがいい味出していようと問答無用で0点です。

ではそのマイナスポイントはどこか。

 プロテスタントの牧師であり教育家である成澤が、公衆の面前、しかもビアホールという酒を出す店で、讃美歌を熱唱していた場面です。

 はい、マイナス100点。

NHKの宗教描写の雑さは今に始まったことではありませんが、今回もまたやらかしました。明治のプロテスタント、特に北米系の流れを汲む信者や宗教家は、非常にストイックでした。公衆の面前で酔っ払って賛美歌を歌うなんて、あってはならない戒律破りです。モデルになった人物の名誉毀損レベルです。

史実の成瀬はともかく、本作の成澤がなぜ資金集めに苦労しているかというと、こんな戒律破りの非常識な教育家に、誰も金なんか出したがらないからだよ、で終了する気がします。

『花子とアン』でも、よりにもよってメソジスト派の女学校で花子が泥酔するというトンデモをかましました。あの場面は蓮子の罠にかかったとか、『赤毛のアン』オマージュということで逃げ切れたとしても、花子はあのあとの職場の飲み会でも千鳥足でヘラヘラしていたので、やはりこれもマイナス100点でした。関係者が「史実の村岡花子は飲酒などしませんでした! 辞書を漬け物石にもしたわけがありません!」と怒っていたそうですが、当然でしょう。

本作のクオリティも徐々に落ちて、『花子とアン』レベルまで来てしまったかとがっかりしました。

もうNHKのドラマにおける宗教考証はどうしようもないのか、と言うわけでもないのです。『八重の桜』では、同志社関係者によるチェックが入っておりました。新島襄の飲酒場面は茶に差し替えになったそうです。ここでまた『八重の桜』の株があがりました。昨年の後半「八重の明治編をつまらないと思っていたけど、今年の大河と比較したら品格があってよい出来だったんだ」と思いました。今年もまた「八重の明治編をつまらないと思っていたけど、学校経営ドラマとしても、明治のプロテスタントを描いたドラマとしても、よい出来だったんだ」と思う羽目になっております。

同志社大学大勝利じゃないですか。あのドラマの新島襄は、気品もあってストイックでした。成澤のように「経営なんてしたくないし~」とかナメたことを言わず、スポンサーや政府と折り合いをつけたり、あるいは譲れない部分で戦ったりして、学校経営をちゃんとしていましたもんね。

くどいようですが、宗教描写は本当に気をつけてください。プロテスタントがしてはいけないリストでも作って、共有したほうがいいんじゃないのと思いますよ。これ以上の犠牲者を出してはいけないんだッ……! とりあえず明治のプロテスタントに酒飲ませたり、酒場に行かせるのは禁止で。

 

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2月17日(水)

眉山家には、藍之助の手紙がお給金から買ったお薬付きで届いていました。

あさは資金は自分が担当、教育理論を広げることは成澤が担当するようにと決めます。ここで成澤が英語混じりで話します。サプライズということで要するにびっくりぽんだと解説するのですが、このあたり完全に五代の二番煎じですね。新次郎が「英語混じりの男や」とやきもきした時も感じましたけど、狙っていますよね。うわあ、こういうことしますか、このドラマ……五代の英語混じりの喋り方は、海外経験の長いディーンさんのキャラとマッチして、ゲテモノギリギリの珍味としてありだったと思います。安易な真似はコレジャナイ感を醸し出すだけです。この手のキャラはよほどのことがない限り禁じ手とすべきです。もう株に躓く兎は出てきません。

そもそも史実や原案ではあさと接点があるのは成澤で、五代はほとんど出番がなかったのです。本作の五代はほぼオリキャラです。史実で接点があった人物を、オリキャラの二番煎じにするって相当乱暴な気がするんですけれども。本作のスタッフは、ドラマのクオリティより安易な受け狙いや話題作りを重視するということですかね。残念です。

あさはどうやって資金を得るのかと思っていたら、ほぼナレーション+雄壮なBGM処理です。あさはこの話を銀行の大口顧客である工藤に持ち込み、けんもほろろに断られてしまいます。さらに娘に学を付けさせたせいで縁遠くなったと愚痴すらこぼされます。ここでやりとりを聞いていた娘のサカエは怒り、これからはただの人形ではいかんと進学させたのではないかと喰ってかかります。工藤は学を付けたくらいで、人前で逆らうようになるのなら人形でいてもらったほうがよかった、と辛辣な一言を放ちます。榮三郎は大口顧客に寄付を持ちかけたあさの独断に怒ります。あさ、もしかして、力勝負で大名屋敷に押しかけていた頃から進歩していない……? そりゃ榮三郎も怒りますよ。

そこへ新次郎が帰ってきてあさを慰めます。あさは学問を禁じられた自分に、光源氏みたいな夫がいたからとのろけ始めます。最近夫婦のスキンシップ、イチャイチャが多いですよね。微笑ましいというより、カップルファンへのサービスかな、と思ってしまいます。ベタベタする時間をビジネスにちょっとは回せないのかなと。そうそう、あさはもしかして『源氏物語』を読んでいないのか、読んでも内容を深く考えていないのかもしれません。光源氏は有能な政治家で働きもの、愛妻一筋ではなく恋多き男、さらに紫の上から心をうつして鬱病にまで追い込んでおりますので、顔がいい以外新次郎とは真逆のタイプだと思います。

ここから先は性懲りもなく成澤がビアホールであさたちと歓談しているので、もういろいろどうしようもないなと。成澤もあさも、人に教育云々言う前におまえらが教育受け直せと言いたくなりますよ。特に成澤……こいつは本当にもう……千代すまんかった、真のドラマクラッシャーはこっちだ。

あさは資金繰りのヒントを大隈重信に尋ねるため上京するそうです。流石政府とべったりの今井財閥のお嬢様、コネの使い方は抜群です。

 

2月19日(木)

はつのお手製マントを羽織り、意気揚々とアポなし突撃をするあさ。手紙は一応出していたようですが、いつ伺うかという約束はなかったように見えます。いきなり訪問者が多数いるところへやって来てしまいます。それにしても来客として訪れた先でも「びっくりぽん」を出すのは何とかならないのでしょうか。家族といるときだけ昔の口癖として出るのならまだしも、初対面相手でも変な口癖使いつつハイテンションで話すというのはちょっと、ねえ。どんなわけのわからん女でも、バックに今井家がついていれば何とかなるということでしょうか。

そしていきなり、用件を他に訪問者が居並ぶところで切りだすというのもちょっとどうかと思いますよ。本作はちょっとビジネスマナーがおかしいのではないでしょうか……あ、対応した大隈重信夫妻は大河らしくてよかったと思います。ちょっと昨年大河のお詫び出演かなとは思いましたが。ちなみに大隈は例の開拓使事件で五代ら薩摩閥批判の急先鋒であった人物ですが、そういう都合の悪いことは本作ではやらないようです。

このあさの演説は、波瑠さん渾身の演技であることは伝わって来ました。大隈夫妻も重厚感があります。しかし全然私はぴんと来ませんでした。理由をあげてみます。

  • 前述したとおり、あさのビジネスマナーがいろいろ残念。この態度でも話を聞いてもらえるのはコネがあるからとしか思えない
  • あさが資金繰り、成澤が思想を広めると分担していたはずが、あさも結局成澤の受け売りである思想を語っている。実業家なら実業家として算盤弾く話しなはれ(これからするのかもですが)
  • 賢母良妻に引っかかっているあさだが、これは現代人の考えであって、明治時代の婦人教育は賢母良妻養成からは離れることはできない。あさたちが設立する女子大のコンセプトにもあるし、そもそも成澤の婦人教育理念もそれを掲げているし、史実の浅子が反発していたとは考えにくい。モデルになった女子大は現在においても、「賢母良妻」を育成する知識を身につける家政学科が充実している
  • 主人公が志を熱く語れば周囲が調伏される、悪しき朝ドラパターンか……キーパーソンを納得させるのがこれでいいのか

と、いったところです。

特に三番目は重要です。女性の自立や知的好奇心を満たすための女子教育という考え方はもっとあとにならなければ主流にはなりませんでした。明治の女子教育というのは、富国強兵や近代化、西洋化とは切っては切れない流れです。日本では腹は借り物という考えがあり、子どもの成長において母親の知性や教養は重視されませんでした。

ところが明治以降は西洋からの考えによって、両親ともに資質が高い方がより優れたエリートを養成できるはずだと、考えるようになったわけです。そもそもあさの尽力でできあがった大学のモデルが、今でも家政系という賢母良妻に求められる知識関連の学科が充実しているわけですよ。賢母良妻に反対する理由はないでしょう。

本作のあさはそういった明治的な考えから切り離され、おなごもいろいろな船として針路を目指せると言うわけです。しかしこれはまったくの間違いで、学んだところで就職先もありません。

本作は随所に、明治期ではなく現代、せいぜい昭和期の思考を挟んできます。資産家に産まれた母親が自ら育児をしなければならないというすりこみも、女子教育が自由な進路であるのも、明治時代の考え方としては不自然です。なまじ本作は出来がそれなりに良いだけに、こうした不自然な部分を信じている視聴者も多いようですが、本作のあさをみて明治の女性を知ったつもりになるのは少々危険な気がします。

本作は保守的な家庭観を持つおじさまおばさまには心地よい王道朝ドラなのでしょうが、明治を描いた歴史ドラマとしては相当ゆるゆるな、なんちゃって作品になってきました。朝ドラにマジになってどうするの、と内心セルフツッコミをしつつも、どうにも気持ち悪いなあと。

 

2月20日(金)

意気揚々と大阪に帰ったあさですが、榮三郎と平十郎から「勝手に女子大作るとか言うから、預金が教育事業に回されるという噂が立って店の信用がガタ落ちだ」と言われます。ついには教育事業を「道楽」呼ばわりされるはめに。

これは仕方のないことです。算盤を弾く経理のプロのような描写をしておきながら、独断専行かつどんぶり勘定だったことに驚きを隠せません。土方歳三に信用第一と啖呵を切ったあさはどこへ行ったのやら。

さらにはいつもの千代とあさのがみがみ母娘対決のターン。千代の寂しさと言いますけど、子役が鈴木梨央さんに交替してから健気な寂しさより憎たらしさ先行なんだよなあ。千代が母に愛されていないと悩むのはまぁありっちゃありだけど、父親に騙されまくって「俺、なんか冷遇されていない?」と悩む信幸兄さんよりはマシかなと(大河と朝ドラまぜるな危険)。茶化さずに書きますと、ここまで千代があさを責めまくるのって、ただこじれているだけではなく、千代にあんたのお母ちゃんはあかんたれやでと吹き込んだ人がいたのか。それとも千代に母親の状況を説明する人がいなかったのか、の気がします。となると、よのか新次郎あたりが千代をちゃんとしつけられなかったわけで。

宜さんはおもしろリアクション。本作の前半って、よのさんでも菊さんでも、初対面では常識人でも一皮剥くとエキセントリックな人物が多かった気がするんですけれども。いきなり変なのは五代とあさくらいで、その二人にしても最低限の礼儀作法はしつけられている感じがしたんですけれども。成澤にせよ宜にせよ、なんかこう……ワイルド、ですね。ありのままに生きているというか。

今日のみどころは、ねちねち絡んできた萬谷を新次郎がねじふせ、俺のダーリンに手を出す奴は許せないとぴしっと決めたところですね。大八車を押せず、妻に投げ飛ばされていた男が腕をひねるなんてギャップ萌え~ですね。本作は本当に萌えの貴重さや威力を知らしめてくれます。新次郎のように前半萌えポイントを貯金しまくったキャラは、やはり強いです。

そしてラストは刃傷沙汰。これは原案からの欠点ですけど、ここに至るまでの萬谷とやらの昔なじみのそのなじみって何かよくわからないので、唐突さがあるんですよ。いくら恨みがあるからって、そうそう刃傷沙汰にはならないと思うんですけれども。店の前でほっかむりして声を掛けたタイミングで起こるというのも、シチュエーションがちょっと無理矢理過ぎるんではありませんか。せっかくなら目撃者のいないところで狙おうよ、萬谷さん。

ドラマとしては大打撃と見せかけておきながら、どんぶり勘定採算の件も、親子和解の件も、あさが刺されてもガッツで乗り切ったら周囲が感動して何とかなる流れとみました。夢で五代や正吉を再登場させ、看病ではつや今井家の皆さんとも感動の再会をさせ、はっきり言ってストーリー的には安直の極み、しかしうまみのある一撃だという気がしてなりません。

ちなみにこの事件はあくまで原案における創作で、史実ではありません。広岡浅子の史料が少なすぎて原案を史実とみなす雑誌記事が出回ったりして混同されていますが、史実の広岡浅子は刺されていませんのでご注意ください。

 

2月21日(土)

刺されたあさは死線をさまよい、病院に運ばれます。

病院で家族やうめが見守る中、あさに手術が行われ成功します。ただし大量失血のため危険な状態に。

「アサキトク」の知らせは和歌山のはつの元へも届きます。銀行も大混乱です。面会者も多数来ております。千代も流石にしょんぼりしています。こんな中でもバタバタうるさい成澤は流石にどうにかならんのかと。見舞客の中には今井家の忠嗣もやって来ます。忠興は具合が悪く、梨江がつききりで看病しているようです。寺島しのぶさんの契約やスケジュール的な問題なのでしょうが、実母である梨江は今後再登場一切なさそうですね。亡くなった人すら夢で出てくるのに、そうだとしたらちょっと残念です。

千代はべそべそ泣きながらやっと母に対して素直になれます。そりゃ感動的なBGM流して、「おかあちゃん……おかあちゃん! 死んだらどうしよう、うっ、えぐっ!」とかそんな台詞吐かせたら、視聴者は感動するでしょうね~。新次郎が「九転十きや!」とか叫んでもね……まあ、私はベッタベタ過ぎて気持ち醒めていくんですけどね。本当に「刺されて全部解消」ルートなんだ。原案小説より、刺傷事件をあざとい使い方してんなぁ、と。

私の脳内には「朝ドラはあらゆる題材をとかしていく沼だ」という言葉が浮かびました。一応毎回、題材発表ではこんな事業に挑んだ偉人を描くとぶちあげますが、後半になるにつれてその事業そのものはドロドロにとけて、残るのはキラキラヒロインとベッタベタな人情劇。これが様式美ってやつかあ!

 

総評:

プロテスタントの明治教育者が、酒場で昼間から高歌放吟。

理論はあんたが広めろ、金勘定は私に任せろと言いながら、無計画どんぶり勘定の女実業家。

賢母良妻を掲げたモデル校教育理念を、ガン無視否定するような発言。

無茶苦茶な展開だけど、出刃包丁の一撃でリセット!

ここまで来ると流石に、一体本作は何がしたいんだと困惑せざるを得ません。視聴率が高いからメディアも文句言わないんでしょうが、これでいいのかと。

『八重の桜』明治編は朝ドラみたいな大河なんて揶揄されましたが、似たテーマの本作と比べてみると、腐ってもあちらは大河。明治の教育を題材としたドラマとして、本作よりはるかにマシだったとわかったのは収穫でした。昨年大河がひどすぎて、いろいろと感覚が麻痺していたことを思い出したのでした。同志社大学の大勝利ですね。

 

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