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武者震之助の歴史映画レビュー

『戦国自衛隊』はトンデモ歴史映画の最高傑作! 人の精神暗黒化に戦慄を覚えよ

更新日:

もしも現代人が過去にタイムスリップしたら――。
知識や技術を活かして大活躍。歴史をバンバン変えてしまうのではないだろうか?

と、現代ではもはやイチジャンルとして確立された元祖作品が『戦国自衛隊』です。

しかし内容は、そんな生易しいものではありません。

現代の火力を持った自衛隊さえも、容赦のない戦国の掟、非情な倫理の前において、アッサリと犠牲になってしまう。
何より恐ろしいところは、戦闘訓練を施された自衛隊員でさえも理性を失ってしまう点でしょう。

人間の本質をズバリと見抜いたかのような。
腹の底をえぐり出されるかのような。
単純にドンパチやらかしてスッキリ!ではなく、CGがなくとも大迫力の映像となった骨太の名作。

まずは、あらすじから見て参りましょう。

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基本DATA info
原題 『戦国自衛隊』
英語TITLE G.I. Samurai
制作年 1979年
制作国 日本
舞台 日本、越後国他
時代 戦国時代、永禄年間あたり(1558-1570年)
主な出演者 千葉真一、夏木勲、渡瀬恒彦、江藤潤、岡田奈々
史実再現度 歴史+SF・人物関係は史実準拠
特徴 元祖自衛隊異世界スリップものにして最高峰の作品

 

【あらすじ】自衛隊、戦国時代でかく戦えり

198X年、伊庭義明(千葉真一)三等陸尉以下21名の自衛官たち。
彼らは移動中、不思議な空間の歪みに呑み込まれて、新潟県の補給地ごとドコかへ飛ばされてしまう。

一体何が起きたのだろうか。

砂浜のような場所で隊員たちが戸惑っていると、数騎の騎馬武者が接近してきた。

「お祭りでもやってんのかなぁ」
彼らの姿を見て、訝しむ自衛官たち。
と、騎馬武者たちはイキナリ彼らに矢を射かけて来た! やむなく機関銃で応戦する彼ら。

しばらくの戦闘を経た後、豪快に笑いながら登場したのが「越後の龍」こと長尾景虎(夏八木勲)だった――。

この長尾景虎の誘いに応じて戦国に巻き込まれながら、それぞれの道を模索していくことになるのが本作のメインストーリー。

タイムスリップした現実に向き合おうとする者。
戻る道を模索する者。
適合して生きていこうとする者。
そして命を落とす者。

皆それぞれがもがき苦しむ。

そんな中、長尾景虎と意気投合した伊庭の胸には『このまま景虎と共に、天下を狙えるのではないか?』という野心が渦巻いてくるのであった……。

 

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現代兵器があっても楽勝にあらず

本作の魅力は何か?と問われたらこう返します。

「(敵攻略の)難易度が高すぎる」

これに尽きます。
槍や弓で戦っているところに、ヘリコプターや機関銃を持ち込むのだから、バッタバタと敵をなぎ倒せるだろう。
そう考えてしまうのは大間違いで、まったく思い通りにいかない。

本作の戦国武士がやたらと強いのは、考えてみれば当然で、現代人よりも当時を生きる上では優れた点がたくさんあるのです。

互いの長所をピックアップしてみましょう。

◆自衛官の強み
・現代の兵器を持っている
・歴史の結果を知っている

◆戦国時代人の強み
・倫理観がハードで殺しにためらいがない
・補給と数の面で圧倒的に有利
・戦術戦略面で工夫をこらしてくる

要するに、現代人の利点は武器が優れていることだけ。
『それで十分じゃないの?』と思われるかもしれませんが、この武器とて有限ですから使ったら終わりなのです。

補給と数の面で不利であるというのは大きなハンデです。
序盤、景気よく機関銃をぶっ放している場面を見ると「おいおいそんなペースで大丈夫か?」と心配になってしまいます。
弾切れ・燃料切れになったら、現代兵器はただのガラクタなのですから。

能天気に「ぶわははっ! 戦国武士がゴミのようだ!」と喜んではいられないのです。

 

長尾景虎がヘリに乗っても何だか説得力があるんだなぁ

そして戦国時代人のヒャッハー上等、ハードコアな倫理観が圧倒的に強い。

機関銃ぶっぱなされても次から次へと襲ってくる。
相手が装甲車だろうがヘリコプターだろうが、恐れず突っ込んでくる。この覚悟が凄い。

「人に向けて初めて銃を撃ってしまいました!」
なんてはしゃいでいる現代人じゃあ、そりゃ勝てないわなあ、と痛感させられます。

自衛官が、武士をバタバタとなぎ倒すシーンが見られるのかと思ったら、逆にプレデターに狩られるような展開を見せたりするわけです。

この精神性の差を端的に体現するのが、あどけない若武者(なんと薬師丸ひろ子!)でしょう。
あまりの可愛らしい容姿に、敵対した自衛官が思わず銃をおろしてしまうと、アッサリ槍で討ち取られてしまいました。

ここでやられた現代人は、最期に一言。
「戦国……時代……」
そう、これぞまさに当時の価値観。

彼らは基本的にヒャッハーなんだよ、という世界観の構築がキッチリ描かれているからこそ、難易度が高く面白いのです。
現代人ごときが、戦国武士相手に勝てると思っているのか、という問いかけは正しいと思います。

これはトンデモ歴史映画すべてに共通して言えることですが、大事なのはきちんと史実を踏まえること。その上で独特の世界観を構築せねばなりません。

「どうせトンデモなんだから適当でいいや」
そう甘っちょろく見たトンデモ歴史映画は、基礎工事を手抜きしているようなもので絶対にコケますからね。

トンデモ歴史映画って、実は歴史に対する姿勢が正統なものより大切なんですね。
基礎が出来た上で応用しているのが、トンデモ歴史映画なんです。

本作は基礎工事がバッチリできているからこそ、派手な跳躍が説得力を持って成立しているのです。

長尾景虎が笑顔でヘリコプターに飛び移っても本作が重厚なのは、まさに世界観がしっかりしているからです。

 

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川中島に戦車&ヘリコプターをぶち込むセンス!!

本作最大の見せ場は、武田vs上杉でお馴染み「川中島の戦い」に自衛隊を加えた合戦です。

ワーワー!という声に重なる機関銃の乱射音と、法螺貝の音を聞くだけでも、テンションがあがってしまいます。

人馬の入り乱れる合戦シーンは、最近の映像作品ではあまり見られないド迫力!
このテーマなら、見たいのはやっぱりこれですよね。爆発に次ぐ爆発がある川中島は本作だけ!

ここで素晴らしいのが、現代兵器を相手にしても、怯むことなく冷静に対応策を立てていた武田側です。

風圧で飛ばされそうになりながらもヘリコプターに乗り込み、操縦士を討ち取る根性。
遮蔽物を利用した鉄砲隊の一斉射撃。
馬と忍者が一体となった奇襲攻撃。

中でも戦功一番は、ヘリコプターにしがみついて潜入し、乗務員を殺害して墜落させた武田勝頼(真田広之)でしょう。
映像化作品の中で、個人的戦闘力ナンバーワンの勝頼ではないでしょうか。
というか、彼が勝頼だったってことを知らずに見ていた方もおられるかもしれません。さほどに身体能力が高いのです。

しかし、戦国時代に適応した伊庭(千葉真一)もまた、凄まじきの一言でして。

彼は最終的に、銃を捨てて騎射で敵を倒し、武田信玄(田中浩)の本陣に乗り込むという荒技を見せ付けます。
「お前はその技をどこで身につけたんだ!」
と突っ込みたくはありますが、千葉真一さんなのでなんとなく納得させられます。

戦国時代でも生き抜ける現代人はせいぜい千葉さんくらいだと、私たちは思い知るべきです。あっ、本郷猛さんもかな。

かくして起きた、信玄と謙信の一騎打ちならぬ、信玄と自衛官の一騎打ち。
伊庭はなんだかんだで最後はピストルで信玄を射殺してしまいます。

その次の瞬間、身体能力が異常に高い武田勝頼が再登場! 馬上から槍を投げ、そのまま馬からジャンプしながら斬りつけるという、スーパーアクションを見せ付けます。

この勝頼も討ち取った伊庭は、信玄の生首を抱えて勝ちどきを。
何がすごいって、最後は伊庭の現代人離れしたスーパーアクションと精神が勝敗を決したところですね。

戦を制したのは現代兵器じゃないのです。
映画のラストに近づくにつれ、ヘリも戦車もない伊庭は価値がないと断じられてしまいますが、ここまで強かったら十分に猛将として通じるでしょう。

そしてこの川中島は、転換点なのです。
ここから「戦国自衛隊」ではなく、むしろ「伊庭の野望」にすりかわってしまう、と。

「主人公たちは現代に戻る方法を模索し続けるんじゃないの?」と思っていた視聴者は、おいてけぼりにされます。
なんと伊庭は戦国に適応しすぎて、ここで頑張るつもりマンマンになってしまうのです。

しかし肝心の戦国時代側は、伊庭を必要としないわけで……、この先、悲劇が待ち受けています。

 

現代と戦国の違い それは兵器ではなく精神では?

最初に同作品を見たとき、ともかく派手なアクションや戦闘シーンに興奮したものです。

しかし、改めて振り返ってみると本作は「現代と戦国の精神性の違い」の描き方が秀逸だと思いました。

生き残るために戦国時代に適応していった自衛官は、現代人としての精神性を失っていきます。
そこにいるのはもはや現代人ではない。
かといって戦国時代の人間でもない。
異物と化してしまうのです。

「昭和に戻ったら人を殺せない。戦争なんてできない!」
だからここに残る!とまで言うようになってしまうのですね。
そんな彼らが戻ってしまったら、それこそ悲劇が待ち受けていることでしょう。

これは今考えてみると、かなり重大深刻なテーマかもしれません。

タイムスリップはできないけれど、価値観や倫理観が戦国時代のような場所は現代の地球上にも存在します。
ごく普通の若者がテロ組織に勧誘され、紛争地域へ向かっていく。
そこで斬首動画を撮影し、捕虜を奴隷にしてしまう……本作を見返して、そんなニュースを思い出しました。

豪快なアクションを笑い飛ばしていたはずが、人間の精神暗黒化を見てしまうという、なかなか奥が深く、人の業を描いた昭和の作品。
CGなんぞなくても心臓が締め付けられるようにドキドキして、その世界の中に引き込まれてしまうんですね。

序盤はトンデモぶりに笑い転げ、中盤から真顔になり、最後は戦慄――。

『戦国自衛隊』はトンデモ歴史映画の魅力と奥深さがギュウギュウに詰まった傑作ではないでしょうか。

著:武者震之助




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【参考】『戦国自衛隊

 

織田信長 武田信玄 真田幸村(信繁) 伊達政宗 徳川家康 豊臣秀吉 毛利元就 




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