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『ヒトラー 最期の12日間』パロディ動画だけじゃなく本編で凄惨な過去を直視

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会議シーンを元ネタにしたパロディ動画「総統閣下シリーズ」があまりに有名。

本作を見たことはなくても、

上記、一連のシーンをオモシロ動画バージョンで楽しまれた方は少なくないでしょう。

『アイアン・スカイ』や『帰って来たヒトラー』においても、パロディシーンが登場しますが、実はこの作品、「あの動画の元ネタ」だけにしておくのはよろしくない傑作でもありまして。

言うまでもないことではありますが、敢えて書きます。

ヒトラーの実像は「言いたいことをビシッと言ってくれて、あなたが腹を立てていることに激昂する、ちょっと面白いおじさん」ではありません。

パロディ動画だけしか見ていないと、ヒトラーに親しみすら感じてしまうかもしれません。

が、それは正直危険です。

ぜひ一度、本編を見て、凄惨な過去を直視しておきたい。そんな作品です。

※10/11現在、Amazonprime対象作品です

基本DATA info
タイトル 『ヒトラー 最期の12日間』
原題 Der Untergang
制作年 2004年
制作国 ドイツ
舞台 ドイツ、ベルリン
時代 1945年4月
主な出演者 ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・ララ、ユリアーネ・ケーラー
史実再現度 秘書ルンゲの回想に基づいており高いとされているが、脚色されている部分もある
特徴 独裁者最期の時を秘書の目線で描く

 

あらすじ 独裁者の「黄昏」

「若い頃の私は愚かでした。怪物の正体に気づかなかったのですから……」
この映画は、一人の老女の回想から始まる。

彼女の名は、トラウドゥル・ルンゲ。
1942年、トラウドゥル・フンプスは、アドルフ・ヒトラーの秘書に応募し、そして合格した。

秘書の目から見たヒトラーは、そう悪い人物ではなかった。
紳士的ですらあった。彼女は満ち足りた生活を送ることになる。

翌年、彼女はハンス・ヘルマン・ユンゲ親衛隊中尉と結婚。
エリート女性として満ち足りた日々を送っていた。

ユンゲが秘書になって三年の時が過ぎた。

1945年4月、ベルリン。
ユンゲは他の秘書やヒトラーの愛人であるエヴァ・ブラウンとともに、砲撃の音に怯えながら生きていた。
ソ連軍の侵攻が迫る中、ヒトラーとその側近たちは、総統の誕生祝いを行う。

「侵略者をこのベルリンで打ち破るか、あるいは破滅するか」

祝いの席で、ヒトラーは側近たちにそう演説する。
ヒトラーの破滅の時は、そう語る間にも迫っていたのであった。

 

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描かれたヒトラーの「人間性」

本作はヒトラーの人間性を描くという、タブーに挑んだ作品ということで話題になりました。

秘書に優しい声を掛ける姿、破滅を前にして自暴自棄になる姿は、それまで描くことはできませんでした。
本作は高い評価を得たものの、賛否両論別れる作品でもあります。

「歴史を見つめ、描いた勇気ある作品」
「あの独裁者の人間性を振り返る必要はない」

この人間性という部分は、確かになかなか厄介です。

例えば、ヒトラー・ユーゲントの少年兵をヒトラーが励ます場面では、名前を呼びながら柔らかな頰をつまんでみせます。
その姿には確かに人間性が感じられます。

ただし、その前後の場面を見てみないと、彼の人物像はつかめません。

この前に作戦会議の場面があります。
その席上、防衛戦の際に女子供、老人、負傷者をどうするのかと部下に聞かれたヒトラーはこう言い放つのです。

「戦時に市民など存在しない」
ヒトラーは、こう発言したあとで少年兵たちを励ましているのです。
自らの野望のためならば彼らの命を捨てても構わない、そのために子供たちを優しい言葉で励ます。
それがヒトラーの考えなのです。

ヒトラーに励まされた少年兵たちは、舞い上がってしまいます。
大人たちとは違って、勝てるはずだと無邪気に思い込む。
親の制止も振り切って、彼らは戦いに飛び込みます。

不利な状況となれば、何かに取り憑かれたような目をしたまま、自決してします。

時折見せる人間性という加点があったとしても、減点が大きすぎて結果的にはプラスになっていないのが、本作での描き方です。

 

自死を演出し、決定的な破滅から逃れるヒトラー

本作で描かれる死を前にして錯乱するヒトラーや、その愛人であるエヴァの姿は痛ましく思えます。
しかし彼らは自分たちの死を選び、演出することができるだけでも特権的でした。

感傷的に自らの死の計画を語り、部下たちに「幸せだった」と声を掛けるヒトラー。惨状を後目に、死を選んでしまうその姿は無責任に見えます。
ヒトラーが死を選んだあと、地下壕の外では、選びようもないような惨い死を遂げるドイツ人が大量にいたのです。

地下壕内にも、自分の運命を選べない弱い者たちがいました。
ゲッベルスの子供たちです。

ブロンドの髪に白い肌。
人形のように可愛らしい子供たち。
模範的で幸せなアーリア人家庭そのもの。
地下壕での生活において、無邪気に振る舞う子供たちの姿は束の間の安らぎをもたらしました。

しかし、彼らは破滅を生き延びることはありませんでした。

マグダは「ヒトラーのいない世界で子供たちを育てるなんて嫌!」と絶望し、ヒトラーにすがりつきます。
ヒトラー自決後、マグダは子供たちに睡眠薬を無理矢理飲ませ、口の中に毒のカプセルを押し込み、全員を殺してしまうのです。
本作屈指の惨い場面です。

ゲッベルス夫妻は、我が子がソ連兵の手にかかるくらいならば、という思いもあったでしょう。

だからといって、子供を手にかけるというのは許されることなのでしょうか。

ヒトラーの死後も続く惨い死と破滅の連続を見ていると、ヒトラーの人間性等というものは些細なものだと思えてきます。

この地獄をもたらしたのは、ヒトラーその人なのです。
その事実の前では、感傷的に部下を思いやる人間性はかすみます。

 

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自決ラッシュに耐えきれるか

本作は見ていると気が重たくなります。

特に後半の、子供をも含めた自決ラッシュは直視しがたいものがあります。

それでもやはり、本作には見るべき価値があります。
特にオススメしたいのは、例のパロディ動画を見て「ヒトラーってちょっと面白いかも」と思ってしまっている方でして。

動画そのものを面白がるのは無害であるにしても、そのうちヒトラー本人を「自分の嫌なことに憤っている面白いおじさん」だと誤認するようになっては色々と危ういワケです。

自分の中にちょっとそういう部分があるかも、と感じてしまったならば、本作を見てクールダウンをしてみてはいかがでしょうか。

著:武者震之助




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【参考】『ヒトラー 最期の12日間

 



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