おんな城主直虎レビュー

『おんな城主 直虎』感想レビュー第7回「検地がやってきた」 直親の智謀は50台だよ、ヤァ!ヤァ!ヤァ!

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今川検分役の岩松は堅物で賄賂なんか通じない

かくして今川家から検分役の岩松がやって来ます。
アバウトなところがまったくなさそうな岩松は、縄で土地を採寸して数値を確認します。これはごまかしが利きそうもありません。
直親や直盛は、酒を飲ませて岩松をもてなそうとしますが、岩松は断ります。これで成功するとは思えなかった接待作戦も失敗に終わりました。

取り付く島もない岩松に、直親は悩み、そしてまた次郎の元へと出かけてゆきます。
次郎は井戸の前にいました。次郎の元に瀬名からまだ書状が来ていないと知った直親は、動揺を見せます。次郎は、政次の「俺の思うよううまくことが運ぶように」と願っていたことがひっかかる懸念を口にします。しかし思い過ごしだと打ち消すのでした。

それでも次郎の不安は消えません。次郎は政次の屋敷に赴き、どうか直親を裏切らないで欲しいと頭を下げます。亀に言われてきたのかとむっとする政次に、次郎はそうではないと言います。
政次は「そこまで覚悟するなら還俗して俺の妻になる気はあるのか?」と言い返します。政次は今まで直親のせいでチャンスを逃してきた、これ以上そうなるのは御免だ、覚悟がないなら寺で教でも読んでおれ、と次郎を突き放すのでした。政次は強がって憎まれ役を演じていますが、相当辛いと思います。

次郎は一晩明けても政次の屋敷にいます。
そこへ南渓和尚がやって来て、やっと届いた瀬名からの書状を手渡します。それを見た次郎は馬にまたがり川名へと急行。さらにそれを見たしのは、己の無力さを思い知ったのか、泣き出すのでした。

瀬名の書状によれば、岩松は堅物で一切の賄賂が通じないタイプ。
しかし松平竹千代と馬が合うようで、竹千代が言うには岩松は数、算術、亡くなった妻が好きなのだそうです。これが一昨年ならば岩松が好きな菓子について書かれていて、それをヒロインが作り食べさせて解決するところですが、今年はそうはなりません。女性主人公という雑なくくりで一昨年と今年を無理矢理同じカテゴリに入れようとするニュース記事も見かけましたが、そう話は単純ではありません。
川名では、あっさりと岩松に隠し里が見つかりました。
直親が頑張ってしたという隠蔽工作は入り口を隠して丸太を置いたくらいでした。
うん、これは直親の襟首をつかんで本当にやる気があったのか、と言いたくなる流れ。昨年の真田屋敷のからくりを思い出して、改めて腹が立ってきました。何故、もっと本気で隠蔽しなかったのか!

岩松はあっさりと突破し、隠し里を発見しました。直親……お前の本気はこの程度なのか!

 

政次は、直親から無理難題のビーンボールをブン投げられ……

はたして隠し里はあっさりと見つかりました。
「これは井伊の里ではないのか? まさか我等をたばかろうとしたのではあるまいな!」と迫る岩松。そこへ次郎もやって来ます。ここで直親、「この里は井伊のものではありませぬ。それゆえ指出に入っていないのだと思います」と答えます。
「それでは誰の里だ?」と聞かれた直親は、「まだ帰参したばかりなのでよくわかりません。政次、お前ならわかるよな、井伊の里じゃないよな」と無理難題のボールをそのままブン投げます。ひ、ひどい! ここでブラック上司の無茶ぶりを思い出してうめいた勤め人が日本中にいたと思います。
いきなりボールを投げられたにも関わらず、焦りながらも政次は「ここは南朝の皇子がいた土地なので、井伊の里でありながらそうではないのです」という咄嗟の言い訳を思いつきます。
政次がフォローできなかったらどうするつもりだったんだ、直親!

ここでやっと一行は次郎に気づきます。
次郎は瀬名から今日が岩松の妻の月命日だから、供養のために読経したいと言い出します。次郎が読経する美声にうっとりと聞き入り喜ぶ岩松。結果的に次郎はあまり活躍していませんが、彼女の立場なら検地への関与はこのあたりが限度でしょう。

こうしていきあたりばったりの直親の尻ぬぐいを政次が行い、なんとか隠し里は守られました。
直親はほとんど隠し里隠蔽に貢献していないと思います。それなのに直親は政次に感謝するどころか、「怒っているのか?」と聞くのだからとことん無神経です。直親の試すような態度に政次がチクリと嫌味を返すと、「おとわが好きなら一緒に井伊を守ろう!」とまた無神経ぶりを発揮する直親。政次は「お前のそういうところが好かぬ」と吐き捨てますが、私も彼に同意します。

直盛と千賀は、直親としのが次郎から離れた場所に引っ越すように言い出します。直親は「別に次郎とはなんともない」とまた鈍感さを発揮しますが、千賀はたとえ男女の仲でなくても精神的な絆があるでしょう、と言います。ここで直盛が「早く子を作ってしのと絆を作れ」とフォローし、その場をおさめるのでした。
それにしても直親、どこまで鈍感なのでしょうか。直親の株が底値を更新し続けています……。

このあと、小野家と井伊家の仲を結ぶため、しのの妹が小野玄蕃に嫁ぎます。
縁談はもうひとつあり、駿府では竹千代改め松平元信が、瀬名を娶ることになったのでした。このぼんやりした男が今川と井伊の命運を握ることになるとナレーションが言いますが、昨年からの後遺症で「さらに真田の宿敵となり、乱世を終わらせるのであった」と続けたくなります。
瀬名は不満そうですが、彼女が生き延びていたら、阿茶局とともに乱世の終局を最高の立場で迎えていたのだと想像すると、切ない気持ちになるのでした。

 

MVP:小野政次

だんだんと目つきが荒んでいく高橋一生さんが素晴らしい。
そして荒んでしまう理由はよくわかります。一生懸命今川と井伊の架け橋になろうと働いても「今川に尻尾を振りやがって」と言われるわ、直親は隠し里の弁解を押しつけてくるわ。おまけに直親が「お前は俺が嫌いかもしれないけど、初恋のおとわのために頑張ろうよ」と神経を逆撫でしてさらに傷口に塩と辛子をすり込むような真似をしてきます。
政次は直親と拳で対話してもよいんじゃないかな、と個人的には思いましたね。

演技面でのハイライトは隠し里が発覚したとき、目を泳がせて不安げながらも平静を装い、南朝の皇子云々言い出したところですね。昨年大河の策士どもはハハハと笑ったり、汗一つかかずにすっとぼけて嘘を平気で言いましたが、これが常人の反応です。今年の大河は愛すべき常人たちの奮闘だと、改めて感じさせられました。

 

総評

二週連続井伊直親ネガティブキャンペーンでもしているんじゃないかと思うほど、先週に続いて直親がろくでもない奴でした。
今週の直親は、先週の愛ゆえの暴走行為ではなく、言い訳がしがたいほど無能なのです。これは辛い。フォローのしようがない! あれだけ川名を隠すと言っていろいろ準備しておきながら、その策が検分役に酒を飲ませて接待すること、次郎に頼んだ瀬名の書状、隠し里の入り口に丸太を置くことってどういうことですか! まあ、先週の策の中身が「次郎偽装自殺」というものだったことを考えればそんなものかもしれません。

そしてこの先がよくない。隠し里が見つかったらボールを小野政次にブン投げるとは。
政次が適当な言い訳を思いつかなかったらどうするつもりでしょうか。

しかしそんな本作が救われるのが、別段直親を有能だという前提にしていないところです。ものすごい軍師や切れ者設定でこんな行動を取っていたらどうしようもありませんが、本作の場合「これが『信長の野望』だと平均智謀50台の世界……」と納得できてしまいます。
ある意味国衆のリアルでしょう。井伊家の頼りなさに脂汗をかきながら、それなりにハラハラできるのが本作の持つ魅力なんだと思います。

直親ってだんたん直平に性格が似てきているんですよね。
直平も若い頃、直親のような爽やかイケメンだったのかもしれません。そうやって振り回してそのまま歳をとりああなったのでしょう。

直親の曾祖父・直平ゆずりの天然トラブルメーカーぶりは一応擁護できますが、どうしても許せない点があります。直親、しのさんを泣かせるな! 貫地谷しほりさんが哀しそうにしているとそれだけで胸を抉られるような辛さがあるんですよねえ。よくも悪くも直親が物語を引っかき回しているのは確かです。トラブルメーカーは物語を面白くするスパイスです。

直平も直親もいい加減にしろとは思いますが、彼らが物語を動かすエンジンであることは否定できないんですよね。
来週はいよいよ、今川義元と織田信長による歴史的転換点へと踏み込んでいく場面。
このじれったくて奇妙な物語を、来週も噛みしめたいと思います。

武者震之助・記
霜月けい・絵

 

登場人物の史実を解説!

井伊直虎(柴咲コウさん)
井伊直盛(杉本哲太さん)
新野千賀(財前直見さん)
井伊直平(前田吟さん)
南渓和尚(小林薫さん)
井伊直親(三浦春馬さん)
小野政次(高橋一生さん)
しの(貫地谷しほりさん)
瀬戸方久(ムロツヨシさん)
井伊直満(宇梶剛士さん)
小野政直(吹越満さん)
新野左馬助(苅谷俊介さん)
奥山朝利(でんでんさん)
中野直由(筧利夫さん)
龍宮小僧(ナレ・中村梅雀さん)
今川義元(春風亭昇太さん)
今川氏真(尾上松也さん)
織田信長(市川海老蔵さん)
寿桂尼(浅丘ルリ子さん)
竹千代徳川家康阿部サダヲさん)
築山殿(瀬名姫)(菜々緒さん)
井伊直政(菅田将暉さん)
傑山宗俊(市原隼人さん)
番外編 井伊直虎男性説
昊天宗建(小松和重さん)
佐名と関口親永(花總まりさん)
高瀬姫(高橋ひかるさん)
松下常慶(和田正人さん)
松下清景
今村藤七郎(芹澤興人さん)
㉙僧・守源

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