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おんな城主直虎レビュー

『おんな城主 直虎』感想レビュー第14回「徳政令の行方」 まさに中世ニッポンど真ん中!

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こんばんは、武者震之助です。
その生涯が謎につつまれ、そもそも文書すらろくに残っていない、井伊直虎。そんな彼女が確実に関わっているのが今回の徳政令の話で、どの直虎本にも記載されています。
が、しかし。
徳政令を出すか出さないかなんて地味、そんなことをドラマにして盛り上がるんだろうか。他の主人公なら合戦や事件があるのに、徳政令ねえ……と思っていました。それを如何にして盛り上げるのか。今年の制作陣の見せ所でもあります。さあ、今週はハラハラドキドキで徳政令を迎えましょう!

 

今川家からの徳政令が通れば小野の支配下となる!?

瀬戸・祝田両村の百姓たちが、蜂前神社の禰宜を通して今川家に直接徳政令を願い出ました。つまり、領民たちが井伊ではなく今川に属したいということです。

わかりやすい案内図付きでこの構造が説明されます。そうなったらば今川家は意のままに動く小野政次に、両村の管理を任せることでしょう。瀬戸方久は、民の意向を隠れ蓑にした、小野政次による御家のっとりの策では、と見抜きます。
ここでOPです。クレジットの名前が百姓ばかりです。

そのころ、小野政次、奥山六左衛門、中野直之の三人が、しのとなつの奥山姉妹と新井三姉妹の元を訪れて忌ました。
両村を化粧領としている姉妹たちは、直虎が話もなく勝手に瀬戸方久に与えたことに不快感を示します。「化粧領」という言葉が出てくるのも、自分の領土とその所有権をきっちり主張する女性が出てくるのも、かなり珍しいことだと思います。

戦国の女性は、自分の主張をきっちりと通します。
戦国時代は人間関係の上下が入れ替わる時代でした。家臣が主君を乗り越える下剋上は想像しやすいのですが、女性と男性の上下が入れ替わりうる状況というのはあまり描かれてきませんでした。

江戸期は上下の入れ替わりを絶対にさせないようにすることが重視されてきました。家臣は主君に、女性は男性に逆らうべきではないという社会です。
そうなる前のこの時代は、女性も財産を管理し、自分の主張を男性相手にも通すのです。
本作の女性たちは、男性を支える良妻賢母としてだけではなく、自分の権利も主張もきっぱりと通す戦国女性らしさがあります。前作のように、敢えて女性たちを規範からはみださせて個性を持たせているわけではなく、戦国女性としての規範をあてはめた結果、力強くなっているのが今作の女性たちだと思います。

 

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女に任せるぐらいなら、問題あっても男の方がマシ!

自分を虎松の後見にすれば、両村を取り戻せる――。
と、小野政次に持ちかけられた中野直之はノリノリです。
父の代では、執拗なまでに小野政直・政次親子を警戒していたのに、今ではすっかり豹変。
「あの女に任せるくらいなら、問題はあっても男に任せるほうがマシ」
そんな態度です。

こういう態度って、現実社会でもよく見るリアルだと思います。
昨年秋のアメリカ大統領選挙でも「あんな嫌な女に入れるくらいなら、多少問題はあってもあの男に入れる」とコメントしている人をニュースで見かけましたね。
直之は知るよしもありませんが、政次は今川家臣とも談合し、直虎を追い詰める策を練っているわけなんですけれどもね。

直虎と方久は徳政令をはねのけるための策を練り、南渓に相談。昊天は「これを実行したら今川は激怒するのでは」と懸念します。『仮名目録』を使った策のようですが、何をするつもりでしょうか。

ますますオラつく中野直之は直虎に反発し、虎松の後見を政次に任せるべきだとまで言い出します。
そこへ政次が書状を手にしてやって来て、自分が徳政令騒ぎを解決したら両村を取り戻し、奥山・新野姉妹に返すと言います。
政次、直之、六左衛門が勝手に話を進めていたことに怒る直虎。政次が手にしていた書状は、今川からの徳政令発布を正式に促すものでした。

ここで方久が「いやあ、いきなり預かるのも何ですからね。両村を龍潭寺に寄進してしまいました」と言い出します。
寺領は「守護不入」と『仮名目録』に定められていると言い出す直虎です。

 

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寺はアジール 守護とて手を出せない聖域なり

政次が奥山朝利を斬ってしまった時、龍潭寺の直虎の元に逃げ込んで来ました(第10回)。
その時「寺はアジールだから、追っ手から逃れるために逃げ込んだのでは」とこの感想で書きました。
このように、犯罪捜査や徴税のために領主が寺に手出しできないのが「守護不入」です。直虎は出家していたから世情に疎いと言われていますが、むしろ寺の力を最大限に使いこなしており、出家経験がプラスに作用しています。

今川家の命令をはねのけるわけではないが、事情があってできないのだ。と見え透いた言い訳をする直虎。昨年、真田昌幸が得意としていた「見え見えのシラを切る」スキルを習得しました。
井伊家の面々が当主はじめできなかったことを、直虎はやってのけます。領主となってからの直虎は力をぐんぐんと伸ばしています。努力と工夫に裏打ちされたレベルアップなので納得できるでしょう。

この策が痛快なのは、寿桂尼が作ったとも言われている今川家の『仮名目録』を使っているところです。今川の策を、今川の法でもってはねのけているわけです。
しかし直之は直虎に怒り狂い、主君に怒鳴り散らします。さらには「なんでそんなに方久をチヤホヤするんだよ? おまえらデキてんじゃねえの」とセクハラまでかまします。なんつーか、こういうセクハラ描写が妙にリアルですよね。女性リーダーが直面する問題あるあるです。

直虎は直之に、今の「金もない、人もない井伊家には方久のような才覚が必要だ」と言い返します。低劣なセクハラに対してきっちり理屈で反論するところに、彼女の誠意と聡明さを感じます。六左衛門はその言葉に何か思うところがあるようです。憎々しい態度で去る直之に、直虎は怒りを爆発させ「この前まで小野を排除しろと行ってきたのに、掌を返しおって!」と叫び声をあげるのでした。

 

今週は領主から百姓まで、マッドマックス

一方、小野政次は、蜂前神社の禰宜をあやつり、策をさらに進めます。

見るからにただ者ではない雰囲気の禰宜。紀行でも説明されますが、史実においても禰宜が井伊谷の経済まで操る力があったというのですから、驚かされます。識字率が低い時代において、知識豊富で読み書きができる僧侶や神職は、現代人が想像するよりはるかに力を持っていたのでしょう。

両村の百姓を前に「強欲な領主と商人のせいで、徳政令が反故にされた。一計を案じおったのだ、そなたらは方久に売られたのじゃ」と煽る禰宜。百姓たちは怒り狂います。今週は領主から百姓まで、マッドマックス(英語で怒りが最大値という意味)です。怒りに燃えた百姓は、方久の屋敷を強襲、壁を壊して方久をとらえます。
ドン……!
ドン、ドンッ!
と、壁を壊す場面に迫力があって、戦国時代の百姓が持つパワーを感じさせますね。

直虎は徹夜で文書とにらみあい、窮状打開策を考えています。心配して様子を見に来た母の佑椿尼に、直虎は奥山・新野姉妹に母上の化粧領を与えたいと言います。当主母の化粧領ぐらいしか余っていないという井伊家の辛い台所事情がわかります。

そこへ方久の使用人である辰が駆け込んできて、主人が誘拐されたと助けを求めてきます。百姓が託したという、たどたどしい書状を読む直虎。蜂前神社で徳政令の撤回をしなければ、方久の命はないという脅迫状です。佑椿尼が「百姓にしては頭が回りますね」と黒幕がいることを示唆します。

今回ほぼ怒りっぱなしの直虎は、瀬戸村まで一人で足を運びます。しかし村はもぬけの殻。留守を守る六左衛門は、直虎を気に掛けている様子です。傑山に「一緒に行くか」と誘われますが、中野直之に確認をしなければ決断できない、気の弱い六左衛門。直之は「女のくせにしゃしゃりでるからだ」と素っ気ない返事です。直之のこのセクハラ体質がやっぱりリアルなんですね。

 

蜂前神社には筆記用具一式……「手回しのいいこと」

直虎は両村を歩き回りましたが、誰もいません。
村を捨てるという百姓の抗議行動「逃散」にあったのです。この時代の百姓は、自分たちが農業生産の技術を持つ集団だと自覚しています。逃げることで領主に打撃を与えられると理解しているのです。

戦国の百姓は、無力ではありません。雨が降り出す中、無力感にうちひしがれた直虎は、蜂前神社に向かいます。その背を見送る、新井美羽さん扮する竜宮小僧らしき姿。鈴の音が響きます。噂では語られても姿を見せない竜宮小僧が見えたわけです。

この竜宮小僧を、直虎の少女時代を演じた新井美羽さんが扮しているというのは面白いと思います。超常現象ではなく、竜宮小僧として人々を助けようと決意し、奔走していた直虎の経験値が今の彼女自身を助けているという解釈もできるかもしれません。

蜂前神社には、筆記用具一式が揃っていました。禰宜が用意したのでしょう。
直虎は「手回しのいいこと」とつぶやくと筆を執り、徳政令を発布すると書状を書き始めます。脳裏には直虎にきつい言葉を吐いた政次や直之の顔が浮かびます。

無念を押し殺し、筆を握る直虎。そこで鈴の音が響き、風がふきつけます。すると神社の床を一匹の亀が這い出します。竜宮小僧がはなったかのようにも思える存在です。いきなり亀がいる、田舎の家では割とある現象ではあります。
この超常現象か、偶然か、わからないような演出がなかなか面白いです。

「お前、どこから……」
亀は意志を持つかのように動き、直虎の書く書状の上にのります。直虎はどけようとしますが、「亀」と口にしたことで亀之丞、つまりは直親を思い出すのでした。

「これは違うか、亀。我も違うと思う」
直虎はそう言うと筆を置き、書状を書くのをやめてその場を去ります。
百姓たちは亀を見て去って行った領主は一体何なのか、と不思議がります。

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