『おんな城主 直虎 完全版 第壱集 [Blu-ray]』/amazonより引用

おんな城主直虎感想あらすじ

『おんな城主 直虎』感想レビュー第17回「消えた種子島」虎松に苛烈で不屈なメンタルを

 


龍雲丸は南朝皇子の埋蔵金を探している!?

小野家では、亥之助が政次と五目並べをしています。
こういう時の政次は本当に穏やかな「鶴の顔」です。腹の底ではやはり火縄銃について考えているのですけど。

意気消沈した直虎が井伊の井戸に行くと、先週登場した旅の男がいます。
井伊家の大事な場所にのこのこ部外者が入ってくるのはセキュリティ的にどうなのかとツッコミたいところです。

旅の男(龍雲丸)は、南朝の皇子の埋蔵金を探しているのだそうです。
柳楽優弥さんというイケメン相手に、まったくときめかない直虎。今年はまったく恋愛大河ではないと思います。
恋愛大河なら、ここはヒロインがどぎまぎするところでしょうが。
そもそも先週、半裸で水浴びをしている時点で意識するところでしょうが。

直虎にとってときめく相手は直親一人で、その直親相手に極秘結婚を持ちかけられても突っぱねたのですから(第6回)、この人はまったくそういう性格ではないのです。

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虎松についてこぼす直虎に、旅の男は「何かで勝たせて自信を持たせたらどうか」とアドバイス。直虎は何か思いついたようです。旅の男は、しばらく水辺で助言して去ってゆく謎の存在になるのでしょうか。このあたりのキャラクターの使い方が、本作のよくわからないところです。

 


直虎は父親代わりになろうとしているのでは?

その晩、虎松の部屋に、直虎がこっそりやって来ます。

何故そんな不審者のような真似をするかということですが、それが直虎だからとしかいいようがないと言いますか。しのに内緒で来たかったのかもしれませんが、怪しすぎるでしょうと突っ込みたい。

直虎は虎松に、直親について語り出します。直親は幼いころこそ病弱で頼りなかったものの、成長してからは文武両道の優れた者であったと語る虎松。虎松に言い聞かせるために美化しているのと、直虎にとっては本当にそういう存在に思えた、ということでしょう。
検地のことは忘れましょう(第7回)。

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直虎は、虎松がそんな父のようになるために特訓をしようと言い出します。

そこへ直虎を不審者と思ったしのたちが踏み込んできます。
虎松はしのに、勝って父のようになりたいと涙ながらに語ります。直虎は虎松を特訓したいとしのに頼みこみます。
しのは必ず虎松を勝たせること、そうしなければ今後はしのの思い通りにするように直虎に「告げます。こうして直虎による虎松特訓が始まるのでした。

しのはあやめに、このまま虎松が成長したら直親に似てきて、直虎に心引かれて取られるのではないかと不安を吐露します。

「直虎はそうではない、父親かわりになるのだ」
あやめは、しのに言います。
何かと評判の悪いしのですが、ここで辛い本音が出ました。しのはいつか直虎に、虎松の心が奪われてしまうのではないかとおそれていたのですね。

 


いざ、五目並べ勝負! 無残にも敗北した虎松は……

虎松は龍潭寺に戻り、亥之助と五目並べに挑みます。
直虎と政次、それぞれから勝つための秘策を聞いた二人の子は勝負を開始します。

しかし結果は虎松の敗北。
それでも虎松はくじけず、再戦を挑みます。この態度は龍王丸(今川氏真)に何度も蹴鞠勝負を挑んだ直虎を思い出させます(第3回)。

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そうして何度も挑めば勝てる、その不屈の精神が大事だということです。
ちなみに昨年の真田昌幸は、負けそうになると碁盤をぐちゃぐちゃにしていました。

直虎はしのになんとか弁解しようとしますが、しのの心は決まっていました。虎松が立派な直親の後継者となるよう鍛えて欲しいと昊天に頼みます。

一件落着かと思ったらまた事件です。
なんと井平の鍛冶のもとから火縄銃がサンプル、制作中のもの含めて消失したのです。なんとそれを持ち去ったのは小野政次でした。政次は直虎に迫られても涼しい顔で「このようなものを作りまたぞろ謀叛でも企んでいるのでは?」と詰め寄ります。
怒る中野直之もものもともせず、直虎に後見を降りるよう迫る政次。政次の真意は? 続きは次回!

 

MVP:虎松

子役はあざとい、あざといと思いながらもこれしかないかな、と。

泣き方が迫真過ぎて気の毒になってきたほどです。虎松の気持ちになりきっているんでしょうね。

亥之助くんも賢くて可愛らしく、幼いながらも孤独な伯父を気遣っていてホロリとさせられます。最近の子役っておそろしいほど演技達者です。

 


総評

今回はサブタイトルがミスリーディングで、実際は火縄銃ではなくて虎松の手習いメインでした。
今までの内政パートが楽しすぎたせいか、今週はやや肩すかし、序盤の子役パートに戻ったような印象もあります。こちらのほうが正統派で、内政パートが異端なのかもしれませんが。

とはいえ、本作は子供の頃からその人物の芯を作りあげる過程が描かれてきました。
今週も、後の「井伊の赤鬼」こと直政の人物像の基礎工事がなされているはずです。まだ幼く泣いてばかりの虎松が、あれほど苛烈な人物にどうしてなったのか(※直政は例えば小牧・長久手の戦いで「突き掛かり戦法」という、命を賭した突撃戦法で勝利を手繰り寄せております。詳細は記事末・井伊直政の項をどうぞ)。
そのヒントはあるはずです。

そしてこの年長者の中に飛び込まされる状況も、のちの伏線となることでしょう。
錚々たる徳川家家臣の中に飛び込まされ、そこで負けん気を発揮してついには四天王となる直政。つらく当たられれば当たられるほど、むきになって張り切る成長後の姿が今から楽しみになってきますね。

そんな虎松を中心にして、背後に直虎や政次の心情が見えてくるのも本作の良さです。

直虎が虎松相手に語る直親の姿には、彼女の精一杯の愛情がこめられています。
視聴者としては「直親って検地の時酷いことしていたけどなあ」と思いたくなるところですが、直虎にとって直親は文武両道で素晴らしい人物なのです。

そう思うのは直虎が直親を心の底から、幼い頃からずっと愛おしく思ってきたからこそ。これが妻・しのにとっては辛く、気の毒な点ですが、直親の人間として一番素晴らしい部分を知っているのは直虎なのです。その直親の役目である父親の役目を、直虎は演じているわけです。これもひとつの愛情の形でしょう。

それ以上に複雑な愛情が政次です。
火縄銃の存在を嗅ぎつけて盗むような行動も、すべては直虎を守り抜くためです。「後見を降りなさい」という言葉の裏には「もうこれ以上危険な目にあわないよう、私があなたを守ります」という意味が隠されているわけです。
直虎がいきいきと井伊家当主として振る舞う姿、直親が決して見ることのできなかった魅力的な姿に心ひかれつつ、憎まれ役となって、政次はそう言い続けるわけです。

ここまで考えると、やっぱり今週もよかったのだと思えてきました。内政パートも好きですが、この複雑でねじれていて、ハッピーエンドは絶対にない愛憎劇も好きなんです。
来週はこのドラマに、いよいよ武田という災厄が襲いかかります。これからも目が離せません。


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著:武者震之助
絵:霜月けい

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【参考】
おんな城主直虎感想あらすじ
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』公式サイト(→link

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