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おんな城主直虎レビュー

『おんな城主 直虎』感想レビュー第34回「隠し港の龍雲丸」

更新日:

龍潭寺で政次の辞世を偲ぶ南渓・傑山・昊天ら

引間城の家康の元に、堀川城から脱出した瀬戸方久、中村屋がやって来ていました。

掘川城の弱点を知る方久。
船を持つ中村屋。
徳川方にとってまさしくこれは救いの神でしょう。

家康は城の裏手に船をつけ領民を救出し、大沢の家臣をとらえ、その者と引き替えに大沢に降伏を促す、という策を立てます。
しかし酒井忠次はどこか不穏な表情をしており……。

龍潭寺では、政次の辞世を前に南渓、傑山、昊天らが「鶴」を偲んでいます。

「鶴らしい優しい歌じゃ」

幼いころから見守って来た優しい思いが、政次に寄せられています。彼らの優しさが政次ロスに優しい特効薬となりますね。
「嫌われ政次」なんかじゃないぞ!

 

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ゴクウが射たれた!

一方、その頃、直虎は一人寝床で泣きじゃくっていました。

龍雲丸は武装した今川の兵士たちを水に突き落とし、その隙に民を救う作戦を立てます。

神出鬼没の龍雲党はあっという間に敵を圧倒。
「侍は侍同士、てめえらだけで戦えや! 人の褌で相撲とってんじゃねえよ、ばぁ~~~~~~か!」
爽快痛快な活躍を見せる龍雲丸。いやあ、すっきり、スカッ! まさに快男児です。

龍雲党の船は民をできる限り船に乗せ、雄壮な音楽を背景に海に漕ぎ出します。
希望の光のように、向こうから何者かが近づいて来ます。

「おぉ~い!」

中村屋の船が接近してきたと喜び手を振るゴクウ。その胸に、矢が突き刺さります。
味方であったはずの徳川勢が襲って来たのです。

嵐を沈める人身御供であったゴクウは、嵐を知らせる先触れのようにあっさりと息絶えました。
そのゴクウの屍を抱き、力也は「てめえら!」と激怒します。

 

井伊谷に現れた徳川勢が一番の悪魔だった

その頃、攻め手の酒井忠次は手向かいをした堀川城を見せしめにすることを決めていました。
なるべく残酷に処断し、相手の降伏を促すわけです。

井伊の件は近藤。そして今回は、酒井忠次。
今川から井伊を救うために現れたような徳川勢ではありますが、現時点では新たな悪魔のようです。

小野政次の死のきっかけとなり、直虎が新たな希望のように築いた堀川城を攻め落とし、直虎と気脈を通じた気賀の人々を屠る。
それがこれまで徳川が為してきたことです。

それでも小野政次については近藤康用、今回の件は酒井忠次の暴走ということにして、家康本人が手を汚したわけではないと視聴者には印象づけているのですが。それでも連絡ちゃんと取り合おうよ、とは思います。

忠次は彼なりの忠義を尽くしています。
殿を血塗れの策から守りたいという思いは、それこそ小野政次と通じるものもあるでしょう。

 

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「たかが夢じゃ。朝が来れば、終わる」

夜明けの白い光が、地獄と化した堀川城を照らします。
兵も、民も、龍雲党のモグラも、区別なく無残にも斃れていました。

もはやここは見せしめの城、処刑場なのです。

「モグさん……」

仲間の屍を見て呆然とそう呟く龍雲丸。幼い頃味わった落城の恐怖の中に、彼は突き落とされています。
龍雲丸は敵兵に襲われるカジを間一髪のところで救い、肩を貸して歩き始めます。その時、槍の一閃が龍雲丸を貫きます。

龍雲丸が振り返ると、そこには槍を構えた直虎の姿が……何故ここに直虎が?

「ああああああ~~~っ!」

直虎がうなり声をあげて、がばっと起き上がります!
人を殺す悪夢を見たと叫び泣く直虎。

「たかが夢じゃ。朝が来れば、終わる」

南渓はそう慰めますが、視聴者にはこれがただの夢には思えないわけです。

どこまでが夢なのか、現実なのか?
できれば全てが夢であって欲しい。
しかし、そうではないのです。

そこへ方久が転がり込み、気賀が徳川方に襲われていると告げます。
直虎は悪夢と交差する現実に気づき、走り出すのでした。

 

MVP:龍雲党

目に光が宿らない狂気、そしてそこから正気に戻り童女のように泣き叫ぶ直虎が演技面では一番かもしれませんが、今回は龍雲党がストーリーの軸でした。

どんな牢でも城でも、易々と入り込み活躍する龍雲党。
あまりの強さに何でも楽にこなしてしまいそうな存在です。
痛快さを重視し、先週の重さを和らげるのであれば、堀川城の惨劇から危機一髪で龍雲党だけでも抜け出せばよかったのです。

ところが、為す術もなく、いや、抵抗はしたものの、あっさりと虫けらのように彼らは踏みにじられました。
雄壮なBGMが流れた次の瞬間絶命したゴクウなんて、鬼のような演出です。

乱世を出し抜き、痛快な生き方をするなんてことは出来ないのだと突きつけられたようです。

これは龍雲党の生き方を全否定しているわけでもあります。

頭の龍雲丸は、かつて落ちゆく城から抜けだしました。
そして武士としての身分を捨て、二度とあんな目に遭わないように飄然と生きてきたわけです。

そうして築き上げたものが、仲間が、あっさりと踏みにじられてしまいました。

龍雲党の死に方に比べたら、先週の小野政次はまだしも恵まれていたと言えるわけです。
誰が彼らの最期の声を聞いたのでしょう?
誰が彼らを弔うというのでしょう?

他の多数の屍と一緒くたにまとめられて、見せしめにされます。井伊の村人と笑いあっていた彼らは、名も無き者として、そんなふうに死んでいったのです。

 

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総評

先週に続き容赦も何もあったものではない展開です。

直虎は狂気と正気の淵を彷徨っている。
そしてその直虎の仲間たちがいる気賀に、堀川城に、直虎が味方すると誓った徳川勢が迫っているのです。
それでも龍雲丸らはしたたかに危難を乗り越えると見せかけておいて、あとは怒濤の退場ラッシュです。二週連続で直虎の大切なひと、今まで築き上げたものをズタズタに破壊します。

こうなってくると、どうして直虎が徳川を信じるようになるのかまったく理解できません。
史実を知っていても展開が予想できない。これはすごいことですね。

今週は「乱世の戦」をうまく表現した回でもあります。
派手なCGやロケ、騎馬武者や大勢のエキストラを使わずとも、緊迫感は表現できます。
戦が始まる前の気賀でも戦の気配と緊迫感がありました。堀川城の場面は胃が痛くなるような緊張感の連続でした。

はじめは得意げであった瀬戸方久が這々の体で逃げ出す様子。
右往左往していた龍雲党。
巻き込まれ死んでゆく人々。

巨大な力に巻き込まれ、踏みつぶされてゆく人々の生き死にが、これが戦だと容赦なく突きつけられます。

本作は小さな国衆に過ぎない井伊家の苦悩を描いています。
今週はそんな国衆よりももっと無力な人々が無残にも巻き込まれる姿を描くことで、戦国乱世の惨さを表現していました。

直虎と政次、瀬戸方久、中村屋、龍雲党……皆知恵を絞り、この荒波をくぐりぬけようと思っていました。

皆それぞれ、才覚やここかで生きてきた自信をもって試練に挑みました。
直虎と政次は、やっと今川からの支配が終わると希望を胸に抱いていました。
方久はさらなるビジネスチャンスだと小躍りしていました。
それがこの結果です。

しかも彼らの徳川につくという選択は、決して間違ってはいません。
直虎と政次について言うならば、彼らは最善の選択をしていました。

先週、逃げられる状況でもそうしなかった政次がじれったくもあったのですが、今週の展開を見ると正解であったとわかります。
城代である政次の首ひとつで井伊谷を守り抜いたのですから。ひとつでも何かをあやまっていれば、生け贄に捧げられたのは堀川城ではなく、井伊谷であったかもしれないのです。

何を信じて生きればよいのか。
どの道をたどれば死なずに済むのか。
一歩踏み間違えたら真っ逆さまに落ちる、そんな細い道を歩み続ける残酷さが本作にはあります。

材木騒動やら猪鍋やらで笑っていた頃から、思えば遠くに来たものです。次に心の底から笑えるのはいつになるのでしょうか。政次ロスを癒すどころか、顔面にさらなる拳を見舞うような、残酷で見事な回でした。

しかも、来週はここに武田信玄も来るんですよ! 覚悟しておきましょう。

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