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真田丸レビュー

『真田丸』感想レビュー第24回「滅亡」 中世氏政と近世政宗の対比が映し出すものは?

更新日:

 

こんばんは。今日は父の日です。そしてその日、北条家の「父」が退場します。何と寂しいことでしょうか。

本作の話題性は健在で、今週もよいニュースがあるようです。

村上新悟ってどんな人?「真田丸」直江兼続を演じ"イケメンボイス"と話題に http://www.huffingtonpost.jp/2016/06/11/sanadamaru-reading_n_10421438.html

【真田丸】地元・上田で人気の「黙れ小童」せんべい 次は「信幸どうでしょう」 | ORICON STYLE http://www.oricon.co.jp/news/2073261/full/

真田丸直江兼続霜月けい

 

それでは本編、といきたいところですが、実は先週の内容がなかなか紛糾しているようです。

一体何があったかというと、「信繁が黒田官兵衛の手柄を横取りしている」という批判があった模様。私は「信繁と官兵衛は同じ時空にいて、それぞれ別のタイミングで説得している」と考えていたので、その発想は思いつきませんでした。考証の先生のツイートを見ていると、信繁・官兵衛同時説得で正解のようですが、ちょっとわかりにくかったかもしれません。ちなみに信繁が当時小田原にいたことは、新出史料で確定したとのこと。

そんな事情もあってか、三谷氏が連載コラムでそのあたりの裏話を披露しています。

(三谷幸喜のありふれた生活:805)最新の歴史研究が支えに:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/DA3S12412223.html

いやぁ、本作って本当に大変ですね。史実にないことをやるなという意見と、真田十勇士を出せという要望が同時に来るそうですよ。これはもう、どうしろと。

要するに官兵衛が豊臣政権正規ルートからの使者で、信繁は家康と吉継がこそっと派遣した裏ルートの使者ということですね。「裏ルート」ですから、歴史の表に出ないわけで、そこは創作の余地があるわけです。

確かにわかりにくいかもしれませんが、信繁が裏ルート、しかも家康や吉継があまり期待していない、あくまで特殊札な扱いで起用されたことは、先週、以下の描写から推察できたとは思います(確かにわかりにくいんですけどね)。

  • 徳川の使者である本多正信が潜入してから、既に三日経過している。つまり万策尽きた結果、信繁を一か八かに引っ張り出した
  • 家康と吉継はあくまで夜、こっそりと信繁を裏口から派遣した
  • 正信が覆面をして、こっそりと信繁を招き入れている

そしてこれが一番大事な点の気がするのですが、

「周囲は真田信繁をできる男として頼ることはあるが、あくまで便利な特殊札扱いである」

ということではないでしょうか。

小大名の次男に過ぎない信繁は、身分的にも不安定で、才知があるからこそ「使い物にはなるけど、それ以上のものではない」扱いです。おそらく彼の才知を最も認めている父・昌幸ですら、後継者として重視しているのは嫡男・信幸であるとわかる場面があります。信繁もそれをわきまえており、兄を積極的に押しのけるような真似はしませんし、意見を誰かに言うときもきちんと断り、礼儀を守って述べます。

信繁が活躍した場面はあります。
例えば聚楽第落首事件(第二十回)において、事件の捜査し、隠蔽しようと動きました。沼田を守る裁定の場にも、父の代理として出席しました(第二十二回)。
しかし、こうした場に彼がいたことで何かが変わったか? 何も変わりません。信繁が右往左往しようが聚楽第落首事件では大量の人が死にましたし、沼田領裁定は真田の顔を立てるために行われたものの、石田三成の一存で決定が覆りました。今回も、信繁が必死で北条を説得しても無駄だということは決まっているわけです。

やたらとウロウロし、大物にも接近遭遇するが、しかし何をしても結果として残らない。なかなか難しいところではあります。

さらに言えば、大坂の陣でいくら徳川家康に冷や汗をかかせたところで、彼は結局のところ宿敵を逃し、大事な人を救えず、妻子を残し討ち死にするわけです。最終回まで彼は歴史をまったく変えることができないのです。主人公補正どころか、もう主人公なのに呪縛がかかっているレベルです。知名度という点ではここ数作で随一でも、何かを成し遂げたという観点で見ると、ここまで不利な主人公はそうはいないでしょう。信繁はそもそも、誰かの手柄(小田原編では官兵衛でしたが)を奪おうにも、ハナからさらえない位置にいるのです。

そんなポジションからの今回本編は、信繁の、氏政説得ミッションからです。ではスタート!

 

化粧直しもできなかった女子社員のような佇まい

先週も出てきた佐助の進化した忍術が登場。これまた「ダサいVFX」と一部で失笑されていたようですが、特殊効果さんが頑張って作り上げた水蒸気爆発で、実写だそうです。信繁は北条家に仕官していたらしい小山田茂誠(しげまさ・信繁の姉・松の夫で第六回から出番なし)に助けられます。この高木渉さんの特徴ある声と、あたたかみのある笑顔が実に懐かしいですね。

茂誠は、松が落ちた崖で丸二日彷徨ったあと、小山田一族に縁の深い北条家に仕官したそうです。信繁は何か含みを持たせながら松の生存を伝えようとするのですが、板部岡江雪斎がやって来て話は中断します。

演じられるのは声優の高木渉さんです

演じられるのは声優の高木渉さんです

それにしても久々に出てきた茂誠を見て感じましたが、彼は人柄はよいものの、あまり有能そうではない雰囲気はありますね。こういう位置があっているのでしょう。豊臣秀次と似たようなタイプかもしれません。誰しも皆野心にギラついていたと思われる戦国時代ですが、こういうほどほどの位置で小さな幸せを追い求める人物がいてもよいわけですし、実際大勢いたでしょう。茂誠は本当によいキャラクターだと思います。

なんとか北条氏政の元までたどり着いた信繁。
氏政は憔悴しきり、脂ぎった肌にメイクが白く浮き上がっており、残業で疲れ切って化粧直しもできなかった女子社員のような佇まいです。

真田丸北条氏政霜月けい

氏政はうつろな目で、信繁を刺客の手にかけようとします。氏政は今までどれだけ真田に振り回されてきた、ぬけぬけとよくここに来たものだと信繁に言います。それはそうでしょう。沼田とか、沼田とか、沼田とか。本作はどれだけ沼田問題で真田が無茶苦茶な行動を取って北条に迷惑をかけてきたか描いているので、それにも納得できます。北条は真田の被害者です。こうした事情を考えると、本当に本多正信、江雪斎は万策尽きていたのだなという気がしますし、本気で信繁の身を案じてもいなかったでしょう。室賀正武のように(第十一回)、失敗して殺されても「真田ナントカが失敗して死んでしまいましたねえ」くらい、正信は言いかねないかもしれません。

信繁は真田家の子息としてではなく、豊臣の使者として来た、徳川家康からの書状だけでも読んで欲しいと抗弁します。氏政は書状を受け取り、信繁には「行け」と退出を促します。信繁は皆、氏政の助命のため奔走していると必死に返答。しかし氏政は、この城がある限り負けない、戦は最後までわからないと言います。

信繁は伊達政宗も豊臣に降った、ほとんどの城は落ちた、真田と因縁のる城も真田が奪回したと城の外の状況を説明し、説得を試みます。引き際をわきまえてはどうかと説得する信繁ですが、氏政はなおも「どうせ秀吉と一戦をまじえるならば、伊達や徳川と組んで日本を分ける戦をやってみたかった。そうして戦国の世に幕を引きたかった」と嘆きます。この台詞ひとつで、氏政の矜持が説明できたと思います。そして氏政はさらに「命なぞ惜しくない」とも。うーん、素晴らしい。これが聞きたかったんです。

一見、氏政が愚かなように思えますが、実のところそうでもありません。攻め手も兵粮が不足していました。豊臣の力は、当時世界最大クラスの兵力を動員できることではありますが、大きな兵力というのは大変管理が難しいのです。兵粮、トイレ、風紀の維持など、人が集まるだけで問題は山積みになります。

コミックマーケットや音楽フェスティバルを想像してみてください。ああしたイベントは戦うわけではなく、ただ平和的に人が集まるだけです。それでも人の列に並ぶだけでも疲れ果て、トイレは大混雑します。人が多く集まるところ、問題は必ず発生するのです。大兵力動員は大きな力でもありますが、同時に危険性も孕んでいます。

説得を終えた信繁は、上機嫌の江雪斎から労われます。信繁はここでやっと、茂誠に最愛の妻・松の生存を伝えます。感極まり泣く茂誠を前に、信繁はちょっと引いています。信繁は茂誠と話している蔵の中で、鉛の塊を見つけ何か気づいたようです。

 

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朝食のメニューでも決めるかのように「氏政には死んでもらおうか」

一方、昌幸と信幸は厄介な忍城を三成に預け、鉢形城を落とすと八王子城に向かっています。昌幸の元には、八王子城は上杉に任せて鉢形城に戻るようにと秀吉の指示が届きます。どうやら忍城が苦戦中のようです。昌幸はなかなか落ちない氏政をどこかうらやむような態度を見せます。

氏政は江雪斎に氏直を呼び出させます。そして天正十八年(1590)七月五日、北条氏直が城を出て降伏しました。

真田丸北条氏直

家康は氏政・氏直父子の助命をし、城を明け渡してもらいましょうと秀吉に確認するのですが、秀吉は軽く朝食のメニューでも決めるような口調で言うのです。

「氏政には死んでもらおうか」

家康は色を成し、それでは約束がちがう、命は助けるはずだと反論。しかし秀吉は「さんざん粘ったんだから腹くらい切れ」とそっけない態度。大谷吉継も約束が違うと諫めますが、秀吉は聞き入れません。

七月十日、氏政は髷を落とし秀吉の軍門に降ります。家康は氏政を、よく粘ったと労います。家康は必ず助命すると目をうるませ、氏政の手を握ります。氏政は助命すれば家康に災難が降りかかるとこれを断ります。家康は上杉景勝と昌幸に「案の定死ぬ気だ」と苦い顔で言います。家康は何とか氏政に生きる気力を出してもらうよう、説得しようとします。このとき、三人の顔には氏政を敬愛し敬うような表情が浮かびます。

三人は氏政の説得に向かいます。景勝は八王子城攻め、昌幸は忍城からやってきたそうです。なんとしても氏政には生きてもらいたいと説得する三人。景勝は髻を切ってでも説得すると言います。

この言葉に偽りはないでしょう。氏政は「秀吉のために生きるのですか、それでよろしいのですか」と景勝に問いかけます。昌幸は「死にたければ死になさい。ただ生きていればまだまだ楽しいことがありますぞ。秀吉の天下は長持ちしないんだから。もう一暴れしたいとは思いませんか?」と、ギャンブル依存症らしい説得を試みます。しかし氏政は、昌幸らの活躍をあの世で見物すると言うのでした。景勝は「よき戦相手でござった」と氏政の人生そのものを労います。

真田丸上杉景勝霜月けい

信繁は江雪斎らや直江兼続を前にして「氏政の決意は固い」と自分の意見を言います。兼続は「主人が勝手な約束をしていないか心配で気になる」と実にこの人らしい懸念を口にします。はい、あなたの主君は髻を切る宣言しています。

信繁は正信に、何故ああも家康は氏政を助けようとするのかと訪ねます。正信は「ああ見えてうちの主君は情け深いですからね。長年戦ううちに強敵と書いて“とも”と読むようになってしまったんですねえ」と語ります。そうですね、そこが家康のチャームポイントですね。

そこへ家康たち三人が戻り、そこにいた者たちはもはや氏政は助からないと悟ります。無言でじっと何か言いたげに主君を見つめる兼続。景勝は決まり悪そうに「何も約束しておらん」と言います。嘘つけ。

江雪斎はここで一人、その場を去ると一礼します。この北条の中心は、生き延びまた別の人生を歩むこととなります。

真田丸板部岡江雪斎霜月けい

翌日、氏政は切腹しました。その首は京都に送られ、聚楽第に晒されたそうです。氏政は自分なりの乱世を喰ったとばかりに、汁かけ飯を一気に食べます。印象的ではありますが、切腹の前の食事は切ったところから食べ物が出てくるのでみっともないとタブーになっているとされており、考証担当者はその点を指摘したそうです。

氏直は出家し、高野山に送られました。ここでナレーションは北条滅亡と断言していまいますが、北条は大名復帰運動がありました。氏直がもし長生きしていたらば、運命は違ったことでしょう。また北条家そのものは、河内佐山藩主として存続します。

 

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ずんだ餅・政宗に昌幸も家康もガッカリ(´・ω・`)

信繁は北条の蔵から持ち帰った銃弾用の鉛を吉継に差し出します。どうやら千利休が販売したものでした。つまり利休は敵味方の双方に武器を売りさばく「死の商人」であるわけです。痕跡を消し去ろうと右往左往した利休ですが、信繁によってその企みが暴かれました。これで、利休がなぜ秀吉を煽り、北条攻めをけしかけたか、その理由もハッキリしました。

忍城は、小田原城が落ちてもまだ降伏しません。石田三成は何度も破られる堤防に激怒。「水攻めで殺さないようにしているのに、城の連中は空気読めよ!」とキレまくります。信幸は敵は討ち死にする覚悟なのだから攻めた方がよいと言い、昌幸は「俺が卑怯な手を使ってすぐ落としてやるよ」とドヤ顔で進言。氏政の血がついていない兜を出浦昌相によって城内へ持ち込ませ、「おまえらの主は血も流さずに降伏したんだぞ」と知らしめる作戦を用い、二日で落とすそうです。汚い、流石、昌幸汚い。

真田丸真田昌幸霜月けい

昌幸の策は当たり、士気が尽き果てた忍城は降伏します。これには三成も、「昌幸の策は嫌いだが、おかげで無駄な死人は出なかった。戦のノウハウを教えてくれ」とツンツンしながらデレます。

一方、宇都宮仕置に挑む伊達政宗は自領を全て差し出します。昌幸は伊達家臣の片倉と話したいと言い出します。どうやら東国の大名が決起するときは伊達もよろしく頼むと言いたいようですが。懲りないギャンブル狂です。それでも伊達に賭けると言う昌幸ですが、果たして政宗はどんな男でしょうか。

そのとき、政宗は……
「では、始めます!」
片肌脱ぎになった政宗は、片倉小十郎景綱と餅つきを始めてしまいました。

「駄目だこいつ」と凍り付いた顔の昌幸。ノリノリで「豆をついたあんをのせて、名物ずんだ餅のできあがり!」と差し出す政宗……こいつに頼った氏政が哀れです。さらに政宗は餅をつく秀吉に「これぞ天下餅! 殿下つきたいはしゃぎたい! 一気一気!」みたいなかけ声あわせてハッスルします。
政宗、歌舞伎町のホストかよ!

片倉景綱は「うちの殿ってああいうノリ好きで疲れすんですよね」と信幸に話しかけてきます。信幸は「どうしますか?」と昌幸に例の件を尋ねますが、昌幸は「もういいわ」と完全に脱力しています。家康も「もうちょっと気骨あるかと思ってた」とポロリ……。

昌幸は家康に「北条領ゲットおめでとうございます」と言いますが、家康はそのかわり今までの領土を召し上げられたと疲れたように言います。昌幸は江戸の田舎ぶりに困惑する家康に嬉しそうです。しかし家康は、秀吉には「よい土地をありがとうございます」と御礼を言います。まあ、当時は地震が周期的に起こることはわからなかったでしょうしねえ。

真田丸徳川家康霜月けい

 

秀吉は北条を平らげ、時代は破壊から建設へ?

一方、昌幸は小県、沼田を安堵され、さらに徳川の与力から外され、さらには徳川監視役にされます。これには昌幸も喜ぶほかありません。露骨に嬉しそうな顔をする昌幸でした。

信繁は、餅つきパフォーマンスを終えた政宗と接近遭遇。大大名のわりには気さくな政宗は信繁を一緒に話そうぜと誘います。「殿下に気に入られちゃった〜。ずんだ餅もうまくできたしマジいいかんじ〜。俺殿下と似てるし相性よくね?」と軽く語り始めます。

しかしここからちょっと真面目になって、「もし北条が先に降伏していたら俺危なかったよな。俺の人生綱渡りだし」と語り出します。ここで「そうだねえ、小田原に来る前には母親に毒殺されかけたし」とお思いの方。毒殺事件に関しては後世の捏造ですので、ご注意ください(【関連記事】伊達政宗の実母・義姫ってどんな人? 毒殺を企てた鬼母イメージは終了 有能なネゴシエーターでした)。

信繁は「氏政様はあなたを頼りにして待っていましたよ」とちくりと釘を刺しますが、政宗は「し、しらん!」と動揺します。政宗はどうせ戦国に生まれたなら大軍を率いて敵を蹴散らしたいと言いますが、信繁は自分はその器ではないと言います。奥州一の大大名嫡男と、信濃の小大名次男ではそれはそうでしょう。政宗は「もう二十年早く産まれていれば、もうちょっと京都の近くに産まれていれば」とこぼし、刀を抜いて暴れ出します。いや、あなたはよい時代によい場所で産まれたと思いますよ、いろいろな意味で。

政宗は餅をふるまい、愚痴り、暴れ、「真田の小倅、またどこかで会おう」と言い残し去ってゆきます。

ちなみに北条に勝利したものの、奥羽はまだまだ一揆で不安定な状況が続きます。政宗は領土が安堵された一方、伊達配下でありながら参陣できなかった大名家は、政宗正室実家の田村家などを含め、軒並み改易の憂き目にあっています。

秀吉は北条を平らげ、これで天下の覇者と宣言。時代は破壊から建設へ移ります。

関ヶ原まであと十年です。

真田丸豊臣秀吉

 

今週のMVP北条氏政、次点伊達政宗

総評:MVPの理由が総評に重なります。今週は中世を擬人化したような北条氏政と、近世の申し子のような伊達政宗が光っていました。氏政の死と北条滅亡で区切らず、敢えてコミックリリーフのような政宗を出して餅つきをさせたことに意味があると思います。

氏政の死は時代を読めぬ頑迷な男としてのものではなく、戦い抜いた敵からもどこか賞賛の目で見られる、「美しい死」でありました。氏政を見る昌幸や景勝の目に熱っぽいものがあったのは、日本を分ける大いくさに敢えて挑もうとしたその魂への崇敬の念があったからでしょう。昌幸と景勝は、のちに日本を分ける関ヶ原の大いくさで、乾坤一擲の勝負を挑む石田三成に味方することとなります。

愚かでありながら美しく、そして崇高であった氏政の死に対し、軽いノリで生きることを掴みとった政宗は、コミカルで見ようによっては無様なものでした。昌幸の嫌悪感すらこもった目は、生を選び大博打を投げ捨てた男への軽蔑の念に他なりません。政宗は関ヶ原では東軍につきますが、どこか消化不良でぐずぐずとした動きを見せることになります。

本人はもう二十年早く産まれたらと嘆いていますが、史実を考慮しても、また本作の描写でも、二十年遅かったからこそ名を残したように思えます。彼は実のところ信幸と同じ、もう一暴れしたいと嘆きつつも近世への適性を持った人物なのでしょう。一方で信繁は、穏やかで三成や吉継の抱く近世思考に近い考え方でありながら、その体内に流れる血は父親ゆずりの中世への適性があふれているのです。

本作で繰り返し描かれて来た、中世と近世の対立が今回に集約されてきました。おもしろいのは、本作では従来とは逆で中世人の生き方こそ、滅びゆく美しさがあると理想化されていることです。

最終盤、氏政と政宗ではなく、今度は信繁と政宗の対比として、私たちは擬人化された中世と近世の対峙を見ることになるのでしょう。

 

著:武者震之助
絵:霜月けい

 

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