真田丸感想あらすじ

『真田丸』全50話の感想レビュー38万字を一挙公開!

更新日:

 

第46回「砲弾」 視聴者に浴びせかける主人公の虚しさ そのアクがすごい!

 

こんばんは。最終盤でも本作は話題になっています。
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もうすぐ来年の大河が始まることも逆手にとって、こんな話題性もアピールできるわけです。

そして恒例の、大河関連の史料発見です。
◆後藤又兵衛討ち死に報告 豊臣秀頼に、書き付け発見 | 2016/11/17 – 共同通信 47NEWS

真田丸後藤又兵衛

そしてまずは先週に関してちょっと書かせてください。公式サイトには、こんなコーナーもあるわけですが。
「大坂の陣」こぼれ話
やっぱりな、と思いました。
実際の通りに作ったら危険ですし、役者さんやエキストラさんに怪我などさせたら、もってのほかです。
ただし、そういう安全性の配慮は見ていてわかるんですよね。咄嗟にかばって転んでいるなとか、この落ち方では死なないな、とか。そういう手加減はわかってしまいます。
先週の迫力不足は、兵士の「ワラワラ感」のなさも大きな要員ですが、「この程度では死なない」というのがわかってしまうのもあるかと思います。

この解決手段はやはりCGで人馬を作ってしまうことでしょう。
「うわっ、これは死人が出ているぞ!」と思ってしまうくらい生々しく危険な動きでも、CGならば安全ですからね。ついでに書いてしまうと、エキストラはじめあまりに綺麗すぎた、というのもマイナスかもしれません。
あれだけ戦っても皆ピカピカで返り血もなければ、土埃で汚れてもいないのです。無双系のゲームのようですが、そんなところを似せなくてもよかったんですけどねえ。

人の生死が交錯する戦場があまりに綺麗で軽々しい描かれ方をするのはどうかな、と思います。このへんの汚し方、戦場の生々しさという点では、『八重の桜』以下です。あれは生々しすぎたのか、クレームも多かったそうですが。なかなかさじ加減が難しいところです。

 

もくじ

もくじ

真田丸の活躍により幸村への信頼感の上がる大坂城内

さて、愚痴はさておき今週です。

真田丸で味方が散々苦戦した徳川家康は、次の手を使うことにしました。頼みの綱であるイギリス製の大砲がすぐには届かないと知った家康は、大軍勢にかわるがわる鬨の声をあげさせる騒音作戦を提案します。
真田丸徳川家康
これがただの騒音ではなく、三十万人が三交代で怒鳴るわけです。ちょっと想像もつかない数です。味方まで睡眠不足になりそうですけれども。自分の家の前で誰かが夜通し騒いでいることを想像すると、かなりストレスを感じると思います。

一方で大坂城の幸村は、豊臣秀頼に今後の策を語ります。堅固な城に籠もり、相手の兵糧が尽き、寝返る者が出る者を待つという持久戦です。秀頼はこの策に納得し、父の城を守り、父の築いた安寧の世を守り、そして父を超えたい、そのために幸村に側に居て欲しいと言います。この秀頼の言葉を叔母である秀忠の妻である江が聞いたら一笑に付すことでしょう。江は「世はもはや徳川のもの、大坂の者たちはそれがわかっておらぬのです」と断言していましたからね(第四十二回)。江の理屈に従えば、安寧の世を守るどころか乱しているのは、時代の趨勢が読めないお前だろう、と言うところでしょう。

さらに素直な秀頼は、直すべき点があれば教えて欲しいと聞くのでした。幸村は、大坂城の主として、自ら持つ発言力を意識して欲しいと助言します。最終決定権は、あくまで茶々ではなく秀頼にあるわけです。秀頼は大きく頷きます。
真田丸豊臣秀頼

 

心を閉ざした姉は誰にも本心を語らない

徳川勢の鬨の声を聞き、大坂城内は動揺しています。

侍女たちも怯えますが、ここで余裕を見せるのがいつの間にか修羅場を幾多もくぐりぬけ、すっかり古参兵のようなきりです。ピンチでも空気を読まずにうろちょろしていた彼女も、今ではすっかり大物です。まあ、若い頃からふてぶてしさと度胸はあった気がしますけれども。

大坂方はやがて、相手が挑発しているだけで攻めては来ないと悟ります。
塙団右衛門直之は野良犬の真似をして「尻尾を丸めた野良犬どもめ!」と言い、皆の笑いを誘います。この野良犬の真似が妙にうまいのです。

幸村は茶々とも話しますが、彼女はまったく戦に興味がない様子。茶々の居室から去り際、幸村は茶々の妹である初(常高院)から呼び止められます。彼女は茶々の抱えた「心の闇」を語るのでした。二度の落城、父母、兄、義父の死を目にしてきた彼女は、どこかこの城とともに焼け落ちることを望んでいる、姉を救って欲しいと。戸惑う幸村に、姉は本心を語る人ではないとほのめかします。
真田丸初
秀吉が茶々を側室にした回(第十九回)は、ラストが暗い演出でした。
今しみじみ思うのは、秀吉は茶々を側室にすべきではなかった、ということです。
茶々が悪いわけではないのでしょうが、その心に巣くう闇は豊臣を暗い運命へと導くことでしょう。これもまた運命の分かれ道です。浅井三姉妹でもっとも影が薄いと言われがちでもある初ですが、姉よりずっと幸運でした。天下人よりそこそこの大名夫人になるほうが人間としては幸せな人生を送れたわけです。秀吉は茶々を日本一幸せなおなごにすると口説いていましたが、それは結局無理だったわけです。

 

生きていたーッ! 怪我は完治しておらずとも昌幸への忠義は失わず

一方、江戸の真田屋敷では、真田信之と平野長泰が大坂へ食料を密輸する手はずを整えています。
七本槍として、せめて豊臣に尽くしたいと語る長泰。柄にもないけどよ、と泣き落としにかかります。彼が一番身軽でこんな危険極まりないことができるのは、おそらく最も出世コースから外れたからだと。大名になっていたらそうそう危険なことはできないはずです。妻のこうから道中で食べる干飯を渡され、信之もいよいよ出立します。その前に稲が立ちふさがります。苦悩する稲ですが、奥の手がありました。

コツコツと杖を突く音を響かせ、出浦昌相が出てきました。真田家の家老です。
「大坂に行ってはなりませぬ!」
生きていたーッ! 生きていたのは知っていたけど、史実ではあるけど、やはりこうして見ると灌漑深いぞ、出浦さん! 家老なのにその赤と黒のあやしい服はどうかと思うぞ出浦さん! やったぞ出浦さん!
真田丸出浦昌相霜月けい
昌相は家康暗殺未遂事件(第三十一回)で負った怪我は完治していません。後遺症に苦しみつつも昌相は信之を止めます。かつての彼ならばむしろノリノリでどうすれば家康の首を取れるか提案しそうなところですが、彼が危険な賭けをしてもよい相手は、真田昌幸ただ一人ということでしょう。昌相に忠義は昌幸に捧げられています。彼は信之の危険な賭けや思いはどうでもいいのです。今、念頭にあるのは、昌幸が残した真田の家なのですから。詫びて立ち去ろうとする信之に、昌相は何かを投げつけます。

このあと信之は足止めされたららしく長泰だけが旅立ちます。信之は鳥もちをかぶって「なんだこれは!」と苦しんでいます。粘着テープ式ネズミ取りに引っかかった猫のような惨状です。どこまでも不憫なお兄ちゃんです。
真田丸真田信之

 

春は息子・大助の武勇にヒステリックな反応

大坂城では、真田家の面々が大助初陣の武勇を褒めて浮かれています。

しかしただ一人春は、この先が長い大助に危険はことをさせるな、嬉しくない、そういう危険なことは老い先短い奴にやらせろ、と激昂します。なかなかきついことを言う春ではありますが、息子の将来に思いを馳せる彼女が、その息子が死へと向かうときにどんな反応をするか、今から不安になってきます。

「つまりわしがやれってことか?」
春の言葉に内記はそう突っ込み大笑いします。
真田丸真田大助
真田丸高梨内記
鬨の声が毎晩響く中、堀田作兵衛は城内で畑すら作っています。長期戦を覚悟しているわけです。夏になれば青物がたっぷりできると見通しを語りますが、これもまた伏線でしょうか。

真田丸作兵衛

一方で挑発されっぱなしでおそらく睡眠不足であろう牢人たちはストレスをためていました。攻め手の徳川秀忠も、遅々として進まない戦況に苛立ち、攻めてはどうかと遅々に進言しています。しかし家康は焦っていません。彼はありとあらゆる手を使うつもりです。この家康の、焦らず余裕綽々の様子がまさにラスボスです。憎たらしいと同時に、これは倒せないと思わせます。

 

幸村調略のため真田信尹が城内へ 祖母の葬儀以来の再会果たすも

まず第一手は真田信尹(のぶただ)です。
しばらく徳川から遠ざかっていた彼はわざわざ呼び出され、甥である幸村を調略するよう依頼されるのでした。

幸村を調略するために、家康が提示した石高はなんと十万石。信之以上です。
まさに破格のスカウト提案ではありますが、信尹はそんな勧誘は無駄だとわかりきっているため、甥の知略と忠義を褒め称えた上で、きっぱりと断ります。しかし家康はしつこく、やむを得ず引き受けることに。久々に聞く叔父上の美声、端正なたたずまいは相変わらずです。

信尹は甥の子である真田信吉・信政の陣を訪れ、そこから佐助に連絡を取ります。信尹は城内に入ると、幸村と酒を飲み交わします。二人の再会はとりの通夜以来とのことです。世間話や互いの消息を確認しあう二人。

真田丸真田信繁2霜月けい
真田丸真田信尹
ここで注目したいのが、信尹が「信政は兄をたてることを知らん」と危惧しているところでしょう。人生の大半を、昌幸という厄介な兄をたててきた彼が言うと説得力が違います。
ちなみに信尹は昌幸と同母兄弟ですが、生年が同じという説もあるらしく、そうなると双子か、あるいは相当近接した年の差になるわけです。若い頃は自分こそが真田家当主に向いていると信政のように不満を募らせていたかもしれませんし、兄には到底かなわないと感服していたかもしれません。いずれにせよ、そのような人生を送ってきた彼からすれば、信政の態度は幼稚なものでしょう。

信尹は去り際、幸村に家康からの書状を渡します。
「読まんでいい」
と一言を添えて。
幸村は即座に書状を破き燃やします。信尹はそのまま調略失敗を家康に報告するのでした。家康は失敗にさほど落ち込むわけではなく、何やら楽しそうですらあります。家康としてもこの手は成功したら儲けもの程度の認識なのでしょう。

 

裏切り者の織田有楽斎がイイ仕事をしよる……

第二の手は、城内の裏切り者である織田有楽斎を使い和睦工作をすることでした。有楽斎はスパイとして大変優秀です。彼が和睦を持ち出すとセットで大蔵卿局もついてきて、秀頼に働きかけますからね。なぜ片桐且元を追い出して、こいつは処断できないのでしょうか。逆ならよかったのに。
秀頼は有楽斎と大蔵卿局コンビに抵抗をしますが、結局は折れてしまいました。

真田丸織田有楽斎
真田丸大蔵卿局

見せ場が持てなかった牢人たちは怒り出します。幸村は有楽斎に佐助をつけ、動向を監視します。

幸村は和睦を覆せないかと大野治長に頼まれ、最終手段である茶々の説得に向かいます。ここで、自分でどうにかできないのが治長の哀しさ。
茶々は本心を明かします。秀頼と一緒にいられればいい、城を手放してもいい、どこか遠くの小さな国に行き皆で暮らせればそれでいい、とのこと。
だからそれは、第四十回で片桐且元の提案を聞き入れていればよかったんですよ(江戸に人質として行くから母子が別れてしまいますが)。幸村はそのことは士気低下を招くから黙っていて欲しいと懇願し、和睦を覆すよう茶々に頼みこむのでした。

真田丸茶々(淀)

茶々は秀頼や大蔵卿局のもとに向かい、和睦案をひっくり返します。秀頼は、決定権はあくまで大坂城の主たる自分であると主張しますが、茶々はその秀頼を産んだのは自分だ、まことの主はこの私だと一歩も譲りません。秀頼は幸村に助けを求めますが、幸村は素知らぬふりをしています。

呆然とした秀頼は、幸村にすがるように問いかけます。そなたこそが私が大坂城の主だと言ったではないか、己の言葉の重みを知れと言ったのはそなたではないか、と。幸村は父譲りの胡散臭い表情を浮かべて、
「確かにそうは言いましたが、戦をするためにここにいるんですから、その意志にあなたが背いたら全力でひっくり返しますよ」
と。秀頼の胸中はいかばかりでしょうか。不信の種がその胸中に植え付けられたのではないでしょうか。

 

家康の甘いウソに居場所を漏らす葛藤の豊臣忠臣・片桐且元

イライラの貯まった牢人たちはストレス発散のために、夜襲をかけようとしています。
厨でイワシの酢漬けを食べつつ、発案者の団右衛門を囲んで毛利勝永、後藤又兵衛長宗我部盛親、明石全登、木村重成らが語り合います。このうち元親、全登を除いた面々で討って出ることに。

真田丸大角与左衛門

このやりとりを元親は幸村に報告。止めるかと思ったら、幸村もまた持ち場の真田丸を離れ、夜襲に参加するのでした。

今までの憂さ晴らしとばかりに、敵に襲いかかる面々。槍が折れても大暴れする又兵衛、「名刺を置いて去って行く」自己顕示欲の塊である団右衛門。先週暴れる場面がなかった組が、今週はがんばります。

真田丸団右衛門

幸村も、先週とはうってかわって黒い甲冑を身にまとい、指揮官というより前線の異常に腕が立つ兵士として暴れ回ります。堺雅人さんの殺陣、いいんですよねえ。昔剣豪の塚原卜伝を演じたほどです。

徳川軍に、いよいよ秘密兵器であるイギリス製大砲が届きました。家康は且元を呼び寄せ、茶々の居室を聞きます。そればかりは言えないと固辞する且元に、家康は甘い言葉をささやきます。

「いや逆だって。女の居室を狙うなんて卑劣じゃん? むしろ当てるとまずいから聞いているんだって!」

真田丸片桐且元

ミエミエの嘘ですが、且元は見事にひっかかって天守南側だと吐いてしまいます。家康は当然、天守の南を狙い撃ちします。城内ではきりの後輩であるお寸が「あなたは私のあこがれです!」とわかりやすい死亡フラグを口にするのですが。次の瞬間、CGで描かれた大坂城上空を、カルバリン砲の砲弾が飛んでゆきます。このカルバリン砲が活躍したのが、イギリス海軍がスペイン海軍を大敗させた1588年(天正十六年)アルマダの海戦です。軍艦に搭載する大砲ですから、飛距離はかなりのものです。

 

カトリックは×でプロテスタントが◯な理由

明石全登は徳川幕府の切支丹禁令に苦しんでいますが、徳川幕府が対立していたのはカトリック教国のスペインやポルトガルでした。戦国時代には日本に多数の宣教師が来日しており、これにも理由がありました。当時ヨーロッパではプロテスタントが勢力を伸ばしつつあり、カトリックは危機感をつのらせ、キリスト教徒にとっては未開の土地で信者を増やそうとしたわけです。

このことが日本の為政者の反発を招いたのですが、同じヨーロッパ人でも積極的に布教しようとしないプロテスタントの国ならば別でした。イギリスやオランダは徳川幕府と友好関係を保っていました。のちにイギリスは来日を辞めてオランダのみが通商関係を結びますが、江戸初期にはイギリスと貿易をしていたわけです。そうして購入したのが、この大砲というわけです。

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真田丸明石全登

この一発の砲弾が多くの人の運命を狂わせるという不吉なナレーションとともに、砲弾は茶々のすぐ側の屋根を破壊します。茶々本人は助かったものの、お寸はじめ数名の侍女が崩れ落ちた天守閣に潰され即死。茶々はこれに驚くどころか、どこか恍惚とした表情で息絶えた侍女に近づいてゆきます。きりが必死で止めますが、その茶々の頰には淡い笑みすら浮かぶのでした。

茶々は子供が父母の元へ駆けよるように、死を求めて進んでしまうのです。彼女の死は目前に迫っているのですが、それこそが彼女が求めてやまない安息なのかもしれません。

 

MVP:茶々

久々に登場した出浦昌相と真田信尹もよかったのですが、最後の場面で彼女に。砲弾で圧死した侍女に這い寄ろうとする姿は鬼気迫るものがありました。この人はずっと、小谷落城から死にとらわれていたというのが本作の解釈なのでしょう。その闇に本人すら無自覚で、同じ経験を共有する初でないとわからないというのがなんとも恐ろしく、哀れなのです。

真田丸茶々(淀)

次点は出浦昌相。昌幸に忠義を尽くし、さらに乱世に戻そうと何度もしてきた彼。彼がどうやって真田家の家老として丸くおさまるのか気になるところでした。昌幸の忠義があればこそ、ああした行動を取るわけです。昌幸の策には命と真田家を賭けることができても、信之にはできないわけです。

しかしそもそも昌相が死にかけたのは、石田三成に載せられた昌幸による、極めて雑な家康暗殺計画のせいだったわけでして。昌相の言う「昌幸の策は計画性があったし先が見えていた」という台詞は、ある意味この人が言ってはいけない……昌幸にのめり込み過ぎていて、客観的に見ることができなくなっていた、そう好意的に解釈しましょう、ってことで。

真田丸出浦昌相霜月けい

もう一人の次点は、真田信尹です。この今まで無名だった人物に、見るからにただ者ではないという雰囲気を与えているのは、演じているのが栗原英雄さんだからこそです。彼もまた『あさが来た』の五代友厚と同じ効果が出ています。即ち、今まであまりお茶の間では有名でなかった役者が、これまた一般の人には知られていない人物を演じることで、ミステリアスかつ新鮮な印象を与えるというものです。久々に見た彼は本当に素晴らしかったです。

真田丸真田信尹

 

総評

本作の持ち味はまさにジェットコースターです。持ち上げて落とし、持ち上げて落とし。先週かつてない高みに私たちを導いて「これ勝てちゃうかも!」と思わせておいて、今週のコレですよ。ひどい!

しぼんだと言えば、これで和睦になれば、あの真田丸セットもお役御免であるわけで。予告編を見ているとどっと虚しさが押し寄せました。超高速関ヶ原でも痛感しましたが、斜め上のリアリティ狙いで、主人公の味わう虚しさを視聴者にまで味わわせようとしていませんか。私は嫌いじゃないんですが、決して嫌いじゃないんですが、この意地悪さとカタルシスをそう簡単に味わわせない本作って、相当あくが強くありませんか。

このあいだ三谷さんが朝日新聞で伏線について書いたそうですが、今週は伏線バラ撒きの回でした。秀頼の父を超えたいという決意、春の大助への言葉、秀頼の幸村への不信感。そういったものがこれから先、痛みとともに突き刺さってきそうです。

大坂編の主役は幸村だけではなく、茶々もそうなのだと思った回でした。勝つために、生きる望みをつなぐためにここに来た幸村や仲間たち。しかし茶々は本人でも無自覚のうちに、死を望んでいるというおそろしさ。そんな茶々の破滅願望を見抜き、きりが目を光らせています。危ういバランスの中、まだ大坂城の面々は持ちこたえています。

 

第47回「反撃」 男も女も生きるために策と嘘を弄する――からこそ魅力ある

こんばんは。あの手この手を使うといえば本作の徳川家康ですが、屋敷Pもなかなかのものです。
◆「真田丸」最終回は大河異例の無題!屋敷CP「皆さんが副題を付けて」 ― スポニチ Sponichi Annex 芸能

私もぼんやりとこの二文字かと思うところはありますが、最終回を見たら気が変わるかもしれません。果たしてどうなることでしょうか。

 

砲弾はもう尽きている! されど茶々の恐怖は拭いきれず

さて今週の内容へ。
大坂城天守を襲った砲弾。目の前で侍女が圧死した茶々は気が変わり、幸村や牢人たちの思いを裏切って和睦へと舵を切ります。作劇上、茶々の決断が重要視されてはいますが、実際にはもっと複合的要因が絡んでいました。

このとき心理的に大打撃を受けたのは茶々だけではありません。
結果的に豊臣家を最悪の裏切り方をしてしまった片桐且元は、これよりおよそ半年後急死したとのこと。「病死とも、自ら命を絶ったとも言われる」という言葉は、ナレ死の中でも最も残酷な気がします。史実では夏の陣も参戦していますが、本作での且元はここで退場となります。

真田丸片桐且元

幸村は、砲弾はもう尽きているから撃って来ない、和睦の時ではないと主張します。しかし精神的に打撃を受けた茶々は面会すら出来ないと、きりに言われます。
このとき茶々の心配だけして現場にいたきりを心配しない幸村はちょっと酷いと思います。毎度のことではありますが、彼は女の扱いが雑です。それにしてもきりは頼もしくなったものです。

和睦となったら後はどうなるのか。不満を募らせる牢人たち。
いくら上層部が和睦を決めたとしても、この牢人たちの進路が決まらなければどうにもならないわけです。十万にも達するという牢人たちは、頼りになる戦力から巨大な火薬庫へと化しました。牢人たちに近い立場の大野治房も、和睦に反対します。

和睦となれば、あとはどこで妥協するかが問題です。上層部は評定を開きます。
ここで重要なのは今や火薬庫と化した牢人の処遇ですが、大蔵卿局は牢人を軽視し、使い捨てにする気満々。秀頼は牢人に報いたいと考えてはいるようなのですが、大蔵卿局をどうにかしないとそれも難しいでしょう。強硬な大蔵卿局と違い、秀頼は大坂城を出ることも視野に入れ、柔軟な態度を示します。

真田丸豊臣秀頼

そこへ茶々に遣わされたきりが来て、幸村を呼び出します。
茶々はやつれた様子で、幸村に砲撃の衝撃を淡々と語ります。茶々は幸村の胸に顔をうずめ、少女のような声音でこうしぼり出すのでした。
「茶々を叱ってください、あれほど和睦をしないと言っておきながら……」

真田丸茶々(淀)

本作の天真爛漫さと哀しさを持ち合わせた、少女のような茶々を見ていると、本当にこの人が気の毒でなりません。男女が抱き合うようでも艶っぽい雰囲気はあまりなく、茶々は頼りなく幼く見えます。
小谷城炎上の時に、どこか止まってしまった部分があるのでしょう。
幸村は茶々の様子を見て、彼女が城を離れるのもありだときりに漏らします。この城にいる間ずっと彼女はつらかったのだろう、と気遣う幸村。大坂城は茶々にとって、絢爛豪華な牢獄だったのかもしれません。

五人衆はじめ牢人たちは、苛立ち幸村に詰め寄ります。毛利勝永は「お前もしかして茶々様とできてないよな? 牢人を利用して自分だけいい目を見るつもりなら切り捨てるぞ」とまで凄みます。そういう艶っぽい関係ではありませんが、これは誤解されるのもやむを得ないところでしょうか。

 

稲とおこう、お通に囲まれた信之がカッコ悪いよ、悪すぎる……

一方、江戸では信之が小野お通に膝枕され、弟の境遇を案じています。弟が生きるか死ぬかのときに、真剣な口調でありながら女の膝枕とは。やはり兄上の全盛期は第三十五回「犬伏」だったということでしょう。

真田丸お通

そこへ、ただならぬBGMとともに、稲とこうが乱入! 信之は「別にいやらしいことしていたんじゃなくて、相談に乗ってもらって癒やされていただけ!」と言います。

「はい、はい」
稲は塩対応。こういう塩対応が修羅場では一番怖いんですよね。
こうは「旦那様の癒やし係は私だったのに!」とお通につかみかかり、稲にたしなめられます。
お通はにっこり微笑み「お帰りください、次のお客様がいますので」と爆弾発言! この展開には何かデジャヴがあります。昌幸が偽吉野太夫に騙されていて、見抜いた出浦昌相が偽吉野太夫を視察する回です(第三十回)。しょーもないハニートラップ、しかも京女に弱いのは父子譲りか! 京の才媛・お通がクラブの女みたいな扱いでいいのか、と突っ込みつつ、なんとも身につまされると言いますか、脂汗が出そうな展開です。

真田丸稲小松姫

真田丸おこう

信之はなんとかその場を誤魔化し出て行こうとしますが、お通のプロとしての顔を見て隠しきれぬ動揺を浮かべます。これはキャバ嬢の営業LINEトークに騙されていた男の顔だ。
さらにお通は「支払いは家来の方がしていました。今月まだ支払われていませんけど」と言いだし、稲がレシートを受け取ります。信之はあわててレシートをひったくり、言うのです。
「膝枕オプション二百文はぼったくり価格ではないか!」
ああ、どこまで格好悪いんだ、信之……知らぬ間にチャージされるオプションサービスには気をつけよう。彼と我々はそんな教訓を得ることができました。

真田丸真田信之

 

信玄に忠義を捧げた昌幸 幸村はその意志を継いでいる!

場面は大坂城に戻ります。
城内菜園を作っていた堀田作兵衛は、勝永や後藤又兵衛から「幸村は信じられるのか」と尋問されます。作兵衛は「本人はよく知らないが、昌幸様ほど義にあつい方はおられなかった」と返します。
ここで視聴者も牢人たちも総突っ込みを入れたと思いますが、作兵衛がフォローします。
生涯武田信玄に忠義を捧げ、武田の旧領回復を願い、その恩に報いるためならば何でもした、と。幸村も太閤殿下の恩に報いるためなら何でもする御方だと啖呵を切り、作兵衛は畑仕事に戻ります。

真田丸作兵衛

ただ、ここで考えるべきことがあります。
昌幸の忠義をもってしても武田旧領回復は叶わなかったということを。もはや事態は、一指揮官の忠義や人間性によってなんとかなるほど甘いものではありません。

大坂方から和睦条件を受け取った家康に、秀忠は和睦することなどないと詰め寄ります。正信は「和睦と見せかけて敵を無力化し、それから総攻めをするんです」と家康の腹づもりを明かします。

徳川方から突きつけられた到底飲むことの出来ない和睦修正条件に、豊臣方は困惑します。
「こうなったら使者同士で話し合わせるべきだ」と織田有楽斎が言いだしますが、幸村はここで条件をつけます。相手方にある最強のカード・本多正信を使えなくするために、敢えて女同士で話し合わせようとするのでした。

真田丸織田有楽斎

大蔵卿局がここで張り切ります。舌打ちしてお前は引っ込んでいろと思う視聴者も多いことでしょうが、これも彼女なりの茶々・秀頼母子を守りたいという気持ち、彼らのために活躍したいというやる気のあらわれでしょう。まあ、無能な働き者が一番厄介というのは、この人にも当てはまる言葉ではありますが。

これに対し幸村は、茶々の妹である初(常高院)を強く推薦します。

 

家康が出てこずとも徳川方には女狐がおりまして

初の亡夫は徳川方の大名・京極高次でした。交渉に立つ人物としてはうってつけかもしれません。
しかし彼女にとっては辛いことでしょう。なんせ豊臣秀吉の側室・茶々は実姉であり、徳川秀忠の正室・江は実妹なのですから。
実際、初は不安がり、幸村と茶々はその背中を押します。
ここでの誤算は、初が心許ないからと大蔵卿局をつけて欲しいと言ったことでしょうか。初にとっても大蔵卿は乳母ですから、頼りになるのでしょう。

真田丸初

徳川方の相手が阿茶局だということで、彼女を知るきりがどのような人物かと幸村に聞かれます。きりは顔をしかめ、本多正信が古狐ならば阿茶局は女狐、見た目は雌狸だと評価。幸村はきりも和平交渉の場に同行させることにします。
女優さんの顔を狸に譬える台詞を書く三谷さんはなかなか凄いと思います。

しかし、そんなことよりここで突っ込みたいのは、幸村が交渉相手を女にすると決める前に、きりに探りを入れなかったかということです。そうしていれば、きりは「だめよだめ、古狐を避けたところで相手には女狐がいるんだから」と忠告したでしょうに。どのみち交渉できる人材がいないという次点で、大坂方は詰んでいた気もしますが……。

ここでコーエーマップが出現。まさかきりまでこの図面に登場するとは思いませんでした。
和睦の場で、阿茶局は「戦なんて男の都合で始まることばっかり、それに女の手で始末をつけるのは愉快なことですね」と言います。なかなか巧みな滑り出しです。おおっと、このままだと阿茶局のペースになってしまいますぞ。

真田丸阿茶局

阿茶局は、茶々を人質にしない、秀頼の領地はそのままで危害を加えない、大坂城もそのままでよい、大坂を離れるならばどこの国でも希望をかなえる、牢人は罪を問わない、といいことづくめの条件を切りだします。さらには「そちらが戦に勝ちましたし」とおだてます。ここで阿茶局は「あとはおいおい」と追加オプションの存在をにおわせます。
ここできりが「脚がつりました!」と叫び渾身の演技で、初に合図を出します。
そもそもこんなに聡明で機転が利くきりを、たかが侍女にとどめておくのは大失敗でした。なんのかんので肩書きをつけて、交渉の場で口を挟める旅場にすればよかったのではないかと思います。阿茶局と直接やりとりできなくとも、初に助言するくらいできるポジションに、きりをつけておけば!

初は牢人のために所領の加増がなければ和睦できないと言い出します。
しかし阿茶局は巧みに大蔵卿の牢人を軽んじる立場に同調するふりをして、相手をうまく乗せます。さらには「軍事施設があるから牢人が戦おうとするんです。真田丸は取り壊し、堀も埋めましょう。そうなれば牢人もあきらめて退去。大御所様も一安心、よいことづくめではありませんか。そういたしましょ」と話をまとめようとします。まさに悪魔のオプション!

ここで再度きりが脚をつったふりをして初に合図します。初は「このことはいったん城に持ち帰りたい」と言いますが、阿茶局と大蔵卿局は強引に和睦を決めてしまいました。

あまりに出来すぎた和睦条件の上に牢人たちの処遇は曖昧

和睦の条件を持ち帰った阿茶局に、家康たちは有頂天。家康は阿茶局の肩を揉み浮かれます。これは大坂方、つらいことになりそうです。

一方大坂方では、和睦条件において牢人の処遇があいまいであることが不安視されます。あまりにうまい話に幸村は不安を抱き、その場にいたきりに話を聞きます。
ここで堀の埋め立てと真田丸の破壊を聞いた幸村。タイミングよく高梨内記があわてて駆け込んできます!

真田丸高梨内記

果たして幸村と視聴者の夢と受信料が詰まった真田丸は、徳川の兵によって無残にも壊されていました。
愕然とする幸村たちの気持ちがわかるのは、これが我々の受信料だと思えばこそかもしれません。
幸村はどういうことなのかと大蔵卿局に詰め寄りますが、相手は事の重大さをわかっていません。見かねた大蔵卿局の息子・治長は「母上は豊臣を滅ぼすつもりか」と呻きます。

真田丸大野治長

真田丸大蔵卿局

この堀の埋め立てや真田丸の破壊ですが、「堀の埋め立ては上層部が了承の上でなされたが、戦う気のあった牢人にとっては騙し討ちのように感じられた」という描写になっていると思います。徳川方が前触れもなしにいきなり騙し討ちのように埋めたという説ではなく、双方了承の上で埋め立てられたという最新の研究をふまえた描写でしょう。

かくして難攻不落の大坂城は、防衛の要を失い、ただの絢爛豪華な高層住宅と化したのでした。
絶望……その先には絶望があります。
徳川父子は裸の城と化した大坂城を見てあと一歩だと喜びます。あとは相手が和睦を破るよう、仕向けるだけです。牢人たちの処遇をあいまいにし、不平不満を焚きつけるように追い詰めたのも家康の策でした。
「これぞ城攻めよ! わはははははは! わははははは!」

真田丸徳川家康

 

「望みを捨てぬ者だけに、道は開けるとそなたは言った」

幸村ですらもはやもう万事休すと見定め、勝ち目はないと言い切ります。全ては私の力不足と反省する幸村です。
が、再三書いて来たように石田三成と大谷吉継をもってしても救えなかった豊臣、倒せなかった徳川ですからね。仕方ないでしょう。
幸村は残念ながら、この二人にも才能は及びません。父・昌幸譲りの策と戦術は、せいぜい千単位の兵士がぶつかる、山の小城を守り抜く程度のスケールだと、だんだんこちらにも伝わりつつあります。

幸村は牢人に、城を枕に討ち死にするなど考えず立ち去れと言い放ちます。しかしここを去ったところで、もはや行くあてのない牢人たちでした。いわば彼らはやけっぱちでした。牢人の処遇を保証することは、和睦においてやはり絶対必要な条件で、曖昧にしてはいけなかったものなのです。

妻の春と長男・大助に上田へ戻るよう言いつける幸村。その元に、牢人たちが集まってきます。もはや行く場所がない彼らは、勝つためにここへ来たのではないかと幸村に訴えます。
火薬庫は湿気っているどころか、もう火がくすぶっていました。

真田丸春

真田丸真田大助

さらに秀頼も幸村の元に来て、手を執りこう語ります。
「望みを捨てぬ者だけに、道は開けるとそなたは言った。私はまだ捨ててはいない」

ここまで言われたら幸村は応じる他ありません。大坂の城は、再度戦へと動き出します。
思えば幸村が秀頼に語り、そして秀頼が幸村に語ったこの台詞は、第一回で昌幸が勝頼に言ったものと同じでした。そしてこうしてくすぶる牢人が決起することも、すべては家康の策なのです。

 

MVP:阿茶局

第四十五回で、大軍が落とすことができなかった「真田丸」を弁舌ひとつで彼女が破壊してしまいました。こういうことをやられると、いかに策が大事なものであるかわかるというものです。本作で策を多用したということであれば真田昌幸が真っ先に来るでしょうが、相手にとって最も致命的な策を用いてきたということであれば本多正信の方が上ではないかと思います。
そして阿茶局は、まさしく女版本多正信です。
こんな手強いカードが複数ある徳川方に死角はありません。大蔵卿局はおもしろいように墓穴を掘りましたが、たとえ初ときりだけで向かったところで、為す術はなかったことでしょう。

真田丸阿茶局

そして裏MVPはきりです。
前半はトラブルメーカーとして嫌われていた彼女を、頼みの綱として応援することになるとは思いませんでした。茶々の命を救い、和平交渉では体を張った活躍で事態を打開しようとしたきり。阿茶局が女版本多正信ならば、彼女は女版真田幸村であり、本作の裏主人公であったと言えるのではないでしょうか。
そうなると結局主人公と結ばれない異色のヒロインであることも納得ができます。ある意味彼らもまた「ふたりでひとつ」でした。皮肉なことに、実力はあってもなかなか認められず埋もれていたところまで、このふたりはそっくりなのです。

 

総評

序盤、本作のヒロインがブーイングを浴びていたとき、私はこう書きました。
「阿茶局や大蔵卿局が既にキャスティングされているということは、終盤で女性が交渉役として活躍するのではないか。今は鬱陶しくてもこの先それだけではない女性の活躍が見られるのではないか」
まずは自慢させてください。当たりました!
不吉な予言ばかり当ててきた自覚があるので、良かったと思います。それでもきりの化けぶりは流石に予想すらできませんでしたが。

真田丸信繁&きり

本作のこの女性による交渉がおもしろいのは、従来の「優等生的」大河ヒロイン像を逆手にとっているところです。
今回の交渉の場では、阿茶局が見事に猫をかぶって「男が始めた戦に女は巻き込まれるばかりで」と切り出します。私たち女は被害者です、女は平和を愛するのに男はわからない、といういわばテンプレ的ヒロイン像です。それから甘く優しい言葉で、大坂城の防衛施設を骨抜きにしてしまうわけです。
新聞のラテ欄には「阿茶局の尊大な態度」とありましたが、実際に見てみると阿茶局の態度はいつになく柔らかいものでした。それゆえ、いかにも胡散臭いのです。

男が求める癒やしを提供し続け上昇婚を成し遂げた梅然り、お嬢様のようでとんでもない性格だった春然り、膝枕が実は有料サービスだった小野お通然り、本作でやたらと優等生的な態度を取るヒロインには裏があります。男も女も、生きるために策と嘘を使うのがこの世界なのです。

先日『スタジオパークからこんにちは』にゲスト出演した堺雅人さんは、本作には「お嫁さんにしたい女性が一人もいないからおもしろい」と語ったそうです。その通りだと思います。かわいげのない無茶苦茶なヒロインを、ブーイングにもめげずに出し続けた本作は、退屈な大河優等生ヒロインというテンプレートをも、OPのパッカーンと割れる壁のように壊しました。
来年もこの手の強くてかわいげがなく、それだからこそ魅力的なヒロイン路線を踏襲して欲しいものです。そうだ、大河ヒロインが笑顔でおにぎりを握る時代は終わったんだ……!

◆堺雅人と柴咲コウ「柿」と「凧」交換 “大河主役”をバトンタッチ

と、ここまで褒めていて何ですが、女性の扱いについては極端な部分もあります。その筆頭が大蔵卿局です。秀頼や茶々に向かう憎悪を彼女と有楽斎が一身に引き受けている印象があります。損な役回りですよね。
しかし、彼女だけが悪いわけではないのです。なぜここまで豊臣と徳川、女性の差がついたかと言いますと、そこは根本的に権限を持つ男性が、女性という切り札をうまく使えていないからです。

家康には女であろうと実力を見抜く目がありました。
だからこそ、出生はきりと大差ない後家である阿茶局の素質を見抜き、側に置いて鍛えることで、最強の手札とすることができたわけです。後家好みだの、経産婦を選ぶだの言われてきた家康の女性遍歴ですが、頭の中身で側室を選んでいたのだとすればただ者ではありませんね。

女を見る目で言えば、偽吉野太夫に騙された昌幸、営業膝枕が見抜けない信之、きりの持ち腐れである幸村と比較して、本作の家康は抜きんでています。特に幸村に関しては女の扱い方が雑で、なめくさっているからこそ阿茶局のような存在すら想像もできないわけです。
最上級の手札となるポテンシャルを秘めたきりを、あまりにぞんざいに扱い続けました。コーエーのゲームと現実の違いはたくさんありますが、能力値がまったくわからないこともそのひとつです。ゲームと違い現実では、能力値を読み取る側の素質が重要なのです。たとえそれが、女相手であっても。

「女はこわい」
「歴史の影に女あり」
などなどよく言われることですが、むしろ男の女を見る目、使い方次第、ということではないでしょうか。

そしてもうひとつ、堀を埋め立て、牢人を退去させようという考えは、そんなに悪くないのではないか、ということです。
堀の埋め立ては徳川方が勝手に騙し討ちするように埋めてしまったという通説がありましたが、本作では和睦交渉時に条件としてつけられました。

この堀の埋め立てを卑劣と見なしたくなる気持ちもわかります。それは真田幸村ら徹底抗戦派に感情移入した結果だと思います。
考えてもみてください。「和睦」というのは停戦であり、和平交渉です。十万人の兵士が収容できる軍事施設をそのままにしておいて、和平交渉もあったものじゃないでしょう。
もうこれ以上戦わないと示すからには、城を軍事施設ではなく、ただの政庁や居住区域に作り替えることはむしろ当然と言えます。冬の陣のあとを徳川から見れば、むしろ豊臣方が約定違反をしているわけなんですね。停戦すると言っておきながら、武装解除しないわけですから。

真田丸大蔵卿局

そしてそういう状況を作り出しているのは、大蔵卿局が「戦いたくて仕方ないものたち」と評した、幸村をはじめとする牢人たちなのです。大蔵卿局のように彼らを和睦の障害と見なして切り捨て、さっさと秀頼が四国にでも移ってしまえば、家康は歯がみしつつ、見逃したかもしれません。
華々しく戦うことが目的の牢人とは違い、茶々と秀頼の命がともかく大事な大蔵卿局ならば、この選択肢はごく当然のことではないでしょうか。

権力の移り変わりの場において、ひたすら恭順の姿勢を示し、家臣を切り捨て、居城を出て、領地を返上し、悠々自適の余生を過ごした権力者がいます。徳川家康の子孫である慶喜です。
今回の中途半端な情けに流されて滅びる秀頼と比べると、確かに慶喜は聡明であったのでしょう。
ただし、生き様としてどちらが美しいか、物語になるか、と問われたならばなかなか難しいところですが。

第48回「引鉄」 眠りから覚めた武器に備えられた哀しきトリガー

こんばんは。
完結も近い本作ですが、それでもニュースは継続的に出ています。
「真田丸」堺雅人「10%現場」の精密演技「三谷氏は厳しい」スピンオフ熱望? ― スポニチ Sponichi Annex 芸能
「真田丸」長澤まさみ“ウザい”意に介さず 三谷氏に感謝「出会えない役」
『真田丸』の藤井隆「信幸さんの悪口を吐くシーンは、ファンの方に申し訳なかった」

さて今週です。
阿茶局の策によって完封されてしまい、堀すら埋め立てられ、和睦が成立してしまった大坂方。
絶望しているかと思ったら、今日も牢人たちは生き生きと、元気に家康本人に夜討ちをしかけます。この場面は大変格好よいのですが、和睦すると言っておいていきなりこんなことをして、一体何を考えているのか。こんなことをしたら、和睦なんてポーズだけとバレバレじゃないですか。

夜襲を終えて帰って来た牢人を労う幸村は、ここで終わりにはしません。奇襲に怯えた家康が京に戻ることを見越して、そこを佐助に襲われる計画です。内通している織田有楽斎から家康へと情報を流し、裏をかくわけです。
佐助は暗殺へ向かう前に、きりに戻って来たら夫婦になって欲しいとプロポーズ。きりは即座に断りますが、ここで「はい」と言ったら死亡フラグになりかねないので、これはこれでよいと思います。

真田丸佐助

奇襲に怒る秀忠と違い、家康はゆっくりと待ちます。敢えて牢人に手をつけずに去ることで、不満をくすぶらせ相手から仕掛けさせるわけです。

大蔵卿局と有楽斎は戦の火種となりかねない牢人を退去させようとします。これには幸村も秀頼も反対。視聴者は幸村たちに感情移入していますが、道理として正しいのは大蔵卿局らの気がするんですよね。

 

信長の弟であることを誇りながら城を去る

その後、幸村は有楽斎の居室で、彼の裏切りを追及します。
彼は彼なりに姪である茶々とその子である秀頼を案じているそうで、豊臣にとって不利になる情報は漏らしてないとのこと。この言葉自体は嘘とは思えませんが、幸村にそんな言い訳は通じません。ここでの有楽斎は信長の弟である誇りを見せつつ、幸村に脇差しをつきつけられると交渉しようとし、なかなか見ていておもしろい往生際の悪さを見せ付けます。
こうして有楽斎は城を去り、穏やかな余生を過ごすのでした。先週退場の片桐且元は悶死したのに……と言う気がしないでもありません。世の中、不公平なものです。

真田丸織田有楽斎

ただし、ここで気をつけたいのは家康が読んでいる密書の署名です。「お」、なんですね。しかし幸村が破り捨てた密書には「う」と書いてあるわけです。「おだうらくさい」ですから、「お」でも「う」でも当てはまりますが、わざわざ署名を変えるものでしょうか? それとも別の内通者がいるのでしょうか?

京へ向かう道中、休憩をしていた家康は佐助に襲撃されます。
刀で応戦するもなす術もなく、凶刃に斃れる家康。歴史が変わった!? 師匠の出浦昌相も成し遂げられなかった家康の暗殺に成功する!? ……ハズはなく、実は影武者でした。
本物は二条城に入っていたのです。落ち込む佐助を励ます幸村。しかしこの幸村の策は、実は矛盾していて無謀な行動であることがこのあとわかります。

真田丸徳川家康

 

牢人抱えすぎ 和睦する気もなさ過ぎるだろ

年が変わり、慶長二十年。家康も秀忠も大名たちも戦場からはとりあえず去りました。
しかし牢人はかえって数を増やし、城に入っております。
和睦すると言いながら十万人の兵を城に入れておく……危険です、危険過ぎます。

幸村は、茶臼山(家康本陣)と岡山(秀忠本陣)を空堀で結び、防衛戦とすることを提案。大野治長、木村重成も承諾します。
治長は苦い経験から学んだのか、大蔵卿局の意見は一切聞かぬこととします。その対応が遅かった気がしますが。でも、なんだかうっすらと希望が見えて来ました。

真田丸大野治長

幸村は牢人の去就が決まらないから退去させないのだと、家康を欺くことにします。秀頼はこの策をおもしろがりますが、いったん和睦を約束しながらまったく誠意に欠ける態度だと思わざるを得ません。戦国乱世ならそれもよいのでしょうが、事態を本当にちゃんと解決する気があるのであれば、こういう策を弄する態度は取ってはいけません。

さらに幸村は秀頼に、牢人たちが身内の者を呼び寄せて城に入れることを提案。
城には父や夫、かつての主君との再会を喜ぶ者たちであふれます。塙団右衛門が美人妻といちゃついたり、大蔵卿局・大野治長・治房母子が酒を酌み交わしたり、賑やかな光景が見られます。ここで大角与左衛門はとうの昔に妻子を亡くしている情報が挟まれます。何かの伏線でしょうか。

真田丸大角与左衛門

幸村の秀頼へのもう一つの提案は、秀頼が城を出て四国へ移ることでした。茶々も同意しますが、これを言い出すのはちょっと遅すぎるのではないでしょうか。
牢人は退去させない、城は出る。それはちょっと虫が良すぎやしませんか? 牢人を全員退去させ、完全に和睦をのんだところで言い出すのならばともかくとして、もう一戦して有利な和睦条件を仕切り直しできると信じるなんて、そんなセカンドチャンスがあると本気で思っているのでしょうか。

実は本作で一番甘いのは幸村のようです。

真田丸真田信繁2霜月けい

 

初めて顔をあわせる幸村と信之の子どもたち

長宗我部盛親はもう御家復興をあきらめています。幸村に促されて、秀頼が欲しがっている国以外でどこが欲しいか、ならば淡路島がよいと答えてはいますが、本音はどうなのでしょうか。

秀頼の正室で秀忠の娘である千が、幸村に声を掛けます。自分を江戸に戻すかわりに戦を回避できないかと持ちかけますが、幸村が人質である彼女を手放すわけではありません。彼女のことを夫の秀頼はじめ皆案じていますが、その気遣い程度で楽になれるわけもありません。本気で幸村が秀頼の国替えと豊臣家存続を考えているのであれば、ここで千の提案をこうも簡単に一蹴すべきではない気がするのですが。

幸村は、真田信吉・信政を訪れることにします。大助も、いとこと初めて顔をあわせます。矢沢三十郎や小山田茂誠も嬉しそうです。

真田丸真田大助

真田丸真田信吉

真田丸真田信政

留守番の堀田作兵衛が城内で畑を耕していると、春が手伝いだします。きりは、土仕事はしないことにしていると一旦手伝いを断りますが、春のあまりの手際の悪さに、結局手伝うことにします。

三十郎と茂誠にとって今や幸村は敵ですが、それでも再会の喜び、彼の考える策にわくわくする気持ちは止められません。信吉と大助は仲良く話す一方、稲の息子である信政は親戚だろうが幸村父子は大罪人だと厳しい態度でのぞみます。ついには大助に掴みかかる信政。
そこに幸村ら三人が来ます。信吉はとっさに相撲を取っていたと弁解しますが、その場の様子から実情はバレバレ。傅役である三十郎は、信政に怒ったのでしょう。信政を容赦なく投げ飛ばします。この容赦ない血の気の多さに、父である矢沢頼綱の血を感じます。

真田丸矢沢三十郎

真田丸小山田茂誠

幸村は茂誠に野戦のコツを聞きます。はじめは謙遜していた茂誠ですが、満面の笑みで何でも聞いてよいぞ、と言い出します。幸村が知りたいのが家康の首を取る秘策だとすれば、そんないい笑顔で答えるもんじゃないだろ、と突っ込みたいところです。
野戦で敵を討つのならば槍がよいかという幸村の問いかけに、包囲されるからリーチのある鉄砲の方がよいと答える茂誠。とはいえ、鉄砲は装填に手間取るというデメリットもあると続けます。
幸村は江戸の兄と姉に向けて手紙を書き出します。

利休の庭から掘り出されたものは……馬上筒?

城に戻った幸村は、農作業をしている春やきりを見かけます。春はきりに敵愾心を燃やし、頰に泥を塗りたくります。この顔に泥を塗りつける場面は、第一回の薫やとりの逃避行を思い出させます。
きりは、この畑はかつて千利休の茶室があったという情報を幸村に語ります。春はきりの言葉に感心する幸村に対抗しようとして、半端な青菜を詰んで怒られてしまいます。

真田丸春

幸村が畑仕事を手伝い出すと、農具が何かに当たりました。
不審に思い掘り出してみると、土の中にあったのは千利休の印がついた箱でした。思えばこの印から「死の商人」としての一面が露呈し(二十四回)、利休は命を落としたのでした(二十五回)。
中を開けると、銃身が短い不思議な形の鉄砲が出てきました。

火器に詳しい毛利勝永に聞いてみると、これはフリントロック式の「馬上筒」でした。
火縄に点火せずとも撃てるので、馬上からでも使えるわけです。利休はこの新製品をいつか高値で売りさばこうととりあえず隠して、そのまま亡くなったというわけですね。まさか茶人兼死の商人という設定がここで生きてくるとは。

真田丸毛利勝永

牢人たちは、渡された支度金が尽きつつありました。城内に牢人を養うだけの資金はありますが、幸村はとりあえず金を配ることには反対します。これに納得できなかったのが、治長の弟で牢人に近い立場の治房です。彼は勝手に蔵を開け、配下の牢人に金銀米を配ってしまったのでした。

治長は弟の軽挙妄動に激怒しますが、時既に遅し。一部の者だけが恩恵にあずかったとなると、他の牢人も騒ぎ出すでしょう。幸村は全ての牢人に金を渡すことを提案。秀頼もこの提案を受け入れてしまいます。

真田丸大野治房

幸村は兄に不出来な弟と罵られた治房を、自分と信之の立場を比べて慰めます。
ここでの幸村の台詞はとてもよいのです。今までの真田兄弟の歩みを見ていると感動的です。しかし治房にとっては何の意味もないものでした。治房は堀を掘り返したいとつぶやきます。

それにしても、大野兄弟にせよ、真田信之の子である兄弟にせよ、世の中には出来がよく仲の良い兄弟ばかりではないのですよね。彼らと比べると、真田兄弟の素晴らしさがわかるというものです。そんな自分たちを基準にして見てしまうと、他の兄弟のことはかえってわからなくなると、幸村は気づいていません。

 

又兵衛が幸村に迫る「腹をくくるときかもしれねえぞ」

牢人に配った金銀は裏目に出ます。
牢人たちはこぞって武器を買い求めたのです。

真田丸団右衛門

幸村と治長は、この報に愕然とします。牢人が武器を買いあさっているとなったら、これはもう和睦の手切れも秒読み段階になります。幸村の要害を作る計画は、間に合わないでしょう。

さらに悪いことは続きます。治房は兄を襲撃し、重傷を負わせます。この事件には大蔵卿局も一枚噛んでいるようです。治長は寝込んでしまいます。
さらに治房は堀の掘り返しも強行。心の奥底では戦がしたいと思っている又兵衛は本気で止められません。
「腹をくくるときかもしれねえぞ」
又兵衛は幸村に迫るのでした。

真田丸後藤又兵衛

堀の掘り返しを聞いた家康は、機は熟したと喜びます。家康自身も出陣し、今度こそ牢人を成敗してやる、自らの手で奴らを滅ぼすと宣言。

幸村は城内で馬上筒の訓練をしています。
江戸では信之が、弟の手紙を読み驚愕します。一見普通の内容ですが、兄には弟が死ぬ覚悟であると読み取ったのです。信之は家康と刺し違えるつもりだという弟の悲愴な覚悟を悟り、弟を止めるため、大坂へ向かうことにするのでした。

城内には、幸村が馬上筒を撃つ音が響いています。

 

MVP:大野治長

様々な作品で、茶々との密通説まで持ち出され、色男でも無能で嫌な奴として描かれて来た治長。本作は有能とまでは言えなくとも、常識的でまっとうな判断力を持つ人物として描かれております。そんな彼の良さが今週は出ていたな、というところです。

牢人たちも格好良かったんですけどね。
銃を構える毛利勝永とか、真田幸村とか。でもこの人たちが結局事態を悪化させているんだよな、と思うと複雑です。

真田丸大野治長

 

総評

作劇的には素晴らしいものがありました。
幸村と茂誠の会話で、騎馬での突撃には馬上攻撃できる銃があれば最適だと導かれ、そのあとに千利休が隠していた馬上筒が出てくるわけです。
利休は死を前にして「これもさだめじゃ」と語っていました。リスクをわかっていても危険な商いに手を染める業を背負っていた利休のように、今の幸村も戦い続けねばならないという業を背負いました。さらにはかつて石田三成が語っていた「戦への流れは一度始まると止まらない」という言葉も思い出されます。巨大な運命の歯車が廻り、主人公たちはそれに取り込まれてゆくのです。

勝てるかもしれない→しょうもないことで躓いてやっぱり駄目な方向に→石田三成と大谷吉継さえいればこんなことにはならないのに→二人とも健在で、上杉家や宇喜多家はじめ大勢が味方についた関ヶ原でも、家康に歯が立たなかったという現実→勝てない、家康強い→絶望
そんなループを何度繰り返したことか。
そのたび、大型巨人が壁から頭をのぞかせたような気分になったことか。
今週もこのパターンでした。

戦争をする上で最も難しいことは何かというと、終わらせ方とよく言われます。なんとか終わらせようとしても、余力があるとか、あるいは好戦的な勢力がいると、彼らがなんとかして終戦を阻もうとするのです。
本作の生々しさは、史実を再現するため現実ともリンクしてしまうところでしょう。本作を見ていると、なぜ世界から紛争や戦争はなくならないのか、種は蒔かれてしまうのか、そんなことがわかる気がするのです。本作に夢中になったお子さんには、世界から争いがなくならない理由を、説明しやすくなるんではないでしょうか。戦争をやめたがらない者、戦争続行に必要な資金、武器があればなかなか終わらないんだよ、ということです。

先週決まった和睦があっさりとやぶれてしまったのは、牢人が統制できなくなっていたからです。そのときにも記しましたが、十万人の戦闘員がそこにいるだけで危険なのです。牢人=火薬と譬えたわけですが、まさにこの火薬が最悪の形でくすぶり、爆発しようとしています。この牢人を何とかしようとしなかった時点で、大坂方は真面目に和睦する気がないと家康に思われてしまっても何の言い訳もできないわけです。

和睦なんて無視して本陣を襲った今回の冒頭部。たしかに爽快でしたが、ルール違反です。さらに幸村は、四国へ秀頼を移すことを提案しながら、家康の首を取る気もあるわけで佐助に襲撃させているわけです。家康の首なんて取ってしまったら、秀頼が国替えするなんて調子のいい話が通るわけがありません。

有楽斎を追放し、大蔵卿局の口を封じ、これで勝利や成功へ近づいたと思いますか?
実際はその逆です。本作において、無邪気で美しい死に神である茶々は、今回も死へと導く相手をしっかりと掴んでいます。茶々は幸村がいる限り大丈夫だと思っていますが、彼こそが実は茶々母子を死へと向かう道にがっちりと固定する駄目押しみたいな存在なのです。

真田丸茶々(淀)

土の中から掘り出された箱には、馬上筒が入っていました。
この馬上筒を人に譬えると、幸村その人かもしれません。
ずっと眠っていた、優れた武器。でもその武器を箱から出したところで、茶々や秀頼にとって救いになったのでしょうか。武器というのは確実に使いこなせる人が持たなければ意味がないものです。武器というのは、時と場合を得なければ役に立たないものです。
この武器は追い詰められた人の命を絶つという、哀しい役目を果たそうとしています。

第49回「前夜」 四百年の刻を経ても色褪せない、ただ好きなように生きること

こんばんは。
来週で終わりだという現実を受け止めきれないほどです。そんな本作は、数字の上でも話題になっていたとまた一つ証明されました。
◆Yahoo!検索大賞ドラマ部門は「真田丸」NHK作品3連覇(スポニチアネックス) – Yahoo!ニュース

さらにはこんな驚異的なイベントも!
◆大泉洋「真田丸」6日連続トークショーに参戦!16日、上田熱狂に拍車(スポニチアネックス) – Yahoo!ニュース
もうドラマも終わろうという中でこうしたイベントがあるというのは異例です。スピンオフをあと二年くらい放送して欲しい、という方も多いのではないでしょうか。

発見ニュースもまだ出てきます!
◆「真田丸」初の発掘調査 盛り土や堀の跡発見か | NHKニュース

最終回を前にして熱狂の佳境にある状況。切ないけれど悪くありませんね。
では、今週のレビューへと参りましょう。

 

弟に会うため家を飛び出す信之に周囲の女たちは

ついに追い詰められ、夏の陣目前となった大坂方。
弟から書状を受け取った信之は、幸村の覚悟を悟り、直接会って説得する決意を固めます。

真田丸真田信之

この説得は史実ではありません。記録に残らないような移動をしたという設定になるようです。こうは信之の行動に理解を示すものの、稲は内通の疑いをかけられたらば、信之にとっても真田家にとっても危険であると強い態度で止めようとします。二人ともどうしてそういう行動を取るか理解できますし、強い態度の稲も悪く思えないように描かれていると思います。稲は家を守るためならば毅然として強いという、武家の女性らしさが出ています。
流石の稲も折れ、一切身分がわかるようなものを身につけぬことを条件に、やっと送り出します。妻同士の立場も性質も異なりますが、二人とも信之の身を案じているのです。

真田丸稲小松姫

信之と幸村の姉・松は、幸村への土産を信之に託します。
どこまでも楽天的で明るい松は、祖母・とりのようなどっしりとした落ち着きも身について来ました。うっとうしい、能天気過ぎるとすら一部視聴者から言われていた彼女ですが、今となってはこの楽天的なキャラクターが救いです。
旅立つ信之に、こうは六文の銭をお守りとして渡します。序盤はうるさくて嫌われていた本作の女性たちですが、今は殺伐とした中でオアシスとして機能しています。

しかしそんなオアシス系ヒロインだけではないのが本作。出陣を前にして、秀忠の妻・江は、夫に松岡修造系の暑苦しいエールを送ります。この人は娘の千姫はともかく、姉・茶々の身は案じていません。この暑苦しさは力強いものではあるのですが、なかなかの圧力で、秀忠の苦労が想像できるんですよね……。

真田丸松霜月けい

 

「豊臣の血は根絶やしにする! 父上は甘すぎる!」

大坂城では幸村が献策を行います。幸村が出した京都への出撃案は、秀頼を伏見にまで出るものでした。
しかし、大蔵卿はそれを嫌がり突っぱねます。
毛利勝永と後藤又兵衛は、天王寺に出撃し秀頼は城から出さない策を出します。これには大蔵卿局も安心。作戦は決まります。
バラバラだった牢人が一致団結して出撃する姿は心強いものがありますが、ここまで追い詰められなければまとまらなかったんだよなあ、と複雑な気分に。

ここで、すっかり視聴者に嫌われてしまった大蔵卿が、茶々と秀頼母子のために尽くしている――と幸村と語り合うフォローのような場面が入ります。
彼女なりに思う所があっての行動ですから、この場面はよかったと思います。もっとも、彼女は牢人は大嫌いだそうです。

真田丸大蔵卿局

徳川方は、家康秀忠父子・本多正信・正純父子が策を立てています。高齢の正信は疲れたのか、うとうとと居眠りしております。
家康は牢人さえ処分するならば秀頼を助命するという案を出しますが、秀忠は珍しく激昂し「豊臣の血は根絶やしにする! 父上は甘すぎる!」と叫びます。
家康はあきれたように「恐ろしい男に育ったのう」とつぶやきます。

二代目としての秀忠がついに完成しましたね。秀忠は容赦なく、時には己の血を分けた兄弟までも、断固として改易していきます。江戸幕府の強固な土台を踏み固めたのは家康だけではなく、秀忠の功績も「大」なのです。

そして大坂城の秀頼も、徳川からの最後通告を蹴り、ついに両者は手切れに。家康は豊臣と大坂城の終焉を悟り、喜ぶどころかどこか複雑な顔を浮かべます。

真田丸徳川秀忠

 

後藤又兵衛に35万石のオファーを出すだけでええんじゃ

信之は真田の陣にたどりつきました。ちょうど真田信尹も幸村に会いに行くそうです。

四月二十九日、大野治房・塙団右衛門が浅野方が樫井にて衝突し、戦いが始まります。ここで塙団右衛門は頭部に銃弾が命中しあえなく戦死。城内に運び込まれた遺体を見て
「いずれは皆も、この男の横に並ぶのですか?」
と茶々はつぶやきます。
慌ててきりにたしなめられる茶々。彼女は美しい死神です。今の茶々はいわばジェットコースターで登っていくような気分なのでしょう。いっそ落ちてしまえばまだマシで、転落に向けてカタンカタンと登ってゆく時は本当に嫌なものです。あとは墜ち、死まで降る坂道へと、彼女たちは登りつつあるのです。

真田丸茶々(淀)

幸村たちは台所で策を練ります。後藤又兵衛と木村重成が道明寺に向かいます。
しかしこの策は家康に筒抜けでした。大坂から何らかの手段で情報を得た家康はルートを変更し、道明寺方面には伊達政宗が進むことになります。
この会話をぼーっと聞いていた正信は、家康に「もう帰れ」とまで言われますが、突如「又兵衛が気になりますな」と言い出します。そして、調略を使うことを献策します。

正信の命を帯びた徳川方の使者は、又兵衛に播磨三十五万石をオファー。又兵衛は即座に断りましたが、この噂話が豊臣の陣に広められます。又兵衛はこの噂を打ち消すために焦るだろう、そうなれば陣は乱れる。
れが正信の調略です。本当にこの人はおそろしい。

真田丸後藤又兵衛

真田丸本多正信霜月けい

 

「黙れ小童ァァァ!」の室賀・息子が信之たちを取り調べ

真田信尹と信之は、徳川義直の陣で取り調べを受けています。
そこを通りかかったのがスルメをくわえた平野長泰。食料輸送作戦は失敗していたようです……そこへどこか見覚えのある青年がやって来ました。

信尹は家康の密命を帯びているという書状を出します。青年は尾張徳川家の家臣・室賀久太夫と名乗ります。あの室賀正武、真田昌幸の策で暗殺された「黙れ小童!」の人の息子さんです。生きていたんですね!

真田丸室賀正武霜月けい

本人も真田の名に気づいたのか、父の死の恨みを語り出すのですが、そこで……
「黙れ小童ァァァ!」
「すみません」
信之が一喝。
世代を超えたまさかの「黙れ小童!」返しでした。本作のファンにとっての流行語大賞は、この一言でしたぞ!

信之と信尹は、ついに幸村と対面します。
信尹は前回説得に来た際はまるでやる気がありませんでしたが(第四十六回)、今回は幸村の命がかかっているだけに真剣です。父・昌幸が欲してやまなかった信濃一国四十万石という条件を伝え、説得にあたります。

信之は、弟の心中を察し、説明します。徳川に従いたくないならそれでもいい。それでも死んではならぬ、今度もまた赦免を勝ち取る――。幸村はぽつりと「それでまた十四年」と言葉を挟みます。
このあたりが長男と次男の差なんでしょうね。生き延びて、何としてでも家を存続しなければいけない、背負うものが多い長男。身軽かもしれないけれど埋もれがちで、何とかして歴史の中できらめきたい次男。その気持ちはやはり弟である信尹の方が理解できそうです。

それでも信之は、昌幸・信之・幸村の三人で酒を酌み交わそうと誓ったことを思い出させ(第三十五回)、説得を続けます。父は亡くなったけれどもまた兄弟で酒を酌み交わしたいと言います。幸村はそれならばここで酒を、と言いますが信之は断り帰ります。
「兄上と酒を酌み交わしとうございます! 兄上……」
「これは今生の別れではない!」
兄弟は盃を交わすことなく、別れてゆくのでした。

真田丸真田信尹

一方で信尹は甥の頰を撫で「生きたいように生きればよい」と告げます。
かつて信尹は、「わしのようにはなるな」と幸村に告げました(第八回)。その言葉の通り、別の生き方を選んだ幸村に彼は理解を示しているのです。

又兵衛、重成、盛親たちも次々に……

徳川家康は、今回の合戦では京都で警護役となった上杉景勝と盃を重ねています。家康は秀頼への恩義を口にするものの、それでも秀頼公がここにいては徳川のためにならない、それゆえ滅ぼすと本音を語ります。
何故そんな本音を自分に告げるのかと疑問に思う景勝。心の中にやましさがあるのでは、大義がないことが気になるのでは、と問う景勝。確かにそのへんは景勝の家臣である直江兼続が長い手紙で突っ込んでいましたね(第三十四回)。

真田丸徳川家康

真田丸上杉景勝霜月けい

景勝は、真田幸村の姿を見た、彼は己が生きたいと思った人生を生きていると家康に語ります。景勝は秀吉に屈した鬱屈を、義に生きられない苦しみを幸村に吐露していました(第十五回)。家康は忌々しそうに父子二代でたてつく真田に悪態をつきます。信尹や景勝が選べなかった生き方を、幸村は選んだのです。

幸村・勝永・又兵衛は出陣を前にして酒を酌み交わします。
幸村は又兵衛の寝返りの噂を持ち出し、「決して焦るでない、心を乱すな」と釘を刺します。幸村も誘われていることを明かします。勝永は何故自分にはオファーがないのかと不満なようです。

真田丸毛利勝永

又兵衛は木村重成が「お会いできて光栄でした」と語るのを聞き、そういうのは死亡フラグだからやめろとたしなめます。さらに重成の兜から芳香が漂うことに気づきます。万一首を取られても見苦しくないように、兜に香を焚き込めたという有名な逸話です。

伊達政宗は又兵衛の陣へ、木村重成の方には徳川父子の本陣が迫っています。又兵衛隊は数に圧倒され、又兵衛も銃撃によって斃れ壮絶な討ち死にを遂げます。

若江・八尾方面の木村重成隊列は、又兵衛の敗走を知らぬまま大軍を迎え撃ちます。これもまた数でかないません。重成は泥に滑り転倒したところを、槍で何度も突かれて討ち死にします。長宗我部盛親は、御家再興を断念し逃亡します。

真田丸木村重成

 

裏切り者は、厨房の大角与左衛門だった!?

敵に裏をかかれたことを悔しがる勝永。幸村は策が漏れていることに気づきます。勝永は明石全登を疑い切ろうとしますが、彼が裏切り者ではありません。
大坂城の台所では与八が、大角与左衛門がいかにもな忍者と話しているところを目撃します。
裏切り者はコイツだったのか!
上田からついてきた与八ですが、ここで与左衛門に箸で刺されて死亡。箸で人を刺殺するこの男、ただ者じゃありません。

真田丸大角与左衛門

又兵衛を倒した伊達隊は、真田隊にも襲いかかります。この場面は幸村の身体能力の高さが光ります。槍裁きが見事で、本当に強そうです。真田の赤と伊達の黒がぶつかりあう場面は見た目もとてもよいのですが、もうちょっと迫力があればなあ……伊達政宗は何故か幸村を深追いせず、ニヤリと笑って見逃します。

城内は負傷者であふれていました。
城に戻った幸村は、九度山からついてきた九兵衛が亡くなったときりに聞かされます。彼は何か重要な役割があるのかと思っていましたが、そんなことはなかったようです。あっさりと、あまりにあっけなく、様々な人が亡くなってゆきます。いよいよ落城が迫っています。

幸村は春、梅、大八を城から出すことにします。
政宗は、幸村の妻子保護を快諾します。もちろん家康には秘密です。ここで何故幸村が伊達政宗に妻子を託したのかちょっとわかりにくいのですが、おそらく第二十三回の政宗の言葉が関係あるでしょう。天下を狙いたかったけれども叶わなかった政宗。そんな彼の反抗心に賭けたわけです。謀反人真田の妻子を匿うことで、政宗の反抗心が描かれました。本作の政宗は出番が少ないものの、実に魅力的に描かれていると思います。
幸村は、きりには大事な仕事があるから残って欲しいと命じます。

真田丸春

夫婦が別れる前に幸村と春が二人きりで話し合う場面が入ります。この場面はもっとしんみりしてもよいと言うか、幸村は相変わらず気持ちがあんまり入っていないというか、ひととおりの愛情はあっても情熱みたいなものは春に対してはないのではないか、梅ほど強烈な感情を持っていないのではないか、と思わせるんですよね。春には気の毒ですが。

伊達の陣に送り届けられた春たちは、ずんだ餅をふるまわれます。政宗が、何かまともなことを喋っていたのはわかるんですが、ずんだ餅の破壊力がすべてを吹き飛ばします。
NHKは『あまちゃん』でも小野寺薫子にずんだの歌を歌わせていましたが、何故そんなにずんだ推しなんでしょうか。真田の幼い子が来るから――とずんだ餅を用意した政宗は本当にいい奴ですね。ずんだ餅が食べたくなりますね!

 

信繁に最後まで寄り添い、見つめ、愛し続けてきた

幸村はきりに、千姫を送り出し秀忠の陣に届けるという、大河定番の重要ミッションを託します。
千姫を助ける役割は、その大河の主役やそれに準ずる人物がこなすことが多いのです。その重要なミッションをきりがこなることになるとは!
そのあとは沼田に戻れときりは幸村から言われるのですが、こうなったら城に戻り、茶々に最期までお供するときりは微笑むのでした。

真田丸きり

「源次郎様のいない世の中にいても、つまらないから」
幸村はここできりをしっかりと抱きしめます。こんなことを言われてきりにそっけない態度のままだったら、一週早まっていいからお前ここで腹を切れと言いたくなったところですからね。やっと幸村も、ここできりの思いを受け止められたわけですよ。
「遅い」
きりは一言。そうだそうだ、遅いよ! そうつぶやいたきりの口を塞ぐように、幸村は黙って唇を重ねます。そのままきりはもごもごと言います。

「せめて十年前に、あの頃が一番綺麗だったんですから」
この、ムードも何もあったもんじゃない、照れ隠しにもほどがある、濃厚なラブシーンをブチ壊すようなマイペースがいかにもきりです。
抱き合う二人にナレーションが重なります。側室であった、子を為した、そんな諸説ある高梨内記の娘。ひとつだけ確かなのは、信繁に関わった女性の中で最も長く側に居たのは彼女だということ。
幸村をずっと見つめて愛し続けたきりの思いは、残り少ない時の中で、やっと報われたのです。

 

MVP:きり

第三回で初めて登場したとき、きりは紫色の少年みたいな着物をまとい、キラキラした目で信繁をじっと見つめていました。恋のライバルの梅には負けっ放しで、粗末な櫛をぞんざいに渡されたきり。その櫛を取り戻すために脚を引っ張ってしまうきり(第七回)。鬱陶しがられても、ずっと愛する人を追いかけてついてきました。

彼女がもしかしたら私も愛されるかもしれないと思っていたのは、いつまででしょうか。豊臣秀次の側室になる話を断ったあたり(二十八回)では可能性があると思っていたのではないでしょうか。しかしその思いも、九度山の生活ではもうなくなっていました(第三十九回)。

ずっと側にいた、できれば子供だって欲しかった。でも叶わないまま、やっとこの時になって思いが通じました。
信之の定義では「つきあったと言えるのは口吸いから(第十一回)」ですが、やっと、この最終回の手前でそうなったわけですね。
まさに「遅い」ですよね。十年前は私ももっと綺麗だった、という冗談のような台詞からは彼女の無念がつたわって来ます。口を吸われながらそんなことを言って茶化してしまうのがきりらしさですけれども、そこがいいんですよね。本気で真剣な口調で言われたら、ものすごく突き刺さる台詞ですからね。

それにしてもきりは本当にしびれるくらい、いい女なんですよ。
「源次郎様のいない世の中にいても、つまらないから」
という台詞がまた泣かせるじゃありませんか。
「お慕いしております」とかそういう重たさがない。きりは常に「私が好きであなたにくっついているんだから」と相手に重さを背負わせないんですね。そこが春とは違います。そこがきりの不器用さでもあります。

以前も指摘しましたが、きりは女版幸村です。幸村は好きなように生きて、そして死ぬことを選ぶことになるわけです。きりも同じ選択をします。あなたが好きだからついていくのではなく、私がそうしたいからついていくんですね。こんな彼女の思いが報われるのが遅すぎるという気持ちは言うまでもありませんが、それでもよかったという気持ちの方が大きいです。
彼女こそ本作のヒロインであり、もう一人の主役でした。最終回の手前で、彼女がこの座につくのは至極当然のことと言えるでしょう。

真田丸信繁&きり

 

総評

総じて合戦シーンの迫力不足は本作の欠点でしょう。
塙団右衛門、後藤又兵衛、木村重成といった錚々たる面々があっさりと斃れてゆきました。錚々たる面々……なんて思っていたのは贔屓の引き倒しなのかもしれませんが。

もっとも、どんな勇者であろうとあれだけの数の差をつけられていたら、ああいう討たれ方になるのはむしろ当然であり、リアリティかもしれませんね。泥に脚を取られて槍を何度も刺される木村重成は、颯爽とした若武者であっただけに生%



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