真田丸レビュー

『真田丸』全50話の感想レビュー38万字を一挙公開!

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第11回「祝言」 リメンバー「黙れ、小童ぁ!」私たちは室賀正武さんを忘れない!

こんばんは。更新遅れまして申し訳ありません、武者です。

そろそろ視聴率低下を分析するニュースも出てきましたが、大河の視聴率がじりじり下がること、的外れな分析が出るのは春の風物詩です。気にせずいきましょう!

 

目次

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サブタイトルは祝言……まさか普通の結婚式じゃないよね?

三連休の中日、春の陽気にふさわしいおめでたいサブタイトル「祝言」です。今まで毎週騙し討ちばかりの中、さわやかな展開になる……わけない! 普通の結婚式ごときをわざわざ45分間やるわけがないじゃないですか。嫌な予感がしますねえ。

さて北条に沼田を戻せとせっつかれた徳川は、策を使うことにします。真田家の対応に苛立つ室賀正武を懐柔し、昌幸を亡き者にしようというわけです。この懐柔場面での正武の表情と言葉が切ないんですね。家康の昌幸への悪口には乗らず、昌幸の実力を認めて庇うのです。家康はここで追い詰めにかかります。海士淵(あまがぶち)の城に他の小県国衆は関わりが無い、と説得されると正武は動揺します。さらに家康のあとを本多正信が駄目押しします。昌幸が亡くなり、信幸が当主になったと室賀殿の口から聞けば家康は喜ぶ、と。

家康と正信の調略に対し、果たして正武は……

家康と正信の調略に対し、果たして正武は……

一方、信繁は梅と結婚宣言。三十郎が「てっきりきりとかと思った」と言い、佐助が叩いてたしなめます。

そういえばきりはどうなってしまうんでしょうか。ここで信繁は身分のこともあるから梅は側室になる、でも祝言もあげるし他に妻を娶らないから実質的には正室だと説明します。堀田兄妹は喜びます。こういう側室=愛人という感覚を否定するのは丁寧な仕事です。

信繁は家族の説得に。まずは最も難易度が低い信幸から。大喜びの一方で、意外とませていた弟に驚く兄・信幸でした。

「でもお前いつからつきあってんだよ〜?」
「つきあうって定義はどこから?」
「そりゃやっぱ、キス(口吸い)っしょ!」
「そういう話はどうかと思う」
「ごめん、今の忘れて」
「あ、これまだ誰にも言っていないけど、実はもう子がデキてるんだよね〜」
「キスどころじゃねえし! お前そんな顔してやることやってんじゃん!」

みたいな兄弟の会話を聞くと、ああ、こいつらも実年齢高校生くらいだしなあ、とほのぼのします。

口吸(くちすい・キス)におののくお兄ちゃん、うぶです

口吸(くちすい・キス)におののくお兄ちゃん、うぶです

父・昌幸も大喜び。これでまた人質要員ゲットだぜ、と彼らしい喜び方。背後で話をふられた高梨内記はひきつった笑顔で、のけぞっています。信繁も、梅は丈夫だしいい人質になるよ、と念押し。

問題は母・薫です。祖母・とりは賛成しますが、いずれ京都からお姫様を嫁にするつもりだったのに、と怒ります。話の合う相手が欲しかったんですかね。しかも口を滑らせて産まれてくるのが男なら真田の世継ぎになると口走ったため、信幸の病弱な嫁・こうが「申し訳ありませえええええん!」と慌てます。薫は言ってしまったともっと大慌てです。こうさん、お気の毒に。

薫説得のため、信繁はどうするのでしょうか。まず三十郎が美しい百合の花束を持って来ます。おしべの花粉を取っているところが芸の細かさですね。さらに佐助は天井からあやしげなものを焚いて薫の居室に煙を流し込んでいます。そこへ信繁が入ってきて、結婚の件をまた持ち出します。

薫は頑なになりすぎたかもしれない、と柔らかいモードです。ところが薫は、信繁の弁が立つ口調をたしなめ、好きなんだから一緒になりたいと素直に言いなさいよ、と返します。ここで天井裏の佐助がアロマオイルを倒してしまいます。気づいた薫、想像以上のたくましさで薙刀を天井に突き刺すお約束。「逃げろーっ!」と警告する信繁。と同時にここでネタばらし。花束とアロマテラピー効果で結婚認めさせようと作戦は大失敗し、薫は取り付く島もない状態に。策士策に溺れていますねえ。

 

「おまえも妊娠してないか?」という心ない質問に切れるきり

弱った信繁は昌幸に相談。昌幸は薫を説得すると言いますが、薫に弱い昌幸にそんなことできるのでしょうかねえ。ここで昌幸、男の色気作戦というか夫の甘え作戦というか、薫の手を取ってぽんぽんと叩きながら「薫ちゃんのお目にかなう相手をゆっくり探せばいいし、ここは許してよ〜」と、説得というよりお願いモード。薫はふくれて、それでいて陥落しかけているのか、ぐにゃっと昌幸の手の方へ体重をあずけて「でもぉ、祝言するのは嫌〜。私は出ないしぃ」と甘えてきます。怒っている時は背筋がぴんとしているのに、甘えると芯がくにゃっとする高畑さんの演技が上手です。そして昌幸「祝言なんかするわけないよ」とあっさり認めてしまうのでした。父上の天敵は妻なのか……。

一方で驚いているのは内記。てっきり若様は娘のきりといい感じかと思っていたのに何でだよ、と娘に当たります。客観的に自分の娘を見れないのか、とツッコミたいのはやまやまですが、まあ例の櫛の一件とか知りませんしね。身分でもルックスでもうちの娘が勝ちだと思っている地侍の娘ごときに、しかも妊娠までしていることに納得できない様子の内記。お前も妊娠していないか、と聞く父にきりは引きつります。せっかく娘が美人に育ったし、ワンチャンあると思っていたんでしょうねえ、内記。

きりは梅の元へ、お祝いに行きます。三十郎と佐助に鯉を持ってこさせたきり。妊婦に鯉はよい食べ物とされていますからね。ちょっと哀しい気遣いですね。きりは気丈に振る舞い「お似合いだものね」と信繁に言います。信繁と梅は悪意がないのでしょうが、きりの心に刺さる言動をしてしまうんですよね。ここできり、意外と男っぽい梅と、討たれ弱いところがある信繁はお似合いだと言うのです。

きりは二人の前から去ると、一人泣き出します。そこへ信幸がやって来ます。きりは「私は慰めて欲しいの!」と無言の主張をしながら信幸の弟はいるかという問いに答えず泣きじゃくります。信幸に慰めを期待しても無駄とわかったところで、やっと「信繁はいる」と答えるきり。

信幸は、祝言はなくなったと信繁に伝えます。納得できない信繁ですが、梅と信幸は仕方ないと言います。ここで相手にされませんが、きりも祝言はした方がいいと言っています。梅は反対を押し切って、今夜が私たちの祝言だからと宣言します。鯉の鍋を囲み、真田家の家紋の由来でもある州浜が歌詞に出てくる歌を口ずさみ、楽しい夜を過ごす皆でした。

ここで有働アナのナレーションが、側室を含めて生涯四人の妻を持つとネタばらしをします。現時点では三名まで、キャストが決まっています。最後の一人は終盤、かなり若いキャストで出てくることでしょう。

 

室賀は、本多正信の策で徐々に追い込まれ

一方、海士淵には徳川の金で真田の城・上田城が完成。大事なことなのでもう一度言いますが、徳川の金で建てました。

出浦昌相はここで昌幸に、室賀正武が祝賀に来るそうだと言います。さらに、徳川と何やら通じているのではないか、と。昌相は、正武に浜松城で何をしていたか聞いてみたらどうか、と提案。もし誤魔化すようならばクロだぞ、というわけです。

仕事のできすぎる出浦

仕事のできすぎる出浦

そこで昌幸は、正武と話し合います。正武はこの城は真田のためのものではないな、と詰め寄りますが昌幸はのらりくらりとかわし、信幸に話を振ります。信幸は、「そういえば室賀様って美肌ですよね。鰻が美肌にいいらしいですね。室賀様は最近浜松に行ったそうですけど、名物の鰻を食べて来たんですか?」としょうもないことを前振りにして、浜松行きについて尋ねます。

あまりに信幸の話の振り方がおかしいので、「黙れ小童!」を期待した人も多いと思います。しかし……正武はあくまで「ここ十年浜松なんて行っていない!」と真面目に否定するわけです。昌幸のようにのらりくらりと誤魔化す器用さがない。これが命取りになるわけです。

正武はまた浜松に向かいます。このとき、もしかすると彼は断るつもりであったかもしれません。しかし正信は「承諾してくださって主も喜んでいます!」と断るはしごを外し、さらに助っ人までつけると言い出します。人のよい正武が断れない雰囲気になってきました。

 

刺客を制した昌幸と、それを知らない正武 凄まじい緊張感

梅は真田家の屋敷に引っ越し、姿も農民の娘から改め武家の奥方風になりました。綺麗ですね、見違えるようです。信繁も大喜びで引っ越し作業をしております。

一方、昌幸や昌相らは室賀正武対策を話し合っています。徳川に焚きつけられた正武が昌幸暗殺を狙っているに違いない、先手をうって返り討ちにすべきだと提案する昌相。そのチャンスとして、信繁の祝言を利用しようと昌相は言い出します。

祝言を罠に使うとはトコトンですw

祝言を罠に使うとはトコトンですw

信幸は反対しますが、昌幸はこの策に乗ります。せめて弟だけはこの策から守りたいと、苦悩する信幸。信繁に祝言をすると伝える時も、どこか冴えない顔です。

室賀正武は昌幸らの読み通り、祝言での襲撃計画を立てます。

企みを知らない皆は、楽しそうに祝言の様子を進めます。ここまで来ても信繁の眉毛が薄いと絡んでくるきりに、梅は二人きりになって釘を刺します。私の夫にちょっかい出すな、ではなく「きりちゃんの気持ちがわかるからもうやめて」と言うあたりが、この人の恐ろしさですね。

信幸は、妻のこうに信繁を見張り、決して広間から出すなと頼みます。

そして祝言を迎えた二人。白無垢の梅が綺麗ですね。華やかな雰囲気で何ともめでたい中、室賀正武は緊張した顔です。ここで正武の隣に座った昌幸は、囲碁でもどうかと声を掛けます。敢えて二人きりになるよう、広間を出る二人。ここで徳川からの刺客二名は、あっさりと出浦昌相によって一太刀のもと斬り捨てられます。声をあげる間もない電光石火、昌相かっこいい! しかしこれで正武は孤立無援に。

碁盤に向かう昌幸の手がかすかに震えます。信幸はそんな二人を見守っています。襖の向こうでは、出浦昌相と高梨内記もまた様子をうかがっています。この凍てつくような緊張感のすぐ隣では、賑やかな祝いの宴が続いているのでした。

信繁と梅は、きりにも酒を勧めます。これはちょっときりが可哀相。案の定きりはふらっと縁側にやって来ます。その位置がなんと、緊迫の碁盤のすぐ側です。敢えて信幸の近くに座ることで、「私をかまってよ」とアピールしているようです。しかし今はそれどころではなく、信幸は小声できりを追い払おうとするのですが……きりは確かに邪魔ですが、緊張感を増す役目を果たしています。

 

「家来にはならぬ」と昌幸に言い残すと、そのまま正武は……

信繁が、姿の見えない兄を探しに広間を出ようとすると、それを察したこうが「真田名物雁金踊りを披露します!」と隠し芸をやると宣言。「姉上がですか!?」と信繁もびっくりします。私も驚きました。おこうさんは病弱ですからねえ、立ち上がる時点でよろよろしていますからねえ。苦しそうな顔で踊るこう、偉いですね。夫の言いつけをちゃんと守ってえらい。

昌幸はついに「懐に刀を隠し持っているな、わしを殺しに来たのだな」と正武に切りだします。襖の裏では出浦昌相が棒手裏剣を構えています。昌幸は既に徳川の刺客は始末済みだから亡骸は徳川に届けよう、と相手を追い詰めます。

もうお前は負けた、わしの家来になれば許すと持ちかける昌幸。おそらく本気でしょう。この騙してばかりの男が、ここでは本気で幼なじみにそう持ちかけたのです。正武は今までの人生を振り返り、ライバルであった昌幸がいつも自分に先んじていたと語ります。だが人として、武士として、昌幸に劣ったと思ったことは一度もない、と言い切る正武。

「わしの勝ちじゃ」と碁石と小刀を置き帰ると言う正武。

去り際、正武は昌幸の元へ近づき「おぬしの家来にはならぬ」と隠し持った棒手裏剣を抜きます。しかしそれより早く、出浦昌相の手裏剣が正武を襲った! 昌武に斬られ、信幸、高梨内記にも攻撃を受け、ついに斃れる正武。それでもなお、うめきながら這い進む正武に昌相がとどめを刺します。

悲しい運命でしたね……

悲しい運命でしたね……

この場面、大河では限界のえげつなさでした。低く呻きながら、血まみれになりながら、廊下を這う室賀正武の姿はかなり心にくるものがあります。

この一部始終を目撃したきりは、信繁を広間から連れてきて見せます。出浦昌相は室賀正武が暗殺しようとしたので返り討ちにしたと説明。信繁はそれで祝言を挙げたのかと納得した様子。きり以外は皆落ち着いているのですが、きりだけは「あなたたち、これでいいの!?」と泣きながら怒ります。

その後信繁は、信幸に心情を吐露します。

室賀の骸を見ても動じなかった、父の策を見抜けなかったことだけが悔しかった、そんな自分が好きになれないと。あのとき梅のために怒り、泣いたのは自分ではなくきりであった、と。そんな風に人間性を失うことが恐ろしく悔しい、一体どこへ向かっているのか、と迷い泣く信繁。悩め、それでも前に進んでいくしかない、と弟を励ます信繁なのでした。

 

MVP:きり

今週は賛否両論あるであろう、きりです。

きりは何かの装置だと以前書いたのですが、今週でますますその確信が強くなりました。あの祝言の場で怒り泣くことで、鬱陶しいと思われつつも、視聴者の気持ちや信繁自身の迷いをうまく形にしているのです。

きりは梅を評して「男らしい」と言いました。梅が、策や汚い部分を受け入れて納得させられる部分を、きりはそう評したのではないかと思います。梅は春日信達謀殺の件で信繁を納得させられる答えを用意していましたが、その聡明さと今回の冷静さは同じものなのです。

梅と一緒にいれば、信繁はどんどん策に溺れていく人物になるでしょう。しかしそうではなく、策とは違った理念で動く男となるためには、きりのようなパートナーが必要である、そういうことかもしれません。

特別功労賞は「こう」で。踊っているだけでこちらがハラハラしてしまう中、頑張って隠し芸大会をしていました。

 

総評

結婚式が陰謀の舞台になることは、古今東西よくあること。しかし主人公側が仕掛けるとなると、やはり勇気のいることだと改めて思いましたね。状況がはっきりしない室賀正武の最期と、信繁と堀田氏の婚礼をからめるとは、実にうまい脚本でした。

祝言の華やかさ、賑やかさの中にある強烈な謀殺劇。明暗がはっきりした異色の回でした。主人公の成長としても大きな意味があり、梅の一言でふっきれたはずの信繁が、策に溺れていて本当によいのかと自問自答するきっかけになった重要な回です。

そうだ、やっぱりこの作品の主人公は信繁なのだと改めて思えました。

そして何といっても、室賀正武という悲運の人物に愛着を持たせてくれた三谷氏はじめとするスタッフに感謝です。史料にない人物をぞんざいに、小物として強調するのではなく、ちゃんと血の通った人物に仕立てたのは素晴らしいことです。正武の「昌幸に劣っていると思ったことなどない」という台詞もぐっと来ました。武田勝頼、春日信達はじめ、すぐ去る人物にも深い愛情を注ぐ本作の魅力がいかんなく発揮されていました。

リメンバー「黙れ小童」。私たちは室賀さんを忘れない!

 

第12回「人質」 鉄火起請に見るハードボイルド中世人をとくと味わおう

こんばんは。つい先日、後半の重要人物のキャストが発表されました。

「真田丸」で大河初出演 三谷幸喜の指名で徳川秀忠

http://mainichi.jp/articles/20160326/dyo/00m/200/025000c

これは楽しみなキャスティングですね! 視聴率低下で叩き記事も出てくるかと思いチェックしていますが、今年は思いの外少ないようです。

 

ウザキャラきりは、やはり狙いだったご様子

さて、先週の室賀正武の死によって、真田は小県を平定しました。今週は上田城から外を眺めるきりと、信繁の会話からスタート。ここで信繁は、多くの視聴者から「ウザい」と反発をかった先週のきりの行動に御礼を言います。やっぱりきりは、信繁の感情を引き出す役であるとおさらいです。

きりはウザいのが狙いだそうですよ。まあでも、きりゃんは一途だし可愛いところもあるかな。

「ウザい役」演じ切る長澤まさみの潔さ「真田丸」屋敷CP感嘆

http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/03/27/kiji/K20160327012292390.html

そんなわけで私はなるべく気にしないようにしたいのですが、さらにこんな策を考えました。きりは女装した中村獅童さんが、がんばって十代の女の子を演じているのだと思って見るのです。そうすれば大体笑顔で見られます。あ、長澤まさみさんが嫌いなわけではありませんよ。薫や松でも応用可です。昨年もそうするんだった。

 

何度も裏切った上杉家へ、信繁、再び出向く

小牧長久手の戦いはノブヤボマップで終了。ナレーション処理しても、マップがあると一応それらしく見えるから助かります。実質的に勝利した家康はホッと一息ついていますが、このまま羽柴と北条に挟まれたら大ピンチです。おまけに室賀による真田暗殺も失敗。家康は新たな真田対策を打つことに。

それにしても「室賀じゃ駄目でした」とさらっと語られるのが何とも寂しいですね。あんなドラマがあったのに、徳川からすればただの駒なんです。厳しいですねえ。

昌幸は、かくなる上は上杉に頼ると言い出しますが、力一杯裏切っているんですよえね(八話)。

「父上、流石にそれはないよ! つーか頼れると思っていたことがびっくりだよ!」と突っ込む信幸。ですよねー。昌幸はここで上杉に頼れないとヤバイからまた手紙書くぞ、と言い出します。本当に行き当たりばったりだな、オイ。

上杉家は真田のしつこさに閉口しましたが、そこまで言うならちょっと条件つけてみようかな、と言い出します。その条件とは、信繁を人質に出すこと。ちなみに真田信繁の人生において、史料上での動きがしっかりと確認できるようになるのはこの上杉行きからなんですね。それまでは断片的にちらちらと、滝川の人質になっている、とかわかるくらいです。ターニングポイントとなる今回から、信繁は前髪をあげて大人っぽくなりました。

今回のミッションは信達の調略!

妊娠と言ったのは一つの策よ そうでもないと煮え切らないし~

新婚ほやほやで、身重の梅を残して敵地に赴く信繁ですが、どこかさばさばしています。策だらけの腹黒いどこぞの御方とは離れたいしな〜、なんて本音もちらっと一言。その御方って、自分の父親なんですかねえ。そして、戦国時代は人質といっても、相手の家でいろいろ学ぶこともありますから、スキルアップの機会でもあるのです。

留守を守る梅の前で、きりは相変わらずおやつをぱくついています。ここで梅が何ときりにある秘密を打ち明けます。

「妊娠したと言ったな? 実は確証はさほどない」

「はあ!?(視聴者の心の声ときりの声)」

「ククク、これもひとつの策よ……そうでもしなければ奴も煮え切らんからな」

やっぱりこいつ策士だぁーーーーーーッ! でもどうせちゃんとできているわよ、と余裕綽々なあたり、たいした度胸です。

上杉家で信繁は、もめ事を殿様に持ち込む漁師たちを目にします。どうやら漁師たちは。よい漁場をめぐって争っているようです。以前も山林資源をめぐって争っていましたが、当時は民まで武装していますので、争うとなるとなかなか決着がつかないのです。漁師に任せておけ、と約束する景勝ですが……。

景勝は目をきらきらさせて「人質差し出すか本気を試したけど、実はもう一度お前に会いたかったんだ」と言います。

そういえば景勝って『奥羽永慶軍記』で「婦女をこう(女偏に交)童に代用せしこと」(東北を中心とした戦国軍記)という話を書かれたこともあったのでした。この話は、景勝がさっぱり女に興味を示さないため、男装美女を送り込んで子を産ませたという荒唐無稽なお話です。これを元ネタにしたものに山田風太郎『くノ一紅騎兵』という作品がありまして、せがわまさき作画の漫画『山風短』1巻に収録されています。

真田丸上杉景勝霜月けい

 

「信長の最期を思い出せ。死に様は生き様を映す鏡だ」

景勝は二人きりになると、上杉は義のために戦うホワイト大名だと意気込みを語ります。この会話、兼続や昌幸が聞いたらどんな顔をするんだろう。まだ若くうぶな十代に、なんかかっこつけているように見えなくもありません。民が安心して暮らせるようにしたい、民の心をつかまずして何が国作りか、と語る景勝。わー、ホワイトエンジェル!! ここで信繁は、質問します。

「義を忘れて欲望のままに生きるとどうなるんでしょう?」

「信長の惨めな最期を思い出してみろ。死に様は生き様を映す鏡だ」

と、なかなか重たい答えを言う景勝。この一言は信繁に間違いなく影響を与えたのではないでしょうか。

昌幸は、うまく景勝のハートをキャッチした信繁に対して満足げ。ただ、直江兼続はそう簡単に許しません。「沼田はそもそも上杉のものだから、返せ。そうしたらおまえら認めてやる」と無慈悲な要求です。信幸は「そもそもの発端が沼田でしょ!? それを上杉に渡すとかありえねえし!」と混乱。

この冷静な目が怖い

この冷静な目が怖い

私も書いていて混乱しています。昌幸は「信繁に任せちゃえ!」と無責任宣言。ひでえ!!

こうなるともう全ては信繁が景勝のハートをキャッチすることに真田の命運がかかっています。どんな乙女、いやもといBLゲーだ。信繁は景勝に沼田の一件を話すと、なんと景勝は「知らん。兼続の独断だろう」と返答し、さらに「俺に任せておけば兼続説得するよ」とフランクに引き受けてしまいます。どんだけチョロいんですか。

 

兼続が冷たい目で「切り捨てますか?」

信繁は漁師たちが再度、領有権をめぐって訴えに来た現場を見ます。おおっ、漂う『タイムスクープハンター』臭。近くに沢嶋雄一がいてもおかしくなさそうです。

信繁は漁師を門前払いした上杉家臣にあんなふうに追い払っていいのかと聞きます。家臣は「御屋方様はかっこつけているだけ。まともにとりあってられないよ」と言います。そこへ景勝と兼続がやって来ます。景勝は嫌味を言う程度ですが、兼続は冷たい目で「切り捨てますか?」と一言。おっかねえ。でもあの家臣の気持ちもわかるなあ。かっこつけて仕事を増やされたら嫌です。

兼続は「御屋方様はいい人だけど、ああいう訴えをいちいち聞いていたらきりがない。処理する余裕はないんだよ」と信繁に明かします。景勝はしょんぼりして「戦が続きすぎて確かに余裕がない。話を聞いてあげることしかできない……これが本当のわしじゃ。世の中思い通りにはいかぬ」と赤裸々トークをするのです。

信繁は「昨日まで御屋方様を尊敬していました。今日は……なんかもう、慕わしく感じます」とか言います。うわー、景勝のハートの好感度ゲージがぐんぐん上がっていそうだあ!

 

ビーチに出向いて行われていたのが鉄火起請

いろいろ無力感に悩んでいる景勝は、スレてないティーンの信繁相手に人生を語り、リフレッシュをしたいのでしょう。気分転換に信繁とビーチに遊びに行きます。これは現実逃避ではありませんか? 忙しいと言いながら、遊びに行くわけですか? と、兼続の気持ちになってちょっと突っ込み。

ところが君主たるもの、ビーチリゾートでもゆっくりできません。漁師の争いに出くわした一行が見たのは、「鉄火起請」の場でした。紛争解決として行われた、神明裁判の一種です(鉄火起請に関する詳細記事はコチラ)。北浜の代表者から、真っ赤に焼けた鉄を握ります。鉄火を取った者は手が使えなくなるため、近所の者たちが今後その者にかわって働くこと、金銭の援助など申し出ていたそうです。またこれは『タイムスクープハンター』でもふれられていましたが、身寄りが無い浪人や浮浪者が半強制的に代表にされることもあったそうです。厳しい時代ですね。

ここで北浜の代表者が怯えてしまうのですが、そこへ信繁が割って入ります。裁判の理非を問うため、信繁と奉行でやってみようと言い出します。このあたりで見ていて辛くなってくると思います。残酷でもありますし、現代人から見るとはっきり言ってわけがわかりませんからね。これが中世です。

 

景勝の好感度ゲージはマックスまで上昇し……

信繁が真っ赤な鉄を取ろうとしたその時、これまで強気だった奉行が突如中止を言い始め、漁民たちに「話し合ってみたらどうか」と言い出します。景勝も止めに入ります。ちょっと拍子抜けする人もいるかと思いますが、実際の鉄火起請も実際に行う前に躊躇して、結果的に中止になる例が多かったとか。

ここで信繁、浅瀬で漁をするのを交互でしたらどうかと提案します。しかしそれだと潮の流れがあるから不公平です。景勝が助け船を出し、潮の分け目で交替すればいいと言います。これにやっと南北両方の漁師が納得し、一件落着となりました。

景勝はやっと名裁きができて、満足げな様子。さらに「信繁みたいな子がいればよかった。昌幸は果報者だ」と好感度ゲージマックスとしか思えない台詞まで。これで真田上杉の同盟は盤石だ!

上田城では、梅が無事に女児・すえを出産します。結局妊娠していたので、策はチャラになりました。やったね!

兼続は景勝が張り切ったせいで仕事が増えたぞ、と愚痴モード。いろいろ言いたいことがあるのでしょうが、好感度がマックスなのでどうしようもない様子。沼田の件も簡単に城の明け渡しを引き受けたらむしろ昌幸の企みだと思っただろう、と明かす兼続です。昌幸の今回の作戦って、本当に次男の愛嬌と魅力頼みでしたが、結果オーライです。これでもう、上杉を背後につけて徳川と心置きなく手切れができます。しかも沼田も徳川の金で建てた上田城はゲットだぜ!

 

かくして7千の徳川が2千の真田に襲いかかることに

徳川はこの知らせを受け激怒。ここまでは予想通りですが、家康、本多正信、石川数正、阿茶の局がいる場面で、最も適切に場をまとめる発言をするのが阿茶の局なのが注目すべき点でしょう。

真田丸徳川家康霜月けい

「真田のために城を建てたなんてお人好しですね。お潰しになったらどうですか?」

おおっ、ここにも女策士がいるぞ!!

かくして七千の徳川勢が、二千の真田勢に襲いかかることに。第一次上田合戦だ! 三倍以上の兵力差、どうすべきか。景勝は何とか真田に援軍を出したい、と言い出します。それを兼続は即座に却下しますが、実は領内から使えそうな百名を用意していたそうです。信繁と三十郎はこの百名を率いて上田に参りたいと言います。兼続は「ふざけるな」と却下しますが、どこまでも甘い景勝は目をきらきらさせながら承諾するのでした。

そしていよいよ、マップだけじゃない戦じゃー!!

今週のMVP:上杉景勝

殺伐としたドラマに突然舞い降りたホワイトエンジェル、上杉景勝! レトリーバー犬のようなきらきらした目がたまりません。添付ファイルを躊躇せずに開けていそうなうっかり感は、周りにいたら困りものの気がしますが。

こんな善人で裏表がなくて生き残れるのか、と思うと横に控えるのがドーベルマンのような目をした直江兼続。どうにもこの主従は、分割して指定できません。ふたりでひとつ、は真田兄弟だけではなくこの主従もそうです。こんなシビアな中で一服の清涼剤のような景勝。それを支える兼続、文句なしで今週はこの二人が魅せました。

この二人は演技が丁寧で、刀剣が好きなだけに愛着をこめて扱う景勝、美声を細かく変化させ感情を示す兼続、どちらもお見事です!

 

乱世にうごめく女策士たち

男が策を弄すれば、女もそうするのが本作の世界。妊娠見切り発車の梅も策士ですが、阿茶局もそうです。

梅は妊娠という女性独自の手段で成り上がりましたが、阿茶局の場合、家康との間に子はいません。身分もさほど高くなく、後ろ盾もない彼女が、数多いる徳川家康の妻たちの中でも目立っているのは、愛されたからだけではありません。抜群に切れる知能があったからです。いわば女版本多正信とも言える存在。とかく女性に癒やしや母性を求めるドラマが多い中、本作は策に生きる女をどう描くのか。見所になりそうです。

 

総評:成長と驚きの「鉄火起請」!

今回は決戦前の小休止と見せかけて、信繁の人物形成に大きな影響のある回でした。祝言まで策に利用され、さらにそれを受け止めてしまった自分に嫌悪感を覚えた全開。このまま策に溺れる生き方でよいのかと迷っている時に、策とは真逆の義に生きる景勝と接したことで、彼は別の生き方を学びます。景勝の言葉「死に様は生き様を映す鏡だ」を、信繁も、景勝も、そして私たち視聴者も、最終回付近できっと思い出すことでしょう。

今週の驚きといえば「鉄火起請」を取り上げたことです。『タイムスクープハンター』の「仰天裁判! 鉄火つかみ」でも扱われましたが(3/29再放送予定)、ドラマでは初めてとのこと。正直これには困惑しました。特に視聴率アップにつながるとも思えず、かえってあまりに奇っ怪で残虐であるため、マイナス要素になるかもしれない……。

 だがそれがいい。

そう、それがいいんです! 視聴率には貢献しなくても、こういう中世人の思考回路を敢えて描く挑戦が天晴れなのです。私はここまでやられたら、もう本作が現代的などとは言えないとは思うんです。本作の人物は、むしろありのまま、だからこそあくの強い中世人だと。だからこそ、江戸期以降の倫理観であく抜きされ、理想化された姿からは遠く、そこに拒絶反応が出てしまう人がいるのでしょう。

今回の「鉄火起請」については清水克行氏の『日本神判史』が大変参考になります。この清水克行氏と以前このレビューでもふれた高野秀行氏の対談本『世界の辺境とハードボイルド室町時代』を、私としては全力でプッシュしたいと思います。

『真田丸』を歴史的に理解するには、考証三氏の著作が最適です。それに対して『世界の辺境とハードボイルド室町時代』は、歴史的な観点ももちろんですが、作劇的な部分を理解するためにお勧めなのです。どうして作中の人物はあんな行動を取るのか、殺伐と笑いが同時に成立するのか。

だって彼らは中世人なんだもん。現代人じゃなくて中世人なんだもん、ありのままに中世人なんだもん、と中世人の思考回路に切り替えるために、本書は役に立ちます。

何度も書いていますが、本作の人物が無茶苦茶な行動を取っているのは、三谷氏が現代人の価値観を取り入れているからではありません。むしろ江戸時代以降の人間が「流石にこれはないわ……」とあく抜きした中世人の行動理念を復元しているからこそだと思います。

例えばきりはじめとするギャーギャーうるさい女たちが、「武家の女はあんな行動しない」「もっと落ち着いているはず」「しっとりと夫の一歩あとをついて」「当時の女なんて所詮男の従属物扱いなんだから」と批判されます。しかしそれは、江戸期以降家におしこめられあく抜きされた「武家の女」を想定し、理想化しているからでしょう。中世の狂言などでは、妻が夫に対して「なんだテメエむかつく、ぶっ殺すぞ!」(意訳)とか怒鳴りつけているんですよね。少なくとも、幕末の武家娘ヒロインより、はるかに行動は自由なのです。

このありのままの中世をやろうという試み。視聴率的にはむしろマイナスかもしれませんよ。あくが強いですからね。それを敢えて挑む今年のスタッフは本当にえらい。毎週書いている気がしますが、本当に脱帽ものです。大ばくちをしているのは真田昌幸だけではない、スタッフもだということを、私は今週も主張します!

第13回「決戦」 第一次上田合戦・大勝利の中に紛れ込む悲劇

こんばんは。前回の地上波史料率がぐぐっと盛り返していて驚きました。

本作の欠点として、中央の動向がわかりにくいというのがあります。羽柴秀吉の勢力図がぐんぐん広がっているのに、その動きがわからないわけです。そのへんは適宜補えということか、それともこの頃の真田が羽柴の勢力拡大に無頓着であることを示しているのでしょうか。

後世の人間からしてみれば、信長の次は秀吉だということは常識であり、その動静に気を配らないなんて間抜けに思えるかもしれません。このあたりは大名でもかなり温度差があります。早く通じれば権威の拡大につながると渡りに船と飛びついた大名もいれば、あんなどこの馬の骨かわからない奴に従うなんて馬鹿げていると冷淡な態度を取った大名もいました。

真田は「こっちは徳川上杉北条と揉めているんだよ、それどころじゃねえ!」と思っていたと言えますか。秀吉が本気でブチぎれる寸前まで、命令に従わないのでした。

 

ちなみに今回の第一次上田合戦のネックは「信繁の参戦は軍記でしか出てこない」であったのですが、グッドタイミングでこんなニュースが出てきました。

第一次上田合戦で幸村も戦った? 「不参加」通説覆す学説浮上:長野:中日新聞(CHUNICHI Web)
http://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20160327/CK2016032702000008.html

そんなわけでいよいよ満を持して、第一次上田合戦の始まりじゃあ〜〜〜!

「真田丸」異例の1話まるまる守城戦 上田合戦あって真田家名挙げた(スポニチアネックス) – Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160403-00000084-spnannex-ent

北条との小競り合い、山崎とか小牧長久手とかすっ飛ばしたため、合戦がないと言われてきた本作ですが、三谷さんや屋敷Pは若干切れ気味になりながら「上田でやるから待ってください」と思っていたのではないでしょうか。

合戦は予算的にそうしょっちゅうできるもんじゃありませんからね、仕方ないですね。

 

城下に丸太の乱杭(らんぐい)を設置して準備万端!

信繁は、先週で直江兼続が調達した援軍を目にします。ところがどう見ても老人と子供ばかり。これは史実で、彼らの年齢は六十才以上と十五才以下、要するに普段ならば戦闘員として動員されない男たちです。礼を言う信繁に、真田が滅びたら上杉と徳川との間にはさまる緩衝材がなくなる、というのが兼続は語ります。上杉もギリギリです。

徳川家では、本多忠勝が「なぜ真田攻めに行かせてもらえんのじゃ!」と不満げに吼えています。家康は忠勝を使うまでもないと判断したようです。この判断が、のちのち響いてくるのでしょうか。

秀吉に東の無双と呼ばれた本多忠勝(藤岡弘、さん)

東の無双と呼ばれた本多忠勝(藤岡弘、さん)

真田昌幸の弟で徳川にいる信尹は、徳川の囚われ人になってしまいます。この謀略のプロであっても、徳川家脱出はできなかった模様。家康は信尹の才を惜しみ、命は助けるようです。この人もなんだかんだで苦労していますね。

ここで上田へ攻めるコント集団三河武士やられ役部門三名(鳥居元忠、大久保忠世、平岩親吉)が登場。やられ役に必要なのはリアクション顔芸ですが、三者三様によい面構えをしています。

上田では真田側が防戦準備中。上田わくわくランドのアトラクションが次から次へと出てきます。戦で45分やるぞと言ったわりには実のところ、準備時間が長いのが特徴です。作兵衛らが設置しているのは乱杭(らんぐい)です。現在は歯並びの悪いことを「乱杭歯」と呼びますが、そのもととなった乱杭そのものはあまり目にする機会がありません。これが語源かと興味深いものがあります。

 

薫が梅に寄り添い「私も自分のお乳で育てたの」

城では相変わらずマイペースな女たちが皆それぞれのキャラで話し合っています。こんなところでもしれっと、負ける匂いがないといいながら、今は薫の香のせいでそんなものはわからんなどと、味方を煙に巻くような発言をするとり。やはり昌幸の母ですね。梅は乳母を雇わず、自らの母乳で育てているため、戦の準備の合間をぬって授乳にやって来ます。

薫は孫かわいさに、意外なことを梅に告白。実は薫も乳母は雇わなかったそうです。公家の姫君とあればステータスのためにも乳母を雇いそうなものですが、実のところこの人にはそういう一面があるのですね。薫は最近よい味を出してきました。

昌幸は軍議で何故か餅をこねはじめます。こうやって餅みたいに分散させれば食えるぞ、と説明しますが意味がわかったようでわからない……昨年はヒロインがおにぎりを握り、今年はおっさんが餅をこねるわけですか。一体何がしたいのか、昌幸‘sキッチン。

肝心な布陣を聞かれると昌幸は、手を洗いに行くのですが、そこに出浦昌清が何を悩んでいるのか聞きにきます。昌幸は今まで俺は負ける戦なんてしたことない、今回も水を漏らさぬ策をたてた、しかし駒が足りないとつぶやきます。そこへ最後の「駒」、信繁が上杉からの手勢を率いて到着!

今回のミッションは信達の調略!

いよいよ合戦! 果たして見所は?

これでパズルが完成した昌幸、作戦を披露します。

◯信幸は戸石城で待機。開戦とともに上田城下に向かい、退却した敵を横あいから撃つ。
◯信繁は陽動役。敵を挑発し、上田城大手門まで導く。
◯作兵衛は城下のトラップ役。
◯出浦昌相は神川の堰を破壊し、川を渡り退却する敵を殲滅する。
◯矢沢頼綱(昌幸の叔父)は沼田城待機。北条が来た場合、迎撃する。

という作戦になりました。

 

ダンジョンと化した城下で信繁と梅、スレ違い

戦の合間、やっと娘のすえを抱くことができた信繁は、孫にメロメロになった薫に驚きます。赤子にはそういう力があるととりがここで解説。きりはすえにの世話を担当していることもあるせいか、落ち着いて来た気がします。しかし、梅は隠れ場に移動しておりこの場におりません。

梅は隠れ家で作兵衛らとともに準備を整えています。鉢巻に袴姿が凛々しい梅ですが、城と隠れ家を移動するためなかなか信繁と再会できないのでした。

すっかりダンジョンと化した城下を歩く信繁と信幸。一方で梅は、迷子になった少年と出会います。少年の家で六文の銭を見つけた梅は、少年と交渉してその銭をもらい受けます。その間、信繁とはすれちがってしまいます。このすれちがいの場面が印象的です。

ここまででおよそ20分、持ち時間の半分程度経過しています。信繁はきりから、梅が作った六文戦をつなげたお守りを受け取ります。ここできりが主家の家紋を知らないのはいつものすっとぼけということで。夜も更け、いよいよ決戦が迫ります。信繁と梅はタイミングがあわず、やっぱり再会できないのでした。

 

信繁が「高砂」を歌って挑発 それに乗った徳川勢が……

閏8月2日早朝、上田城で昌幸は高梨内記と碁盤に向かいます。この決戦を前にして碁盤に向かう余裕が格好よいですね。万全の準備をしたからには、焦らないわけです。

神川の向かいに布陣した徳川勢。そしてその先には、「高砂」を歌い六文銭の旗を振る信繁の姿が。堺雅人さんの歌声が想像以上によく通りよく、さらに旗を振る動作が歌舞伎のようで決まっています。この挑発に乗った徳川勢は、勢いよく川を渡ります。川向こうに本陣を敷いたことが、今後致命的なミスとして響いてきます。開戦の知らせを聞き、信幸も移動開始!

作兵衛らの待機する中、乳が張った梅は城へと向かうのでした。やっぱり乳母は必要だったんじゃないかなあ。

陽動作戦で敵を城下まで誘い出した信繁。待つのは上田地獄のアトラクションです。信繁が鉄砲を前にして挑発するのは荒唐無稽に見えるかもしれませんが、彼は敵が一回射って装填している隙に挑発しています。竹を束ねた盾など、考証面の結実もじっくり見たいところ。

上田城下は本当にえげつない罠だらけです。進路は乱杭でふさがれ、建物からは石つぶて、熱湯が降り注ぎ、射撃されます。道には石がばらまかれて踏むと痛い。そしてさらには落とし穴。地味かつDIY感溢れる罠が徳川勢を苦しめます。地味な罠ってかえって痛みを想像しやすくてえげつなさが増しています。

梅はきりの制止も聞かず、城と隠れ家を往復します。ウザい女性キャラの担当が、きりから梅に変更されたかのようです。

 

一瞬の静寂、そしてテーマ曲と共に昌幸、登場す――

そんな中、昌幸はまだ碁盤の前です。待つことで高まる昌幸待望論とプレミア感!

梅は乱戦の最中に大手門まで出てきてしまい、敵に囲まれます。やっと一瞬、互いの名を呼び合う信繁と梅。予告でここを見た視聴者は、きっとここで梅が斃れると予想したのではないでしょうか。ところがここは佐助が梅を助け、無事大手門内に去ってゆきます。

信繁はついに大手門前まで敵を誘導。ここで一瞬の静寂のあと、門が開くとテーマ曲とともに昌幸が登場だーッ! 待っていたぞ昌幸!

ついに登場! 主役感、満載ですw

ついに登場! 主役感、満載です

ずっとずっと、これまで昌幸が戦で戦う場面は出てきませんでした。もう昌幸が出てくるだけでプレミア感があってまぶしいレベル。昌幸率いる真田勢は、ますますえげつない強さで敵を追い詰めます。退却する徳川勢は城下のダンジョンに迷い込み、罠にかかりまくります。さらに信幸まで迫る!

ここまでくると流石にオーバーキルと言いますか、えぐい。本当にえげつない。信幸が「かかれーっ!」と叫ぶところは鬼かと思いました。それにしても大泉さんはきりっとした顔をすると決まりますね。彼が凛々しい若武者に見えるなんて、正直『まれ』の駄目親父を見ていた頃は信じられませんでした。

この時点でかなりえげつないのですが、真田の罠はもうちょっとだけ続くんじゃ。鬼か!

ここで仕事人出浦さんが「さて、とどめといくか」と言います。彼の合図で神川の堰が決壊します。ボコボコにされた挙げ句、激流に流されていく徳川勢。まるでゴミのようだ。ここで川を渡れなくなった徳川勢は、たまらず上田城側に戻り、川の本陣へと向かおうと同士がぶつかります。この様子を見たきりは「もういくさとかそういうもんじゃない」とつぶやきます。本当にその通りです。

佐助が法螺貝を吹き、信幸が日の丸の扇を手にして勝ちどきを上げます。かくして第一次上田合戦終了! その様子を見る昌幸の額には汗ひとつにじんでいないのでした。流石父上です。

徳川を挟撃。兄がとどめを刺す!

徳川を挟撃。兄がとどめを刺す!

 

作兵衛は一命とりとめた、しかし、肝心の梅が……

城下を歩いていた信繁と信幸は、作兵衛らの隠れ家に通じる柵が破壊されているのを見つけます。追い詰められた敵がここに逃げ込んだのかもしれないと説明する信幸。信繁はたまらず走り出します。

そこで彼が目にしたのは、屍が転がる様でした。作兵衛は一命をとりとめており、梅がここにいなかったのが幸いだと語ります。赤子の泣き声を聞いた信繁らが顔をあげると、その視線の先に立っていたのは、梅ではなく何故かきりでした。

目を潤ませたきりは、梅が櫓から柵が壊されるのを見て、皆を案じ隠れ家に向かったと告げます。梅の名を呼び、探す信繁。作兵衛に呼ばれて信繁が目にしたのは、無残にも力つきた梅の屍なのでした。

愛妻を抱きしめ涙する信繁。そこでナレーションが、徳川の戦死者1300余りに対して真田は戦死者50以下と語ります。しかしその僅か50人の中に、信繁最愛の人がいたとは。きりはすえを抱きしめ、この子は私が育てると誓うのでした。

痛快な勝利、しかしあまりに重た過ぎる代償。信繁は一体これから何を見るのでしょうか。

 

今週のMVP:真田信繁 残念賞:梅

青春編ラストでやっとこのポジションに。「高砂」の歌い方、挑発の動作、全てが決まっていました。

ただし、本来MVPは彼女が取るべきだったのでしょう。しかしむしろノイズになってしまい、ここに来て女性ウザキャラの座をきりから奪ってしまったかのようでした。城と隠れ家をいったりきたり、授乳のためにいなくなる。しかもお供もつけずに単独行動。止めるきりの方がよほどまともになってしまった、という。

本作の女性キャラは構造上、割を食っていると思いますが、梅もまたそうでした。

上田合戦で死なせる。しかも赤子は巻き込まない。なるべくショッキングな方法で。この三条件をクリアするためには、梅の愚かで無謀としか思えない行動も必要だったのでしょう。大手門前信繁の目の前で亡くなるという予想を裏切り、隠れ家で最期を迎えたのはまだよかったと思います。櫓から柵が破壊されたのを見て現場に向かったのではなく、偶然隠れ家に残っていて死亡、の方がましだったとは思うのですが。意外性を狙ったせいで、梅がきりの制止を振り切り危険な場所に飛び込み、死んでしまったという無謀さが際立ってしまいました。無理があった梅の退場ではあるのですが、死者50名にとてつもない重さを持たせた意義はあったと言えるでしょう。

設定はともかく、黒木華さんの演技はよかったと思います。お疲れ様でした。

 

総評

満を持して、これが合戦だとぶつけるように挑んできた今回。しかし45分合戦といいながら、実のところ半分程度は戦闘の前振りなのです。しっかり罠を組み立て、策を示し、どこでどうすれば勝ちにつながるか、きっちり条件を見せる。その策の中に敵がはまりこんでいく様をじっくりと見せる。丁寧でした。華やかな武者がぶつかりあうのではなく、泥臭い老人や子供を含めた人々が、つぶてや熱湯で応戦する展開は燃えました。何も派手に、有名武将を目一杯出さなくても、リアリティのある合戦はちゃんと出来るのだと示しました。第一次上田合戦の特色が出ています。槍を突くのではなく叩く動作にしていたり、盾が竹束をたばねたものであったり、火縄銃の装填にタイムラグが出ていたり、そういったディテールの細かさも魅力的です。

コミカルさと残虐さの組み合わせが本作の魅力ですが、痛快さとえげつなさを今回も同居させています。もう絶命していそうな兵士を執拗に槍で突き刺したり、倒れ込む兵士をさらに堀に落としたり、同士討ちで混沌としている場をここぞとばかり映したり。そんな修羅場を安全な城の中から眺め、「これはもう戦なんてものじゃないわね」とつぶやくきりが印象的でした。戦でないなら何なのか。一方的な殺戮です。痛快な戦の結果、生じた累々たる屍をきっちりと映すところも本作の本気でした。

本先の別の本気は、真田側の死者50名にも深い意味を持たせたところですが。そのせいで前述の通り、ちょっと梅のキャラ像が残念になってしまったのは痛し痒しでしょうか。

そんなことを思いつつ眺めていたら、あまりに次週からの大坂編予告が濃くて頭がくらくらしてきました。どうなるのか、来週!?

 

今日の考察コーナー:屋敷P、世界へ漕ぎ出す

「『花燃ゆ』は最低視聴率じゃった。大河スタッフはふがいなさを恥じるばかりよ……」

「しかし、だからといって恥じているばかりではなりませぬ」

「わしもそう思うんだ。そこでここに赤いこよりと黒いこよりがある。赤はファミリー路線、黒は懐古路線。どちらが視聴率回復につながるか」

「赤を選んだら『花燃ゆ』で黒は『軍師官兵衛』でも確かその路線でしたけれども、一長一短が……」

「いや、どちらも選ばんぞ、わしゃ決めた! わしゃ世界を狙う!」

「世界をですか。いや、おもしろいですけどいきなり世界を!?」

「今世界で一番ヒットしているテレビドラマを知っているか? 『ゲーム・オブ・スローンズ』じゃ。これが一言で言えばアメリカン大河」

「ああ……でもこれって一話確か1,000万ドルかけているんですよね(11億円超、第6シーズン時点)。それを目指すのは流石に」

「予算がないのはつらいのお、確かに金はここまで掛けられん。しかし、そこは創意工夫次第よ」

「しかし、この作品はあまりに残虐で批判もあると言います。あのハードコアな残虐さに大河視聴者がついて来られるのかどうか」

「だからこその大ばくちよ。もっと視聴者を信じろ、これで描かれているのはほぼ中世イギリス史だろ。中世やSF、ファンタジーなど、今の視聴者は舞台が変わっていても受け入れてくれる素地があるということよ。ありのままの中世こそかえって新鮮。今まで大河は日本的なコンテンツじゃと思っておった。しかし、世界でもありのままの中世史が受けると証明された以上、このノリで大河を作って何が悪いんだ! うまくすれば世界にこぎ出せるぞ」

 

この会話はネタであって、ネタではありません。こちらのインタビューをお読みください。

戦国ホームドラマ『真田丸』は海外でも通用するハズ!?

http://dot.asahi.com/dot/2016033100268.html

これ、タイトルだけ見ると何言っているんだコイツ、となりそうですが、中身はかなりしっかりしていますよ。そして注目したのが、

今、海外の歴史ドラマが非常によくできていて世界中で見られています。たとえば『ゲーム・オブ・スローン』という作品は、描かれているのはほぼ中世イギリス史です。中世やSF、ファンタジーなど、今の視聴者は舞台が変わっていても受け入れてくれる素地がある。

日本の時代劇というのは本当に世界に通用するドラマなんじゃないかと思っています。

土屋P「女性たちに見てもらうために「イケメン俳優たちをキャスティングした」

屋敷P「日本の時代劇というのは本当に世界に通用するドラマなんじゃないかと思っています」

昨年と今年で差がありすぎるだろ、プロデューサーの意識!

今年の屋敷Pは大変頑張っていると思います。三谷氏以上に饒舌にドラマについて語り、連日のように発言が報道されているのが屋敷Pです。しかも長澤まさみさんを庇ったり、史実と違うと批判されている点について解説したり、実に丁寧でかゆいところに手が届くことを語ってくれます。きちんとコントロールして、役者や三谷氏が被弾しないよう気遣っているのもわかります。低視聴率の罪を主演に被弾させ、ポエムのような自画自賛を繰り返し、責任逃れをしていた昨年のPとは大違いです。

今週は屋敷Pの目指す地点について考察したいと思います。

昨年、私は『花燃ゆ』が駄作になったのは脚本家よりもプロデューサーのせいだ、と言いました。プロデューサーというのは実のところ大きな権限を持っている。本作は三谷作品とされますが、実は屋敷Pの好みや思考がかなり入っているのではないか、と思う次第です。

そんな屋敷Pの腹の内を明かすインタビューが、前述のものであったわけです。

やっぱりな、と読んだあと思いました。本作はやっぱり『ゲーム・オブ・スローンズ』(以下GoT)を意識しているんだと確認できてガッツポーズです。あのドラマを見て私はこう思いました。

「戦国時代みたいな世界観を再現してここまで面白くできるなら、大河だってできるはずなのにな」

そのネタで原稿も書いています。

おそらく同じようなことを屋敷Pも感じたのではないでしょうか。しかし、GoTの要素をそのまま大河で再現することは大変難しいと思われたはずです。

GoTは大河低視聴率の原因となりそうな要素を、ことごとく踏み抜いています。千名には達しそうな登場人物、長い放送時間、残虐描写、家族すら駒と扱うような冷酷さ、謀略、暗殺、複雑なプロット、狡猾な者が勝利する展開。近年大河視聴率が伸び悩んだ際、こうした要素が槍玉にあがりました。ネットやスマホが普及した現在、登場人物が多数出てくるドラマを45分間もテレビを見ていられないとか。残虐な場面は特に女性が嫌うとか。そうした批判をおそれ、縮こまった結果が近年のファミリー路線、その極みが昨年の『花燃ゆ』であったと思います。

そんな時、そうした要素を踏み抜き踏みつぶし大ヒットするGoTは、不思議で力強い存在であったことでしょう。屋敷Pは、「今だって歴史への愛と、残虐を描く勇気の旗を掲げていいんだ!」と思ったのではないでしょうか。

そこで屋敷Pが取ったアプローチを先ほどのいンタビューから推察しますと、まず残虐だの荒唐無稽だの、そういった批判を「史実で殴りに行く」スタンスだと思います。気鋭の時代考証担当者を三名もつけ、さらに軍事や風俗考証もつけ、堂々と胸を張って「だってこれが史実ですから」と答える。これがまず一つ目です。江戸時代から積み重ねられてきた講談やフィクションの要素をひっぺがし、ありのままの中世を描くことで、異世界を旅するような魅力を醸し出す。GoTのアプローチを大河でも使うわけです。現代の価値観から遠ければ遠いほど魅力が出る、そういうやり方です。

しかしありのままの中世は、流石に刺激が強すぎる。そこで作家性が強く、コミカルな脚本を書ける三谷テイストが必要となってくるわけです。さらに甘味料を果たすのが女性キャラで、視聴者の反応を見ながらシリアスとコメディを調整し、なんとか現代人でも受け入れられる地点を探る。そんな戦略があるのではないかと思います。なんとか調整しつつ、骨太テイストで大河を作れないか、練りに練られている本作の魅力は、屋敷Pの戦略もあってうまれているのでしょう。

このまま頑張って世界に漕ぎ出せ、『真田丸』! このクオリティをラストまで維持できればそれもありえないことではないと思いますぞ!

第14回「大坂」 見よ、黄金と黒のコントラスト! これが天下の豊臣軍団だ

こんばんは。今週から信繁人生の転機、大坂編が始まります。

天然小悪魔ぽい茶々、おっかさんオーラのあるねね、コミカルな秀吉、ハマり役の三成と吉継。そして豪華絢爛な大坂城と、明るい雰囲気で一杯ですが、堺雅人さんや屋敷Pの発言を読んでいると不穏な空気が漂っています。信繁が接するのは、明るいようで狂気がにじみ始めた権力者秀吉なのだとか。

ここで予測しますが、今年の秀吉はかつてない黒さになるでしょう。笑顔で人を殺す小日向文世さんの演技は恐ろしいですよ。秀吉と比べたら、これまでの昌幸の悪さなんてアイスケースに入って写真を撮る高校生程度に思えてくるかもしれないですね。

光属性の三谷氏に対して、闇属性の屋敷Pは第八回、第十一回など、謀略場面でどこまで視聴者が黒さに耐えきれるか観測気球をあげてきました。軽い、女性キャラがウザいという批判が上回っている状況に、屋敷Pは安堵しているかもしれませんぞ。軽さで目くらましされているなら、反動で重たく、黒くできると。

今までの謀略は、当時の価値観からすればまだギリギリ許容範囲ではありました。昌幸は小国が生き延びるためだと弁解できました。ところが秀吉は違う。当時からその残虐さが非難の対象となり、かつ強大な権力を手にした者特有の暴慢さがあらわれた残虐行為に視聴者は耐えきれるのか。スタッフはどこまで恐れず描けるのか。最大のポイントは、秀次事件だと思います。絶対にここ数年で最も壮絶な秀次事件になると、ここで予想します。

 

徳川家いきなりの大ピンチ 家老・石川数正が裏切った!?

さて、本編です!

第一次上田合戦のあと、信繁は約束通り人質として上杉景勝の元に戻っておりました。景勝は最愛の妻を亡くした信繁を気遣い、上田にもう少し留まった戻った方がよいのではないかと勧めますが、信繁は断ります。景勝の前では気丈に振る舞う信繁ですが、表情から憂いが見えます。堺雅人も遠藤憲一さんも、感極まると目が潤むのがよいんですよね。この景勝との会話で、信繁は妻によって武士の誇りを教えられたと語ります。

それにしても初回を振り返ると、信繁も変わっているんですよね。運命の転変、父の謀略に振り回される苦い経験、様々な人の死を経験して、苦悩が澱のようにつもっているようです。最初は透明な液体だったけど、今はもう何かが底にたまっていて、何かのはずみで揺れると、濁りが浮き上がって来ます。

一方で浜松の徳川家康は、敗戦の報に激怒。次は本多忠勝を総大将にし、必ず潰すと決意を固めます。

真田丸本多忠勝霜月けい

上田で勝利をおさめたとはいえ、窮地を脱していない昌幸。ここは、とらわれの身である弟の信尹に任せようと言い出します。信尹は囚われ人でありながら、労の中から石川数正と話し、相手を籠絡します。真田一族はまるで毒蛇はスズメバチのようです。退治しなければ危険、かといって退治するとなると厄介という。

長年徳川家で働いていた数正は、信尹に唆され羽柴秀吉の元へと出奔。彼は機密情報ごと出奔したので、これは本当に厄介です。スノーデンがアメリカの機密情報を握ってロシアに亡命、みたいな感じですかね。家康はお膳を星一徹ばりにひっくり返して慌てふためきます。いわば徳川の手の内が、相手に丸見えになるわけですから、そりゃ慌てますよね。恐るべし、真田信尹!

 

戦国時代を動かした大災害・天正大地震

信繁の忠臣である矢沢三十郎は、主君に前を向いて先に進みましょう、と訴えます。進むことは梅を忘れることではないと説得する三十郎に、信繁は怒りの表情を見せます。梅に何も幸せになれるようなことはできなかったと叫ぶ信繁。しかし、前に進むしかないのだ、わかってはいるのだ、と三十郎に謝ります。

機密情報がバレた家康は、パナマ文書がぶっこぬかれた政治家のように慌てふためいています。すると、なんと天正大地震が発生。マグニチュード7の揺れが、中部から近畿を襲いました。秀吉は震災復興のため、家康との決戦を避けます。家康は地震のおかげで窮地を脱しました。この天正大地震では帰雲城が一瞬にして消え去り、山内一豊と千代の間の娘が亡くなっています。ここでの家康と同じように震災で助かったのが慶長の役における李氏朝鮮(と、明、それに日本国内の厭戦的な武将たち)です。慶長大地震で朝鮮に攻め入るどころではなくなった秀吉は、朝鮮経由で明を征服するという野望をあきらめざるを得ませんでした。

話の先を急ぎすぎました。家康はなんと牢の信尹をスカウトします。石川数正を唆すとは見上げたものだ、その腕をうちで生かしてみないか、と誘います。正信は断ったらこうだぞ、と斬首をジェスチャーで表現。信尹は自分を取り立てると、裏で兄の昌幸に情報を流すかもしれませんよ、と雇用上のリスクを説明。家康はそれも承知だ、と答えます。かくして信尹は、徳川家に仕官することになります。この人も真田一族のモンスターですなあ。

【天正大地震の関連記事】

地震によって山腹から崩れ落ち、跡形もなく消えてしまった帰雲城(かえりくもじょう)/白川村HPより引用

天正大地震と共にたった一晩で消えてしまった帰雲城 山腹を削り人も山林も土砂と地中へ……

景勝に誘われ、兼続に説得されて大坂へ

ここで絢爛豪華な大坂城がどーんと映ります。神々しいBGM、黄金を貴重とした場面はあきらかに今までとは違います。次々と各地の大名が上洛する中、北条氏政は意気軒昂です。上洛はせぬ、会いたいならこちらへ来い、ただし体面するのは首から上だけだと高笑いする氏政。この決断がのちのち、惨い結果をもたらすのですが。

一方、なんと昌幸にも上洛せよとも命令が。大名でもない父上に何故かとしつこく三度も言う信幸に、昌幸は「うるさいわ!」と一喝。信幸を黙らせる室賀さんの得意技「黙れ、小童!」は継承されなかった模様。ここでどうするかと話し合っていると、信幸がシンプルで凡庸にすら見える「上洛すればいい」という正解を出します。一方で高梨内記は、上洛してむざむざと領地と城を取られたら今までの努力が水の泡だ、と反対します。昌幸は、信長とは焦って交渉し過ぎて痛い目にあった、沼田を北条が狙っているからと理由をつけ上洛は先延ばしにする、と言い出します。

上杉景勝は上洛するが、秀吉に屈するわけではないと信繁の前で宣言。さらに「どう? 大坂に行ってみない?」と誘います。前々回のビーチリゾートの次は大坂旅行に誘う景勝……。

直江兼続は、大坂旅行を迷う信繁に「お館様の話を信じてないよな?」とネタばらし。兼続は今回の上洛は、上杉家を守るため、北条や徳川と対抗するため、秀吉の家臣となって世を渡るしかないんだ、苦渋の決断なんだ、お館様も辛いんだからつきあってやってくれよ、と言います。信繁はそれならば、と承諾します。

昌幸はこの知らせに大喜び。うちの可愛くて人当たりのいい次男に秀吉のハートをキャッチさせていろいろ探らせちゃえ、と信幸に策を語ります。どんだけ信繁の愛され属性頼りなんだよ。信幸は父の態度にちょっと落ち込んで、妻の膝を枕に愚痴タイム。

「信繁が大坂行くってよ。父上は弟を買っているよな。アイツに嫉妬するわけじゃないけど、父上はさー、結局さー、俺を蚊帳の外においてアイツばっかりでさーもうさーやってられないっていうかさー」

徳川を挟撃。兄がとどめを刺す!

あれ? おこうの衣装が妙に高そうだな、と思っていたら案の定膝枕していたのは、薫でした。母親と妻を間違えて愚痴るとか黒歴史レベル高すぎぃ! 薫はこうの部屋で、きりとすえについて話し合っていたようです。梅の遺児であるすえを育てると先週誓ったきりですが、まだ子供のきりに子育ては無理でした! ですよね!! 結局すえは、伯父の作兵衛が育てることに。

こうして暇をもてあますことになったきりを見て、よせばよいのにきりの父・高梨内記は何か考えているようです。

信繁は高齢の父・頼綱(昌幸の叔父)がいる三十郎は親元へ戻るよう命じます。代わりに上田から来たのは、内記が送り込んだきりでした。なんでだよ! ギャーギャーうるさいきりですが、何故か景勝はきりを気に入ったのでしょうか、大坂について来るよう命じます。

 

ついに三成登場! つれない態度はツンデレ的な?

大坂へ向かう景勝一行は、加賀の倶利伽羅峠近くで石田三成の歓迎を受けます。三成は外交交渉のエキスパートですので、こうした出迎え業務もこなすわけです。きびきびとこれからのスケジュールを景勝に説明し、さらに加賀の名産を集めた夕食も準備しています。完璧な出迎えですが、完璧すぎてかえって苦手な人もいるかもな、という気がします。

夕食の席では、信繁は景勝や三成とはちょっと離れた場所で取ることになります。ここで景勝は突然立ち上がり、信繁を連れて庭へと出て行きます。そこで景勝は信繁に「俺はあくまで秀吉に従ったわけじゃないんだ」と語り出します。本当にこの景勝は愛すべき駄目男だなあ、完全に信繁を精神的な支えにしちゃっていますね。兼続にはこういう愚痴は言えないんでしょうね。

昌幸にダマされるのか?

しかし信繁もこのあたりの景勝の本音を見破っていまして、義って言うけどそういうものじゃないでしょう、と言外ににおわせます。景勝は、自分は義を貫くことができないが、お前は俺の分まで長いものに巻かれず義を貫いて生きろと、思いを託します。六文銭を渡し武士の誇りを渡した梅、そして義を己の生き方を貫けと託す景勝。信繁の死へと至る道は、武士の誇りと義で固められてゆきます。信繁死後の景勝の思いを想像すると、なかなかぐっとくるじゃありませんか。

京都についた信繁は、どうせ近いんだし、ここで止まらず大坂まで行ってもいいじゃないですかと三成に問います。三成曰く、上洛(都にのぼる)という形にこだわるため、いったん京都にとどまることにしなければいけないそうです。ここで信繁は「正論だけど人を不愉快にさせる」と三成を評しますが、果たして。

<山本耕史>「日本中から愛される石田三成になる!」 脱ぐシーンに向け肉体改造も(まんたんウェブ) – Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160408-00000032-mantan-ent

山本耕史が描く新たな三成像「散り際惜しまれ、愛される」 ― スポニチ Sponichi Annex 芸能

http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/04/08/kiji/K20160408012360610.html

 

「もう裏切ってしまったんだから仕方ないじゃないの~」

兼続から、信繁に会いたい人物がいると語られます。なんとその相手は徳川を出奔した石川数正です。徳川から刺客を放たれ、潜伏している数正はかなり荒れています。数正は秀吉との交渉役でしたが、それが決裂して主君と秀吉は対立することになりました。こうなると両者をとりもってきた交渉役は面子も何もあったものではなく、裏切ってしまうケースがあったそうです。数正のそんな心の隙間に、信尹はつけいったわけですね。

真田のせいで恩ある徳川を裏切ってしまったじゃないか、どういうことなんだよ、ひどいだろ、とキレる数正。はい、真田は酷いです。真田被害者の会新規入会おめでとうございます。信繁は、でも唆されたあなたも悪い、決めたのはあなたなのだから、と言うわけです。

「もう裏切ってしまったんだからせわぁない仕方ない、前向きに生きよう!」

という信繁ははっきり言うとふざけんな、ではあるのですが。目を潤ませ、先に進むしかないという信繁は、梅の死を乗り越えようと自分に言い聞かせるようにも聞こえるので、まだましに思えます。

ここでCGチームが頑張った大坂の遠景登場。大坂城で景勝はガチガチに緊張しながら、秀吉との対面を待ちます。しかし三成がここに来て、今日は関白が忙しいので明日にリスケしますんで、と言い出します。上杉は大坂城に、真田は別の宿所に案内すると言う三成です。これは感じ悪いですね。

 

なんだ、こいつ、めんどくさいぞ……と思ったら、あの清正公ですか!

信繁らの宿所は、なんと石田三成の屋敷でした。しかもきりは、どう見ても物置のような場所に案内されます。人が泊まるってレベルじゃなくね、と言うきりですが、三成は無言で立ち去ります。

信繁は質素な夕食を取り、三成の妻・うたに「関白って猿みたいなの?」とギリギリの問いを発します。うたは「知りません。猿なんて見たことありませんから」とうまい答えを返します。このあたり、三谷さんの技がキラリと光ります。

その夜、信繁は廊下で話し合う三成と加藤清正を目撃します。

「殿はさ〜、やっぱ俺たちとアウトドアライフを満喫してねーと駄目なんだよ、関白とかノリ悪いじゃん。これ以上出世したら寂しいし、官位とかぶっちゃけマジうざくね?」

なんですか。擁するに出世前の秀吉は、社員とBBQとか気軽にする系ですか。三成はあきれて、

「ならお前も官位返上しろよ」

「ええ〜俺は官位好きだし、返上したくねえし〜」

とか何とか。なんだこいつ、めんどくさいぞ。三成があきれていると、清正は突然廊下で寝てしまいます。しかもどうやら、よく廊下で寝ているらしい清正。なんだこの関係は。インパクトあるぞ、清正!

翌日、やっと上杉主従は関白と面会します。信繁は控えるように命じられます。するとなんと、信繁は天真爛漫な姫君と出くわします。清洲に住んでいたことあるの、結構あなた好きな顔ねっ、と言う彼女は茶々。のちに運命をともにする二人は、こうして初対面を済ませたのでした。

茶々が去ったあと、片桐且元がやって来ます。これから関白が会いますから、と案内する且元。且元さん、登場早々胃を痛めていそうな苦労人オーラが漂っています。茶々が「真田の子、なんかとっても面白いの! 関白に会わせてあげて!」とか且元にねじこんだんですかね。面会室に案内された信繁は、好奇心から廊下に出て外を眺めます。すると壮麗な、黄金と黒で装飾された大坂城天守閣が見えるのでした。

足音を聞いた信繁が慌てて部屋に戻ると、なんと秀吉その人が入ってきて屏風に隠れるのですが……。ここで次週へ。

 

今週のMVP:加藤清正

他の新登場キャラが顔見せかエンジンをあたためている程度の中、フルスロットルなのがこの人。

なんだこの熱さは! なんだこの面倒くささは! 今はまだ仲良しっぽいけど、三成と対立するのが今から楽しみだぞ!

この清正、黒いヴェルファイア乗っていそう。ドンキホーテで売っている黒地に金色でハローキティがプリントされているサンダル愛用していそう。ちなみに石田三成が乗っていそうなのはプリウス。

 

総評

きらびやかな大坂編のスタートです。素朴な信濃の山奥から、絢爛豪華な大坂へ。衣装もセットもぐっと華やかになりました。黄金と黒のコントラストが実に美しいです。

今日は新しいステージスタートということで、やや強引に主人公と人物が絡んでゆくことになりました。いきなり出てくる茶々、三成邸廊下で寝る清正、そして秀吉と、おかしな出会いばかりです。ま、新たなスタートですし、これくらいは仕方有りませんね。昨年の新章突入なんて大奥編とか群馬編で、阿久沢せいが傘持って無双とかそんなでしたからね……。

華やかなのに、死の臭いが青春編より濃くなっています。その凄絶な死によって、梅は信繁に誇りを教える。景勝からは義のために生きて命をかけろとすり込まれる。信繁の頰を撫でて喜んでいた茶々は、信繁が命を賭けて守ろうとする存在になる。大坂城の天守閣は、信繁の最期と前後して業火の中で焼け落ちる。この箸休めのような回に、のちの彼の運命につながる部分がさりげなく盛り込まれています。それにしても、信繁はきりにはまったく心惹かれないのに、己の身に将来死をもたらす茶々には心惹かれるんですから、なかなか厄介な男です。

来週からはいよいよ本格的に動く大坂編ですが、最初からフルスロットルで黒い秀吉になりそうな予感がします。確かにそういう面はあります。北条氏政もですが、豊臣政権に逆らったことで滅ぼされた大名、殺された民は大勢います。黄金の楼閣で高笑いしつつ、天下を血で染めるのが秀吉。栄光の黄金と、死と破壊の黒。これが大坂編のテーマになりそうです。

今週の茶々でうんざりした方には、公式サイトの竹内結子さんのインタビューをお勧めします。役の解釈が実に深い。どんなに綺麗に着飾り、天真爛漫に微笑んでいても、結局のところ茶々は籠の鳥なのです。

 

おまけ:信繁青春編完結記念ランキング

先週までで信繁青春編が終わりました。重要人物すら有働アナが殺すことから「ナレ死」とまで揶揄された本作ですが、どっこい八話あたりから印象的な死に様(と屍)が登場するようになりました。真田家が直接目撃していない事件による死はあっさりと処理するものの、真田家関連、あるいは真田家が手を下した死はむしろじっくりと執拗に描く、そんなこだわりが感じられます。

このドラマは、ラストで信繁の屍が視聴者の前にさらされて終わります。一年間見続けてきた男が、宿敵を目の前にして斃れる。その美しくも壮絶な死に様が一番盛り上がるわけです。絢爛たる死と死に様を重ね、本作は進行してゆきます。昨年某会長は人が死ぬドラマは盛り上がらないと発言し物議をかもしましたが、今年はむしろ「死」こそがドラマの彩りになっています。不健全ではありません。それが戦乱を描く歴史ドラマのさだめであり、醍醐味なのですから。

明るくまぶしい信繁の青春には、既に死と血のにおいが既に濃く漂っています。今回は印象的な死に様ランキングを作成してみました。

次点:小山田信茂(3)

勝頼の首をどーんと前に置かれた状態で、信忠による死刑宣告。彼自身の死より、あの勝頼がわかっていたけど首になってしまったという事実が重たくのしかかります。

第五位:織田信忠(5)

織田信長の死は炎の中でくずれる甲冑というあっさりしたものでしたが、信忠は多勢に無勢で力つきる無念が描かれました。信長よりあえて信忠の死を取り上げるところが、本作の特色でしょう。

第四位:武田勝頼(2)

死を目前にして出てきた勝頼は、死へと向かう精神性以外はすべてそぎ落とされ、透き通ったような不思議な存在感を醸し出していました。悲哀が漂う死なのにその姿には、神々しいような、不思議な美しさがありました。

第三位:梅(13)

主人公最初の妻でもこの順位というのが本作の恐ろしさかもしれません。彼女の死にはいろいろな意味で重要な意味があるでしょう。

第二位:室賀武正(11)

一位と僅差での二位。皆の愛着が高まったところでの、非情な死。何カ所も斬られながら死にきれず、床をうめきながら這い回る無残な姿が無残でした。しかも駒にした本多正信は名前すらろくに覚えていないという哀愁ぶり。光属性の三谷コメディ脚本と、闇属性の屋敷Pの方向性がかみ合った傑作回です。

第一位:春日信達(8)

朝靄の中から浮かび上がるデスマスクの美しくもおぞましい絵面に、演出の美学を感じました。見せしめ死体を謀略トロフィー扱いする昌幸の外道ぶり、仕事をこなし彼の腹に刀を突き立てる信尹の非情さ。昌幸が信繁に謀略を見せ付けたように、本作のスタッフも視聴者に残虐さを見せ付け「このノリについていけるか!?」と問いかけていた死でした。絵的には抜群の美しさで、月明かりの元光る刃が腹に突き立つ死の瞬間は、何か見てはいけないもののような凄味すらおぼえました。

 

おまけ考察:魅力的な短命と、凡庸な長命と

ここで三位の梅の死について、気づいたことを。先週の梅の死は賛否両論と思い、いろいろな感想を読みました。レビューサイトでは、賛否のうち否定が多いようです。

私もひねくれたもので、そうした感想を見て来るとかばいたくなってきます。戦国期の人骨を発掘すると、現代人が想像する以上に女性のもの、しかも明らかに戦傷死と思われるものが多く出てくるそうです。梅は中世を生き、中世の戦を戦い抜いて死んだ当時の女性かもなあ、と思ったわけですが。

それにしたって、乳飲み子の娘を残し、大勢を変えられるわけでもないのに突っ込んで死ぬなんて無謀だ、という思いはぬぐえないわけですが。ここでふと気づきました。梅の死は、夫である信繁の死の状況によく似ているのだと。

梅も信繁も、最愛の家族(配偶者と子)を残し、戦いに身を投じて死ぬ。しかも信繁の場合、嫡男すら死に巻き込んでいます。

梅も信繁も、それまで策を駆使して生きてきたのに、大勢を変えられるはずがない戦いに、損得勘定を抜きにして身を投じる。信繁はもちろん梅よりはるかに戦力になったわけですが、たとえ彼が家康を討ち取ったにせよ、徳川の天下が揺らいだかどうか、豊臣の天下に回帰できたかどうか、どちらも極めて可能性は低いでしょう。戦わずにいたら安寧に生きられたにもかかわらず、死ぬ可能性が極めて高いにもかかわらず、彼ら夫妻は死へと疾走します。

そして対称的、かつ二人ワンセットのヒロインであったきりと、梅。

この二人は「バナナ型神話」の女神のような役割ではないかと思います。「バナナ型神話」における女神の典型は、イワナガヒメとコノハナサクヤヒメです。魅力に乏しいが長命・多産を司る女神と、魅力的だが短命・少産を司る女神が出てくる。主人公は大抵後者を選び、その結果として長寿をつかみそこねます。

本作の場合、魅力に乏しい長命の女神は、きりです。無責任でデリカシーがなく、当時の人が持つような命懸けのシリアスさが欠けると批判される彼女。しかし窮地において示される彼女の選択肢は生存という意味では正しく、また言動のはしばしに生きることへの執着の強さを感じさせます。室賀正武の死に怒り、六文銭を縁起でもないと言い切る彼女は、大坂の陣に向かう信繁のことを無駄死にする気か、と止めるかもしれません。彼女の言動は確かに苛立たしいものですが、「死」を嫌い「生」の方へと信繁を引っ張る役割を果たしているのです。きりの助言に従う限り、信繁が死ぬことはないのでしょう。だからこそ、信繁は彼女に惹かれることはないのです。彼は短命の道を選ぶからこそ、きりは魅力的ではないと思われなければなりません。

梅はその反対で、春日信達の謀殺に理解を示し、自らの祝言を不吉な暗殺で穢されても動じることはありません。死を連想させる「六文銭」を、夫にお守りとして渡します。彼女はきりと違って、死を連想させることがらを嫌い、不吉に思うことはないのです。そしてのちの夫の死を連想させるような、不可解な死を遂げてしまいます。真田一族は「死を恐れず戦う六文銭を掲げて生きる者」です。本来真田一族と認められないはずの梅は、死を恐れないことで、真田の女になったのです。

ヒロイン二人が最初に登場したとき、信繁は梅に豪華な贈り物をし、彼女を選びました。のちにきりや他の女性が信繁の妻になるにしても、彼が最初に選んだのは、栄誉と死を司るヒロインでした。梅にあの櫛を贈った時点で、劇中の信繁は既に「死」に惹かれる人生を歩み出していた、と言えるのかもしれません。そして信繁に選ばれた梅は、三途の川の渡し賃になる「六文銭」を彼にお守りとして渡します。生きて帰って来て欲しいではなく、悔いなく戦えるように、と。

長命の者よりも短命の者を選んだのは、信繁だけではありません。江戸時代から現代に至るまで、真田兄弟で人気が高かったのは、長命を保ち大名として家を長らえた兄・信幸ではなく、短命の弟・信繁でした。長く生きること、家を保つことよりも、短く栄誉とともに生きて散る。そんな生き方に魅力を覚える人々が、信繁の物語を語り継ぎ、また彼の子孫を匿い残してきたのです。真田信繁の物語は、華やかで哀しい短命を選んだ彼自身と、そんな彼の選択を支持する者たちがつむいできたものなのです。私たちが目にしているのは、まさにその物語なのです。

第15回「秀吉」 その軽妙さが逆に怖すぎ、ハラワタ真っ黒黒な天下人

こんばんは。今回の平成28年熊本地震により、被災された皆さまには、心よりお見舞い申し上げますと共に、 皆さまの安全と、被災地の一日も早い復興を心からお祈り申し上げます。

まずは真田丸関連のニュースから

さて、先週から新章突入ということで、今週も新登場キャラが多いようです。その反面、信繁青春編の実質的主役であった昌幸は、策だけでは生きていけなくなり力を失ってゆくとか。なかなかシビアな描き方をする作品です。

「真田丸」の“夏”「大坂編」は父・昌幸の悲哀 信繁の輝きと対照 ― スポニチ Sponichi Annex 芸能 http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/04/10/kiji/K20160410012360840.html

ニュースといえば、これもなかなか面白い記事です。

意外と知らない、真田丸に見る「大河の裏側」 「チーム論」そして「ネット戦略」 | テレビ – 東洋経済オンライン
http://toyokeizai.net/articles/-/112483

本作の裏側もわかりますが、昨年は随分準備期間が短かったんだな、とわかります。

そしてこのニュース。

真田丸の「線香」が静かな話題に 「花燃ゆ」より売れてます
http://takasaki.keizai.biz/headline/2699/

『花燃ゆ』に鞭打つのはやめたげてよお!

さらにこんな取り組みも。

「真田丸」ニコニコ超会議にブース出展!草刈正雄らトークショー ― スポニチ Sponichi Annex 芸能 http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2016/04/15/kiji/K20160415012407890.html

本編感想前に、先週分の補足です。

石田三成の妻・うたは、宇多頼忠の娘です。真田昌幸正室の山手殿(劇中では薫)も宇多頼忠の娘という説があるため、うたは信繁らの叔母と書かれている書籍もあります。ただし現在、山手殿が宇多氏の娘である説は信憑性が低いとされてきており、本作の考証担当者は否定しています。本作では石田三成の妻と真田昌幸の妻は姉妹同士ではありませんので、ご注意ください。

 

彦根屏風から抜け出てきたような名妓・吉野太夫

今週は、徳川勢は出番なし。先週に引き続き大坂編突入です。信繁は突然秀吉に言われるまま、お忍びで大坂の町へと遊びに行くことに。お供をするのはノリが軽い加藤清正(追記・申し訳ありません、福島正則の誤りでした)福島正則です。気の毒なことに、上杉景勝と直江兼続はまたも面会を延期されることになってしまいました。

石田三成は秀吉の不在に気づき、片桐且元に「知っていましたね?」と聞きます。先週、片桐且元がおどおどと胃痛をこらえた顔だったのも、これでわかりました。秀吉のサボタージュに協力させられていたわけです。

秀吉らが向かったのは、名妓・吉野太夫の元でした。この吉野太夫の服装と兵庫髷が彦根屏風から抜け出てきたようで、なんとも眼福ものです。メイクも『タイムスクープハンター』レベルまでは再現していませんが、視聴者の目に違和感がない程度まで濃くしてありますね。秀吉はこの名花を口説き落とそうとしますが、あっさりと断られてしまうのでした。

このあと、三人は昼間っから酒を飲むことに。清正福島正則の升は大型で、居酒屋のビールピッチャーサイズです。ここで清正正則の升をじっと見る秀吉の目つきが伏線となります。秀吉はニコニコしていたかと思うと信繁に「お前の親父ナメてんの? さっさと上洛しろよ、喧嘩売ってんのか?」と凄みます。

目が笑っていなくて怖い……とぞっとしていると、三成が現場に踏み込んできます。信繁をアリバイに使い言い逃れる秀吉。三成は人工知能秘書AIの如き冷たい口調で、仕事があるから戻るよう秀吉に言います。秀吉は何か思いついたようで、明日上杉に会ったあと話し合うと決めます。それにしても三成がきびきびと仕事をしていて、ものすごく有能そうと言いますか、ろくに睡眠も取っていないのではと思わせます。

今回のミッションは信達の調略!

秀吉さんに気に入られ街へ繰り出す信繁さん

 

「秀吉がナンボのもんじゃい、上洛なんかしまへんで」by昌幸

上田では、昌幸が秀吉の上洛命令にうんざりしています。秀吉の恐ろしさがぴんと来ていない昌幸は「秀吉なんか知るかよ、器わからねえし、ギリギリまで粘るわ」と相変わらずの態度。信長の件で懲りたのはわかるのですが、昌幸の眼力もやや衰えてきたと言いますか、キレのある思考ではなくなっているような気がします。父を見る信幸のうんざりした顔が、よりその印象を強めます。昌幸は「秀吉が絶好調って言っても今がピークじゃないの?」と言うのですが、今週のラストにこの台詞を思い出すと……。

ついに登場! 主役感、満載ですw

ついに登場! 主役感、満載ですw

信繁の長女で梅の忘れ形見であるすえは、伯父の作兵衛の元ですくすくと育っています。その様子を信幸が微笑ましい様子だと眺めていると、何故か姪に授乳してみちゃったと作兵衛が仰天告白……その発想はむしろいらなかった!

ここで「あまり吸わせない方がいいと思う」とマジレスする信幸。信幸は誰かと話したいでしょうのか、佐助に話しかけるのですが、彼は出浦昌相と忍術特訓中でそれどころではないようです。空蝉だの火遁だの、視聴者サービスですかね。火遁の炎は随分ダイナミックで怖いほどで、普段の信幸なら「危ないだろぉ!」と突っ込むと思います。しかし信幸は疲れ切った顔でスルー。「もうやだこの一族」という疲労感が全身から発せられているのでした。

仕事のできすぎる出浦

仕事のできすぎる出浦

 

昌幸&信繁は乱世で活き、信幸は治世に優れる

昌幸は薫の膝に寝転がり、耳をかいてもらっています。今日のイチャイチャタイムですね。

秀吉の元についたら、薫ちゃんに約束した大名になってお城プレゼントが駄目になっちゃうかも、と言う昌幸に薫は「あなたの言葉をいちいち信じていたら身が持たないし〜」とツッコミ。この間、薫の手は昌幸を愛おしそうに撫でたりさわったりして、実に仲が良いですな。

薫はちゃんとここで「自分に似てギャンブラー体質の信繁だけじゃなくて、堅実な信幸も大事に思ってあげてね」とフォローします。自己中心的だのわがままだの言われる薫ですが、先週の信幸の愚痴を聞いていて、フォローに回る優しさがあるのですね。

昌幸は信幸の活躍は時代が安定するこれからだと言います。昌幸は自分と信繁は乱世の英雄であるのに対し、信幸は治世において力を発揮する統治者タイプだと知っているようです。この言葉は、自分たちのような人間は泰平の世では活躍できないと悟っていると見ることもできるわけで、なかなか複雑なのですが。

霜月けい真田丸真田信幸

 

三成から酒を誘ってきた そこにいたのは大谷吉継

その日、上杉景勝に出会った信繁は、なんだかばつが悪そうです。まあ、景勝と来たら、またいつものキラキラと透き通った目で「任せておけよ! 俺がちゃんと秀吉にお前のこと頼むからね」と言うわけですからねえ(後ろで冷たい目線を贈る直江兼続つき)。もう既に秀吉と一緒にキャバクラに行った、そのせいで上杉の面会が延期になったとか言えませんよね。

場面はかわって信繁の寝所である石田屋敷。きりは大坂でショッピングを満喫した模様。ちなみにきりのような人物は室町時代にもいたようで、出しゃばりで呼ばれてもいないのにズケズケ乗り込んでいく若い女のことを生女房と呼んでいたそうです。きりのショッピング話を無視している信繁。うっとうしいけど、きりの話を聞いていると生の蛸まで売っているとかわかって面白くはあるんですね。

するとそこになんと、三成が入ってきて客人と酒を飲まないかと誘われます。客人とは大谷吉継です。彼が顔を隠していないことにクレームをつけている意見を見ましたが、彼は発症前でしょう。吉継は三成と親しげに会話し、その中で堺代官のオファーは断るとはっきり言います。ここまで短い会話ながら、三成と吉継の間にある信頼感や友情が伝わってきました。

信繁は三成に「なぜ私のことを関白に伝えていないと嘘をついたのですか?」と尋ねます。三成はしらを切ろうとするのですが、そこに使いの者が入ってきます。加藤清正が、先日酔っ払って正体をなくしたことへのお詫びに来たとのこと。三成はしぶしぶ清正への対応に向かいます。

こうして吉継と二人きりで場に残された信繁。信繁はツンツンしていた三成が、デレてきた理由を吉継に尋ねます。吉継は三成の人物評価は秀吉と連動しているので、秀吉が信繁を気に入ったから三成の中でも好感度ゲージが上がったのだろうと説明。吉継は「三成の愛想が悪くてごめんね。あいつにかわって謝るね」と頭を下げます。ほっほう〜、これはなかなかいい三成と吉継。吉継、初回で既に「親友三成の無愛想さをフォローに回っている感」が出ていますね。

 

「真田への助太刀禁止!」で景勝震える

翌日、秀吉は景勝に面会します。ここで秀吉は、景勝は謙信の実子であるという誤解をさらっと言います。まずは飴を見せる秀吉は、本領安堵と官位授与を伝えます。それから鞭として、ある意味景勝にとって一番きつい「真田への助太刀禁止」を言い渡すのでした。

気の毒に景勝の目は潤みだし、「どうしよう、信繁に約束したのに……」と哀しそうな表情になっています。兼続がフォローしていますが、景勝はもう動揺しています。秀吉はこの雨に打たれた犬のような景勝を、茶に誘うのでした。

昌幸にダマされるのか?

翻弄され続ける軍神の跡取り……

このあと、廊下で三成が「景勝は謙信の実子ではなく、甥です」と訂正。流石有能なパーソナルアシスタントです。この会話で、細かいことにこだわらない秀吉、そこへ突っ込む三成の性格が垣間見えました。三成の提案で景勝との茶の席に信繁も呼ぶことになります。

残された景勝は「どうしよう……真田を裏切るなんてできない……信繁にどのツラさげて会えばいいんだ……」とフルフルしています。すっかり落ち込んだ景勝は、辛そうな顔でそのまま信繁に会います。「秀吉なんてただのうるさいおっさんだったぞ」と強がる景勝ですが、やがてしゅんとして言葉を失ってしまいます。景勝のフォローに兼続が入ります。そこへ三成がやって来て、景勝と信繁を茶に来るよう伝えます。着替えに戻る時間のない信繁に、きりが衣装を持って来ます。「しっかりねっ!」とか励ますきりですが、人生初の茶が千利休という信繁のプレッシャーは相当なものでしょう。

景勝の重臣・直江兼続もさすがに困り顔

景勝の重臣・直江兼続もさすがに困り顔

 

茶室の中に蠢く秀吉の監視 「こんな圧迫茶事は嫌だ!」

秀吉、景勝、信繁の三人は、狭い茶室に入ります。そこで秀吉は「昨日のキャバクラ楽しかったな〜」とあっさり信繁と遊んでいたことをバラしてしまい、景勝の前に秀吉に会っていたことがばれてしまった信繁は気まずい思いをします。秀吉、笑顔でさらりと景勝と信繁の間にくさびをうち込んでいて怖いですね。そこへ利休が入ってきます。

ぎゅう詰めの茶室で茶を淹れる利休。信繁は縮こまりながら、秀吉や景勝の作法を目に焼き付けて自分の番に備えます。こんな圧迫茶事は嫌だ!

この場面はカメラワークがおもしろくて、天井から見下ろすような構図で狭さが強調されます。景勝が茶を飲む様子を、利休は鋭い目でじっと見つめています。景勝は疲れ切った顔で茶を飲み干すのでした。次は自分の番かと信繁がドキドキしていると、秀吉はこれでもうよいといい、景勝と信繁を外に出します。

秀吉に利休は、どうであったかと尋ねます。利休は茶の飲み方から、景勝の複雑な心境と諦念を見て取ります。この芸術にとどまらぬ政治や人心まで読む鋭敏な感覚が、今後彼を滅ぼすことにもつながるのでしょう。

そして結局のところ、信繁は秀吉に利用されているに過ぎないとわかります。最初はキャバクラに行くアリバイのため、そして今回の茶に関しては景勝揺さぶりのため。駄目な大河でありがちな主人公補正として、大物がやたらと主人公の可能性を見いだすというものがありますが、本作ではそうではなく秀吉はむしろ信繁を便利な道具扱いしているだけです。そうやって便利に扱っているうちに、使えるとなれば重用するのでしょう。このあたりは吉継の「才能があるとわかった若者は側にべったり置く」という台詞で示されています。

景勝は信繁に、人生で最も苦い茶であったと吐露。利休の台詞とあわせて、彼の秀吉に従うしかない心境がわかります。心なしか景勝は、以前よりも小さくなったようにすら見えます。自信や誇りがべきべきとヘシ折れる音すら聞こえそうな景勝。秀吉はこうやって、己に従うと誓った大名たちのプライドをヘシ折って行くのでしょう。それまで己の領地では頂点に立っていた大名たちが、より強い者に従う屈辱を味わうことになる。それが豊臣政権に従うということなのです。

 

育ちは悪そうなれど、人はとびきりよさそうな秀次

きりは信繁を着替えさせたあとも、大坂城に留まっていました。そこへ枇杷(びわ)を抱えた青年がやって来ます。豪奢な服装ではあるのですが、あまり育ちがよくなさそう、でも人はとびきりよさそうな雰囲気。彼は枇杷を関白夫人である寧に渡して欲しいときりに頼みます。

彼こそが豊臣秀次でした。

秀次はきりが気になって仕方ないようですが、そりゃそうでしょうね。視聴者や真田の皆さんはきりが残念美人と知っているわけですが、初対面なら「なにこの、すっごいセクシー美人!」ってなりますよ。そりゃ秀次も気になるわ。だって長澤まさみさんですよ!

この枇杷を抱えた青年が秀次というところに、本作の容赦ない黒さを感じます。のちの秀次がたどる道を思うと、もうこれだけで十分におそろしい。

このとき、秀次が遅れてしまうと慌てていたのは、昨日秀吉が上杉との面会後に行うと予告していた会議でした。秀吉、秀次、片桐且元、石田三成が揃う場所に、何故か信繁も参加することに。一方できりも、枇杷を渡した寧からある会合に寄っていったらと誘われます。ここで寧が秀次のことを優しい子と評するのもはやりのちのことを考えると辛い台詞です。

 

秀吉、茶々、大蔵卿局と「天正かるた」で神経衰弱

ここからは秀吉日本史教室。検地の意義、石高から動員兵数を割り出せることがさりげなく説明されます。この場面、小中学生にとってとても良質な日本史の勉強になるのでは。ここでのやりとりをテストで書けばバッチリ点数取れそうですよ。

この席で秀吉は、検地の意義、そして使う升の大きさを統一することを宣言します。昨日の清正福島正則の巨大な升を見て思いついたわけです。秀吉の明敏さ、秀次の鈍感さ、三成と信繁の才知が示されます。秀吉は秀次を後継者として育てようとして考えさせているのに、それがうまくいっていないこともわかります。

そのあと、秀吉は信繁を茶々の元に連れて行きます。茶々は信濃の猪の子にしては色が白いと信繁のルックスを評価。色が白いのは当時美男の条件ですから、「田舎から来たわりにはイケメンじゃないの」みたいな感じですかね。

さらにここで秀吉、信繁、茶々と彼女の乳母・大蔵卿局でカードゲーム(神経衰弱と同じルール)を遊ぶことに。このカードの絵は「天正かるた」ですので興味のある方は調べてみてください。ネットですぐ画像が見られます。

信繁は勘の良さと記憶力で次々と当たりを出します。ほのぼのとした場面ですが、茶々が隣室に侍る美青年・立花権三と目があってしまったこと、さらにそれに秀吉が気づいてしまったことで、じわりと不気味な殺気が流れます。秀吉が茶々に執着していること、その執着を妨げる者には容赦ないことがここで示されます。そして茶々は信繁にも好意を抱いているようで、これはどうにも難しいことになりそうですぞ。

 

ほのぼのとした団欒に血に染まる死神のナレーションが流れる

寧が開いていた会合とは、家庭的な団らんです。

羽柴一族、秀吉子飼いの福島正則、加藤清正ら血縁で結ばれた面々が、焼いた里芋を食べながら楽しそうに過ごしています。秀吉の母・なかは全然豪奢な衣装が似合っていないのが印象的です。羽柴一族は成り上がりなんだな、と短いこの場面に凝縮されています。

このほのぼのとした場面に信繁ときりも参加し、穏やかなBGMも流れるのですが、この団らんをぶちこわしにするのが死神ナレーション。今後、この羽柴一族の結束がバラバラになり、血で染まり、呪われていくことが語られます。ナレ死とか一時話題になっていましたけど、端的に言って本作のナレーションは死神の声ですから。

そしてその場にいるのが、崩壊したこの一族を最後まで見届ける真田信繁その人なのです。昌幸は今が秀吉の頂点ではないのかと言いました。勢力としてはそうでなくても、羽柴一族の結束頂点は今このときなのでしょう。そして結束が崩れたときが運命の終わりでもあります。

 

MVP:豊臣秀吉

サブタイトルと一致したこの人。ダントツでしょう。信繁青春編の昌幸と同じく、大坂編での彼はもう殿堂入りでしょう。これからは毎週彼が殿堂入りMVPです。

何がよいって、その黒さ。ニコニコと目が笑っているようでまったく笑っていない、大変恐ろしい秀吉です。この笑顔のまま人を殺せますよ、黒い小日向さんは本当に怖いですよ! これぞ秀吉、というかんじです。

秀次は好青年で茶々は天真爛漫、ということは今年の秀吉は彼自身の魂が既にどす黒いという路線で進みそうです。

 

総評

今週の秀吉本格登場で、だいたいの本作の流れは見えました。

秀吉は黒い。もうともかくどす黒い。そのどす黒さで、豊臣政権崩壊の原因を作ってしまう。

茶々には悪意がない、一切ない。ただ気づかぬうちに豊臣政権にひびを入れるようなことをしてしまうかもしれない。

そしてそんな欠陥のある政権を、義あるがゆえに支える信繁。昌幸は乱世こそ己が泳げる水と考えるからこそ、安定に刃向かってしまう。信幸はその反対であると。

今週はラストシーンが圧巻でした。闇属性屋敷Pが暗黒微笑を浮かべるような、春日信達謀殺、室賀正武の死に続く会心の出来でしょう。その死が際立つようにさわやかに演出したと思える好青年の秀次、天使のように愛くるしい辰之助(のちの小早川秀秋)。この彼らがのちにたどる過酷な運命を思うと……。秀吉やきりの口調が軽いと感想掲示板は大荒れでしょうが、そのくらい軽さを入れなければ重さのあまり沈みこみそうです。鑑賞後数時間は、惚けたように動けなくなりました。

導入部でこれだけ黒いのに、これからその崩壊部を描いたらどうなってしまうのか。ぞくぞくしながら今後を見守りたいと思います。大坂編は夏とのことですが、まばゆい日射しの彼方に嵐をもたらす黒雲が常に見えているような、そんな季節になりそうです。

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