真田丸感想あらすじ

『真田丸』全50話の感想レビュー38万字を一挙公開!

更新日:

 

第41回「入城」 父親譲りの表裏比興で、味方も平気で欺くのさ

こんばんは。いよいよ「真田幸村」が誕生し、大坂に入ります。この季節だと消化試合にもなりそうな秋の大河ですが、今年は大坂編の新キャストにも注目が集まっているようです。

さてこんなニュースが、
◆草刈正雄がベストジーニスト 真田丸で再ブレーク
本作が傑作かどうか評価はまだ定まりません。
しかし、役者さんにとって極めて幸せな作品であったとは言えるでしょう。草刈正雄さんがこんなに幸せならば、本作の存在意義は確かにあったと言えます。

そしてこちらのニュース。
大人顔負けの資料だ! 小4が作製した自由研究「真田の秘密」が「真田丸」制作統括者も驚くガチっぷり – ねとらぼ

まとめられてた笑→小4、学校で評価されなかった自由研究「真田の秘密」をNHKに送ったら制作統括からお返事が届いて大喜び「好きなものの研究って大事」  - Togetterまとめ http://togetter.com/li/1035150  @togetter_jpから

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もくじ

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小4、学校で評価されなかった自由研究「真田の秘密」をNHKに送ったら制作統括からお返事が届いて大喜び「好きなものの研究って大事」 #真田丸

興味を持って取り組む研究、大事ですよね

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これもまた幸せなニュースです。小学生が本作にどっぷりとハマっています。これは大河ドラマという番組に対する希望です。この子のような少年少女こそが、未来の大河を支えます。そうしたファンを育てているのですから、本作はやはり意義があるのです。そして屋敷Pの誠意あふれる、相手を子供ではなく視聴者として回答する態度は本当に素晴らしいと思います。

 

大坂城へ浪人が続々と 「烏合の衆」と侮る家康だったが……

本編です。
信繁改め幸村は、大坂城に入り徳川と戦うことを誓います。
髭のせいか、毛皮のせいか、すっかり昌幸に似てきた幸村。周囲の者たちも決意を祝します。特に印象的なのはきりで、「苦労は大好きですから!」とにっこりします。

大坂城には多くの牢人たちが集まってきました。元黒田家臣後藤又兵衛基次、毛利勝永ら、どの者たちも不敵な雰囲気を漂わせています。

真田丸毛利勝永

真田丸後藤又兵衛

迎えるのは木村重成、大野治長。そして豊臣秀頼もまた笑顔で歓迎しています。
彼はまさに伝承に残る「花のようなる秀頼様」イメージそのもの。華やかで純粋ではありますが、だからこそ脆いとも思えるのです。

駿府の徳川家康は、いかに牢人が大坂に集まろうと、烏合の衆では戦に勝てないと冷ややかです。そばにいるのは息子の正純。かつては本多正信がぴったりとついておりましたが、交替しています。この正純、聡明ではありますが父と比べると器の小ささも感じさせます。
家康は、一大名として秀頼を生かしたかったものを、「滅びの道を選ぶとは、周囲にはろくな家臣がいないのだろう」と呆れております。

そんな家康も捨て置けないのが、真田の存在です。とはいえ、安房守は覚えていても息子の名前は忘れています。歳のせいか、それとも父はともかく息子は軽く見ているのか。それでも家康は、九度山の見張りを厳重にするよう申し付けます。
あの若々しく輝くような秀頼をみたあと、すっかり白髪になった家康を見ると対比がはっきりします。

しかし、それでもなお家康の見立ては正しいのです。信繁(幸村)の名前すら忘れていますが、彼の知能は慎重で狡猾なまま衰えてはいません。そこが秀吉晩年との差でしょう。
本作で描かれる家康は、信長や秀吉のような圧倒的なカリスマのかわりに、慎重さがあります。天下を長く治めたのも、その慎重さと粘り強さがあってのことでしょう。

 

その頃、兄の信之は跡継ぎ問題で頭を抱えていた

その頃幸村は、真田紐の売り上げが順調だから、祝いの宴をしようと村長の長兵衛に言い出します。

江戸の真田屋敷では、信之が手のしびれが取れず、寝込んでおりました。病床で信之は、すえの縁談の話を聞いて笑顔を見せます。すえと夫となる石合十蔵はは幸せで一杯です。

真田丸真田信之

信之にとってすえの成長は嬉しいものですが、頭を悩ませている問題がありました。
まずは大坂の動きです。豊臣の終焉を悟り、信之もまた胸を痛めます。と同時にそれ以上に悩んでいるのが、息子二人のことです。元服も済ませたからには嫡男を決めねばなりません。
しかし、正室の稲の子は信政ですが、こうの子である信吉の方が一月早く産まれているのです。

信政は祖父・本多忠勝ゆずりの武勇を誇っています。剣術の稽古で、信政は信吉の木刀をはね飛ばし、さらに蹴飛ばして遠くにやります。稲はそんな信政はやり過ぎだ、兄への礼がないと叱ります。
一方、信政に怪我を負わされた信吉は不満です。彼は弟とは違い、おとなしく、学問を好む性格です。信吉は伯母の松とその夫小山田茂誠相手に不満を漏らします。こうは信吉に、信政に詫びるよう言います。傷を付けたものの方が、心は痛むから、とのことです。
この母子は、それぞれ母親にもちゃんと似て見えるのがよいですね。

真田丸真田信吉

真田丸真田信政

兄弟の補佐をつとめる矢沢三十郎と、茂誠は二人の今後を話し合います。
月代を剃り、信之の家臣としてこうして過ごしている二人は完全に江戸初期の人物に見えます。当たり前ではありますが、序盤の彼らとは違います。

そんな二人のもとへ信之がやって来ます。大坂方との戦いを、兄弟の初陣とすると決めた信之。信之は病身のため江戸に残り、二人に見守って欲しいと続けます。信之は豊臣には際だった将はいない、小田原攻めのような持久戦になるだろうと予測しますが……。

信之は稲と二人きりになり、大坂の陣について話し合います。稲は「我が子がいくつ首を取ってくるか楽しみです」と、きわめて戦国の女性らしいことを言います。もちろん心配もしているでしょうが、ここで「人を殺すことを誇るような人になって欲しくはない」とは言わないところが本作のよさです。

稲はさらに、信吉を嫡男にするよう提案します。
信之はてっきり、稲が我が子の信政を嫡男にすすめると思っていたのでしょう、驚きます。信之も武芸で劣る信吉が、家内で居場所を失わないようにと同じ考えでした。そして信之と稲の2人は、大将を信吉とし、稲の養子として嫡男にしようと決めます。稲は沼田城から昌幸を追い払った時もよかったのですが、しっかりした武家の奥方として振る舞っている今も素敵ですね。あのつんけんして実家から持ち込んだ梅干しを食べていた頃とは大違いです。

このことを信之と稲から聞いたこうは、顔を輝かせます。このこうの、驚きながらも嬉しそうな顔を見ていると、こちらまで嬉しくなります。あの病弱だったこうが、ここまでになるとは。これ以上の喜びはありません、と感涙にむせぶこう。
稲はそんな彼女に、養子にするにしても信吉を取り上げるつもりはない、これからも私たちを支えて欲しいと告げます。

こういう正室と側室が違えに認め、支え合う描き方が見たかったんですよ。
「側室=浮気」のように決めつけ、今の視聴者、特に女性は側室を許せないと思っている制作者もいますが、こうして丁寧に描けばよいわけです。ちなみに考証担当の先生によると、信吉の母は稲、こう、侍女の三説があるそうです。本作はすべて取り込んだということになるそうです。
超絶技巧です。成長した三十郎と茂誠、シンデレラストーリーを地でゆくこう、武家の奥方として力強さを見ていると、本作は彼らにとっても「物語」であったのだなあ、としみじみします。

真田丸真田信尹

演じられるのは声優の高木渉さんです

 

宴を装い監視の目を欺き、九度山からの脱出を計る

九度山の真田屋敷では、宴の真っ最中です。
監視役の浅野家臣の竹本義太夫も同席することに。そこへ九兵衛という元気な若者がやって来て「大坂に言って徳川ぶっつぶして欲しいなあ!」といきなり言い出しますが、幸村はスルーします。

宴の出し物は「雁金踊り」です。第十一回でこうが披露したものと同じ。節回しも単純で同じ歌詞を延々と、ユーモラスな振付で踊ります。
そんな中、踊り手である佐助や春が交互にどこかに去り、何かをしています。緊迫感のある鼓動の音も入り、この宴は策であるとわかります。ノリノリで踊る幸村を見ていると、瓜売の真似をしていた父親(第二十六回)を思い出します。歌い踊りながら一人、また一人と消えるところは『サウンド・オブ・ミュージック』を彷彿とさせるとか。

義太夫もすっかりできあがって、ひとさし舞うと言い出します。その前に酒を飲んだ義太夫は、幸村たちが酒ではなく米のとぎ汁を飲んでいたことに気づき、諮られた!と立ち上がります。
長兵衛は、落ち合うとすれば村はずれの寺だと言い、義太夫らと松明を持って捜索へと向かいます。一方で幸村たちは脱出しようとするのですが、そこへさきほどの九兵衛が連れてって欲しい、近道を知っていると持ちかけます。迷った末、幸村は誘いに乗ります。

義太夫は案内された寺に踏み込み、無人であることに気づき悔しがります。
長兵衛も一枚噛んでいました。義太夫に佐助が一礼すると、彼もまた、一礼を返します。このあと、幸村もまた九度山をあとにする前に一礼します。幸村一行が逃げ出したら長兵衛にも何らかの処罰がありそうですが、それでも彼は協力したわけです。

駿府の家康は幸村脱出を知り、警戒します。といっても、再び名前を忘れております。しかし問題は、幸村本人に力があるかどうかではなく、真田の名に価値があるということ。真田昌幸が徳川を二度破ったということは有名です。その真田がついたとなれば、大坂方は士気を上げるでしょう。
家康の語る策が、今となっては一番含蓄があります。
本多正純は、服部半蔵を使うことを提案します。

真田丸徳川家康

 

佐助VS服部半蔵 ニンジャバトルが発生!

入城前夜、真田の面々は、今後についての話し合いを進めます。
春が「私も戦います」というと、幸村は珍しく声を荒げて止めます。梅のことが念頭にあるのでしょう。こういうさりげない場面に、梅を思う幸村の気持ちがわかります。幸村にとって、春は梅と同じく、失うことはできないかけがえのない存在なのです。

縁側にいる佐助は、通りがかった男を呼び止めます。男の正体は、初代とそっくりというか同じ役者の二代目半蔵! ここで佐助VS服部半蔵という、ニンジャバトルが発生! リーチの短い“くない”や忍刀で戦い、相手を術で欺く戦闘です。追い詰められた半蔵は「我に秘策あり!」と無駄にエフェクトとエコーを使い、
「全力で! 押し通る!」
と絶叫し去ります……って、伊賀越え(第五回)の初代半蔵と同じかあ! 代替わりしても同じ役者を使うわ、服部半蔵をネタ枠にするってある意味すごいと思います。加藤清正を暗殺した時は(第三十八回)有能そうだったのに、どうしてこうなった。ちなみにこの半蔵は大坂の陣で行方不明になりますので、今後出番があるかもしれません。

真田丸佐助

ちょっと雑なハンゾーさん

秀頼は幸村の到着を心待ちにしています。
幸村は白髪をつけ「どこから見ても得体の知れないジジイ」(byきり)に変装。夜間ではなく堂々と昼間から乗り込むのに変装をしているとは、さっぱりわからないと首をひねるきりです。

ここで幸村はきりに告げます。
「参るぞ、きり」
この一言で、きりが労われると言いますか。
幸村は春には一緒に戦おうとは言いませんでした。しかし、きりに対してはこの態度です。きりは幸村の妻にはなれませんでしたが、唯一無二の「戦友」であり「分身」であると言えます。彼女こそ本作のメインヒロインであり、最も幸村に近い女性と言えるでしょう。

 

「私を覚えているか」「拾様と呼ばれている頃から……」

杖をつきながら、幸村は大坂城内へ。毛利勝永は「随分と九度山で老け込んじまったな」と感想を漏らします。
幸村は途中で厠に寄り、案内しようとされると「勝手知ったる城である」と宣言。杖を捨て、颯爽とした姿に戻り、いよいよ秀頼に対面しに向かいます。
ここで大坂城を歩く幸村の姿に、昔を思い出しぐっときました。そうなんです。馬廻りとして彼は、この城を歩き回っていたんですよね。

ちなみにこのときの幸村の変装ですが、山伏のような格好をして誰だかわからないようにしていたという軍記ものの記述と、幸村から小山田茂誠にあてた書状にある「歯も抜けて、髭にも黒いものはあまりないほどです」と書いた記述を組み合わせたものだそうです。本当に超絶技巧を使ってきますね。

応対した木村重成に、これからは「真田左衛門佐幸村」と名乗る幸村。そんな彼を見て、明石全登も必ず来てくれると思っていた、と感慨深げです。

真田丸明石全登

すっかり様変わりした幸村に、牢人たちも目を見張ります。大野治長も幸村を見て喜びます。ここで幸村は、兵が十万人も集まっていると知ります。

そしていよいよ、秀頼との対面です。満面の笑みを浮かべて、秀頼から話しかけて参りました。
「私を覚えているか」
「拾様と呼ばれている頃から知っております」
息子のように可愛がってくれた太閤に御返しをすると述べる幸村。これもずっと本作を見ていれば、幸村の経歴詐称のひとつに数えられるでしょう。

彼は石田三成や加藤清正のように扱われていたわけではありません。第三十回の形見分けの場面では、秀吉は幸村のことをすっかり忘れていました。
続けて幸村は、父ではなく徳川を打ち破ったのは私だとホラを吹きます。
さらに兵糧について懸念し、堺の港を通じて諸国から集め、城下の徳川屋敷からも取り上げ、十万石分集めようと提案。自分の有能さアピールも忘れません。がっちりと秀頼のハートを掴んだ幸村を、治長は憎々しげに見つめます。嫌なフラグが立ちました。

真田丸大野治長

幸村は大蔵卿局に案内され、いよいよ運命のヒトに再会します。このとき、大蔵卿局が「再び豊臣の世を」と言っても、幸村は無言で冷めた目なんですよね……。幸村が石田三成の植えた桃を見ていると、彼女はやって来ます。大坂城の主である威厳の下に、娘の無邪気な笑みを秘めた、茶々です。また会えましたね、と微笑む茶々。
幸村も見つめ返します。その背後には、きらびやかな大坂城の天守閣が見えるのでした。

真田丸豊臣秀頼

真田丸真田信繁2霜月けい

真田丸茶々(淀)

 

MVP……真田幸村(殿堂入り)

今回からもう幸村は毎回MVPでよいのではないでしょうか。昌幸が序盤ずっと殿堂入りで、昌幸を含めてしまうと毎回彼になってしまうからカウントしなかったように、ここからはずっと彼の舞台です。
やっと、やっとです。
このドラマは真田幸村が堂々と舞台を闊歩し、主役として振る舞う作品になりました。

信繁から幸村へ。誠実で理知的だった信繁から、息を吸って吐くようにホラをふき、しれっと味方まで欺く幸村へ。
今回だけで幸村は何度嘘をついたことでしょう?
そもそも、おそらく彼は大蔵卿局のように「勝って豊臣の天下を取り戻す」なんて思っていません。最後に一矢報いるため、家康に一泡吹かせるため、それだけのために敵も味方も欺くのです。
先週も書きましたが、彼は徹底的にエゴイストになりました。

このエゴイストへの転換が、「真田昌幸の憑依」になっているから、あまり違和感がないのですよ。
一昨年の「平和が好きな官兵衛が突如黒い官兵衛に!」は違和感があったのですが、今年は彼の中に流れていた昌幸の血が覚醒したと思うとさほど違和感はないんですよね。

そういうわけで、このMVPの半分は昌幸のものかもしれません。「幸」の字を受け継いで、幸村はとんでもなく狡猾で大嘘つきになりました。忠義一色の幸村より、私はそちらの方が好きです。
「息を吐くように嘘をつく」
そんな主人公がバリバリと前面に出たことがよかったな、と。なんだかもう笑ってしまうというか、こんなしれっと嘘が出てくる嘘つきが大好きだなんて、今年の序盤から真田昌幸の魅力にノックアウトされていたからだと思います。品行方正じゃないとダメだなんて、誰が言ったのでしょうか。
この味方すらしれっと騙す真田幸村は最高です。

 

総評

家康はこう言いました。徳川を二度やぶったという名声が厄介だと。
その名声は四百年後まで残り、未だに戦国グッズで売れ行きが芳しいのは真田関係なわけですよね。いやはや真田の名声が現代まで健在しているって、あらためてすごいことだな、と感心しました。

今週はもう、言葉にならない感はあります。
いろいろと計算したであろう展開がぴたっと型にはまりましたね。昌幸から魅力的な嘘つき男を描いて来て、ぴたりと今回ハマったわけです。いやはや、お見事です。

ずっと脇役として忍従に甘んじてきた主役が、いきいきと嘘をついて輝いている。これを見られただけでも満足です。
今回からずっと最終回まで、幸村に引きずられっぱなしになるでしょう。望むところです。
こんな素敵な幸村を目の前に出現させてくれてありがとうと本作のスタッフに言いたいのです。

第42回「味方」 家康のクビで時代は何も変わらない……それでも見たい、男のワガママ

こんばんは。もう十月となり、本作の終わりも見えてきました。
◆中川大志、NHK大河ドラマ『真田丸』クランクアップ報告 「本当に幸せです」 [T-SITEニュース エンタメ]

そんな中でも本作関連イベントはまだまだ終わりません。
◆三成演じた山本耕史さん、「真田丸」衣装で登場 : 読売新聞

このように、脇役にまで光が当たるところが本作の盛り上がりぶりを象徴していると言えるのではないでしょうか。演じた役者さんも本当に充実した時を過ごせたようです。
それでは本編へ。

かつて三成と吉継と共に働いた部屋へ……「帰って来ました」

大坂城に入った真田幸村は、茶々と再会。幸村はこう宣言します。
「勝つために参りました。必ずや家康の首を取って見せまする」
茶々の傍らには織田有楽斎がいます。信長の弟で茶人としても有名ですね。この有楽斎がまさに有楽斎、胡散臭い茶坊主感満載です。味方として全く信頼ができない胡散臭さが漂います。

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有楽斎は幸村が立ち去ると「このくらいおだてればよかろう」と本音を剥き出し。大蔵卿局も、幸村を快く思っていないようです。ただの乳母や侍女であればごく普通の人物でしょうが、なまじ政治的な発言をするようになると極めて有害な人物のようです。

十万人分の生活を管理するのは大野治長です。なんせこれだけの人数ですから、城には人が過密気味。

真田丸大野治房

そんな中でも特別扱いの幸村一行は、単独部屋が割り当てられるようです。案内されたその場所は、かつて石田三成と大谷吉継がいた書庫です。今はあれほど積まれていた書類もなく、無人の一室で幸村は三成と吉継に「帰って来ました」と挨拶するのでした。この時ばかりは、父が憑依したかのようなあくの強さは抜け、元の純朴な信繁に戻ります。

きりや春たちも城内に落ち着いたようです。高梨内記は高齢であるためか、旅の疲れですぐに休んでしまいます。その様子を大助から聞いた幸村は、もう一人家臣が欲しいものだと、つぶやきます。同時に、大助に向かって、亡き太閤はあの天守閣より巨大であったと語ります。

 

又兵衛と勝永のヤンキーコンビがウザすぎる

幸村のもとに、後藤又兵衛と毛利勝永がやって来ます。とはいえ、なごやかに挨拶するつもりはないようで。
「あとから来たくせにでかい顔してんじゃねーよ」
「秀頼公に気に入られてるからってお前、調子こいてねえか」

オラオラと幸村につっかかってくる二人。さらに又兵衛は「相部屋じゃねえとかナメてんの?」と言い出します。ここで勝永が「俺は一人部屋だ。お前とは格が違うからな」と言い、又兵衛に言うものだから、乱闘寸前に。ヤンキー漫画か!

真田丸後藤又兵衛

真田丸毛利勝永

幸村は一人部屋はやめて相部屋にして欲しいと大野治長に頼みます。そしてその結果、長宗我部盛親と相部屋になることに。見るからに豪傑肌の盛親は相部屋であることに不満を訴えますが、治長は取り合いません。
ちなみに又兵衛のルームメイトは明石全登です。これが朗々たる声でキリスト教の祈りの言葉唱えます。これが同室だと確かにストレスたまりそうです。

 

女であっても綺麗事は言わない 乱世を終わらせるために

駿府の徳川家康は、真田が大坂城に入ると知って動揺します。襖を掴んでガタガタ揺らしながら「それは父か? 子か?」と怯えるわけです。これは有名な逸話ですね。本多正純に、家康は戦支度を始めると告げます。

真田丸徳川家康

これに「幸村くらいで慌てることはないのに」ツッコミを入れるのが、阿茶局。家康は「真田のネームバリューが怖い」と漏らします。

豊臣は遠国の大名としておとなしく暮らしてもらおうと本音を言う家康ですが、阿茶局は「そんななまぬるいことでどうする」と煽ります。家康がやや弱気なのは、孫の千姫(秀忠と江の娘)が秀頼に嫁いでいるという弱みも。その意をくみ取ったのか、阿茶局は「大坂側に千姫を返したら助命すると告げ、姫を取り戻したら容赦なく相手を滅ぼせばいい」と献策します。この汚い策には流石に家康も引き気味ですが、阿茶局は涼しい顔。
「信長公だって秀吉公だって酷いことをしてきた。それが乱世だからです。そんな酷いことだらけの乱世をあなたが終わらせなさい」
直球の正論を言う阿茶局。情に流されないこの冷徹さが、彼女を優等生的ヒロインとはまったく違う存在だと知らしめます。乱世をよく知るからこそ、「戦は嫌でございます」と薄っぺらいことを言うかわりに「どんな手を使ってでもこの乱世を終わらせるべき」と言えるのでしょう。

江戸の徳川秀忠は、父・家康の先走った決断にやや呆れ気味。寄る年波には勝てないのか、本多正信は秀忠の前で居眠りしております。そこへ秀忠正室である江が、大坂攻めだと聞いて入ってきます。正信と話しているのに勝手に入ってくるなと言われ、江は立ち去ります。
正室が政務の場に入り込んでたしなめられ、さがる。たったこれだけでごく当たり前の場面がやけに輝いて見えるのは、ダメな大河だとこの基本的なことすら守らないからでしょう。

真田丸徳川秀忠

秀忠は、関ヶ原の二の舞は御免だと戦支度を始めます。この十四年、秀忠は為政者として天下に才知を見せ付けていました。
その秀忠に欠けているのが武勲です。
今度の戦こそ功績の総仕上げと秀忠が意気込みます。以前も書きましたが、星野源さんの秀忠は賢くも凡庸にも、どうちらにも見え、さらに器の大きさや何を考えているのかわからないところが、おもしろいと思います。
正信と入れ替わりに、江がやって来ます。江は姉の茶々や娘の千姫に害が及ばないようにと釘を刺します。が、
「あとは好きにおやりください。豊臣の者たちは、今はもう徳川の世だとわかっていないのです」
と不敵に笑い続けるのでした。父母や夫を失い、乱世の辛酸をなめつくした凄味があります。
「ひねりつぶしてくれる」
妻にそう焚きつけられ、不敵にそう笑う秀忠。そこへ真田信之がやって来ました。

 

信之は本気で斬りかかるも、イザという時に病気で手が動かず

ここで秀忠はにっこりと笑顔を見せます。恐妻家仲間ゆえの気安さか、なんて。信之が秀忠から疎んじられていたことは史実ではないそうで、ここは笑顔でもおかしくないそうです。信之は病気であるため、嫡男の信吉と次男の信政が参陣するとお披露目します。

秀忠は五万を率い、大坂に向かうことに。この移動を示すコーエーマップのアイコンも、顔が変わっています。このアイコンの秀忠が、何とも言えない凄味があります。

出陣を前にした信吉と信政は家族から激励を受けます。

真田丸真田信吉

真田丸真田信政

マイペースな松だけが「けがのないようにね。危ういときは後ろのほうにいて声だけ出しなさい」と言い、信之にたしなめられます。この人は本当に変わりません。
息子二人を見送った信之の元に、佐助から幸村が大坂方についたという衝撃のニュースが届きます。
信之は怒り、丸めた書状を河原綱家に投げつけます。第三十五回に続き、綱家はやたらと信之にものをぶつけられる役所のようです。

真田丸河原綱家

信之は佐助に「もはや風のように走れないのか」と語りかけます。
佐助は悔しそうに脚を叩きますが、おそらくわざとスピードを落としたのでしょう。信之は書状を読み、自分が捨てた「幸」の字を弟が拾ったことに気づきます。
弟は本気だ、これは戦が長引くぞ、と動揺する信之です。

佐助は別の男にも会っていました。堀田作兵衛です。
彼は幸村から味方につくよう言われ、大喜びです。生きていたら豊臣についたであろう昌幸のことを敬愛していますし、妹の梅を徳川軍によって失っていますから、本当は江戸に味方なんてしたくないわけです。
そこで作兵衛は出立前に、姪であるすえの仮祝言を見届けます。

これで思い残すことはない――。
と出立しようとする作兵衛の前に立ちふさがったのが刀を抜いた信之でした。

真田丸真田信之

お前はわしの家臣、徳川の家臣だ、黙って見逃すわけにはいかぬと、信之は本気で怒りを見せます。
わらじを脱ぎ捨て、刀を構える信之。
作兵衛の槍と信之の刀ではリーチの差もありますし、信之は病気でもあります。それなのに見事な技で作兵衛を追い詰め、切り捨てようとする信之。

「覚悟!」
そう叫んだ瞬間、信之は病の発作で刀を取り落とします。
作兵衛はこれが信之の助命だと誤解します。佐助は誤解ではないとわかったうえで、そそくさと荷物を担ぎます。
「いや違う! 作兵衛!」
そう叫ぶ信之の声が何とも虚しいです。かっこよかったんですけどねえ。

ナイスカップル秀頼夫妻 なぜだか千姫の顔が曇りがち

幸村は秀頼の正室である千姫に引き合わせられます。
まさに美男美女、雛人形のような美しい夫婦です。

真田丸豊臣秀頼

秀頼は妻を幸村に紹介しながら、嫁いだからには豊臣についてゆくという妻の態度を賞賛します。何の屈託もなく笑う秀頼の横で、千姫はどこか苦しそうな顔を一瞬見せます。こうした機微に気づくことができないのが秀頼なんですよねえ。

秀頼は幸村を気に入り、総大将になって欲しいと直々に頼んで来ます。
幸村は総大将になることに対してプレッシャーを感じますが、内記は大喜びで昌幸の位牌に報告します。このとき、背後で何かに水をやっていた盛親がやって来て、めでたいことだと喜びます。

真田丸長宗我部盛親

彼は実のところ戦は嫌いで、関ヶ原のあとは京で寺子屋の師匠をしていました。豪傑風の見た目から誤解されますが、盛親は気が小さいタイプ。家臣の長宗我部再興のために背中を押されて参戦したものの、戦は嫌いだそうです。背景で水をぱちゃぱちゃやる姿といい、なんでこんなむさくるしいおっさんが可愛らしいのでしょうか。小山田茂誠、本多忠勝もですが、本作において髭の濃いおっさんは愛嬌があります。

総大将発表の軍議の直前。

妙に張り切った男が、持ち前の美声で幸村に語りかけて来ます。塙団右衛門直之と名乗る男は、加藤嘉明のもとで鉄砲大将をしていたとのこと。押しが強いうえに、唐突に名札を渡してゆくのでした。
彼は実際にこの戦いで戦場に自身の名札を残すことで、自らの戦績をアピールします。

真田丸団右衛門

 

そりゃ黒田長政に嫌われるわっ!

後藤又兵衛は突如こう切り出しました。
「皆は豊臣守ろうって心はひとつだし、この際、牢人になる前の身分はリセットしましょうや」
まあ、よほど幸村や勝永に威張られたのが嫌だったんでしょうね。
ここで総大将は真田幸村にしましょうと大野治長が言い出すと、又兵衛が「不承知!」と言い出します。こいつはこんなだから黒田長政に嫌われたのでは、と思わざるを得ません。場の空気は険悪になります。

「大局を見るものが上にたつべきだと思います。私は二度徳川に勝ちましたからね」
と幸村が大ボラをふくと、毛利勝永は「三十年前じゃん、お前まだ若かっただろ。旗を振っていただけじゃねえの」と突っかかってきます。
又兵衛は「四国を統一した長宗我部元親の嫡男・盛親殿がふさわしいと思います」と勝手に言い出します。早速「昔の身分はリセットしろって言ったのお前だろ」と勝永に突っ込まれます。もうツッコミどころしかない会話が辛い……秀頼はおろおろするばかりです。

幸村も盛親も総大将を辞退。又兵衛は「こうなったらもう各自ガンガンやろうぜ」と言い出します。こいつ本当にダメだ。

真田丸真田信繁2霜月けい

ここで幸村がこう提案します。
「十万の兵を五分割し、それぞれに大将を置く。その上に総大将として秀頼公を置く」
この提案は通り、五人の将とは「真田幸村・明石全登・毛利勝永・長宗我部盛親・後藤又兵衛」に決まります。かくして合議制ができあがったのでした。
内記は軍議のあと、牢人は自分勝手だし大野治長はまとめる力がない、秀頼公はまだ若い、とこぼします。しかし幸村はニヤリとしています。牢人のハングリー精神が敵に向かえば十分勝てる、と確信した笑みでした。

真田丸大野治長

 

MVP:江と阿茶局

今週のこの人が何故MVPかと言いますと、一番情勢を的確に把握した言葉を発したからです(後述)。
秀忠・江夫妻は数年前の大河で奇妙なイメージがついてしまいましたが、上杉の主従同様にそれが払拭されそうで何よりです。気が強そうな顔に楚々とした上品な所作、これぞまさに江です。

本多正信はすっかり年老いてしまいましたが、女版正信ともいえる阿茶局は健在です。
「戦はいやでございます」系のヒロインの真逆を行く、時には容赦ない策をも出す阿茶局。それもすべては「乱世を終わらせるため」なんですね。前半はヒロインが鬱陶しいと叩かれた本作。その頃、私は「今は鬱陶しくても後半はヒロインがネゴシエーターとして活躍するのでは?」と書いたことがあったのですが、当たったと思います。
ここにきて本作のヒロインたちは、いつもの優等生的な役割をかなぐりすて、剥き出しの本音で男たちにぶつけてきます。

 

総評

信繁から幸村になり、父・昌幸の血が覚醒した幸村。
父と同じ欠点まで覚醒していることが、今週はまざまざと示されました。

欠点その一:信之はじめ周囲に大迷惑をかけてでも自分のしたいことを貫くエゴイズム
これについては散々今までも書いて来ましたが、今週、大坂方に彼がついたことでどれだけの人が不幸になるかがわかったと思います。特に娘のすえに対してした仕打ちは本当に酷い。彼女にとっては育ての父を幸村が大阪まで呼び寄せたわけです。
信之が酷い目にあったことは繰り返すまでもありません。信之の人生は父に振り回され、今度は弟に振り回されることになるのでした。

欠点その二:何もかも自分にとって都合のよい方向に動くという超楽観主義
どう見ても問題だらけでどうしようもない大坂方。高梨内記の見方の方がむしろ正しく、ニヤリと笑う幸村は本当に自分にとって都合のいい解釈しかしないんだな、とゾッとしてしまいました。

欠点その三:情勢をアップデートできない
未だに家康の首を取れば勝ちだと思っています。そんなはずはありません。このあたり、とっくに武田が滅びてからも信玄の威光をやたらと気にして、甲斐と信濃回復にこだわり続けた父に似て来ました。江が言った「大坂の者たちは天下が徳川のものだとわかっていない」はまさにその通りです。幸村もそうなのです。

欠点その四:大局を見る目がない
大局を見る目がある者こそが総大将になるべきならば、幸村は適任ではありませんでした。昌幸に大局を見る目がないことは、本作は序盤からくどいほど描かれております。むしろそれがあるのは信之なのです。大坂城にいたもので大局を見る目を持っていたのは、片桐且元までです。結局幸村は、家康の首を取ることしか考えていません。しかしもう家康の首を取ったところで、その価値は下落しているのです。

はい、こんなところです。長所と短所は紙一重とはいえ、そんなところまで父親に似なくても、と思わずツッコミました。

とはいえ、そんな幸村ですらマシに見えてくるのは、大坂城に集まった牢人たちがあまりに悲惨な状態だから。いかにも戦場で活躍しそうな後藤又兵衛や毛利勝永はアクが強すぎる。人間的に問題のなさそうな明石全登や長宗我部盛親はイマイチ弱そう。秀頼は純粋なお坊ちゃまで全く頼りにならない。大野兄弟もいまひとつ。織田有楽斎には期待するだけ無駄。大蔵卿局は有害。茶々は巨大な誘蛾灯のように人を惹きつけるけれども、破滅へ追い込む魔性の存在。今になって振り返ってみると、石田三成や大谷吉継は有能でした。そんな彼らをもってしても敗れた徳川は、さらに確固たる勢力となっています。

真田丸茶々(淀)

幸村は繰り返し「家康の首を取る」と言っています。
しかし、ハッキリ言ってしまえば、あまり意味がないんですね。

本能寺で討たれた信長や、その死によって一気に政権が弱体化した秀吉と、現時点の家康は重みが違います。彼は既に年老いていて、権力を息子の秀忠に譲っています。幸村が家康の首を取ったところで、秀忠が健在ならば意味があまりありません。奇跡に奇跡が重なって秀忠が戦死したとしても、徳川の血を引く青年は大勢いる上に優秀です。
彼らが後釜に座れば、徳川家はそれでよいわけです。

今週の徳川パートは、そんな盤石の体制を見せ付けていたわけで、最も的確なことを言っていたのは、前述した通り、江なのです。

そう考えると、徳川家康の首を取って勝つと繰り返す幸村は何なの、と思えて仕方ないわけです。そこで前述したように、幸村の受け継いでしまった、昌幸からのダメな部分を数え始めてしまう、と。ものすごくダメな奴で、乱世が終わりそうなのに暴れて、もう有害で痛々しい奴なんですよ。
それでも彼の暴れっぷりが見てみたい!
そう思わせるコトこそが本作の魅力なのでしょう。

第43回「軍議」 もしかして勝てるのか?という素敵で巧みな嘘に酔わされて

こんばんは。
日本シリーズの影響で視聴率の下がった本作ですが、スポーツイベントと選挙の影響は仕方ないと言えるかと思います。これからフィギュアスケートシーズンも本番です。
視聴率といえば、こんなニュースも。
◆『べっぴんさん』6.3%、『真田丸』6.7% – NHKがタイムシフト視聴率を発表 | マイナビニュース
確かに生放送で見ている人だけではないでしょうから、こうした数値も加算することが理にかなっていると言えるのではないでしょうか。

さらに先日はビッグニュースが飛び込んできました。
◆真田信繁自筆の書状原本見つかる 大河『真田丸』時代考証担当が確認(オリコン) – Yahoo!ニュース
大河ドラマになると、その人物関係の史料が発見されることはよくあります。知名度が上昇し「もしかしてうちにあった書状がそれではないか?」と発見したりする。そういうことが起こるんですね。今年もまさにその再発見が起こりました。しかも狙いすましたかのようなこのタイミングで。素晴らしいニュースです!

そして、ついにこのニュースも。
◆「真田丸」1年2カ月収録終え堺雅人「楽しい船旅」(日刊スポーツ) – Yahoo!ニュース
想定外の事件がまったくなかったとは言い切れない本作ですが、とりあえず無事撮影が終わりよかったと思います。

 

悲しき中間管理職の片桐且元は大坂城の内情を家康に……

さて本編です。
バラバラの牢人衆をまとめることに苦労している大坂城の幸村。
一方、徳川軍の中には信之の二人の子がいます。勇猛な信政が休憩時も武芸の稽古を怠らないのに対し、信吉はあまり乗り気ではないようです。秀忠が見回りにやって来ても、弟と違ってアピールが下手な信吉に、世話役の小山田茂誠もやきもき。
そんな真田兄弟に対して本多正信は、叔父の幸村が大坂方についたと告げます。動揺する真田兄弟とその家臣でした。

真田丸真田信吉

真田丸真田信政

このことは江戸の信之も心配していました。信之は、十四年間雌伏していた弟に花を持たせたいと考えていたのでした。先週は弟の裏切りに愕然としていた信之ですが、実はそんな思いがあったのですね。
そこで信之は、姉の松に伝言を託し大坂へ向かうよう頼みこみます。
なんとしても幸村が、真田の旗印を見ないように、戦意を鈍らせぬように、と。兄として、六文銭の旗を見て手加減する弟を見たくないあのです。

いち早く京についた徳川家康の元には、片桐且元が来ていました。すっかり憔悴した且元に、家康はやさしく言葉を掛けます。
本作の家康は「人たらし」です。
秀吉が「俺は全て見通しているぞ」とプレッシャーを掛けるタイプの心理戦をおこなう北風タイプなら、家康は露骨なまでに誠実そうに見せる太陽タイプです。本作のこの二人はタイプが違えど、どちらも手強く敵に回したくない傑物。
大坂城でのパワハラに疲れ果てた且元は、くさいほど誠実そうに芝居をする家康にほだされてしまいます。さらには迷った末、兵糧は半年も持たないという見通しを家康に漏らしてしまうのでした。
この家康と且元のアップだらけの場面は役者の気迫が伝わって来ます。しぼり出すように機密を漏らしてしまう且元には中間管理職の悲哀を感じました。

真田丸片桐且元

 

「私はどうなっても構いません、秀頼は死なせないで」

その頃大坂では茶々が人払いをし、幸村を武器庫に呼び出しておりました。
この場所に二人が入るのは、第十九回以来です。あの頃は無理に明るく振る舞っていて痛々しさもあった茶々ですが、今はもう貫禄が出て、凄味すら感じます。ここをピークに茶々という人物を作ってきた成果が出ています。

幸村は茶々に必勝のプランを語ろうとしますが、茶々はあまりよい顔をしていません。
茶々はともかく秀頼を危険な目にあわせたくないのです。
茶々は幸村の後ろから抱きつき、自分の愛した人は皆未練を残して死んでいったと語ります。父、母、兄、柴田勝家……その中に秀吉は含まれません。茶々は秀吉を愛したことはなかったのでした。

「私はどうなっても構いません、秀頼は死なせないで」

真田丸茶々(淀)

茶々の懇願に幸村は「命にかえても」と応えます。
しかし実のところ、秀頼助命の策を献じたのは幸村ではなく、片桐且元だったのです。彼が出した「茶々を人質に出す」という条件を含めた提案を受け入れれば(第四十回)、秀頼が死なずに済んだ可能性は高かったでしょう。茶々が自分の命や苦境を引き替えに我が子の命を救うチャンスは、もう飛び去ってしまっているのです。

軍議を前にして、大蔵卿局は息子の大野治長に、牢人に大きな顔をさせるな、主導権はこちらが握ると釘を刺します。
そんなこともつゆしらず、幸村は策を練っています。
ここで注目したいのは、治長は兵糧が持つのは2~3年程度、そして大蔵卿局は兵糧などどうにでもなるとまったく兵站を軽視していることです。
片桐且元がこの前に半年と家康に漏らしたことを考えると、この差は致命的なものに思えます。且元が去った後に幸村が出した策で改善したとも考えられますが、それにしてもかなり差があります。兵站管理を得意とした石田三成や大谷吉継がもし生きていたら何と言うことでしょうか。

 

策の検討も満足にできぬなら私は九度山へ帰る!

いよいよ軍議が始まります。
秀頼、五人衆、大野治長、木村重成、相変わらず胡散臭い織田有楽斎も参加。五人衆のうち四人までは籠城案を賛成しますが、幸村は「不承知」と言い切り、討って出る策を出します。
京~大坂~伏見~大津まで戦場を広げ、敵を分断、各個撃破する策でした。
こんなところも昌幸譲りの幸村でして、その策は人や建造物を巻き込む住民にとっては迷惑で危険なものです。まさに乱世の申し子です。

しかし出来レースなのか、幸村の策は吟味検討もされぬまま却下されそうになります。
幸村はそれならば九度山へ帰ると言い切り、自室に戻ります。

父親そっくりの行動ですが、これも昌幸を意識してのこと。はったりと見せかけて、迎えが来るだろうと計算してのこと。
すると早速、木村重成が迎えに来ました。軍議に戻った幸村は、さらに地図を見せながら詳しく語ります。これまたあっさり家康の首を取れることが前提、伊達や上杉がつくという前提で、昌幸譲りの楽観性が根底にあります。可能かどうか、あやしいけれども、絶対に無理というわけでもないでしょうか。

しかし五人衆のうち三人は反対。唯一、毛利勝永のみがスケールの大きさが気に入ったと賛意を示すのでした。ここでこの話し合いは一旦休憩となります。

真田丸毛利勝永

 

牢人を頼りにするくせに信じきれない大坂首脳陣の歪み

休憩で勝永は、腕試しのために戦場に来たと語ります。
闘志のかたまりのようで、心が通えば頼りになるタイプのようです。

あまのじゃくの後藤又兵衛は、ただ単に幸村に反対しているとして、明石全登と長宗我部盛親はなにゆえ籠城派なのでしょうか。
実は大野治長が、全登には「籠城案に賛成したら切支丹の布教に尽力する」、盛親には「長宗我部家を復興させる」と約束していたのでした。一種の買収です。
「牢人を頼りにしているくせに、牛耳られるのを恐れているんだ」
勝永が悔しそうに声にします。

どうして治長が自分の策を知っているのか。それを訝しむ幸村。自身の案を誰かが漏らせたとしたら、それができるのは武器庫で策を聞いていた茶々のみ……。

幸村は全登と盛親に、「勝たねば願いは叶わない、勝つためには城を出るしかない」と説得します。

茶々のもとには、すぐ下の妹である初(常高院)が来て菓子を食べていました。この人が菓子を食べていると、数年前の大河を思い出してしまうのですが、それはさておき。
この戦は必ず勝つと語る姉の言葉を聞き、初は顔を曇らせます。
浅井三姉妹として有名な茶々・初・江ですが、どうやら長姉が一番世情に疎くなってしまったようです。

真田丸初

 

「ここに死に場所はない、死にたいなら、徳川につくべきだ」

軍議では、大蔵卿局から言いくるめられていた木村重成が、幸村に反論します。それに対して幸村は、籠城は最後の策にとっておき、まずは打って出るべき、籠城はそのあとでもできると語ります。定石通りでは戦には勝てないと言われ、重成は納得します。

が、承知しない男が一人。後藤又兵衛がここで「不承知!」と叫ぶのです。

真田丸後藤又兵衛

幸村は、又兵衛は死に場所を求めてきたのだと見抜いていました。黒田家出奔後、「奉公構(仕官できない状態)」となった又兵衛は、武士として再仕官もできなくなっていました。ならば武士らしく死ぬ、天下一の城を枕に討ち死にすると決めていたのです。
すると幸村は「死ぬ気で勝つ気がないなら城を出て行け」と又兵衛に吐き捨てます。

「バーカ。口に出さないだけで皆勝てないってわかってんだろボケェ!」
身も蓋もないことを言う又兵衛に対して、幸村は言います。

「我々は生きる望みを持っている。だからこそ、我等は強い。私は本当に負ける気がしないのです! 我等は決して負けない! ここに死に場所はない、死にたいなら、徳川につくべきだ」

いい言葉ですよね。これは名台詞です。決まりました。
又兵衛はこの言葉を聞き「俺も籠城は早いと思ってたんだ!」と納得。頑固なあまのじゃくほど、味方になびけば頼もしいものです。

 

まるでブラック企業の会議のように有楽斎がしゃしゃり出るも

しかしここで有楽斎が静かにしゃしゃり出てきます。
「いい場面でしたねえ、じゃあ終わります。初めから申し上げている通り、籠城以外にはない」
「それでは話し合った意味がない……」
「意味はあった! それぞれのプレゼンはよかったですよ」

sanadamaru-yuurakusai

あーっ、これ会社の嫌な会議パターン……!
これをやられると、士気低下どころか、そう言ってきた上司と刺し違えたいレベルでイラつくパターンです。
「おまえらはカネで雇われた非正規なんだから、言うこと聞いていればいいんだよ」
そうブラック極まりないことを言う有楽斎に、キレた男がいます。
大野治長でした。

真田丸大野治長

「我等のために雇われた客人です。大切にしてください。決めるのは殿ですぞ!」
いいぞ治長、かつてこんな素晴らしい治長がいたでしょうか。先週までに下がっていた株もぐっとあがります。
ここで秀頼もきっぱり言い切ります。

「籠城はせぬ、打って出よう」
有楽斎は「大蔵卿局に報告するからな」と吐き捨て去ってゆきます。

かくして、軍議では籠城ではなく出撃案が決まったわけです。
しかしそれでは史実と反します。誰かがこの決定を覆します。果たしてそれは誰でしょうか。

秀頼は出撃案を茶々に話します。
茶々はあっさりとそれを却下。「牢人が裏切らぬと言えるのですか」と彼女は息子に迫ります。何をしでかすかわかったものではない、この城にいれば徳川は手出しできない。
かくして熱血軍議の結果はひっくり返ってしまったのでした。

幸村は目を何度かしばたき、錆をふくんだ声で言うしかありません。
「そういうことであれば仕方ありません。別の策を考えます」
幸村が部屋の外に出ると、そこには悠然と笑みを浮かべ幸村に頭を軽く下げる茶々と大蔵卿の姿があったのでした。

真田丸豊臣秀頼

 

MVP:茶々

役割的には逆MVPと言ってもよいかもしれません。
先週の阿茶局や江が聡明であったのに対して、茶々は愚かといえばよいのか、無知といえばよいのか。本質的には決して愚かではないのでしょうが、彼女の才知はあるところで止まり、スポイルされてしまったと言えます。

今回、茶々が幸村と再会したのは武器庫。
かつて秀吉が茶々には入らぬように厳命した場所です。秀吉は幼いころから哀しい思いをしてきた茶々に、二度とそんな思いをさせないようにと気遣い、武器を見せないようにしたのでした。

真田丸真田信繁2霜月けい

しかし、秀吉が彼女を幸せにしたかというと、そんなことはありませんでした。寧は秀吉に、父母や兄を死においやった茶々を愛するというのか、と問いかけていました。
思えば寧は正しかったのです。茶々は結局、己の家族の血で汚れた秀吉を愛することはなかったのですから。

そして茶々は、徹底的に政治的駆け引きから遠ざけられることにもなります。茶々の横で大蔵卿局は盾となり、その役目を果たしました。
思い起こせば関ヶ原前後も、石田三成が精根尽くして乾坤一擲の勝負を挑んだのに、茶々は動じませんでした。関ヶ原の結果を受けて寧は出家し世間から姿を消したのに対し、茶々は大坂城に君臨し続けました。方広寺の件でも片桐且元の妥協案を蹴り(第四十回)、破滅を決定的にしました。

もしも彼女が阿茶局のように、戦や政治に身をさらし、冷徹な目で情勢を見ることができたらどうだったのでしょうか。

真田丸阿茶局

今にして思えば、茶々をそうしたのは秀吉の優しさではなくエゴイズムだった気がします。寧のように政治に口を挟む古女房ではなく、夢だけ見ているような、可愛らしい寵姫を愛したいという、男のわがままですね。
しかし、可愛らしいだけの寵姫では、到底大坂の城を背負える器にはならないのです。「そうならないように守るぞ」と思っていたところで、それができたのも秀吉が生きている時までです。

本作の茶々は、権勢欲が強く傲慢なわけでも、ヒステリックに怒鳴り散らすタイプでもありません。寧に敵意を燃やし、裏で糸を引くわけでもありません。
ただ、秀吉や大蔵卿局の愛情によって政治からあまりにも遠ざけられてしまった。そして、過去の辛い経験ゆえ家族への愛のみに生きてしまう。この二点によって重大な過ちを犯してしまう女性です。本人に悪意はまったくないだけに、実に哀れでなりません。

 

総評:本作はスタッフも主人公も、大嘘をついて私たちを騙そうとします。

◆「真田丸」最終回から逆算せず 過程重視一貫 「大坂の陣」描写も自信 ― スポニチ Sponichi Annex 芸能 

結果から見れば負けるとわかっているのに「勝てるのではないか?」と思わせる。そんな素敵な嘘にこちらを巻き込んでくるのです。
今回の嘘もたくさんあります。
そもそもあの時点で幸村は策を出すほど発言力があったのか、ということがひとつ。
もうひとつは、あの作戦が本当に素晴らしいものかどうか、ということです。

問題は山積みです。たった五人の代表者ですらまとまらない軍議。一応五人がまとまったといっても、他の者はどうでしょうか。
あの時点で、一糸乱れず出撃できるとは思えません。

幸村は大きな口を叩いてはおりますが、第三十九回で本人も言った通り「大軍を指揮した経験はない」のです。
昌幸にしても徳川に勝利をおさめたのは本拠地の城に籠もった千人単位の籠城戦であり、万単位を指揮したわけではないのです。
豊臣政権で万単位を指揮した経験がある、または可能である人物は、豊臣秀吉・石田三成・大谷吉継・加藤清正・宇喜多秀家らでしょうが、彼らは全員世を去っているか、戦えない状態です。彼らが健在であった関ヶ原でも家康の圧勝であったのですから、幸村が全力を尽くしたところで、あの策が成功したとは到底思えません。むしろ京を巻き込んだことで、指摘されていたように貴重な建造物を焼き払ったらば、彼らは悪名のみが残ったことでしょう。
私は、幸村はエゴイストと何度も書いていますが、今週ほどしみじみそう思ったことはありません。今後、その印象はさらに強くなるのでしょう。

そう考えると、あそこで出撃を止めた茶々の判断こそむしろ英断であったと言えるのではないでしょうか。

ところが見ている間は、あの幸村の策に皆が乗ってゆくところが楽しくて仕方ないんですよね。もしかしてこの策が成功して勝ててしまうかも、とすら思わせる。そんな巧みに酔わせる力があるんです。悲壮感が不思議となく、からっと明るい大坂の陣になっているのも、その力のおかげでしょう。
最終回まで、この嘘に騙されてゆきたいと思います。

 

 

第44回「築城」 ついに姿を現した出城としての真田丸に目を瞠る

 

こんばんは。
今年の大河ニュースもだいたい出そろい、最近は再来年(西郷どん)のニュースの方が多くなっているようです。
来年、再来年はひとまず脇に置き、今年の本作に集中したいと思います。

 

出城の権利を巡り、エゲツない策を又兵衛に明かす

今週はOPテーマがなく、突然本編が始まります。大坂方は不満ながらも、籠城に切り替えてゆくことに。それを知った徳川家康は、この報告を受けて「勝った」とほくそ笑みます。

真田幸村は、大坂城の南側は弱点であると見抜き、出城を築くことを考えます。幸村は馳せ参じた堀田作兵衛から、すえが無事に仮祝言をあげたと聞き喜びます。ここまで姪を育ててきた作兵衛もむせび泣きます。そのグッドニュースのあとにはバッドニュースが……。
徳川秀忠軍の中には、信之の子である信吉(仙千代)と信政がいるというのです。
「すべては、さだめじゃ」
幸村は覚悟を決めます。

真田丸作兵衛

幸村が出城を築く策を大野治長に話すと、同じ考えの者がいるのでその者と協力して進めて欲しいと言われます。その者とは後藤又兵衛でした。厨(台所)で酒を飲む又兵衛に、幸村は声を掛けます。顔見知りの台所頭・大角与左衛門を見て幸村は懐かしそうにします。
与左衛門は「あんた、戻ってくると思っていたよ」と幸村に声を掛け、明石で取れた酒肴を差しだすのでした。

真田丸大角与左衛門

又兵衛は出城で大暴れしてやると幸村に言います。幸村は「あなたは死ぬ気だろうが、こちらは勝てる出城を作るから、築城の権利を譲って欲しい」と策を語り出します。
空堀、乱杭、逆木、鉄砲狭間、溝、体を起こさざるを得ない高低差、二弾構えの鉄砲隊。まさにこれぞデストラップ!
このあたりのトラップは、第十三回の第一次上田合戦で使ったものを思い出してください。
「堀の底に累々と屍を重ねる……」
幸村は悪魔のような言葉を語ります。乱杭や逆木の威力もやはり第十三回で証明済み。このえげつない策を又兵衛も大いに気に入り、呵々大笑(かかたいしょう)します。

真田丸後藤又兵衛

 

要所には譜代の家臣を置くべき!と豊臣方は頑な也

幸村は更に出城の柵を五人衆らに語ります。こうして策を語る時の幸村は実に生き生きとしており、父・昌幸も彷彿とさせます。

しかし、この案は秀頼にこそ気に入られるものの、織田有楽斎と大蔵卿局は「牢人に要を任せている。金目当ての連中を頼れるわけがない!」と全否定。大蔵卿に至っては「幸村は兄が徳川の家臣。もう徳川方についているのでは?」と言い出します。
一方、有楽斎は「要所には信用のおける譜代の家臣を置くべき」と提案。ついに大蔵卿局は布陣図をくしゃくしゃにして台無しにしてしまいます。非正規を戦力として大量雇用しておいて、いざとなると正規しか頼りにならないと言い出す。豊臣はブラック企業あるあるを毎回実践しているかのようです。

真田丸大蔵卿局

大野治長と木村重成は新たな布陣図を作ります。五人衆たちは自らの名が消え、出城すらない布陣図に怒り心頭です。毛利勝永、後藤又兵衛は「もう城を出る!」とまで言い出します。幸村はあわてて彼らを止め、掛け合いに行きます。
その相手は茶々でした。

茶々はカルタ遊びをしながら、幸村の訴えを軽くいなします。
「久しぶりですね」と茶々はここで言うわけですが、この札が出てくるのは視聴者にとっては第十五回以来です。
牢人衆の意見をことごとくつっぱねる大蔵卿局は、基本的に茶々の意見をなぞっているだけ。つまり茶々こそがまるで牢人を信用していないのです。二度の落城を経験した茶々はなかなか人を信じられないのかもしれませんが、それだけではない気がします。

真田丸茶々(淀)

 

砦の建設を急ぎ、武具は全て赤で統一せよ

この「不信」こそ豊臣の宿痾といえるでしょう。
時系列をさかのぼってゆけば、徳川方との交渉役である片桐且元を信じられずに大坂城から追い出しました(第四十回)。秀次の受難を見ていた小早川秀秋は、豊臣を信じ切れずに関ヶ原で裏切りました(第三十七回)。豊臣譜代の石田三成と加藤清正たちは、互いを信じ切れず対立しました(第三十二回前後)。秀吉への不信感が募った秀次は、発作的に切腹してしまいました(第二十八回)。

豊臣家は互いを信じられず、対立しあい、裏切りあい、滅びへの道をたどってきました。ここにきて豊臣家上層部が牢人を信じないのもむしろ当然のことと言えるでしょう。

幸村に対して茶々は秀頼が決めたことに口は挟めないとすら言いますが、秀頼こそ茶々に逆らえないのですよね。茶々は幸村の出城だけは許すと言いますが、幸村は全て信じてもらえなければ意味がない、と提案を断ります。
失意で部屋を出た幸村は廊下で治長とすれ違います。ここで覚悟を決めた治長は、首脳部には内密のまま、幸村に出城作りの許可を出します。おお、こんなに頼りになる治長は初めてです。今までの作品では佞臣か茶々の愛人みたいな扱いばかりでしたからね。

かくして敵にとっては極めて狡猾な「死の罠」、幸村の出城が築き上げられてゆきます。二十日ほどかかりそうだという高梨内記に、幸村は急ぐよう指示を出します。さらに作兵衛に、真田勢全員分の赤備えの防具を手配するよう命令するのでした。

※赤備え……武田信玄の重臣・飯富虎昌&山県昌景兄弟に始まり、徳川四天王の一人・井伊直政も率いた「真っ赤な防具で揃えた将兵たちの軍団」のこと。戦場では最も目立つため、敵に恐れられると同時に標的にもされやすく、この武具で統一することはその家の中でも強い部隊にしか許されなかった

真田丸大野治長

 

忍従の人生を振り返る信之 お通に苦悩をぶつける

その頃、京都では、家康が秀忠と面会しておりました。秀忠は素早い進軍に得意げですらあるのですが、家康は怒り出します。
「将軍なのだからゆっくり進軍し威容を見せ付けるべきだ! いつまでも関ヶ原を引きずるな!」
秀忠は戸惑います。この父子には戦う者としてキャリアの差があります。それはこの先はっきり見えてゆくでしょう。

真田丸徳川秀忠

家康の命を受け、全国からおよそ三十万の軍勢が集まりつつあります。
信之の命を受け、姉の松は急いで大坂へ向かっていました。しかし女人が陣を訪れることはできないと河原綱家から言われた松は、困り果ててしまいます。その時、松は懐かしい「丹田に力を入れて!」という声を聞きます。その声の正体は、松が記憶喪失時代に藤という名で引き取られていた、「出雲の阿国一座」でした(第十七回)。
まさかこの話がまた出てくるとは思いませんでした。一座はどうやら徳川の陣まで行くようです。
阿国は代替わりしていましたが、なんとかおぼろげな記憶から松のことを思い出します。松は強引に一座に加わり、陣にまでたどり着きます。この阿国もそうですが、服部半蔵、吉野太夫と、本作は代替わりした人や入れ替わった別人を同じ役者に演じさせることが結構ありますよね。なかかなの力業だと思います。

真田丸松霜月けい

松は、信吉と信政に信之の言葉を伝えます。
「決して真田同士で刃を向き合ってはならない、身内で争ってはいけない、戦が始まったらジッとしているように」
しかし信政は不満です。たとえ身内だろうと、戦が始まったからには本気でやるべきだと主張します。
一方で信吉は父の命令に従うとあっさり言います。憤懣やるかたない様子の信政です。

その頃江戸の信之は、忍従の人生を振り返ります。
「十四年前、自分だけが徳川につき、父と弟は豊臣についた。断腸の思いだった。戦は徳川に勝った。九万五千石の大名となったが幸せではなかった。妻に内緒で仕送りの日々。まだ戦が始まろうとしている。今度は息子と弟が戦おうとしている。いつになったら心が安まるのか……」

信之はこのあと、当時としてはとてつもない長生きをして、しかもその長い人生の最後まで気が休まらないのですが。それはさておき……。信之が秘めた思いを吐露したのは、京都から呼び寄せた小野お通でした。信之の病は心因性だと判断し、柔らかな京言葉とアロマテラピーで、ストレスまみれの信之の心を癒すお通。信之は京都にいると戦に巻き込まれるかもしれないという名目で、お通を呼び寄せていたのでした。
洗練された京女にすっかりメロメロの信之です。昌幸と薫(と偽吉野太夫)、信之とお通、そして信政とお通の娘と、真田家の男は京女にひかれるところがあるようです。
そんな夫のことを知らぬのか、とぼけているのか、正室の稲は意味深な目線で夫の背をみつめます。どう考えても、これはバレてますね。

真田丸真田信之

 

秀頼のすがすがしさ、気品、何もかもが尊く

大坂の出城建築現場では、作兵衛が赤備えのプロトタイプを与八に着せて持参します。二度塗りした漆でも「まだ赤さが足りない!」と、漆の三度塗りを命じる幸村。そこへ有楽斎がやって来て、出城を見とがめてしまいます。まあ、あれだけ大がかりな工事ならそりゃいつかはバレますよね。

有楽斎と大蔵卿局は出城の建築を許可した治長を問い詰めます。治長は必死で抵抗し、秀頼も苦しそうな顔で幸村をかばいます。
しかし有楽斎は、
「幸村の父は裏切りに裏切りを重ね生き残った男でございます」
と、決定的な一言を口にするのでした。
これが難しいところなんですよね。幸村は信繁本来が持つ石田三成・大谷吉継から受け継いだ豊臣への忠義心に真田昌幸の智謀を載せた人物ですので。そんな彼本来の忠義心は、いつか誰かに理解されるのでしょうか。こうして出城はあえなく建設中止に。幸村の目が死んでいます……。

真田丸真田信繁2霜月けい

その日の夕方、呆然とに佇む幸村に、勝永と又兵衛は城を出ないかと誘いに来ます。
「豊臣を見捨てるわけにはいかぬ」
即答した幸村。その時、幸村はある人に気づきます。なんと秀頼その人でした。

茶色や黒が中心の景色の中に、白鷺のように優雅な姿で立つ秀頼。秀頼は出城の出来に感心し褒め称えます。
「左衛門佐、豊臣を見捨てぬというのは本当だな?」
「亡き父上、太閤殿下に誓いました」
「この出城、仕上げよ。私はそなたらを信じておる。頼りにしておるぞ」
秀頼からそう言われ、さらに手まで握られ、幸村ら牢人たちは感動し忠誠を誓います。このときの秀頼のすがすがしさ、気品、何もかもが尊く、そりゃこの人に信じているなんて言われたら死ぬ気になるなあ、と思わせるものがあります。

真田丸豊臣秀頼

城に戻った秀頼は、茶々から出城を認めるとはどういうことかと問い質されます。しかし秀頼は、茶々に対して有無を言わさぬ勢いで断じます。
「この城の主は私です! この戦、牢人たちの力を借りねば我等の負けでござる!」
茶々は戸惑いと、息子の成長に喜ぶような、複雑な顔を見せるのでした。
前回最後の場面で秀頼は茶々に反論できませんでした。そこから彼は確実に成長しています。

 

勝てると思わせ突き落とす――そのエゲツなさに痺れてしまう

ここで高低差が極めてわかりやすいコーエーマップが入り、布陣図が示されます。
佐助は敵の布陣を調べあげ、幸村らに報告。布陣図には、幸村にとって甥にあたる真田信吉、そして旧知の上杉景勝らの名も。景勝とこんな形で再会するとは……と感慨深い幸村です。

徳川の陣には、直江兼続片倉景綱(※史実では息子の片倉重長が参戦・後に真田信繁娘の阿梅を妻とする)、真田信吉らの姿も見えました。そして伊達政宗が隣の景勝に「あの真田が入城しているそうですよ。馬鹿ですねえ」と語りかけていました。
どこか複雑な表情の景勝。そこに家康がやって来ます。ここで調子よく政宗が忠義心アピールし、家康は家康で「相手は有象無象の牢人相手ども、我等の勝利は疑いなしじゃ!」と高笑いするのです。

真田丸上杉景勝霜月けい

うーん、この残酷さ。
秀頼のキラキラと輝くような成長ぶりのあとに、この徳川家康とその配下ですよ。いくら秀頼がめきめきと成長したところで、追いつけるとは思えないわけです。成長途上の秀頼がぶつかる相手は、家康と、レベルが上がりきった大大名たちです。
勝てると思わせて、突き落とす――このやり方がつくづくえげつないと思います。そこも嫌いではありませんが。

家康が「有象無象の牢人」と称した面々は楽観的で、塙団右衛門に至ってはこのあと大名になるとウキウキしています。明石全登はこんな中でもミサをするとのこと。真田の赤備えもいよいよ完成。鹿の角がついたあの兜もいよいよできあがります。幸村は、関ヶ原以来ずっと無念を抱え戦に備えてきた我々に対し、相手は戦のことは知らないと言い切ります。

真田丸団右衛門

豊臣方の布陣図を見た家康は出城が目につき……「また真田か!」

実際、徳川の陣では「仕寄せ」(味方の軍勢が己の身を守りつつ進軍すること)のリハーサルが行われておりました。これが、全くできていない。と、家康がダメ出し。秀忠があきれる中、家康と正信が自ら板を持ち、穴を掘りながら実演し始めます。かなり老いを感じさせるようになった家康と正信でしたが、このときはしゃんとして若々しさすら感じさせます。

真田丸徳川家康

真田丸本多正信霜月けい

ここの二人は本当に一気に数十才若返ったようで、見ていて驚きましたね。もっとも、そのあとは疲労困憊して休憩が必要にはなるんですが。確かに幸村の言う通り、「若武者の戦離れ」は深刻な模様です。

たった十四年で戦のやり方が忘れられるのか、と思うかもしれません。
私が思い出したのは、今年の広島カープのリーグ優勝なんですね。あのとき「優勝セールのやり方がわからない」という困惑が地元商店街からあがっていました。優勝は五十年や百年ぶりではなく、二十五年前です。それでもわからなくなるのかと驚いたものです。さらに考えみると、十年も経ていない東日本大震災でも記憶の風化が問題になっていますからね。忘却というのは早く訪れるものなのでしょう。
ただし、この「戦離れ」こそが徳川二百六十年の礎と言える部分もあるでしょう。

豊臣政権下でも、合戦は禁じ手にされていました。
それでも戦闘スキルが落ちなかったのは、朝鮮出兵で戦い続けたからでしょう。豊臣は合戦を続けることで諸侯の戦力を発散させることを狙いましたが、徳川は武器を取らせないことで諸侯が戦そのものを忘れることを狙ったわけです。この大坂で牢人どもを一気に殲滅してしまえば、ますます戦の必要性はなくなるわけです。
家康はより洗練されたかたちで、秀吉の意図を完遂したわけです。大坂の陣は、その過程の総仕上げというわけです。大坂の陣は真田幸村にとって最高の舞台でもあるわけですが、同時に徳川家康にとって天下統一の総仕上げとなるわけです。

休憩中の家康のもとに、敵の布陣図が届きます。布陣図を見た家康は「いらん出城を作りおって」とこぼします。さらに出城を守るのは真田と聞いた家康は、
「真田!? また真田か!」
と苦虫を口いっぱいほおばったような、それでいて覚悟を決めたような顔をするのでした。

 

「決まってるだろう。真田丸よ!」

そしてその出城がいよいよ画面いっぱいに映し出されます。
重機を使って仕上げた50メートルにも及ぶ迫力のオープンセットと、緻密なCGが、私たちの見たことがない出城を映し出します。そしてこれは、城郭考古学者・千田嘉博氏の研究成果の結晶でもあります。

真田丸:難攻不落の“真田丸”は50メートルの巨大セットだった 大型ロケに“潜入”

出城には真っ赤な六文銭の旗が翻ります。生涯城を持つことがなかった真田幸村。やっと初めて城を持てた、と感慨深そうに漏らし、「城の名は、何とします?」という高梨内記に即答するのでした。

「決まってるだろう。真田丸よ!」

ここでバイオリンの音色、そしてタイトルバック、ドッカーンと壁の崩れる音。なんといつものOPがここで挟まれました。クライマックスにOPのメインテーマを決めるのは大河では定番の演出です。しかし今年こそドヤ顔でそれをかました年はないでしょう。ラストの騎馬隊もいななき、命がこめられたかのように駆け抜けます。

そしてこの真田丸とは、こう言い換えることもできます。
「このロケ、重機を用いた広大なセットは何でできていますか?」
「決まってるだろう、受信料よ!」
NHKは無駄な受信料CMを作らなくていいです。私はこの真田丸のためなら、色つけて払ってもいいです。

 

今週のMVP

まず次点から書きます。豊臣秀頼です。
あの気弱で母親に反論できなかったお坊ちゃまが、今週は牢人を心酔させるほど成長しました。
この時点でMVPは彼だな、とうなずいたのですが……結局は「徳川家康」なんですね。あの仕寄せでシャキッとして、実演までしてしまう、泥臭い戦人ぶり。生涯を戦に費やしたからこそ、これを終わらせようとするのかな、なんて感慨深かったりします。
軍師として帷幄で策をめぐらせるイメージが強い本多正信もシャッキリしていたのも印象深いです。この二人の演技、本当に圧巻でした。これは秀頼、勝てない。残念だけど、勝てない。

真田丸徳川家康

 

総評

「真田丸」とは何か? 初回ラストのナレーション曰く、乱世に漕ぎ出した船であったはずです。その船の舵取りは結局、真田信之に託されました。大局を見る目があった信之は、うまく船を操り、小さな国衆を九万五千石という大名にまで押し上げました。

が、「真田丸」とはもうひとつの意味があったのではないか? そう、大坂城の出城です。

「真田丸」異例演出に視聴者騒然、オープニング映像をエンディングで使用  ― スポニチ Sponichi Annex 芸能

今週は異例のOPをエンディングに持ってくることで、もうひとつの「真田丸」をはっきりと示しました。今までの四十四回はアバンだ、ここからが真田幸村の真っ赤な舞台だと宣言したわけです。そりゃ、演出も「ドヤァ……」となるのもある意味納得です。

この演出は賛否両論でして、素直に喜ぶ層と、「深夜アニメかよ」とひきつった笑みを浮かべる層と、「はー、くだらねえ」とがっかりする層と、意見が分かれるのは当然のことかと思います。
個人的には「アリだな!」とガッツポーズですね。今回の演出がくだらなくて無意味だと思う人は、根本的に本作があわないんじゃないかと思います。ここまで踊り続けていないと踊れない、という類いのものかもしれません。

それはさておき。
なんといっても今週は真田丸の全体図ですね。これは2010年代歴史ドラマの、ひとつの記念すべき到達点ではないかと思います。最新の研究成果と、広大なオープンセットと、最新鋭のVFXを駆使した「真田丸」ですよ。これぞ受信料をぶちこむのにふさわしいものなんです。
今だから言えますが、第一次上田合戦はイマイチだった(山城の籠城戦だからあんなもんかもだけど)。短すぎる関ヶ原が袋叩きになるのではないかと懸念だった(真田目線だから仕方ないかもだけど)。
しかし、大坂の陣で予算をガッと使うのであれば、そうした節約も、一点豪華主義も、むしろ歓迎すべきだと思っていました。

これは何度でも大きな声で主張したいのですが、一話あたりの制作費が大河の十倍と言われている『ゲーム・オブ・スローンズ』でもVFXを多用していますし、気合いの入った合戦シーンは一シーズン一話あるかないかです。プロット重視なら、合戦をカットしようがそれはむしろ許容範囲なんです。たとえ今の十倍予算があっても、オープンセットを組んで何度も合戦をやるなんてもはや無理だということを、合戦がないとぶーぶー言うオールド大河ファンは頭にたたき込まないといかんのではないか、と私は主張したいです。

そんなわけで、今年の大坂の陣に予算を絞って、最高の「真田丸」を作るという構想は褒め言葉以外見当たらないわけです。
このあたりは総括記事で詳しく書きたいのですが、本作は大河ドラマとしてだけではなく、2010年代の歴史ドラマという枠組みで作られていると思います。
古きよき大河が好きな方には、くだらないと思える部分もたくさんあるでしょう。
しかし歴史ドラマは、もはや後戻りができないほどの進化を遂げています。風変わりで突拍子もない演出を入れて、SNSで拡散されることを計算に入れつつ、VFXで予算を削りながら壮大さを出す、そんなことを考えながらではないと作れないエンターティメントと化しつつあります。
本作はその進化の先を我々に見せてくれたのです。

第45回「完封」 CGでもいい 大量兵士のワラワラ感が欲しい

こんばんは。
本作と直接関係ないかもしれませんが、こんなニュースが。
NHKの籾井勝人会長らが受信料「50円値下げ」を提案 ネットで物議に #ldnews
一月50円って……。そんなことより、受信料を払ってもいいと思える番組作りをすることがなすべきことではないでしょうか。受信料が安くなっても毎年昨年のようなおにぎり大河だったりしたら、まったく嬉しくありません。今年の大河は受信料を有効利用していると納得できるものです。まずはよい作品を! ちまちま受信料を下げるより、作品作りを第一にしていただければと切実に願います。

 

木津川口と今福と、手薄なところばかりが狙われる

そして今週、いよいよ真田幸村伝説の総仕上げが始まります。
慶長十九年十一月。
いよいよ大坂冬の陣が開幕です。初戦は、明石全登の守る木津川口、木村重成の守る今福砦での敗戦から始まります。守りの手薄な西と東を失いましたが、幸村は敵の狙いは南であると断言。大大名や家康の孫まで布陣する南からの敵を、真田丸で倒すと幸村は言います。

毛利勝永は、手薄な拠点から敵に落ちるのはおかしい、内通者がいるのではないかと幸村に告げます。幸村はあやしいと睨んだ織田有楽斎を厨に誘います。厨には上田の地侍・与八もいるようです。これは何かの伏線でしょうか。

真田丸大角与左衛門

真田丸与八

幸村は有楽斎を信長の弟とおだてつつ、弱音を吐きます。博労口の砦は手薄で不安だと語る幸村。有楽斎は「博労口……」と復唱するのですが、いかにも暗記しようとしているようで不穏です。
幸村は布陣図にいくつか白い碁石を置きます。有楽斎以外もあやしい人がいたのでしょうか。博労口が落ちたと高梨内記から聞いた幸村は、誰が裏切り者か悟ります。

真田丸織田有楽斎

江戸では信之が、大坂から戻って来た姉の松から様子を聞いていました。そこへ福島正則がやってきます。正則は大坂屋敷の兵糧を豊臣秀頼に献上してしまい、家康から怒られたそうです。それでも懲りない正則は、平野長泰まで巻き込んで、信之に大坂に兵糧を運ぶから手伝えと持ちかけるのでした。なんてトンデモナイことを言い出すんだ。
すっかり乗り気で計画を話す正則と長泰。弟・が大坂城にいるから、兵糧を運び込むのに信之を参加させたらいいと思っているようです。幸村のためにもと頼まれ、信之は動揺します。

信之は妻の稲に相談しますが、当然断固拒否されます。それはそうでしょう。しかも信之はうっかり口を滑らせて隠し事があるようなことをぽろっとこぼしました。これは小野お通との浮気疑惑を強化してしまうのでは(バレてるでしょうけど)。稲は「息子二人は徳川のために戦っているのに不憫! どんなおとがめを受けることになるか! 稲は決し、許しませぬ!」と断言します。これは稲が正しいと思いますよ……信之、血迷ったのか。

しかし、こうは蔵を調べて『そば粉の在庫』を信之にこっそり告げるのでした。それにしても大量のそば粉です。信之はこれからどうするつもりでしょうか。

真田丸真田信之

 

徳川軍の「井伊部隊」に目をやり来年の大河へ

大坂城の幸村は、妻の春に決して「戦の場に来ないように」と釘を刺しています。
その様子を見守る女の影がふたつ。こっそりどこからかお菓子を持ってきたきりと、茶々でした。茶々は幸村ではなくなぜかきりに話しかけ、これから侍女になるようにと言いつけるのでした。
きりの奉公歴は、寧→細川忠興の正室・玉→茶々と、なかなかすごいことになっています。

家康は真田丸を潰さねば始まらないと息巻きます。
真田丸の危険性がわからない秀忠に、家康と正信はなぜ危険かを説明します。政治家として卓越した手腕を発揮し、自信をつけた秀忠ですが、戦となると戸惑うばかりです。

幸村は櫓から敵を見下ろします。敵の井伊直孝の軍を見た幸村と内記は
「向こうにもここに至るまでの物語があるのだろうな」
「一度聞いてみたいものですなあ」
と、来年大河へのサービストーク(としか思えない会話 ※来年は井伊直虎が主人公であり、彼女が後見人となった直政は、直孝の父)を繰り広げます。

真田丸高梨内記

幸村の見た中には上杉の旗印もありました。
家康は上杉景勝と直江兼続を呼び出し、ネチネチと嫌味を言います。
「おまえら真田と仲良かったよね? あいつは父親も息子も邪魔なんだよ。真田丸をおまえらで落とせ。この間の戦(関ヶ原)では俺に逆らっただろ? あの無茶苦茶長い手紙書いてさ」
参照:「真田丸」兼続の“直江状朗読完全版”HP公開!村上新悟「煽るように」 ― スポニチ Sponichi Annex 芸能

「おかげで百二十万石が三十万石になっちゃって。ここで真田と戦って忠義を示したらワンチャンあるかもよ? がんばれよ〜」
こう言われ、嫌そうな口調で「かしこまりました」と返すしかない直江兼続。あきらめてここで戦わねば上杉の生きる道はありません、と主君に告げます。

 

茶々が鎧姿で兵士たちを励ますだって!?

秀頼は総大将として出陣したいと言いだします。
これには周囲が幸村も含めて反対。そこで茶々が「秀頼のかわりに私が鎧姿で励まします!」と言い出します。

真田丸茶々(淀)

有楽斎はそんなことは聞いたことがないと咎めますが、本作での稲をはじめ、女性が甲冑姿で戦陣に立つことはしばしばありました。茶々の侍女の中にきりがいるのを見て、幸村は驚きます。
茶々は秀吉の羽根がついたような陣羽織を着て(第二十三回で着用)、颯爽と戦陣を見て回ります。茶々の勇ましい姿に皆呆然。きりは「本人がコスプレして喜んでいるだけ。あの人好きになれないんだよね〜」と不満そうです。

一方、信之の子である信吉と信政の陣には真田丸を攻めよと下知が届きました。信政だけがやる気まんまんですが、他の面々は嫌そうな顔です。信吉は「叔父上とは戦いたくないのじゃ」と士気はほぼゼロ。そこで三十郎は佐助を呼び出し、文を書いて幸村へと託します。

真田丸真田信吉

真田丸真田信政

幸村は急いだ方が良いと判断し、すぐに攻めかかることにします。他の場所を守る明石全登・毛利勝永以外の五人衆三名とともに、幸村は戦の準備を整えます。あのバラバラだった連中がよくぞ団結したものです。
「おのおの、ぬかりなく」
父と同じ台詞で、念押しする幸村です。

大助の誘いに乗り、前田隊と井伊隊が次々に

早朝、初陣の真田大助は六文銭の旗を振り、「高砂や」を唄い始めます。これはかつて第一次上田合戦(第十三回)で父が果たしたのと同じ挑発役です。
まんまと挑発に乗った前田勢は、真田大助らのあとを追って真田丸にまで引きつけられてしまいます。

真田丸真田大助

ここから幸村が采配を振るいます。佐助が爆発を発生させ、敵方に大坂方が内部分裂したと思わせます。勝永もお手並み拝見と言いながらやってきました。
前田勢は空堀に気づきますが、背後からは井伊勢が迫るため後退できません。

「敵はひとつの塊ではない。所詮、人の集まりじゃ」(第三十八回での昌幸の言葉より)
空堀を上ってきた前田勢は、鉄砲の餌食となって転げ落ちてゆきます。あんな道を、しかも撃たれながら進むのははっきり言って地獄そのものですが、敵は手を緩める気はありません。

「真田勢有利で進むかに見えた……」
ここで不気味なナレーションが入ります。この直後、長宗我部盛親が石落としを開こうとするのですが閂が外れず手間取り、それと前後して真田丸の中に敵が侵入してきます。
幸村や又兵衛も刀や槍を振るって敵をなぎ倒し、内記は弓矢で敵を射殺。さらに勝永がやたらとかっこつけた笑顔を見せながら、盛親が手間取る閂を撃ち抜きます。おのおの力を思う存分に発揮し、前田勢はついにたまらず撤退し出すのでした。

この場面、豊臣方全員がカッコイイです。秀頼に「総大将は動いちゃダメ」と言っていたわりに、現場指揮官の幸村がちょろちょろするのはどうかと正直思わなくもありませんが……多分、主人公である以上白兵戦もしないというノルマがあるんだと思います。ハイ。ビジュアル重視だね!

「日本一の兵! 真田左右衛門佐!!」

「一兵たりとも討ち漏らすな!」
叫ぶ幸村。前田に混じり、徳川の旗印が虚しく倒れます。仕上げとばかりに幸村は出馬し、騎馬で敵に追い打ちをかけるのでした。

赤備えの真田勢は、さんざんに敵を打ち破ります。
その姿に感激したのは味方だけではありません。上杉主従が感極まった顔で幸村の活躍を見つめ、景勝に至っては
「日本一(ひのもといち)の兵! 真田左右衛門佐!!」

と絶叫までします。えぇ……気持ちはわかるような、わからないような。アイドルのファンですか。おまけに横ではあの兼続がにっこりと微笑み、あたたかいまなざしを主君に注いでいます。

真田丸上杉景勝霜月けい

真田丸直江兼続霜月けい

家康はまたしても真田にしてやられた、と激怒。ひとまず前田と井伊を撤退させ、次の手を考えることにするのでした。

赤い旗がたなびく中、帰陣した幸村は歓呼の声に迎えられます。
まさにこれぞ真田幸村伝説です。
策と勇、まさに知勇兼備です。勝ちどきをあげる豊臣勢。たとえここに居る人がこれから全員斃れるのだとしても、この瞬間は輝いていた、そんな風に思い出したい場面でした。

幸村は戦果を絶賛し感激する木村重成に、他の者には内密にと前置きしてこう漏らします。
「かような大戦、私も初めてなのだ……心の臓が口から飛び出しそうであった」
長い、思えばここまで長い道のりでした。
今このとき、真田幸村は、大将として大輪の花を咲かせたのです。

 

今週のMVP

真田幸村です。もはや何も言うことはありません。言葉は不要でしょう。
次点は上杉主従で。突然叫び出す景勝、なんであのチベットスナギツネ顔の兼続の、慈愛に満ちた微笑み。よいものを見ました。

真田丸真田信繁2霜月けい

 

総評

全体的に言えばすごくよい出来だと言いたいんです。
鹿角の兜、赤備えの幸村が疾走するだけでぐっときて感極まってしまいます。三白眼になるほど気合いを入れて疾走する堺雅人さん、最高でした!

しかし、どうにも何かもう一つ足りない。
脚本でもなければ、役者でもない。セットだって頑張っている。エキストラだって頑張った。

【真田丸】大坂の陣、徳川兵のエキストラに上田市民を起用する奇策 | ORICON STYLE http://www.oricon.co.jp/news/2081244/full/

うーん、なんだろう。ずっと考えていました。
それで思いついたのは「ワラワラ感」不足です。

前田勢のあとに井伊勢がいるから押し出される。上杉はじめ、大大名の大軍がいる。
敵は総勢三十万……となれば、地平線まで埋め尽くす、絶望的なまでの多くの兵士が見たいわけです。上杉勢が大勢いると言われても、目に見えるのは景勝と兼続しかいないわけです。
CGの鳥瞰図で真田丸も見えますが、兵士の姿までは確認できないわけです。

それもそのはずで、五十人程度のエキストラだからなんですね。
それ以上が画面に入らないように入れ込んでいるわけで、あとは画面の外にいると想像してくださいということなんでしょうけれども。幸村が馬上で戦う姿なんて本当に格好いいんですけれども、兵士の絶対数が足りません。真田丸だけで六千人いるはずなんですけどね。

これが「ワラワラ感」不足です。
2010年代の歴史ドラマとして見ると、これはあまりに物足りないのです。この点は2013年の『八重の桜』の方がまだ上だった気がするんですね。

私なりに理由を考えたのですが、おそらくエキストラを使用した実写にこだわったからではないか、と思うのですが。
しかし何度もくどいのですが、やはり2010年代の歴史ドラマならば、そこはCGに妥協してもよいのではないでしょうか。テレビ画面が大型化し画質が向上した現在、従来の大河ドラマのように実写だけでは迫力が出ないのです。
リアルな「嘘」であれば、その「嘘」があってもよいと個人的には思うわけです。

回りくどく書いていますが、要するに「VFXでもっとワラワラ感を出して、びっちりと兵士がいればなあ。現状でもいいけど、そうしたらばもう言うことないのになあ」というぼやきです。
十年前と違って、現在のCGは実写と見分けがつきません。
OPのラストで大勢、CGの騎馬武者が疾走しているではありませんか。あの技術を本編で生かしてもらえないでしょうか。

参考までに『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン6のVFXメイキング動画をあげておきます。2010年代の歴史ドラマにおける「ワラワラ感」はこれがおそらく最高水準です。これに近づく日が来ることを祈ります!!

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