『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』/wikipediaより引用

西郷どん感想あらすじ

『西郷どん』感想あらすじ第4回「新しき藩主」


藩主候補と下級藩士がペンフレンドかーい

西郷は、江戸の斉彬に書状や血染めの肩衣を送っていました。

さすがにこの唐突感には驚かれた方も多いのではないでしょうか?
いきなり出来ていた、西郷—斉彬の直通ホットライン。
ペンフレンドみたいな。

西郷隆盛(鈴木亮平さん)

薩摩藩は全国二位の大藩で、藩士も多いです。
しかし、本作では社員百人程度のアットホームな中小企業に思えてきました。

斉興は、新年の挨拶のために江戸に登城し、阿部に「従三位が欲しい」と言い出すのですが(めっちゃくちゃカジュアルでストレートな頼み方だなというのはさておき)、逆に茶器を渡されてしまいます。

「茶でも飲んでゆっくりしてね」
という、事実上の隠居勧告です。
これで隠居するのかな、と思ったらここからがなかなかドえらい展開に……。

斉彬、ここで父に挨拶に来ます。
そこでいきなり父を滅茶苦茶にディスり、こうです。
「今の父上のことじゃねーから! 俺が自覚している欠点ッスから!」

島津斉彬(渡辺謙さん)

うわぁ、なんだよコイツ~(ジョイマン風に)。
そればかりでなく、西郷に言われて猛反省したとか言い出します。
なんでも西郷に薩摩のことを色々と教わったらしい。

おかしいorz
以前から「俺が薩摩の救世主だ」という顔をしていたのに、西郷に言われるまで薩摩のこと知らないとか、さすがに厳しいです。理屈が通らなさすぎです。

そもそも第三話における調所広郷とのヤリトリでも、彼の真の功績をあまり知らないように思えました。
それであんなに自信満々だったんかーい!!

 


斉彬のサイコな一面がますます見えてきてしまう

斉彬は、自分を藩主にするため犠牲が出た、と言います。
その引き金を引いたのが、斉彬自身なんですけどね。自責の念が全く感じられなくて、ちょっと怖い。

「この者たちのためにも、藩主になって立て直す!」
って、マッチポンプかーい!
この斉彬、自分で放火しておいて、火災現場から人を助ける系の性格も垣間見えてきましたよ……。

ここで斉彬、幕府に命じられた琉球出兵をきちんとしなかった件を蒸し返します。

黒船来航前にも、外国船は日本に迫っておりました。各藩が幕府から海岸防備を依頼されていたわけです。
しかし、薩摩藩主の斉興と調所は、琉球出兵を真面目にやりませんでした。

焼け石に水、自前の装備で外国船を追い払うなんて無理ゲー。
地理的に海に開けた薩摩藩は、他の藩よりも情勢がわかるぶん、早々にあきらめていたわけです。
ともかく根本的に国力を上げて対処しないと無意味、付け焼き刃では駄目だと。

それをふまえて、斉興と調所は西洋の技術を取り入れ、軍備増強をしていたわけです。

 


斉興だって調所だってわかっていた外圧

島津斉彬は先進的で、英邁で、賢かったから、攘夷の非を早くから悟っていた――。

幕末の薩摩作品では、そんな描写がよく採用されます。
本作の第一回でも、斉彬がドヤ顔で斉興に「外国から襲われたらどうするんだ!」と語っていました。

そういう英雄史観、属人的な因果関係にしてしまうのはちょっと危ういものでして。

薩摩藩は地理的に、他の藩より外国からの脅威がよりわかりやすかったのです。斉彬だけがそれをわかっていたのではなく、斉興と調所の頃から対処を迫られていたのです。

話が先に飛びますが「薩英戦争」では薩摩藩の砲台がイギリス海軍に打撃を与え、英国を驚かせました。
何が言いたいのかと申しますと、事前にそれだけの対処をしていたわけです。

それには、斉彬の力ももちろんあります。しかし、斉彬は志半ばで世を去り、治めた期間はあまり長くないのです。
前の斉興や、実質的な藩主であった島津久光の力もあるわけです。

本作はそこをちゃんとやりそうもありませんけど……。

 

突然、メリケンのリボルバー 何が始まるんや!

話を戻しまして。
斉彬は琉球のことを密告すれば、鎌倉以来の島津家はおしまいだけれども、父上が引退して自分に藩主を譲ればそれを切り抜けられると言い出します。
まぁ、それが最も近道かもしれませんが、さすがに悪質な脅迫ですよね。

そしてまたもや由羅が盗み聞き。『巨人の星』で主人公を見守る赤いワンピースの姉・星明子のようです。
こういう盗み聞きパターンは朝の連続テレビ小説でも得意。でも大河では……うん、まあ、うん。

一方の斉興も、なんでこんなに頑張って粘るんだろうと、だんだん気の毒になってきました。
斉彬があまりにマッドなので、これは体を張ってでも我が子ながら「狂王」の爆誕を阻止している気分かもしれませんね。

ここで斉彬、メリケンのリボルバーを持ち出しました。
「これは父上と私、最後の戦です」
えっ……?

チィイィィィィィエストオオオオオオ!?
斉興、めっちゃビビって、「であえーであえー」と護衛を呼びます。

島津斉興(鹿賀丈史さん)

薬丸自顕流の使い手が複数いるからには、リボルバーを手にした斉彬でも瞬殺でしょうけど、さすがに世子は斬れませんよね。

 


まさかのロシアンルーレットかーい!

慌てた由羅が、斉興との間に割って入ります。
斉彬は「どきなさい!」と制します。

ここから超驚き、斜め上展開。
なんと斉彬、ロシアンルーレットを提案します。

意味がわからないよ!
戦ってレベルじゃねえわっ!

薩摩には、撃てるようにした火縄銃を吊り、それを回しながら酒を飲むという度胸試し(一説では「肝練り」という名称)があるなんて話がネット上では有名ですが。
さすがに藩主父子でロシアンルーレットというのは……。
シュール過ぎて思わず笑ってしまいそうになりました。

斉興は斉彬より度胸がないというか、まっとうな人間なので勝負を放棄。これで藩主が決まりました。

「久光はどうなるのですかー!」
ここで由羅、突如リボルバーを奪い発砲、外します。わはははは、なんだこりゃ。

正直言って何がなんだかわからん!!!

由羅(小柳ルミ子さん)

 

斉彬就任で、実は税金上がっちゃうんですけどね

薩摩でも、西郷が大久保の家に駆け込んで吉報を喜び合います。
赤山の墓前で報告しようとすると、糸が待ち受けていて女子マネっぽく「遅いよ!」と叱りつけます。

この若い男の集団に、野球部のマネージャーっぽい謎の女子が入り込む展開は、既視感があってちょっと不安です。

岩山糸(黒木華さん)

斉彬のお国入りシーンでは、薩摩隼人が思い切りシャウトしています。
子供たちも全然頭を下げていません。
それを許して「子供は国の宝」と寛大さを見せる斉彬をアピールするわけです。

うーん、これもうっかり粗相をしてしまった子供相手に寛大さを見せるならわかるんですけど、あまりに堂々とし過ぎてません?

全体的に本作は、身分の差がルーズで、それが緊張感の欠如を感じさせます。
こんな薩摩藩じゃ「生麦事件」も起きないのでは? まぁ久光が厳しくするということかもしれませんけど。

それにしても、ペースは大丈夫でしょうか。
歴史的背景の描写が雑で惑わされそうになりますが、展開自体は、かなりゆったりしてません?
西郷の場合、坂本竜馬のように途中退場しませんし、普通に考えれば西南戦争がクライマックスでしょう。それが、こんなペースで平気なのかなぁ?と思いまして。

ちなみに、民衆は斉彬に歓喜の声を送っていますが、税金は斉興時代よりも増えます。
史実はそうでも、本作ではしれっとそこをスルーする可能性はありますね。

 


ついうっかり忘れていたMVP

第一回:西郷吉之助(子役)
第二回:フキ(子役)
第三回:中村半次郎(子役)

第三回まで子役頼りだなあ、と。

そして今回のMVP:赤山靭負

第四回までの名誉MVPといってもよいかも。
出演者の中で一番綺麗な薩摩ことばということが伝わって来ました。

なぜ沢村一樹さんを序盤退場する役にしたのか、ちょっと不思議です。

 

総評

ヤ、ヤバイもんを見てしまった……。
赤山退場という前半の山場のはずが、まさかのロシアンルーレットと発砲事件でシュールな流れに。

何かとんでもないものを見ているのわかるのですが。違う、コレジャナイ。
鮪の刺身を食べたいと言ったら、目の前で板前が突然チェーンソー抱えて鮪の解体をやり始めたような。

確かに凄いけど、そこまでやれとは言っていない……私は静かに鮪を味わいたかっただけなんだ!

2016年『真田丸』では、去就をくじ引きで決めていました。
あれはあれで、考証としてはありです。
当時の人は神頼みを今よりも江戸時代よりもずっと信じていて、これまた劇中に出てきた「鉄火起請」なんかで物事を決めていたのです。

あの時代の人としては、そこまでぶっ飛んだ発想ではないのです。
少なくとも、ロシアンルーレット藩主父子よりはマトモです。

本作はやはり、危惧した通りになっています。
ものすごく荒削りで、あやういバランスを、ひたすら役者の演技力だけで誤魔化している印象です。

お茶の間への浸透度が低い役者を起用し、じっくりと練った脚本と緻密な考証を重ねて来た昨年とは、ある意味真逆。
地道でじっくりと練られた昨年が好みのど真ん中であった私にとって、荒削りで勢い頼みの今年はかなり厳しいなぁ、と改めて思った次第です。

これは“序盤のみ出演する大御所”が夏までに退場して、弾切れになった後がとても辛いと思います。

危ない兆候はもうはっきりと見えていまして。
「お由羅騒動」という大騒動すら、時代背景もろくにやっていないのです。

子供が芋を持って来たり、お隣同士で相撲を取ったり、そういうベタなホームドラマをしている場合なのか?と思うのです。

そうそう。
先週まで繰り返し、本作の斉彬は危険人物だと書いて来まして。
言い過ぎで反発あるかな、と思ったらSNSでの反応もそういう意見が増えていて、ホッとしたというか、怖いというか。

来週は相撲を取ったり、糸が恋占いをしたり、篤姫がシャウトしたりするようです。
一体これはどこの世界なのでしょう。

今週は分水嶺だと思います。
来週以降、視聴率が急降下するのもありえるのでは。


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著:武者震之助
絵:小久ヒロ

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【参考】
西郷どん感想あらすじ
NHK西郷どん公式サイト(→link)等

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