『西郷どん完全版第壱集Blu-ray』/wikipediaより引用

西郷どん感想あらすじ

『西郷どん』感想あらすじ視聴率 第38回「傷だらけの維新」

平成の世、しかも明治維新150周年という記念の年に、なんとも不名誉な薩長同盟が締結されました。

何が?
って「視聴率一桁・薩長同盟」です。

◆西郷どん:2週ぶり放送 第37回「江戸無血開城」視聴率9.9%と初の1桁(→link

台風による延期など不運な要素が絡まったにせよ、37話の内容は西郷隆盛と勝海舟が面と向かって話し合う「江戸無血開城」です。
それが本作最低の視聴率となる9.9%でした。

長州の『花燃ゆ』に続き、薩摩の『西郷どん』でも一桁を記録。
いやはや熱い関係です。

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【1分あらすじ】傷だらけって自業自得でしょ

上野の彰義隊は一日で討伐されました。
“討伐”って言葉を公式サイトでも平然と使っていますが、どこまで歴史認識がおかしいのだろう。

「俺たちは戦争したくないのに、空気の読めない佐幕派、奥羽諸藩のせいで」とでも言いたげに、戊辰戦争が続いているという描写。違うでしょ?
このへんの経緯は『八重の桜』をご覧ください(真顔)。

能天気に自宅へ戻った西郷どんに、吉二郎が戦に出たいアピールを始めます。
あ、これ、死ぬ前にいきなり目立たせるやつですわ。

案の定、吉二郎戦死。

西郷どん、国作りを大久保に丸投げして、帰郷しております。

ここで吉二郎ごめんねと号泣。
散々平和主義アピールしておいてから、突如キャラ変して「戦の鬼」とかイキってたのに、急にどうしたのよ。

何度でも言いますよ。
自分で拡大させた戦争でしょ?

それを伏せて無理に佐幕派&東北諸藩のせいにするから、おかしな話になるんだし、視聴率もついてこないんですよ。

つーことで本編へ!

 

敵が全て悪い…だから殲滅してやるってか?

彰義隊があっさり、大村益次郎に倒されるところからスタートしました。

ナレーションでは
「速やかに殲滅させるため」
とか言ってますが、これも酷いなぁ。

殲滅って意味、わかって使ってるんでしょうか。

上野戦争(彰義隊)
彰義隊が散った上野戦争の恐ろしさ 旧幕府軍の悲しき結末を振り返る

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彰義隊との戦い、上野戦争では、「薩摩御用盗」を率いていた益満休之助も死んでいます。

武力倒幕
なぜ西郷は強引に武力倒幕を進めた?岩倉や薩摩は下策としていたのに

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戊辰戦争は西郷が始めた戦(いくさ)です。

にもかかわらず、相も変わらず
「果ての見えん戦でごわす」
とか言っちゃうのがなあ。控えめに言ってクズですね。

わずか半日で壊滅とか、言葉の選び方がいちいち性格悪いです、この作品。
殺されたのはゲーム内の敵キャラじゃなくて、実在した人々の話でっせ。

ついでに西郷が散々大切にする――と言っていた民たちが史実ではどうなったか?
よろしければ皆さんも以下の記事でご確認ください。

戊辰戦争
戊辰戦争のリアルは過酷だ~生活の場が戦場となり食料奪われ殺害され

続きを見る

 

西田敏行さんにナレーションやらせる残酷さよ

ここでOP。
今となっては本当に最低のOPになってしまいました。
明るく能天気でノンキ。憂いもへったくれもありゃしない。

そんでもって
「反乱の火おさまりません、バカな東北諸藩や会津のせいです」という趣旨のナレーションが入るんですが……これをまた、西田敏行さんに読ませるのが酷だよなぁ。

別に福島出身で西郷隆盛を演じるは全然アリだと思います(翔ぶが如く)。

しかし、東北を小馬鹿にするような、このナレーションを、事もあろうに福島出身の方に読ませるのは本当に残念でなりません。

あっ、もちろん、悪いのは番組スタッフだとわかりますよ。
なぜ西田さんに、そんなナレーションを担当させたのか。

そもそもナレーションの戦況説明が全くダメで、庄内、長岡、会津の名前だけしか出てこない。

仙台藩「解せぬ」
米沢藩「解せぬ」

奥羽越列藩同盟すら理解しないまま脚本が進んでおりませんか?

まあ、薩長同盟ですら色々と変な描写だったもんなぁ。

奥羽越列藩同盟
奥羽越列藩同盟とは?伊達家を中心とした東北31藩が戊辰戦争に敗れる

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ともかく【戦上手なんだ】という曖昧な過大評価

あと本作の卑劣な特徴があります。
敵を過大評価するのです。

ここでもともかく【戦上手なんだ】という曖昧極まりない過大評価が前面にプッシュされ、兵器の違いとか、そういうのが無視されてします。

ちょっとした……些細な描写やセリフが弱い。
一つ一つが活きた説明にできていないため、うっすーーーーーーーい展開にしかならないんですね。

脚本家さんは、本気で時代物の合戦を描いたことがあるのか?
あるいは自作と他の作品を、ホンキで見比べたりしたのか?

そうやって頭の中で汗をかいてなければ、面白いものができるはずがない。
「鳥羽伏見の戦い」でも、シレッと嘘をついて、私にとっては悪意に満ちた作品にも見えてきます。

ともかく東北へ攻め込むには、新政府軍には兵も武器も金も足りない様子。
大村益次郎に圧をかけられ、西郷が薩摩へ戻ることとなりました。
島津久光に援軍を頼むんですね。

 

圧倒的に緊張感が足りない

このときの帰国は、史実ベースの話です。

帰国した西郷どんは、例によって一家団欒のグダグダTIMEへと突入しました。

安易に考えてらっしゃるかもしれませんが、こういうシーンで西郷の良さをUPできるかと思ったら大間違い。
彼が強引に戦を起こしたせいで、一家全滅した人も大勢います。

それなのに序盤と同じように、平然と一家団欒を入れ込む。
ホームパパを強調したいのでしょうけど、多くの人を殺し、生活を潰しておきながら、一家団欒が素晴らしいとは何事なのか。

圧倒的に緊張感が足りない!
こんな調子だから視聴率にも出てしまうんでしょうね。

そもそも、この時期の薩摩は、武力倒幕に反対論がありました。
天災からの復興資金が必要でしたし、遠征は経済的に大打撃となる。簡単には軍など派兵できません。

しかし、ドラマではそんなコトかんけーない。

要は、吉二郎を参戦させるためなのでしょう。
それだけのために、こんなにしつこく説明する必要ありますか?

 

これのどこがモテモテのナイスガイ?

この辺の西郷の動き。単純に言えば、こうです。

【史実】武士としての勲功欲しさに弟を戦に引っ張り込んだ

【ドラマ】泣きのシーンにするため回りくどく描いている

そして、極めつけが「子供を抱くシーン」でしょう。

戦地ではない薩摩。
自ら攻め込んでいった東日本はまるで無視するかのように平和に穏やかに自分の子供は抱いてあやす。

これのどこがモテモテのナイスガイなんですか?

そういう人間がカッコいいの?

では、どうすればよいのか?
って、んなことたぁ簡単です。

理想の武士らしく、国全体を安定させるまで我もとにかくストイックに生きる――。

もともとドラマの中での西郷どんは、平和ボケしていたにせよ、そういう一面がないわけじゃなかった。
しかし、キャラ変で全ておかしくなってしまった。

ご都合主義で面白い絵に見せることを第一にしてしまったため、そういう超原則を見落としているんですね。

 

吉二郎ってどんな人?サッパリわからない

このあと吉之助は、島津久光に兵糧や軍資金を求めに行きます。

「薩摩のためになるのか?」と疑問を持つ久光が正論ですね。そもそも薩摩にも大きな負担をかけているわけですから。

しかし、残念なことに、戦争を継続させるための説明はやらない。

史実では、会津藩に対して、しつこく前藩主・松平容保の首を要求したり、長岡藩や庄内藩に金を払えとオラついたり、世良修蔵や大山格之助、岩村精一郎あたりが、最悪の対応をしております。

でも、都合悪いから描かない。

それよりは吉二郎なワケですよ。

情感たっぷりに、悲劇的に描くための演出をしなければなりません。
今まで、ほとんど1ミリも思い出したりしなかったのに、とにかく留守を預かってくれていることに対して感謝の感謝。

これまで帰宅しても糸とイチャイチャしてばかりだったのに、急にどうした?

そんなんだから、吉二郎のキャラも立っていません。
信吾や小兵衛が戦場にいても、吉二郎が家を守るために残っていた説明とか、ありましたっけ?

こんなインスタントでくだらない唐突感あふれる演出をして、こっちが泣くとでも思っているんでしょうか。

しかも、です。
信吾にしたって
「戦場なんて好き好んでいくところじゃないよ!」
とヘタレ全開のセリフを吐くのです。

いやいや、薩摩隼人にそんな言葉似合わないって!
それともそういう史料でもあったんですかね。だったらゴメンナサイとしか言いようがないです。

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