福翁自伝

『福翁自伝』/amazonより引用

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エリートどころかロックだなっ!福沢諭吉の『福翁自伝』が超骨太

今回は、とある本に注目。

天保5年(1835年)12月12日に生まれた福沢諭吉の自伝『福翁自伝』です。

慶應義塾大学の創始者であり、また同校が屈指のエリート校であることから「福沢諭吉もカタい人だったに違いない」とか「ナンパな慶応ボーイ」のイメージを思い起こされるかもしれません。

しかし福翁自伝を読むとその考えが一気に吹っ飛びます。

『福翁自伝 (講談社学術文庫)』(→amazon

では一体どんな本だったか?

概要を掴んで参りましょう。

ちなみに以下、福沢諭吉や他の人の発言は全て意訳です。

あしからずご了承ください。

 


父ちゃんも母ちゃんからしてスゴいのでして

そもそも福沢がまともに読書を始めたのが14~15歳というのですから、なかなかぶっ飛んでいます。

お父上はさほど身分の高い武士ではないかわりに真面目な学者肌の人で、諭吉が生まれたとき「普通に暮らしてても歴史に名を残せないから、この子は寺に入って偉い坊主になればいい。坊さんなら庶民からでも大僧正になれる」と言っていたそうです。

諭吉が2歳にもならないうちに死別したため、諭吉は直接父親と話したことはないはずです。

ただ、”福翁自伝”からはこの尖った発想が血に乗って受け継がれた事はわかります。

なんせ、ご家老が気に入らないからといって藩を出て行き、兄が亡くなって一度は家を継いだにも関わらず、「私は学問がしたいので出て行きます」と言って本当に出て行くというファンキーぶりでなのす。

お坊ちゃんイメージな慶応とは真逆ですよね。

お母さんも相当変わった人だったようで、「私は寺に入ることになっていたのだから、もう死んだものと思って諦めてください」と言い放った諭吉に対し「おう、どこででも死になさい」と引きとめもしませんでした。

武士でありながら、家にこだわらないにも程があります。

 


学問への熱中ぶりが尋常ではない

このように、普通の人だったらとっくのとうに天からも見放されているような言動ばかりの諭吉なのですが、不思議とお金や協力者に困る事はありませんでした。

”福翁自伝”に載っているだけでも、「路銀(旅費)が尽きかけて船の運賃をちょろまかすために何とか頭を巡らせていたら、たまたま居合わせた人が助けてくれた」とか、「江戸に出てきたら、知り合いの知り合いが面倒を見てくれた」という類の話は何回も出てきます。

類稀な強運と見るべきか、もともとの能力が突出していたのか……。

ともかく学問に対する熱中振りはすさまじいものでした。

・「知り合いが持っている本がどうしても欲しいが手に入らない」」

→借りて全部書き写す

・昼夜を問わず勉強し続け、寝るときはその辺で居眠りしていたので、何年も寝具を使わなかった

→「そういえば、枕って使ったことないな」と後で気付く

などなど、ソレ、身体を壊すだろ……というようなことも、勉強のためなら平気でやってしまっています。

ただし、その間「大酒を飲みすぎてほぼすっからかんになった」とか「遊女に皿をぶつけて三味線を壊した」という、ロックなエピソードも入るんですけども。

まぁ、諭吉は『学問のすゝめ』でも

「人は平等(天は人の上に人を造らず)って言うけど、現実はそうじゃないよね。勉強してないと生活はよくならないじゃん」

とキッパリ言い切ったりしていますしね。

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歳を取ってからは丸くなられたようで

”福翁自伝”はあまりにもツッコミどころが多すぎて、私の筆力ではその魅力を伝えきれません。

末尾には「若者の気品を高め、文明の名に相応しい国にしたい」と極めてまともなことを言っています。

ページをめくる度にニヤけてしまうかもしれず、人前で読むのは危険かもしれませんが、いろんな意味で面白い本ですので未読の方はぜひどうぞ。

冒頭のような現代語訳でざっくりつかんでから原典を読むのもいいでしょう。

電子書籍(Amazon Kindle)でも販売されておりますよー。

まずは、ちくま新書さんの『現代語訳 福翁自伝』がオススメ。

なお、ロックな福沢諭吉さんの生涯については以下の記事に詳しいので、よろしければ併せてご覧ください。


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長月 七紀・記

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