食・暮らし

フグを美味しく食べられるのは総理大臣のおかげなの?

2月9日は
2(ふ)と
9(く)で
フグの日だそうです。

中国では2,000年以上前の地理書に
「フグ食べたら死ぬぞ!」
と書かれており、恐らくこれがフグに関する最古の記録だろうと言われています。

日本でも集落の跡である貝塚からフグの骨が見つかっていますので、日中両国でフグを食べてお亡くなりになってしまった人がいたのでしょう。
実に近海だけで数百種類ものフグが生息しているそうですから、沿岸部の人なら簡単に捕れたでしょうしね。

調理法はちっとも簡単じゃないんですけど。

しかし、食べて無事だった人がよほど
「フグはうんまいぞおおおおおお!!」
と吹聴したのでしょうか。

死と隣り合わせの食物であるにも関わらず、食べる人が後を絶ちませんでした。

 

文禄・慶長の役で兵士がバタバタ

いよいよシャレにならなくなったのは、豊臣秀吉による「文禄・慶長の役」です。

食料に困って魚を調達したのでしょう。
フグの毒で死ぬ兵士が相次いだとか。

当然、秀吉は激怒し、フグを食べないよう厳命します。
矢玉どころかフグにあたって死ぬ――って、わけわからないですもんね。

ただ、江戸時代になってもフグを食べて死んだ武士がいたところをみると、対して効果はなかったようです。

当然、江戸幕府もフグを食べないようにお触れを出していました。

「将軍に仕えるのが武家の役目なのに、己の食い意地のために命を落とすとは不届き千万である!」
というわけです。
全くもってその通りとしか言いようがありません。

当主がフグで命を落とした場合はお家断絶などの厳しい措置が採られました。

が、それでもフグを食べる人がいなくなったわけではありませんでした。

 

「ご禁制だからやめてください!」「知らんがな」

時代が下り、明治時代。
このときも当然フグを食べるのは禁止されていました。

しかし!
ここである政治家が勇気ある行動に出たことにより、フグの調理・販売は解禁される運びとなります。

伊藤博文です。

伊藤博文/wikipediaより引用

彼は下関へ出かけた際、周囲が「ご禁制だからやめてください!死にたいんですか!」と止めるのも構わずフグを食しました。

そして「うまい!!」(テーレッテレー♪)と感激し、下関を含めた山口一帯でのフグ食を解禁させたそうです。

川上貞奴の身請けといい、政治以外でイロイロやりすぎじゃないですか春畝公。
※春畝(しゅんぽ)は伊藤博文の雅号です。

こうして多大なる犠牲と処罰の末に今もフグを食べることができるのですが、素人の調理は危険なので絶対にダメですよ。

 

過去10年間の死者数は15人

「東京都福祉保険局」によると、例えば平成24年(2012年)でも18人がフグにあたっているようです。

結構、被害者おりますよね。
この年、死者はありませんでした(2005年~2014年における過去10年間の死者数は15人)。

よく「フグの毒は卵巣にあるから、オスなら大丈夫」とか「臓器以外なら平気」と思っている人がいますが間違いです。

フグの素人調理が危険な理由は、主に四つあります。

・上記の通り日本近海には数百種類ものフグがいて、毒の有無が素人目では判別ムリ
・種類によって毒の生成される部位が異なる
・環境やエサによって毒の含まれる部分が変わる
・そもそもフグの毒については未解明なことが多い

てなわけで、フグの取扱資格は地方自治体ごとに異なり、また素人の調理は厳禁とされているのです。

死亡例の中でよくあるのが
「自分で釣ったフグを食べた」
「フグ取扱資格を持たない調理師・すし職人が調理した」
というものですので、万が一フグが釣れたとしてもテキトーに捌くのは止めて下さい。

フグの毒は300℃で加熱しても分解できません。

「火を通せば大丈夫」というのもデマ。
ググるとあっちこっちで「フグ釣ったどー!食うどー!!」って人がたくさん出てきて恐ろしすぎ!!

世を儚んで冥土の土産に食おうとしているのでもなさそうですし、冗談かもしれませんが、絶対に止めて下さい。

ちなみに有毒部分の処理方法も地方自治体ごとに決まっていますので、単に焼いたり流したり埋めたりゴミの日に出すのもダメです。

再三釘を刺したところで、もう一度歴史のお話に戻っておしまいにしましょう。

 

絶対に許されなかった昭和天皇

フグで亡くなった著名人は何人かいますが、フグを食べたくても食べられなかった方もいます。

昭和天皇です。

いつ頃の話かは諸説あるためはっきりしないのですが、あるとき「なぜフグを食べてはいけないのか」とご下問されたことがあったそうです。
当然お付きの人々は「万が一があってはいけませんので」と止め続けたのですが、昭和天皇は納得せず、何時間も侍医に説明を求めたとか。

しかし周囲の人はフグを食べていたので「フグには毒があるのだぞ」と冗談めかした恨み言を仰っていたそうです。
もしかしたら本心で言ってたかもしれません。

まぁ、これだけ危ない魚なのですから、やはり万が一を考えると仕方ないかもしれませんね。

というわけで、例え釣れても自分で捌いて食べるのは絶対に止めて下さいね。
(本気で大事なことなので四回言いました)

長月 七紀・記

【参考】
東京都福祉保健局
フグ/wikipedia

 



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