尊厳王フィリップ2世

尊厳王フィリップ2世/wikipediaより引用

世界史

尊厳王フィリップ2世がフランス史上最強か ドロ沼の英仏関係ぶっ壊す

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リチャードと同じベッドで眠るフィリップ

1180年。
ルイ7世が崩御すると、僅か15才のフィリップ2世が即位しました。

父にとって待望の男子であったフィリップ2世は「デュドネ(神の賜物)」と呼ばれ、英才教育を受けて育ちました。

そして周囲の期待通りに、彼は聡明な少年に成長します。

父の死後、まもなくして親政を始めると、彼の聡明さと野心が際立つようになります。

反抗的な貴族を抑えるその手腕には、周囲も感服するほど。

フィリップ2世が父から引き継いだ使命は、プランタジネット家をフランスから駆逐することでした。

そうした背景や彼の行動からすると

『プランタジネット家の奴らなんて顔も見たくない』

と思っていそうですが、話はそう単純でもないようです。

当時の両家は、姻戚関係もあり、親戚感覚でした。

便宜上イングランドの王族は英語名で表記しているものの、実際に彼らはフランス語で話し、フランス語でその名を呼び合っていました。

バカンスともなれば温暖なフランスでくつろぎ、ちょくちょくやって来るわけで、フィリップ2世も彼らと親戚づきあいをしなければなりません。

当時の王たちの様子を、ロジャー・オブ・ホーヴデンはこう書き残しています。

「(英国王の)リチャードはフィリップを心から尊敬していたのです。

彼らは同じテーブルで食事を取り、夜寝るときもベッドが別であることはありませんでした。

フィリップはリチャードのことを己の魂であるかのように愛していたのです。

彼らはお互いに心から愛し合い、その情熱は驚くべきほどのものでした。」

リチャードとは、ヘンリー2世の二男で、のちのリチャード1世。

「獅子心王」という、これまた屈強そうな異名でも有名です。

戦では無類の強さを誇ったものの、内政手腕は無に等しい、持てる能力値のほぼ全てを戦にだけ割り振ったような王でした。

リチャード1世/wikipediaより引用

 

同床異夢

さて、このフランス王と未来のイングランド王。

食事はともかく何故ベッドまで一緒なのか。

なんなんでしょう、この「史実が小説より奇なり」状態は。

「ベッドが同じ」というクダリについては、ただの親愛表現という説もあります。

「なぁに、ベッドを体温であたためるのは信頼のあかしで、性的なものではありませんよ」

秀吉が信長の草履を暖めた逸話のように、リチャードとフィリップは互いのためにベッドを暖めていただけ、というわけです。

そういえば劉備も、関羽と張飛と同じ床で寝ていたそうです。

「いや、フィリップはリチャードの愛人だったんだよ!」という説も、あるにはあるようで。

その方が話としては面白いかもしれませんが、真相は不明です。

ちなみにリチャードは、女性に性的な興味を抱かなかった、とも言われており、その辺が噂を助長させているのでしょう。

いずれにせよ「同床異夢」という言葉がこれほどしっくりくる関係もなかなかありません。

※ちなみに海外のファンがドラマをもとに編集した、二人のカップリング動画まで存在します

 

プタンタジネット家の喧嘩に介入しま~す♪

フィリップとリチャード。

単に親友なのか、それとも愛人なのかはさておき、二人の間に奇妙な愛憎があったことは確かなようです。

ほどなくしてリチャードは兄ヘンリーを失い、イングランド王の嫡子となります。

ところが父ヘンリー2世は末子ジョンを溺愛し、リチャードにこう言ってきたのです。

「ジョンは領地がなくて可哀相だから、お前がママからもらったアキテーヌの分は譲ってあげなさい」

「誰が譲るか! そもそもお前じゃなくてママにもらったんだよ、バーカ!」

リチャードは大激怒。ぶっ飛び母ちゃんのアリエノールも、ここはリチャードに味方します。

こうしてプランタジネット家は、またどうしようもない親子喧嘩に突入してしまいました。

フィリップ2世としては、もう笑いが止まらないでしょう。

あれほど憎たらしいプランタジネット家が、内輪もめで勝手に自滅するのですから。

「僕はリチャードと仲良しだからね! 味方してあげるよ」

「やっぱりお前は頼りになるわ~、持つべきものは友だよな」

フィリップ2世はこの親子喧嘩に介入し、英国へ侵入すると、皆で一致団結してヘンリー2世をシノン城に追い詰めます。

さらにフィリップ2世は、ヘンリー2世が溺愛するジョンまで味方につけてしまうのですから、さすがヤリ手というほかありません。

ヘンリー2世は、愛するジョンまで敵に回ったと聞いて、精神的な打撃のあまり死を早めます。1189年のことでした。

リチャードもジョンも、策略に満ちたフィリップ2世と比べれば、あまりにシンプルな世界に生きていました。

手玉に取るのはわけのないことなのです。

「親友だと思っていたのにひどいよ、フィリップ!」

この頃になると、リチャード1世もだんだんとフィリップ2世の本音が理解できるようになっていました。

フィリップ2世からすれば、「本当は、お前なんてずっと嫌いだったわ! フランスに図々しくでかい領地を持つお前なんか、誰が愛するかッ!」といったところですかね。

ジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーの関係を思い出します。

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