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韓国船沈没で映画「タイタニック」お蔵入り? アメリカでもあった自主規制の歴史

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先日の「102年前のタイタニック号沈没でも二転三転していた遭難報道」という記事でのコメントで知ったのですが、韓国のフェリー事故を受け、Wowowで放映予定だった「タイタニック」を急遽「キングコング」に差し替えていたのですね。レオマニアにとっては気の毒な話となりましたが、まぁ仕方無いでしょう。

さて、こういう自主規制って、実は日本だけでは無いのです。50年以上前にも、アメリカで似たような出来事があったのです

 

フランクシナトラ主演の「面白い映画だ!」と大評判だったのに

今から52年前の1962年、アメリカで「The Manchurian Candidate」というタイトルのサスペンス映画が公開されました。邦題は「影なき狙撃者」。監督が「大列車作戦」などで有名なジョン・フランケンハイマー。主演がフランク・シナトラとジャネット・リーですから、気合いの入った制作キャストですね。

以下、ネタバレがありますので、引き返したい人はここでやめて下さい。

主人公はシナトラ扮するマーコ大尉。朝鮮戦争で中国軍の捕虜となり帰還します。一方、自分の部隊の救出に来て同じく捕虜になったものの、帰還後は「勇敢だった」と称えられ、英雄となったのがローレンス・ハーヴェイ扮するレイモンド・ショー2等軍曹。

ところが、捕虜にされている間、中国側による洗脳の実験台とされていました。ショーはトランプのソリティアでクイーンのカードを見ると言いなりになるように洗脳されていたのです。一種の後催眠ですね。

その頃、母親は再婚相手の上院議員を次期大統領にするべく画策。レイモンドは出征前、同議員と対立するジョーダン議員の娘のジョスリンと恋に落ち、母親に仲を引き裂かれていたものの、再会後に結婚します。

しかし、母親はソリティアを勧め、催眠状態になったショーにジョーダン議員を暗殺するように命令。ジョーダン議員を射殺したショーは無意識のまま、その場に居合わせた妻のジョスリンをも殺害してしまいます。

ショーや戦友の行動を不審に感じたマーコは、恋人のユジェニー・ローズ(ジャネット・リー)の助けも借りて、彼らが洗脳にかかっていることを突き止めます。

マーコから真実を告げられ、洗脳が解けたショーは自分の母親から殺人を命令されていた事も知ります。
一方、そんな事を知らない母親は、ショーにクイーンを見せ、副大統領候補に選ばれた夫が大統領候補に繰り上がるよう、党大会で次期大統領候補を暗殺するように命令します。

当日、ショーは大統領候補の代わりに母親と上院議員とを射殺。その直後に自殺するというビターな幕切れ(以上、ウィキペディア日本語版より編集)。

 

中国が不気味に思われていた頃で大ヒット

冷戦の最中、特に国交の無い中国の出方がアメリカで不気味がられていた頃の制作でして、作中にもカンフーでの決闘場面を盛り込むなど、アクションもふんだん。洗脳の怖さをジワジワと感じさせるフランケンハイマーの演出も相俟って、今見ても面白い内容です。実際、1962年に公開された際は大ヒットとなりました。

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ケネディ大統領暗殺で自粛

評判も高く、地方の2番館(今の若い人には分かりづらいかもしれませんが、最新作で無い作品を上映する映画館。ビデオショップが普及する前には、日本にもあちこちにありました)で「あれを使いたいんだけど」と言う声が多かったのですが、この作品にとって不幸な出来事が起きてしまいます。

そう、ケネディ大統領が暗殺されてしまったからです。

片や大統領選挙、こなたテキサスでのパレード。片や朝鮮戦争で中国の捕虜となった帰還兵、こなたソ連に亡命歴のあった元軍人。妙に映画の設定と現実とが交差します。

しかも、両者に共通するのが「狙撃」というキーワード。「これはシャレにならない」となり、再上映の声は潜まり、何時しか公けの席で語りづらくなった映画になりました。勿論、フランケンハイマーやシナトラには、何の落ち度もありません。

気の毒なのは、衝撃的なラストを熱演したローレンス・ハーヴェイでしょう。当時34歳。芸歴の広い役者さんとして評判があり、「さぁこれから」と満を持してのキャスティングだったのですが、思いっきりケチがついた格好。
ケチと言えば、代表作の1つである「ロミオとジュリエット」は1954年のキネマ旬報でベスト3に選ばれているのに、同じ題名でオリビア・ハッセーが出たリメイク映画の方が今では有名ですよね。1973年に45歳の若さで胃癌で亡くなられていますし、色んな意味で運の薄い人だったのでしょうか。

ロバート・ケネディ暗殺でダメ押しの形に…

「洗脳による暗殺実行」というプロット自体は、その後のハリウッド映画でも何度か使われていますし、2004年には、「羊たちの沈黙」で有名なジョナサン・デミによって「クライシス・オブ・アメリカ」のタイトルでリメイクされてもいます。また、1993年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録されるなどしていますし、「隠れた名作」という位置付けと言えましょうか。

ただ、映画そのものには悲劇が続きました。今度はロバート・ケネディが、大統領候補として遊説中に暗殺されてしまったからです。

しかも、この暗殺に関するウィキペディア日本版の記述が怖い。

この事件も兄の暗殺と同じく謎の部分が多い。サーハンは暗殺動機を「ロバートが親イスラエル的言動を行ったため」と発言したものの、その後「銃撃の瞬間のことは覚えていない」と発言したことから、「サーハンは犯行時に何者かによって催眠術を施されていた」という説もある。

そう、今度は後催眠という所まで一致してしまったんです。ダメ押しですね。

何しろ、ウィキペディアの英語版には「ロバート・ケネディ暗殺陰謀論」という項目があり、その中でわざわざ「Manchurian candidate hypothesis」(影なき狙撃者論)という項目が設けられて論じられているぐらい。

こう書かれています。

「この他の陰謀論として、『影なき狙撃者論』と言うのがある。暗殺者のサーハン・ベシャラ・サーハンが何者かによって催眠術をかけられ、本人に自覚意識のないまま殺害を実行させられたというものだ。実行後、命令は『消去』される為、誰が催眠術をかけたかも思い出せない。この陰謀論は心理学者で催眠術の専門家であるエドゥアルド・サイモン・カラス博士によって支持されている。博士は1969年(訳注:つまり暗殺の翌年)にクェンティン刑務所でサーハンと36時間一緒に過ごした際、本人から暗殺の瞬間と直後の記憶が全く無いと主張し、その説を確信している」

これが事実かどうかは、勿論分かりません。ただ、サーハン本人は今なお刑務所に服役中という点が、自殺に終わった映画のラストとの違いでしょうか。

いずれにせよ、今回の事故や、今後の大きな海難事故で、「タイタニック」が第2の「影なき狙撃者」になりませんように。と言うか、ああいう大事故、2度とあってはなりませんよね。

takosaburou・記

 



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