歴史ドラマ映画レビュー アメリカ

ケネディの妻、その後―映画『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』

こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命
をクリックお願いします。

 

資料を取り揃えた彼女の目的はこれ。

「暗殺された著名な大統領を参考にする」

それができるという時点で、血塗られた歴史なのだなぁと改めてぞっとします。

もうひとつは、それがたとえ虚飾だとしても、飾り立てて生きねばならない立場である、ということ。

ジャッキーの時代は、テレビが普及しだしたころです。彼女がホワイトハウスを案内するテレビ映像は話題を呼びました。

メディアの普及は、国のトップと国民の距離を近づけます。

テレビや取材があるからには、ジャッキーはきちんとした装いをして、マスコミ対応もしなければなりません。

夫が死んで間もないというのに、きっちりと口紅をつけ、ドレスやアクセサリーを選ばねばならないこの状況……。

悲しむ時ですらスタイリッシュなファッションアイコンでなければならない、そんなファーストレディの立場を思うとこちらまで暗い気持ちになります。

 

お好きな項目に飛べる目次

キャメロット幻想

ズタボロになり、煙草をふかし、蒼白な顔に口紅をつけたジャッキー。

彼女が目指した「使命」の像は終盤に見えて来ます。

立派な葬儀を行うことではなく、夫の統治した時代は「キャメロット」、即ち伝説のアーサー王の治世のような理想郷であったと、世間に信じ込ませることでした。

彼女自身、それは嘘だと知っています。

夫と夜をともに過ごす日はほとんどなく、夫婦の間で常に意見が一致したわけではない。ケネディ大統領自身は虚飾を嫌い、妻がホワイトハウスを改装することにすら否定的でした。

そんな彼自身が、妻の広めた甘ったるい「キャメロット」幻想を肯定するかはわかりません。

幻想を広めるために取材に答え、煙草をふかすジャッキー。その姿からは「歴史」が生まれる過程も見えて来ます。

事実だけではなく、伝えるものの願望によって歴史は決まるのだと。

本作はけだるげで錯乱した雰囲気の中で、ジャッキーという一人の女性が歴史を語り継ぎ、作る瞬間をとらえた作品です。

万人向けではありませんが、興味深い作品です。

あわせて読みたい関連記事

プロパガンダは単に悪なのか?歴史映画レビュー『人生はシネマティック!』

続きを見る

映画『ヒトラーへの285枚の葉書』レビュー 独裁者を揺さぶる“砂粒”とは?

続きを見る

映画『英国王のスピーチ』ジョージ6世を描いた名作に娘のエリザベス女王は?

続きを見る

白バラの祈り
死を突き付けられても毅然と反論!ドイツ女学生を描いた映画『白バラの祈り』

続きを見る

映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』ブレイキング・バッドファンも必見

続きを見る

著:武者震之助

【参考】
映画『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』(→amazon

TOPページへ

 



-歴史ドラマ映画レビュー, アメリカ
-

© 2021 BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン)