唐寅(左)と文徴明(右)/wikipediaより引用

中国

文徴明&唐寅の個性派コンビは中国蘇州の人気者! 人生はエンジョイやで!

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文徴明の書斎を訪れた人は、その狭さに驚きました。

「もっとコレクションいろいろあると思ったんですけど、結構こじんまりとしてますねえ」

「私の書斎は、みんな紙の上に建てたものばかりだもん!」

文徴明はそう笑って答えました。

みなさんも、紙の上でも、頭の中でも、書斎なりどんなものでも建ててゆきましょうね。想像と創作とは、あくまで自由なものなのですから。

自由で、文化を楽しむその生き方は、憧れの目で見られてきました。

彼らの愉快な生活や友情は、小説から映画まで、様々な姿で描かれて来たのです。

日本語版も存在するものでは、香港映画界の喜劇王・周星馳(チャウ・シンチー)が唐寅に扮した1993年『詩人の大冒険』(原題:唐伯虎點秋香)があります。2019年版も作られました。

※1993年版

※2019年版主題歌

そんなスゴイ人が題材のコメディ映画があるんだ――そう意外に思うかもしれませんが、何世紀にもわたって愉快な人々だと愛されて来たとわかれば、納得できるかと思います。

生誕から550年を経ても、うらやましいこのバディ。作風だけではなく、人生のお手本にしてもよいかもしれませんね。

 

文徴明、短い公務員生活との別れ

極めてマイペースな生活を送っていた文徴明。

53歳で9度目の科挙受験に失敗し、そのころ病気にも罹り、転機を感じるようにはなります。

そして嘉靖2年(1523年)。
李充嗣りけいしが文徴明の才能に感銘を受け、歳貢生さいこうせい(推薦枠官僚)として朝廷に推薦したのです。

翰林院につとめ、薄給ながらも名誉ある仕事をこなした文徴明。若い周囲からも理解があり、そこそこ順調な官僚ライフかと思われましたが……だんだんと公務員適性がないことに悩むようになります。

しかもこの歳、唐寅が没しています。享年54。

「臨終詩」唐寅

生在陽間有散場
生きて陽間に在りても 散場有り
生きてるってことは、死ぬ時が来るってこと

死歸地府也何妨
死して地府に帰すとも 也(ま)た何ぞ妨(さま)たげんや
死んであの世に行っても、そういうこと

陽間地府倶相似
陽間 地府 倶(とも)に相(あ)い似て
この世もあの世も、似たようなもんよ

只當漂流在異鄕
只(ただ) 漂流して異鄕に在(あ)るに 当たるのみ
旅していて見知らぬ場所に行っちゃうようなものだな

文徴明/wikipediaより引用

その翌年、宮廷は死者も発生する事件【大礼の議】が起こっております。

明朝は官僚への処罰が厳しい時代です。錦衣衛きんいえい(秘密警察)が暗躍し、政治的事件に巻き込まれると棒で殴られる「廷杖の刑ていじょうのけい」の犠牲となることもありました。

「完膚無きまで」という言葉があります。傷のない皮膚がないまで叩く、拷問の様子が由来なのです。明朝の官僚は、無傷の箇所がないほどまでに殴られる危険とも表裏一体でした。

文徴明本人は巻き込まれずに済みましたが、ストレスが溜まり続けます。

嘉靖5年(1526年)までに、三度辞職を願い出て、ついに受け入れられました。公務員としての就職ライフは3年間。短い!

 

偉大なる知の巨人

かくして故郷の蘇州に戻った文徴明は、我が子や後進を見守る、仙人のようなレジェンドとなりました。

嘉靖38年(1559年)、墓碑銘を書き終え筆を置くと、ふっと昇天するかのように大往生を遂げます。享年90。

その後の蘇州において、後進の銭謙益らはしみじみと振り返っています。

「文徴明先生のあとは、どうにも蘇州はダメだな。みんな先生の真似ばっかりして。偉大すぎたんだな……」

それほどの知の巨人でした。

文徴明の偉大さは、海を超えて日本にも伝わっています。

彼のような書画を目指すこと。与謝蕪村、河東碧梧桐……多くの文人たちが、どれだけ文徴明に近づけるか。修練に励んで来ております。

今日もどこかで、どうすればもっと文徴明のような字を書けるのか、筆を握る人はいるのです。

文徴明作「倪賛像題跋」(1542年)上海博物館/wikipediaより引用

書画だけではなく、マイペースな生き方、楽しい友情。

そんな生き方も目指したい。そんな二人が、明代蘇州にはいたのです。

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文:小檜山青

※2020年3月1日まで東京国立博物館で『生誕550年記念 文徴明とその時代』が開催されております(公式サイト

【参考文献】
『生誕550年記念 文徴明とその時代』
『中国法書ガイド50 文徴明集 明』
『中国の名詩101』井波律子 編
『中国書人名鑑』
『中国の隠者』井波律子
『奇人と異才の中国史』井波律子
『中国文学の愉しき世界』井波律子
『シリーズ中国の歴史2 江南の発展』丸橋満拓
『科挙と官僚制』平田茂樹

 



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