ウィリアム・ホガースの「ジン横丁」/wikipediaより引用

イギリス

飲んだくれイギリス人とジン流行の闇がなぜかストロングゼロ文学とダブる

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飲んだくれのイギリス人
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産業革命でますます悪化するロンドン

ジンブームのあたりから、イギリスでは飲酒の弊害が問題視されるようになっています。

しかし、心ある人がジンに対して警戒心を抱いたところで、事態は悪化するばかり。

産業革命が起こるとロンドンの水質はますます悪化し、人々は水ではなくアルコールを口にせざるを得なくなります。

さらに工業化で労働時間が増えると、人々の気分もすさみ、

「もう酒でも飲まないとやってらんない!」

とやけになる人も増えるのです。

当時のロンドンは地獄のような街並みです。

汚い街の中で暮らし、毎日自宅と職場の往復。楽しみは酒だけ。そんな悲しい人生を送る人が多かったのでした……。

産業革命の闇が異常に深い大英帝国ロンドン~悪臭漂う街で子供たちはドブさらい

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ストレスの多い職場で、強烈なアルコール飲料が配布されることもありました。

例えば英国海軍水兵です。

救貧法
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「グロッグ」というラムベースのカクテルがあります。

これは、元々は英国海軍で壊血病予防のために水兵に支給していたアルコール飲料です。

現在のレシピはレモンジュースを使いますが、もともとはライムジュースを加えていました。

水兵がグロッグを飲む一方で、士官たちは優雅にワインを飲んでいました。

彼らは食事が上等ですので、壊血病にはそもそも罹患しにくい状態でした。

水兵はグロッグを飲んで酔っ払いながら仕事しても、処罰はされません。

その状態でマストにも登ったりしたのですから、なかなかの度胸です。

むしろいつ何時死ぬかわからないような職場では、常時酔っ払ってアッパラパー状態の方がいろいろと好都合であったのかもしれません。

グロッグが配給される様子/wikipediaより引用

辛い仕事を酔っ払うことで耐えるしかない労働者たち。

嗚呼、なんとも悲しいことではないですか。

 

コーヒや紅茶は? 庶民の手には届かない

嗜好品としては、コーヒーや紅茶もありました。

ただし、庶民がガブ飲み出来るようになったのは、コーヒーが1820年代、紅茶が1840年代からのこと。

それにアルコール分もないわけです。

現実逃避したい人にとっての解決策は、やはり安酒なのでした。

しかし金持ちは、そんな労働者の辛い日常生活を知りません。

「ジンは下劣、不道徳な酒だ」

「ジン? 労働者階級が飲む安酒でしょ」

そんなふうにジンに眉をしかめながら、自分たちはフランス産のワインといった高級酒で乾杯していたのです。

意識の高い人々は1830年代に「アンチスピリット運動」を展開します。

しかし既にお気づきのように、この問題の本質は、ジンにあるのではありません。

労働者を安酒へと走らせる、劣悪な労働環境です。

ジンのイメージが改善するのは20世紀以降。

様々なカクテルに使われるようになってからのことであります。

 

庶民の憩いの場はやっぱり「パブ」だった

そんな酒好きのイギリス人にとって、重要な社交場が「パブ」でした。

『ショーン・オブ・ザ・デッド』というイギリス舞台のゾンビ映画では

「アメリカ人はショッピングモールに立て籠もるけど、俺らはパブを目指すだろ!」

と主人公たちはパブを目指しておりますね。

 

『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』という映画では、宇宙人侵略による世界滅亡の危機が迫る中、主人公はパブでビールを飲み歩きます。

どんだけパブ好きなんだよ、イギリス人。

そうツッコミたくもなりますが、彼らのパブ好き、酒癖の悪さは歴史が深すぎるんですね。

パブが登場するのは、18世紀から19世紀にかけて。ジンブームや産業革命の頃でした。

ではそれまで酒場がなかったかというと、そうではありません。

・イン(宿屋):16世紀から

・タヴァーン(酒場):13世紀から

・エールハウス(エールビールを売る店):16世紀に急増

・ジンショップ(ジンを売る店):18世紀以降

・ビールハウス(ビールを売る店):1830年代以降

ややこしいですかね。

読者の皆さんの中で、ファンタジー小説や漫画を創作される方がおられましたら、酒場の看板には「イン」か「タヴァーン」がよろしいでしょう。

「パブ」では中世らしくありません。

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