イヴァン雷帝と7番目の妻マリヤ・ナガヤとの息子ドミトリー/wikipediaより引用

ロシア

ニセモノが皇帝になるってウソだろ、しかも3名て!ロシアの偽ドミトリー騒動

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偽ドミトリー
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偽ドミトリー一世登場! そして人間大砲に

1598年、ドミトリーの死から7年後、フョードル一世は子のないまま崩御しました。

これによりリューリク朝は断絶。ゴドゥノフがボリスとしてツァーリとなります。

しかし、幼いドミトリーを殺したとみなされたボリスの人気は極めて低調でした。

それから二年後。

日本では関ヶ原の戦いがあった、1600年頃。

「ドミトリーが生きていた!」

そんな噂が流れました。

やがて噂は「真実であり、ポーランドが彼の支援をしている」という話まで広がっていきます。

折しもロシアは、大変な飢饉に苦しんでいた時期。ボリスの悪行への報いだと当時の人々は見なしました。

そして、イヴァン雷帝の数々の悪行も、幼いドミトリーが見せていた残虐な性質の片鱗も綺麗サッパリ忘れてしまい、その自称息子を待ち望むようになったのです。

ボリスは偽デミトリー一世の軍に圧倒されるうちに、幼い息子フョードルを残し、1605年に崩御。続けて即位したフョードル二世とその家族は、暗殺されます。

代わりに帝位についたのは偽ドミトリー一世でした。

彼はなんと、公式調査を行い「殺されたドミトリーは身代わりだった」という結果を流布させるのです。

偽ドミトリー1世・いかにもな小者感はわざとそういう風に描かれたのですかね/wikipediaより引用

かくして偽ドミトリーはポーランド王女マリナ・ムニシュフヴナと結婚。

ボリスの娘であり、フョードル二世の姉で美女と名高いクセニヤを妾とし、慰み者にしました。

しかし偽ドミトリー一世は、あやまちを犯しました。

妻マリナのカトリック信仰を認め、ロシア正教会に改宗させなかったのです。さらに多くのカトリック・ポーランド人も擁護しました。

こうした態度が「偽ドミトリー一世は、宗教をないがしろにする」として見なされ、戴冠式の翌1606年、暴徒が寝室へ侵入。

あわてて窓から飛び降りて脚を骨折した偽ドミトリーは、呆気なく殺されてしまうのです。

燃やされた遺骸はさらし者となり、さらには大砲に詰められポーランドへ撃ち返される始末。人間大砲と言えば、ガキ使の岡本マネージャーを思い起こす方もおられるかもしれませんが、まぁ、そんな生易しいものではありませんね。

他にも、この偽ドミトリー一世に巻き込まれ、多くのポーランド人が殺害あるいは追放されました。

 

ある放浪者は言った「ドミトリーは生きている。私だ」

この手の偽物話は、一発ネタ勝負。二人目となると、「いやいや、そらありへん」と思いますよね。

ところが、さすがのおそロシア。二人目が出てくるんですねぇ。

名付けて偽ドミトリー二世です。

偽ドミトリー一世の死後、帝位についたのはヴァシーリー四世でした。

これが食えない男でして。本物のドミトリーの死をボリスに報告して、彼の家臣となりながら裏切り、偽ドミトリー一世に仕えました。

ところがまだ裏切り、今度は偽ドミトリー一世は偽物であると糾弾して、暗殺の引き金を引いた男だったのです。

そんなヴァシーリー四世による治世の1607年。ある放浪者がこう主張し出し始めます。

「ドミトリーは生きている。私だ」

なんだか、「私が神だ」「いや私だ」というモンスターエンジンのコントみたいになってしまいましたが、たとえ放浪者でも、もともとの見た目がイケていれば、ギャップで雰囲気を醸し出してしまうのかもしれません。

綺麗な服に着替えて、ピシッと髪を整えた彼は、なんだか高貴な身分の人物に見えたと言います。

いや、どう考えても偽物なのですが……民衆は、熱狂と共に彼を歓迎したのですから、意味不明というほかありません。

そして、この偽ドミトリー二世がトゥシノに宮廷を作ると、人々はヴァシーリー四世を見限り、トゥシノに移動して行きました。

しかも、です。
その中には偽ドミトリー一世の妻であったマリナもいました。

マリナは偽ドミトリー二世に面会すると「彼は私の夫です」と宣言、結婚してしまうのです。

いや、もうほんとに何がなんだかワケがわかりません。

妻となったマリナ/wikipediaより引用

かくして偽ドミトリー二世は、ポーランドの支援を受けてモスクワに進軍。

進軍したまでは良かったですが、しょせん偽物に対する民衆の熱狂など移ろいやすいものだったのでしょう。

間もなくポーランドの支援を失った偽ドミトリー二世は、トゥシノからも去ることになり、恨みを持った取り巻きによって射殺されました。

1610年のことでした。

 

偽ドミトリー三世の登場!って、もういい加減にしてくれ

さて、偽ドミトリー二世と敵対していたヴァシーリー四世。

彼は1610年、貴族の裏切りにあい、出家させられました。

そろそろいい加減にして欲しいのですが、またここで偽ドミトリー三世が登場します。

ご安心ください。
これで最後かつ瞬時にして歴史から消えます。

偽ドミトリー三世は1611年に登場すると、コサックと手を組んで陰謀を企み、1612年に逮捕&処刑されました。

ただし、ツァーリの座はあいたまま。1613年、ロシアの大貴族たちはミハイル・ロマノフという16才の少年をその座につけます。

リューリク朝の血を引き、過去がクリーンな少年である彼が適切とされたのです。

そして彼を祖とするロマノフ朝は、20世紀のロシア革命まで存続することになります。

4人目の偽ドミトリーの系統が復活する可能性は、これがわずかながら残されていたのですからおそロシア。

偽ドミトリー一世と二世の妻であったマリナは、イヴァンという男児をその腕に抱えていました。

彼女はこの男児こそツァーリになるべきだと考えていました。

しかし母子はコサックに捕らわれ、イヴァンは処刑。彼女自身も、我が子の死から一年ほどで亡くなりました。

四番目の偽ドミトリーが現れることは、このあとありませんでした。

偽物が三人も出るというのがすごいというか面の皮が厚いというか……。

一人目はともかく、二人目以降は誰も信じていなかったでしょう。実際、彼らの正体も不明です。

気になるのは一人目と二人目の妻となったマリナです。

さすがにイケメンだったからアリだったの♪とかそういうワケじゃ……ないとまんざら言い切れないのがおそロシア。

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文:小檜山青

【参考文献】

『殺戮の世界史: 人類が犯した100の大罪』(→amazon

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