ボブスレー・リュージュ・スケルトンの歴史

1910年頃のボブスレー/wikipediaより引用

世界史

ボブスレー・リュージュ・スケルトンの歴史~その始まりはスイスから

人類は、二足歩行を始めると、道具を作り始めました。

獲物を倒す斧。

肉を切り裂くナイフ。

主に食料確保に直結するものが多いですが、一方で雪と氷の地に暮らす人々は、足が埋もれないようにスノーシュー(かんじき)も開発。

これが更に発展して、後のスポーツにも繋がる様々な道具が生まれてゆきます。

雪の上を滑るためのスキー

氷の上を滑るためのスケート

更には物を運ぶためにも工夫がこらされ、生まれたのが“そり”。

樹皮、木の枝、動物の皮に、荷物や獲物を置いて引きずるのが始まりでした。

北欧神話の神々は、雪や氷を滑る移動手段としてしばしば“そり”を用いるほど。

ヴァイキングの「オーセベリ船」からも見つかっています。

北欧神話に登場する女神とそり/wikipediaより引用

そんな“そり”が、日本においてスポーツとして認知されたのは、ボブスレーの存在が圧倒的に大きいでしょう。

これにはジャマイカチームの映画『クールランニング』が大きく影響したと思われ、「大田区の町工場が作ったところ、突如ジャマイカチームにキャンセルされる」というトラブルがワイドショーなどを賑わせておりましたが、ともかく冬の五輪になると話題になりやすい種目であります。

しかしなぜ、そのような競技が生まれ、オリンピックでも注目されるようになったのか?

本稿では、そりの主要競技「ボブスレー・リュージュ・スケルトンの歴史」を見て参りたいと思います。

 


スイスの温泉観光地から生まれた

前述の通り、そりはあくまでも運搬手段でした。

たしかに子供が遊ぶことがあり、大人でも『楽しいものだ♪』と記録した人もいましたが、スキーやスケートに比べて盛り上がりに欠ける存在であることは確か。

スケートの歴史
実は3000年もの歴史があるスケート 最初は動物の骨で滑っていた

続きを見る

スキーの歴史
スキーの歴史は4500年!紀元前からの狩猟具が武具となりスポーツへ

続きを見る

ウィンタースポーツの本場、ヨーロッパでも、19世紀まではそんな状況でした。

風向きが変わったのは19世紀後半です。

この頃、スイス・サンモリッツのホテル経営者カスパー・バドラッツは頭を悩ませていました。

サンモリッツは、古くから温泉で有名でした。

19世紀後半ともなると、イギリス等の国から多数の外国人観光客が訪れるように。

ただし、冬期になると、十分な食料や娯楽を提供できなくなり、激減してしまうのが悩みでした。

冬のサンモリッツ/wikipediaより引用

当時はまだアルペンスキー術も生まれておらず、スキー場にリゾート客があふれるのは、まだまだ先のことです。

「冬の宿泊客向けに、何か娯楽があればいいんだけどなあ」

バドラッツがそう悩んでいたところ、イギリスから来た好奇心旺盛な旅行者たちが、物資運搬用のそりで遊び、競争を始めました。

「これだ!」

もしかすると、冬季観光の目玉になるかもしれない……。

そう考えたバドラッツは、そり、そしてウインタースポーツの可能性に気づきました。

19世紀後半は、スポーツ振興の時代でした。

そりも、その流れに乗って地元では人気を博していくようになります。

ただし、観光客には広まってはいない。

それこそが新たな可能性と考えたサンモリッツは『ウインタースポーツと観光の組み合わせ』という新たなアプローチを発案し、新たな旅行のあり方を誕生させるのです。

かくしてサンモリッツは、スイスで初めてスキーゲレンデリフトが整備され、後に2度にわたる冬季五輪の開催地にもなるのです。

ウインタースポーツの聖地と呼ぶに相応しい場所でした。

 


ボブスレーの歴史

では、ボブスレーを始めたのは誰なのか?

となるとアメリカ人のタウンゼントとも、イギリス人のスミスとも、複数の説があります。

ただ、二人ともスイスのサンモリッツ近辺を旅行した際、そりを改良したとされていて、発祥の地については間違いないようです。

ボブスレーという名前は、

「そり(sledge)を揺れ動かす(bobbing back)」

という動作からつけられました。

語源は英語なんですね。

初のレースも1884年頃(諸説あり)にサンモリッツで開催。1897年にはクラブも出来ておりました。

1910年頃のボブスレー/wikipediaより引用

ただ、このころはまだ公道を滑っており、次第に危険視されるようになりまして。

1903年には専用コースが作られています。

そして1924年開催の第1回冬季五輪から、正式種目に採用されるのでした。

※続きは【次のページへ】をclick!


次のページへ >



-世界史

×