謎は謎のままだからこそ魅力的――。
神話時代のことが今すぐ判明したらツマラナイですし、「切り裂きジャック」だって、当時すぐに解決していたら、これほど創作のネタになることはなかったでしょう。
今回はその中でも比較的最近ではありますが、さまざまな憶測を呼んだとある事件のお話です。
1908年(明治四十一年)6月30日、ロシア帝国・中央シベリア地域で謎の大爆発が起きました。
いわゆる【ツングースカ大爆発】です。
上空で巨大な火の玉が爆発し、周囲の森林を約2,150平方キロメートルにわたって焼失しました。
東京都の面積2,188平方キロメートルとほぼ同じという驚異の広さです。
一昔前までは科学者だけでなくオカルト好きの間でも人気のあった話ですが、つい最近謎が解明されてしまって、あまり話を聞かなくなりましたね。
というか100年近く謎のままだったのは、当時のロシアの国内事情が大きく絡んでいます。
日露戦争終了とロシア革命・第一次世界大戦の間に起きた事件だったので、辺境の調査どころではなかったのです。
そりゃそうだ。
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小説で「UFOの核爆弾説」が提唱され、放射能測定を実施
ツングースカ大爆発の本格調査が行われるようになったのは、帝政が終わり、ソ連になってからのことでした。
「火の玉が落ちてきた」
「大規模な火事が起きた」
「すごい音が何回もした」
当時からこのような証言はあったそうで、まだ現在ほど科学の発達していなかった時代ですから、なかなか真相にはいたりませんでした。
なんせ爆心地が見つかったのも調査開始から六年目だったそうですからね。
そのため、プロアマ問わずさまざまな仮説が立てられました。
中でもダイナミックなのは、第二次世界大戦後に発表された小説『爆発』です。
ロシア文学って、どうして「単語がドーン!」みたいなタイトルが多いんですかね。
この話の中では「ツングースカ大爆発は、地球にやってきた宇宙船が積んでいた核爆弾だ」ということになっていました。
「その発想はなかった」と考えた学者たちが放射能測定などを行ったが、検出されなかったため核説は見事に否定されます。
というか、フィクションを元に調査しようと思うって、ちょっとずれてますよね。
2013年になってようやく原因が判明される
他にも「彗星か小惑星の空中爆発が原因」「いやいやガスが大量にたまってて吹き出したに違いない!」なんて説がありました。
どれも全くあり得ない話ではないというか、ロシアでは2014年11月14日にもガスと思しきデカイ爆発が起きているので、信憑性がありすぎるというか……。
その後も真面目に調査は続けられ、結果、2013年になって
【原因は隕石だ!】
と断定されました。
ウクライナ・ドイツ・アメリカの合同調査団が、現場の泥炭から地球にほとんど存在しない鉱物を発見したのです。
墜落したのではなく、空中で爆発したことによりああいった奇妙な跡が残ったのだとか。
人が住んでる場所じゃなくて本当に良かった。
ちなみに、ツングースカと同じ日に現在のウクライナにあるカガルルィークという村でも同様に隕石が落ちています。
当時のウクライナはロシア帝国領だったので、帝政の終焉を予言しているかのように思えたかもしれません。
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