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魔物と呼ばれた巨大狼ロボ
30代に入ると生活も少し落ち着き(?)、博物学者として働いたり、専門書を書いたりもしていました。
そして、ニューメキシコでシートンの人生を変える出会いが訪れます。
「動物記」の代表作の一つでもある、狼のロボです。
本当に「ロボ」という通称の狼がいたのか。
それともシートンの経験の集大成として書いたのか。
ハッキリとはしていないのですが、今回は前者として話を進めていきますね。そのほうがわかりやすいですし。
ロボはニューメキシコで「魔物」とまで呼ばれていた巨大な狼で、牛を引きずるほどの力と、狼にはあるまじきレベルの知性を持っていたそうです。
そのため農場の被害もケタ違いで、家畜だけでなく多くの猟犬も被害に遭遇、ハンターもお手上げ状態でした。
学術的な対策が必要と判断され、シートンのもとへ
「ロボを何とかしてください(´;ω;`)」(※イメージです)
という依頼が舞い込んできたのです。
シートンの知識をもってしてもロボをすんなり捕えることはできず、しばらくの間追跡と観察を続けることになりました。
そして、あるとき「群れの中で、ロボが大切にしている狼がいる」ということに気付きます。
群れ唯一のメスの狼でした。
白い毛色であることから「ブランカ」(スペイン語で「白」)と呼ばれていたそのメス狼は、ロボの伴侶だったのです。
体格も頭も良くて彼女がいるとか……。
シートンはブランカを捕らえればロボも捕まえられると判断し、その通りに罠を張りました。
ブランカは罠にかかると同時に絞め殺され、息絶えたブランカを見たロボは理性を失い、今まで簡単に回避してきた罠にかかってしまいます。
そして捕われの身となりましたが、与えられた餌や水には全く口をつけず、そのまま餓えて死んでしまうのです。
人間でも、奥さんに先立たれた旦那さんが病気になってしまったという話がままありますよね。
意外な功績 ボーイスカウトの創設に関わっていた
そんなわけでロボ退治に成功したシートンは、暗澹たる気持ちでニューメキシコを後にします。そりゃそうだ。
その後アメリカに移り住み、ロボをはじめとした気高い動物たちの小説を書くようになりました。
「動物記」というのは1930年代に邦訳された際のタイトルですが、「シートンの他の功績を無視する形になる」として、当時は反対もされたようです。
この「他の功績」とは、ボーイスカウトの元になった団体「ウッドクラフト・インディアンズ」の創設者でもあるという点です。
シートンはアメリカボーイスカウト連盟の理事長になったこともあり、結局、他のお偉いさんと仲違いして辞めてしまいますが、ウッドクラフト・インディアンズの活動は続けていましたし、鳥類保護に関する法律施行のために動いたりもしていました。
この辺は、日本ではほとんど知られていませんね。
彼が亡くなったのは1946年10月。
86歳で没するまで、数多の文章だけでなく、挿絵も自ら描いています。
それだけでも十分に楽しめたりするんですよね。
『シートン動物記[図書館版](全15巻)』(→amazon)
長月 七紀・記
【参考】
『狼王ロボ』(→amazon)
アーネスト・トンプソン・シートン/Wikipedia