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【アッシジのフランチェスコ】
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ときには歌や音楽を交えながら説教を!?
この後、フランチェスコは基本的にイエスの教えを模倣した行動をしていきますが、説教だけは違いました。
聖職者が使っていたラテン語ではなく、日常的に使うイタリア語で、誰にでもわかりやすく神の教えを説いたのです。
元から歌うのが好きだったということもあってか、ときには歌や音楽をはさむこともあったとか。
それまでの聖職者とあまりにも違った経緯と言動だったので、アッシジの人々は当初フランチェスコを「何あれキモーイ」(※イメージです)という目で見ていたそうです。そりゃな。
ですが、やがて彼の真意を悟る人々が現れ始めます。裕福な貴族や法律家の中から、自分の財産を全て貧しい人々に分け与え、フランチェスコと共に「持たざる生活」を始める人が出てきました。
そして徐々に信仰を共にする「兄弟」を増やしていった彼らは、二人一組でイタリア各地へ布教していきます。
ここから「小さき兄弟団」という名称が生まれました。
そして12人という記念すべき人数になったフランチェスコ達は、正式に活動の許可を求めて、ときの教皇インノケンティウス3世へ謁見を申し込みます。
が、托鉢や正式な聖職者以外の人が説教をすることは禁じられていたため、なかなかおkが出ませんでした。ルール違反をしておいて後から「認めてください!」って言ったようなものですから、すぐに許可を出す気にはなりませんよね。
それでも何度か謁見を繰り返すうちに、教皇はフランチェスコたちの誠意を認めてくれました。
といっても、「とりあえず活動してもいいことにするけど、何かヘンなことしたら承知しないからな」(超訳)という感じだったようですが。
まあ、いきなり異端者扱いされて火刑台直行よりはずっとマシですよね。
アラビア半島に飛び込んで「キリスト教へ改宗しなさい!!」
こうして教皇から仮の許可を得たフランチェスコたちは、喜び勇んで布教を続けます。
やがてイタリア国外での活動もはじめ、数千人単位の信者を得ることができました。
アッシジの貴族の娘だったキアラという女性もやってきて、後々「フランシスコ会第二会」と呼ばれるようになる女子修道会も設立。
そんな感じでフランチェスコは少しずつ世間にも認められていったのですが、かつてトーチャンと対決したときのような極端さも残っていました。
イスラム王朝真っ盛りのアラビア半島に飛び込んでいって、そのトップであるスルタンに「キリスト教へ改宗しなさい!!」(意訳)と迫ったのです。度胸ありすぎんだろ。
もともとイスラム教は「イエスも神から伝言を預かった預言者の一人。だからキリスト教も親戚みたいなもん」(=啓典の民)という考えがあったので、このスルタンは穏やかに事を収めています。
「改宗はできないけど、遠いところから来たんだからゆっくりしていきなさい」と、フランチェスコをもてなしてくれました。よかったよかった。
一説にはこのとき、フランチェスコは「私とイスラムの教えとどちらが正しいか、火に飛び込んで決めましょう。正しいほうを神が助けてくださるはずです」(意訳)とまで言っていたそうです。
部下の代わりに火起請やった信長もビックリですわ。
最後は追われるようにして隠居へ
スルタンに改宗を断られたフランチェスコは、大人しくイタリアへ帰りました。
が、留守中に許しがたい事態が起きていました。「規律が厳しすぎるので緩めよう」と言い出した人がいたのです。
また、書物を使って勉強している人が会の中にいること、彼らが石造りの家に定住していることを知って、全員を追い出しました。
現代人からすると家で真面目に勉強していることのどこが悪いのかサッパリですが、当時書物は貴重品でしたので、フランチェスコの信念には合わないと考えていたのです。
仲間たちは他の点を含めて、規律の緩和をフランチェスコに頼みましたが、彼はどうしても受け入れられませんでした。
そのため、古くからの同志であるカッターニという人物に代表者を譲って隠居。その後も細々と活動を続けながら、次第に体が弱り、44歳で亡くなります。
極端な言動もある一方で、貧しい人々のことを第一に考えて行動したフランチェスコの考え方は、今も修道会を通じて多くの人の共感を得ています。
現在の教皇フランシスコも、フランチェスコの考えに賛同したからこそ歴代教皇でも初となるこの名前にしたのだそうで。ややこしい言い方になってサーセン。でも事実だから仕方ない。
現教皇は大胆な経費削減など、行動も名前に沿ったものにしていますね。
フランチェスコも今頃は草葉の陰で「そうそう、私が言いたかったのはそういうことなんだよ!」と思っているかもしれません。
長月 七紀・記
【参考】
アッシジのフランチェスコ/Wikipedia