大正四年(1915年)6月12日は、杉本京太が邦文タイプライターの特許を獲得した日です。
若い方にとては「ナニソレ?」状態ですかね。
19~20世紀の小説や映画などでたまに出てくる機械で、最近の映画ですと『ヒトラー~最期の12日間~』の主人公が、ヒトラーの口述筆記にタイプライターを使っていました。
まずは邦文ではないほうのタイプライターについて見ていきましょう。
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キーボードとプリンターが一緒になった機械
簡単にいうと、タイプライターというのは「キーボードとプリンターが一緒になった機械」です。
パソコンのない時代に生み出されたものですから、フォントの変更などはできません。
というか、一つ一つの文字にハンコのようなキーが割り当てられていて、それを紙にバチバチと押して文章を作っていくわけです。
アルファベットが26字しかないからこそ、できた発明といえますね。
現代では「オフィスでタイピングの音がうるさい人がいて困る」なんて話がありますが、タイプライターの音はパソコンのキーボードの比じゃありません。
なにせ、ルロイ・アンダーソンという作曲家が楽器として使っているくらいですから、管楽器や弦楽器の音に負けないくらいの音量なわけです。
Youtubeに演奏がございます。
※かなりシュールな絵面ですよね
19世紀中頃からヨーロッパで開発競争が激化する
複雑な仕組みの機械ですから、発明も一朝一夕ではありませんでした。
タイプライターの原型ができたのは18世紀のイギリスだとされています。
同時期にイタリアでも似たような機械が作られていたようで、当初は、文字を書けない人向けの機械という認識でした。
19世紀になると、機械らしい仕組みのものになっていきます。
しかし、需要が増したのは、もう少し後のこと。
ビジネス上の文書を大量に用意する必要が出てきたため、より短時間で多くの文章を打てる機械として、タイプライターが重要視されました。
速記には限界がありますし、アルファベットは表音文字ですから、あまり崩しすぎると読み取りにくくなりますしね。
とはいえ、まだまだ商業生産には結びつかず、特許も取られていなかったため、さまざまな種類のタイプライターが生み出されました。
中には失明した人向けのものもあったようです。
19世紀中頃から後半にかけては、こうした開発競争が激化した時期でした。
映画などでよく見る「使用者から打った文字が見える」タイプは、1855年にイタリアで初めて作られたものです。
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