1373年(日本では南北朝時代、文中二年・応安六年)6月13日は英葡永久同盟(えいぽえいきゅうどうめい)が締結された日です。
英はもちろんイギリス(当時はイングランド)、そして葡はポルトガルのことです。
漢字だと「葡萄牙(ポルトガル)」になりますね。
というわけでイギリスとポルトガルの同盟というわけですが、実はいろいろと特筆すべき点があります。
まず最大の特徴は、この同盟が2021年現在も有効だということです。
つまり600年以上もの長きにわたって存続しているという、トンデモナイ同盟になります。
ハッタリとケンカが基本の国際社会で、一体なぜこんな奇跡が起きたのか?
そこには同盟締結当時の事情と、両国の文化や歴史が絡んでいます。
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英は百年戦争 葡はレコンキスタ
この同盟が結ばれた当時、イングランドもポルトガルも、まだ地盤が固まったとは言い難い状態でした。
イングランドは百年戦争。
ポルトガルはレコンキスタ。
両国の歴史におけるビッグイベントの真っ最中だったのです。
前者はフランス、後者はカスティーリャ(スペインの前身になった国の一つ)へ対抗するため、直接利害関係にない協力者を求めていました。
そこで白羽の矢が経ったのが、航路が確立していて協力するメリットが大きかった両国というわけです。
イングランドの王族であるジョン・オブ・ゴーントがカスティーリャ王位をかっさらおうとしたものの失敗……というミソがつきましたが、何事もなかったかのようにその翌年、ポルトガル王ジョアン1世に娘・フィリッパを嫁がせたことで、両国の結びつきは始まります。
ジョアン1世とフィリッパは仲睦まじい夫婦で、二人の間には数多くの子女が生まれました。
その中に、あのエンリケ航海王子も含まれています。
「海の端っこに行ったら焼かれて死んでしまう」と恐れおののく船乗りたちを、「ンなもん迷信だからとっとと行って来い!!」と尻を叩いた人です。
彼によってポルトガルはいち早く大航海時代に乗り出した……というのは、世界史の教科書でもおなじみですよね。
つまり、英葡永久同盟がなく、フィリッパがポルトガルに嫁いでいなければ、大航海時代の開始が全く違う形になっていた可能性があるというわけです。
キャサリンの持ち込んだ紅茶が英国全土に広がる
「同盟」自体が軍事的な意味合いの強いもので、英葡永久同盟も軍事面に関わる事が多いのですが、この両国の場合はもうひとつ大きなポイントがありました。
1662年にポルトガルからイングランドに嫁いだキャサリン・オブ・ブラガンザが、イングランドに紅茶を持ち込んだのです。
お茶の木そのものが中国南部の原産。
当時のヨーロッパにおいて、紅茶は大変貴重な贅沢品です。
ポルトガルは既にアジアとの交易を確立しており、大量の茶葉を手に入れることができたので、キャサリンも嫁入り道具の一つとして、どっさり持ってきたのです。
また、キャサリンは来訪者にも気前良く紅茶を振る舞いました。
そのためイングランドの宮廷でも「なんだこれうまい!! うちの国でももっと輸入できるようにしよう!!」(※イメージです)ということになり、王侯貴族の間で紅茶を飲む習慣が広まっていったのです。
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