1886年10月28日、アメリカ・ニューヨークにある自由の女神像の除幕式が行われました。
イギリスからの独立100周年のお祝いとして、フランスから贈られたものです。
なんだかイヤミですね。
日本語では「女神」ということになっていますが、英語名だと"Statue of Liberty"、正式には"Liberty Enlightening the World"だそうです。
つまり、どこにも「女神」=goddessという単語は含まれておらず、性別は特定されていないということになります。
確かにあの服だと確かに男女の区別つかないですよね。
自由の女神は仏マリアンヌをイメージ
ではなぜ「女神」なのか?
というと、像のモデルと関係があります。
フランスを象徴する女性・マリアンヌをイメージして作られたとされているからです。
彼の国では自国を美しい女性として扱う風習があり、いつしかその女性に”マリアンヌ”という名前がつきました。
自国愛の極みというかご立派というか。
まあ確かに世界遺産も多いですしね。
世界史の教科書でお馴染みのフランス革命を描いた絵画「民衆を導く自由の女神」も、マリアンヌを自由と結びつけたものです。
ど真ん中でフランス国旗を掲げた女性がいるあの絵ですね。
未完成のプラモデル状で届けられる
さて、その性別不明の像は高さ46メートルもある巨大さなので、フランスからあの形で届いたわけではありません。
いくつかのパーツに分解された状態でアメリカにやってきて、組み立てたのは贈り主ではなく贈られた側だったそうです( ゚д゚)ポカーン
台座を用意したのもアメリカ。
しかも民間というか新聞社が寄付を募って作られました。
……えぇと、このプレゼントあんまり嬉しくなくね?
当然、組み立てや台座の工事には人手も費用も莫大にかかり、当初はニューヨークではなくもっとお金のある町へ置こうかという話もあったほどだとか。
このときワシントンに置いとけば、首都を勘違いされなくて済んだかもしれませんねぇ。
左手に持つプレートは米独立記念日と仏革命の日付
ところで、自由の女神像の映像では、頭部の展望台や右手に掲げた松明がよくクローズアップされますよね。
では、彼女の足元を見たことはあります?
実は結構えぐいというか、えげつない表現になっています。
圧政や弾圧を示す鎖がちぎられ、それを踏みつけているのです。ワイルドやな。
アメリカって確かに自国については無茶振りしてるイメージあんまりないですよね。自国内では。
「人類皆平等」の意味もあるそうですが、アメリカというか欧米圏が言っても「ハハッハハハッ」という乾いた感じというか。
左手に持っている四角いものは本ではなく、アメリカの独立記念日(1776年7月4日)とフランス革命勃発の日(1789年7月14日)が書かれたプレートだそうです。
よそのお祝いするのに自分の記念日まで彫り込んでおくとか、フランス人のセンスすげえ(皮肉)
フランス革命や人権宣言は、アメリカの独立に触発されて起きたともいわれていますから、決して無関係ではないですけども。
第一次世界大戦で破壊されていた
そんなわけでアメリカのいろんなものを表現する、この像。
どちらかというとアメリカ国民の親しみを集めているというより、観光客が重視しているような気がします。
9.11でも標的になっていませんし。
もし主犯が最初からテロや戦争をしかけるつもりだったとすれば、
「自由の女神像を破壊して、アメリカの官民に大きな精神的ダメージを与えよう」
と考えてもおかしくはなかったはずです。
それをしなかったのは、この像が名所ではあっても展望台にしかすぎず、政治的な役割が少なかったこと、たとえ破壊してもアメリカのダメージになりえないと判断したからではないでしょうか。
よく政治的な状況の変化を象徴として、権力者の像が引き倒されたりぶっ壊されたりしていますが、自由の女神像は「アメリカのシンボルであってもアメリカ国民の精神的支柱ではない」と言えそうです。
映画『猿の惑星(→amazon)』では衝撃のシーンとして登場しましたけど。
あれは人類文明の崩壊を表す印象でしたしね。
ただ、第一次大戦中に一度破壊されたことはあります。
近くにある港に対して行われた爆破テロの巻き添えだったので、たいまつやスカート部分が壊れた程度だったそうです。
以来、腕の部分は「開かずの間」ならぬ「開かずの腕」になったとか。
ちなみに……昨今、お台場で遊ぶ人の多くは外国人になっており、皆さん、小さな自由の女神像で記念撮影を楽しんでいます。
どんな気持ちなんだろうか。
長月 七紀・記
【参考】
自由の女神像(ニューヨーク)/wikipedia