エクスカリバー、デュランダル、草薙剣……いずれも象徴的な神器として剣が位置付けられてきたことの証左ともいえるでしょう。
しかし、伝説にも神話にも記されない【謎の剣】が古代日本にはありました。
その名も蛇行剣(だこうけん)!
読んで字のごとく蛇のように曲がりくねった剣身をもつ古墳時代の刀剣類の一種です。
この蛇行剣、出土事例は全国でも70例弱と非常に希少なものであり、その特殊性から考古学者たちの頭を悩ませてきました。
一体これは何なのか?
奈良県の富雄丸山古墳(とみおまるやまこふん)で国内最大のものが発見され、今にわかに盛り上がっている、古代日本の剣物語をちょっと覗いてみてみましょう。
◆奈良・富雄丸山古墳で国内最大の蛇行剣出土、類例ない盾形銅鏡も(→link)
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「副葬品」としての剣であること
これまでに見つかった蛇行剣はいずれも5世紀~6世紀を中心としたお墓の副葬品。
「古墳」を中心に副葬されていることが分かっています(南九州の一部などは「横穴墓」などの独自の埋葬施設)。
曲がりくねった姿からやはり「蛇」をかたどったものであるという解釈が一般的であり、古代から蛇は「再生」のシンボルとして崇拝されてきたものでもあります。
しかし、実体はよく分かっていません。
出土遺跡は韓国にも及んでいること
蛇行剣の出土事例は先述の通り、その他の鉄製品に比べて極めて希少なものです。
これをともなう遺跡は関東地方から南九州まで広く点在し、一例のみ韓国の任実郡からも出土。
古代の日韓交流と密接に関係していることがうかがえます。
「ヤマト」を中心に各地方に波及していること
出現期の事例は、奈良県の宇陀地方のものとなっています。
宇陀といえば『古事記』などで初代天皇、イワレヒコがやってきた場所であり、神話ゆかりの土地。
ここから徐々に時代差をともないつつ全国各地に波及しているため、ヤマト王権が傘下に収めた地方勢力の首長層に対して下賜した特殊刀剣であるという解釈も生まれています。
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