明治四十一年(1908年)7月25日、化学調味料の”味の素”が特許を取得しました。
「うまみ」を与えるためのものとして有名ですよね。
それがなぜ日本で生まれたのか?
というと、ここに行き着くために日本独自のアレコレが欠かせなかったという背景があります。
昆布をはじめとした「だし」ですな。
江戸時代、京都では昆布、関東では鰹節でダシをとるのが主流でした。
ずっと昔からごく普通に使っていたものではありますが、明治時代に入って西洋料理が一般化しても、あの独特の風味を持ったものは見られなかったことから興味を引かれて研究対象にしたのでしょう。
手がけたのは東京帝国大学(東大の前身)に所属していた池田菊苗教授。
夏目漱石と友人だったそうで、何となく「身近なものを一味変わった視点で捉える」というところは似通っている気がします。
第5の味覚「うまみ」の発見
江戸時代まで味覚は
・酸味
・甘み
・塩気
・苦味
の四つに分類されると考えられておりました。
そこに「もう一つあるのではないか?」と仮定することから研究が始まりました。
そして昆布から新たに見つかった”グルタミン酸ナトリウム”という成分こそ、その味を生み出す元だということに気づき、「うまみ」と名付けたのです。
研究対象になった昆布は、生息範囲こそ広いものの、食用にしている国は極めて少数。
ウィキペディアには日本での食例しか挙がっていないほどです。
ロシアでは「海のキャベツ」と呼ばれているそうですので少しは食べられていたのでしょうけども、ロシア料理で海藻を使うイメージはないですよね。
そんなわけで、うまみのもとが見つかったのも日本なら、それを生かした”味の素”をはじめとした各種化学調味料が開発されたのも当然日本というわけでした。
東南アジアやローマ帝国では魚を漬け込んだ発酵調味料があります。
なので、似たような感覚を持つ人々はたくさんいたのでしょう。日本でイタメシや東南アジア系の料理が流行ったのも、この辺が影響しているのかもしれません。
ちなみに池田教授の教え子・児玉新太郎が、鰹節のうまみ成分・イノシン酸を発見しています。
ダシだしってすげぇ!
ウイスキーには樽のダシが効いている?
日本人が味の表現をするときに
「うまみ」
「だし」
という単語を使いたくなるも無理ありませんね。
ワタクシもウイスキーを飲んで「樽のだしが効いてる」と言ってバーテンさんに苦笑いされたことが多々あります。
本当は“樽香”という綺麗な単語があるんですけども、つい。
ところでこの化学調味料、最近は「うまみ調味料」ということが多いようですね。
「化学調味料」といわなくなったのは「化学」という単語に拒否反応を示す人が多くなったからというのが大きな理由のようです。
プラスチックや石油のイメージが強いのでしょう。
化学反応を利用して作っているのは確かですし、都市伝説でそういうものもありますが、それは脊髄反射というものです。
ステーキが焼ける(燃焼する)のも、納豆やヨーグルトが発酵によって作られるのも化学反応という大きなくくりに入りますからね。ちょっと乱暴な言い方ですが。
というか、名称を変えたところで本質が変わるわけじゃないから意味ないと思うんですけども(´・ω・`)
オレオレ詐欺とか違法ドラッグとか……。
化学調味料へのマイナスイメージはいつどこから?
この手の噂話が広まったきっかけは、1960年代のアメリカ。
中華料理店で食事をした人が
「化学調味料のせいで具合が悪くなった」
と言い出したからなんだそうです。
同時期の日本でその手の事例がないという事は、化学調味料よりも料理に含まれていた“別の何か”が原因の可能性が高いですよね。
もしこれが本当なら日本人のほとんどは毎日体調不良を起こし続け、あっという間に人口が激減しているでしょう。
にもかかわらず日本でもあっという間に拡散したのですから味の素さんにとってもたまらない話ですよね。
味噌汁に入れてよし。
漬物にかけてよし。
実はパスタのお伴にもよし。
味の素、最高です!
長月 七紀・記
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【参考】
うまみ調味料/wikipedia
http://www.umamikyo.gr.jp/index.html