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その日、歴史が動いた ドイツ

戦上手なドイツの傭兵隊長・ヴァレンシュタインはなぜ出世しきれなかった?

更新日:

 

歴史上にはさまざまなタイプの英雄や偉人がいますよね。
しかし不思議なもので、国も時代も違うのに、似たタイプの人もたまに出てきます。
本日はそんな感じ……かもしれない、とある国の戦上手な人のお話です。

1583年(天正十一年)9月24日は、ドイツの傭兵隊長だったアルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタインが誕生した日です。

この人の生涯を一言で表すとすれば、「出世しきれなかった豊臣秀吉」というところでしょうか。生まれや出世の経緯は違いますが、いくつか似た印象を受ける点があるのです。
さっそく生涯を見ていきましょう。

【TOP画像】ヴァレンシュタイン/Wikipediaより引用

 

大学を中退後にハプスブルク家の傭兵となる

アルブレヒトは、ボヘミア(だいたいチェコ)のドイツ系プロテスタントの小貴族の家に生まれました。そのまま行けば順当に家を継いで、時代の波に揉まれていくことになったのでしょう。

しかし彼は、若い頃から持ち前の行動力を発揮しています。
まず、この宗教改革真っ盛りの時期に、わざわざカトリックに改宗しています。その後、イタリアのパドヴァ大学に留学しているので、そのためだったかもしれません。
ところが、です。改宗してまで留学したのに、在学中に暴力事件に巻き込まれて退学させられるという嫌なコンボをくらいました。

これでヒネてしまったのか、帰国後は傭兵になってハプスブルク家に仕えるようになります。身をやつした感がハンパないですね。

しかし、アルブレヒトは転んでもタダでは起きません。どこぞの裕福な未亡人と結婚し、相手の財産を使って資産を増やすという財テクを披露しています。
そして、このお金を使って傭兵を集め、一軍を率いる立場になりました。

 

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トントン拍子に出世して、皇帝軍のトップにまで上り詰め

そうこうしているうちに、ヨーロッパ史で一・二を争うややこしい戦争である三十年戦争が始まりました。
この時点では、まだよかったのです。
ボヘミアのプロテスタントが『ウチの領主サマ(カトリック)がひどすぎるのでなんとかしてください』と神聖ローマ皇帝フェルディナント2世に訴えたところ、『いやワシもカトリックだから』と拒絶(物理)されたという程度でした。
が、時代が進むにつれてややこしくなっていきます。

アルブレヒトは皇帝側につき、反乱鎮圧に貢献しました。同時にプロテスタントの土地をぶんどって売買し、さらに財産を増やしていきます。
これによって皇帝に軍資金と兵を提供し、見返りに北ボヘミアの領主・フリートラント候の地位をもらいました。
ついでに、フェルディナント2世の側近の娘と結婚させてもらい、宮廷にもパイプを作ります。

こうしてトントン拍子に出世し、皇帝軍のトップにまで上り詰めました。
戦闘では、他の将軍と連携を取ってデンマーク王クリスチャン4世+神聖ローマ帝国内のプロテスタント諸侯による連合軍を倒すという大功も挙げています。
この功績でメクレンブルク公に叙爵され、さらに高い地位につきました。

 

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自分たちばかり裕福になり他の友軍から反感を……

しかし、この間に軍税制度を作ってあっちこっちから取り立てたため、他の友軍から「俺達の取り分が亡くなるじゃないか!」と不満をぶつけられるようになります。
当時の軍はほとんど傭兵であり、報酬は「侵攻先で・自分たちでぶんどるもの」だったからです。

また、アルブレヒトは以前、別の貴族から複数回の資金提供を受けていたため、そういった意味でも不評でした。ちゃんとお金を返せばまだマシだったかもしれませんが、ただでさえ成り上がりのアルブレヒトが一度やっかみを買ったら、払拭するのはなかなか難しいところです。
しばらくは戦の上手さでごまかすことができましたが、それにも遠からず限界がやってきます。

フェルディナント2世がハプスブルク家の権力を確立するため、新しい法律を作ったときにそれは噴出しました。
カトリック諸侯からもプロテスタント諸侯からも「俺達の権力が減るなんて許せない!」と大反発をくらい、法律の撤回とアルブレヒトの罷免を要求したのです。
反対したいことはまとめて片付けてしまおうというわけですね。ゲスいというべきか、効率がいいと感心すべきか(´・ω・`)

この状況の中で、フェルディナント2世とアルブレヒトの関係も険悪になり、アルブレヒトは1630年に地位を剥奪されてしまいました。
しかし、フェルディナント2世に対する諸侯の態度は変わらず、アルブレヒトの後任がヘマをしたせいで再びプロテスタントに離反されるという踏んだり蹴ったりぶり。

しかもその後任者がスウェーデン軍にボロ負けして戦死し、バイエルン一帯がスウェーデンに奪われてしまうという嫌な連鎖が起きます。
事ここに至って、当時のバイエルンの主・マクシミリアン1世がフェルディナント2世に「アルブレヒトならきっと何とかしてくれるはずです! お願いだから復帰させてください!(´;ω;`)ブワッ」(超訳)と懇願したため、アルブレヒトが再び皇帝軍の指揮を執ることになりました。

 

皇帝軍所属の将校たちによって暗殺

復職の後は再び戦上手振りを見せ、スウェーデン軍を退けました。

が、以前と比べるとその腕はやや劣っていたといわれています。以前は自分で鍛えた兵を率いていたのですが、復職後は皇帝の兵を指揮したのが原因だとか。人間、付き合いの長いほうが馬も息も合いますものね。
それでもスウェーデン王グスタフ2世アドルフを戦死させたのだから、やはり指揮能力は卓越しているといえましょう。

ただし、アルブレヒトに対する潜在的な反感は拭いきれておりませんでした。というか虎視眈々と狙われていたのかもしれません。
1634年に居城に滞在していたところ、皇帝軍所属のスコットランド人およびアイルランド人将校に暗殺されてしまったのです。

暗殺されるヴァレンシュタイン/Wikipediaより引用

暗殺されるヴァレンシュタイン/Wikipediaより引用

彼らが自発的にやったのか、皇帝が仕向けたのかは定かではありません。しかし、この後、皇帝軍の指揮を取ったのがフェルディナント2世の嫡男であることを考えると、後者のほうが可能性は高そうです。
バレバレですが、皇帝が一番エラくて、アルブレヒトには味方がいないのですから、問題なかったでしょうし。

最後にちょっとだけ、彼の擁護をしておきましょう。
アルブレヒトはプラハに「ヴァレンシュタイン宮殿」と呼ばれる宮殿を作っています。どちらかというと「成金」に近い出自ですが、この宮殿を見る限り趣味は良かったようですね。
しかしその完成は1630年。つまり暗殺の四年前=周囲からやっかみを買いまくっていた頃です。そんなときにこんなものを作れば、反感が高まるのも仕方なかったかもしれません。戦時中はどこもかしこもお金に困っているわけですし。

ヴァレンシュタイン宮殿は現在チェコ上院として使われているためか、ヨーロッパでは彼の知名度はそこそこあるようです。「ヴァレンシュタイン」というボードゲームもあります。
日本語だとラノベのキャラクターのほうがヒット数が多いようですが、元ネタは彼なんでしょうか。

ヴァレンシュタイン宮殿/Wikipediaより引用

ヴァレンシュタイン宮殿/Wikipediaより引用

まあ何にせよ、「出る杭は打たれる」という言葉がぴったりくる生涯といいますか、客観的な視点の大切さが伝わってくるというか、そんな人ですね。
日本史で例えるとすれば、秀吉と三成を足して割らない感じでしょうか。無理があるか。

長月 七紀・記

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参考:アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン/Wikipedia ヴァレンシュタイン宮殿/プラハガイド

 





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