阿片を吸う中国人/wikipediaより引用

中国

アヘンにみる薬物乱用と英国の恐ろしさ!ケシを吸ったらサヨウナラ

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それには当時の経済状況を理解するのが一番でしょう。

19世紀の清は、長崎の出島のごとく広州に限って欧米と貿易を行っており、イギリスはそこから紅茶の茶葉や陶磁器、絹を大量に輸入しておりました。

一方、国土の広い清には大抵のモノがあり、イギリスから輸入するものは殆どありません。

貿易赤字が一方的に膨らむ英国。銀はどんどん清へ流れ、ついに売るものはなくな……らずに手がけたのがアヘンだったんですね。

もう、完全にアングラ組織です。

なんせ植民地のインドで作らせて、それをそのまま清へ流すのですから、濡れ手に粟の商売とはこのことでしょう。

いつしか両国の経済は大きく逆転し、「さすがに黙ってられん!」と取り締まりを強化したところ、これにイギリスが噛み付き、アヘン戦争が始まったワケです。

まさに逆ギレも甚だしく、ヒドい話ですよね。

アヘン戦争/Wikipediaより引用

 

時の皇帝は死刑に定め、林則徐を欽差大臣に任命するも

ここからは、もう少し詳しく当時の様相を見て参りましょう。

アヘンの密輸が横行した場合、問題となるのは大きく2つです。

①流行による風紀の乱れ・健康被害・労働意欲の低下

②海外に銀が流出する経済問題

清の官僚の中には「アヘンの取り締まりは無理だから、輸入を認めて関税をかけたほうがマシなんじゃない?」という折衷案を出す人もおりました。

しかし、時の皇帝は「死刑」という厳しい法律を作り、林則徐(りん そくじょ)を阿片禁輸の欽差大臣(特命大臣)に任命。

徹底した取り締まりを強行します。

賄賂になびかない正義の官僚・林則徐さん/wikipediaより引用

林則徐には中国人が大好きなワイロも通用しません。

アヘンの在庫数も国内流通量から計算し、そしてイギリス商人たちを追い込んでいきました。

かくして1839年6月、林則徐はイギリス商人から没収したアヘン約2万箱を焼却するのです。

普通に燃やすと煙で周辺が大変なことになるため、海水と生石灰で処理して処分しました。

化学知識もカンペキ。いやぁ、本当に凄い官僚サンですね。

 

イギリス本国でも意見は割れていたが、結局……

ただ、この厳しい取り締まりが引き金となり、アヘン戦争が勃発してしまったのも事実でありまして。

イギリス本国でも「麻薬の密輸を禁止されたからって、武力行使するなんて、人として間違ってるよね!」という意見は当然ありました。

議会においても、清への出兵に関する予算案は賛成271票、反対262票の僅差だったそうで、良心は残っていたわけですね。

歴史に「たられば」はありませんが、ココでの投票が否決されたなら、中国、ひいてはアヘン戦争の影響を恐れた幕末ニッポンの歴史も大きく変わっていたでしょう。

かくして1840年から2年間のアヘン戦争がイギリスの圧勝に終わったのは先に報じた通り。

両国の間では不平等条約(南京条約)が結ばれ、清は他の列強にも付け込まれる展開となりました。

林則徐は責任をとって大臣をクビになり、地方へ左遷という憂き目に遭っております。

ただ、彼はそこでも善政を行い、住民に慕われたというのですから、本当にもったいない話です。

現代の日本でアヘンやモルヒネ、ヘロインを許可無く使うと法律に触れます。

では、昔はどうだったのでしょう?

私の遠い記憶ですが「暴れん坊将軍」や「遠山の金さん」などの時代劇で「此れはご禁制の阿片!」みたいな話を見ていたので、江戸時代から御法度だとずーっと思っておりました。

ところが、です。

記事を作成中に初めて知ったのですが、当時、日本でのアヘンはとても高価な薬でほとんど流通がなく、ケシ栽培が全国に広がったのは明治時代前後だと言うではあーりませんか。

江戸幕府がアヘンを禁止したのは「アヘン戦争の教訓から」であり、1858年の安政五カ国条約に輸入禁止の条項が設けられたのです。

もう、完全に誤解してましたよ、金さん(笑)。

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文/馬渕まり(忍者とメガネをこよなく愛する歴女医)
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【参考】
日本緩和医療学会(→link
アヘン/wikipedia
アルカロイド/wikipedia
モルヒネ/wikipedia
オピオイド/wikipedia
ヘロイン/wikipedia
阿片戦争/wikipedia
三角貿易/wikipedia

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