美し過ぎる伝説の女スパイ「マタ・ハリ」は本当に諜報活動を働いていたのか?

 

「一たび顧みれば人の城を傾け、再び顧みれば人の国を傾く」
李延年という人が、とある美女のことを詠んだ漢詩の一節です。

これは中国の話ですが、古今東西、「美女のために戦をしたとか、国を滅ぼした」という話は多々ありますよね。中には「美女が年をとっても自らの美しさを保つために、領民を虐殺して生き血を(ry」なんて話もありますし。

しかし、無力な立場の美女となると、むしろ周りに利用された挙句「みんなアイツのせいなんです!!!」と責任をおっ被せられてしまうこともあり……。本日は、そのドチラなのか意見が割れそうな、近代美女のお話です。

1876年(明治九年)8月7日、「伝説の女スパイ」とされるマタ・ハリが誕生しました。

情報戦というともっと近年の話のような印象がありますが、この人が活動していたのは第一次世界大戦の時でした。
「マタ・ハリ」はいわゆる芸名で、本名は「マルガレータ・ヘールトロイダ・ツェレ」というのですが……例によって、有名なほうで統一しますね。

マタ・ハリ/Wikipediaより引用

 

13才のときに父が破産で両親離婚

マタ・ハリは、東南アジアの言葉で「太陽」または「日の目」という意味だそうです。
しかし、彼女の生まれはオランダ北部のレーワルデンという町。彼女の母親が、当時オランダの植民地だったインドネシア方面の血を引くということで、このような芸名を思いついたようです。

彼女が幼いころは、トーチャンの事業がノリにノっていた時期でした。石油産業に投資して一山当て、マタ・ハリもいい学校に通わせてもらっていたそうです。

しかし、マタ・ハリが13歳のときに破産、両親の離婚と、ある意味定番の不幸が重なり、さらにその二年後には母親が亡くなり、一人ぼっち同然に……。彼女は後見人を頼って、ライデンという町へ引っ越しました。

自分で稼ぐ道を見つけようと、マタ・ハリは勉強に励みます。

当初は幼稚園の先生になろうと考えて進学しましたが、既に美しく成長していた彼女に、あろうことか通っていた学校の学長がセクハラをするという事件が起きました。どこの国にも子供にイヤな意味で興味を持つ人っているんですね……(ドン引き)
そのため学校に通い続けられなくなり、叔父を頼ってハーグに移ります。

 

自らもまた離婚し、夜のダンサーの世界へ

夢破れたマタ・ハリは、普通に結婚する道を選びました。
新聞に載っていた結婚相手募集の広告に応募し、フランス人の軍人と結婚。二児の母となります。おそらくこの時期が、彼女にとって一番幸せな時期だったでしょう。

しかし、何らかの理由で離婚し、マタ・ハリは再び一人ぼっちになってしまいました。
この時代、女性が一人で生きていく方法はさほど多くありません。しかし、美貌があれば一攫千金も夢ではない仕事がありました。

いわゆる性産業や、ショービジネスの世界です。

エキゾチックな美貌を持つことを活かし、マタ・ハリは「ジャワ島からやってきた」というちょっとした経歴詐称をして、パリでダンサーとしてデビューしました。彼女の写真は、ほとんどがこの頃のものです。

1910年の頃のマタ・ハリ/Wikipediaより引用

露出度の高い衣装と魅惑的なダンスで、マタ・ハリは多くの男性を虜にしました。そしてそうなれば、お店の外での”オツキアイ”も当然出てくるわけで……。
わからない人はそのままでいてください(´・ω・`)

そういった経緯で、政治家やフランス・ドイツの軍人を相手にしていたため、いつしか彼女は「フランスのスパイ」「ドイツのスパイ」「二重スパイ」とされるようになっていきました。

 

多くの輸送船が沈められたのも彼女の責任とはこれいかに

実際のところ、彼女が本当にスパイだったのか、そしてスパイとしての実力がどれほどのものだったのか、という点については、はっきりしていません。
マタ・ハリがスパイ活動をしていたと思われる1915年~1917年の間、彼女の活動によって大きく戦況や政争が影響された、と断定できるものも見当たらないからです。

「優秀なスパイだったからこそ、痕跡を一切残さなかった」

そんな風に見ることもできますが……前半生は完全に一般人だった彼女が、そこまで手際良くやれるものでしょうか。
マタ・ハリは敵地への潜入をしたわけではなく、ベッドの上で情報を聞き出して敵に流すという活動しかしていなかったとされているので、話術によってはできたかもしれませんけれども。

いずれにせよ、彼女がフランス政府によって逮捕されたとき、フランス軍の失敗がほとんど彼女のせいにされたのは事実です。
具体的には、ドイツの潜水艦・∪ボートによって輸送船が数多く沈められたことなどでした。いくら何でも無理やりすぎでしょう。

ついでに、当時のフランス軍がどんな感じだったかというと「1万人くらいの犠牲で済むと思ってたら、作戦がマズすぎて18万弱も死んだでござる。だが俺は悪くねえ!!」(超訳)なんてこともあったほどのダメっぷりでした。
そのせいで多くの兵にストライキされたこともあります。戦時中のこととは思えません。ナポレオンが泣くぞ。

裁判では「ベッドの上で数多の男たちから情報を聞き出したような女は、人間として扱う必要はない」とまで言われたそうですが、そもそも機密情報を外部の人間にホイホイ話す男のほうが大問題ですよね……。
普通の女性ならそんなこと興味を持ちませんし、「体を使ってまで聞きたがるなんてアヤシイ」とか思わなかったのかと。自白剤でも使われたならまだわかりますが。

この辺を合わせて考えると「自分たちがうまくやれない腹いせに、手頃な美女に濡れ衣を着せてブッコロした」としか見えません。

 

マタ・ハリ以外の女性スパイも多くが不可解な死に方を……

こんな感じでテキトーに裁判が行われ、マタ・ハリの銃殺刑が決まってしまいます。

処刑の際の逸話もいろいろあります。その多くが、オペラから引っ張ってきたと思しきものだったりして、「マタ・ハリの美貌で惑わされないよう、銃殺隊は目隠しをして撃った」やら、「コートの前を開けた状態で体を見せて処刑された」やら、うさんくさいものばかりです。
これでは「こいつはそのくらい悪い女だったんだ! だから俺たちは(ry」と強調しているも同然のような……。
マタ・ハリに限らず、歴史に名を残した女性に下世話な話がくっつくのはお決まりですけどね。

女性スパイはマタ・ハリ以外にもたくさんいます。そしてその多くは有罪で処刑されるか、不可解な死に方をするかのどちらかです。
スパイという性質上、仕方がない点ではありますけども、男性のスパイにはあまりイヤラシイ話が出てこない気がします。

いつか本当に男女平等な世の中になったら、そういうこともなくなるんでしょうかね。

長月 七紀・記

参考:マタ・ハリ/Wikipedia

 


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コメント

    • 匿名
    • 2016年 8月 14日

    男女平等な世の中になるか、あるいは世のすべての人間が「配偶者以外の異性に性欲が全くわかねぇ!」という進化を遂げるか「大事な情報をペラペラ喋る奴が悪い!」という社会にならないと無理かもしれませんね。
    ソレならソレで、また新たな手段が生まれそうですが。

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